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2020.06.15 2023/05/31

突然の災害でも慌てない! 忙しくても普段から取り組める非常食のローリングストック法とは?

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突然の災害でも慌てない! 忙しくても普段から取り組める非常食のローリングストック法とは?

もし今、自然災害が起こり外出できなくなったら…… みなさんは、家の中にある食材だけで非常時を乗り切れますか? 今回の新型コロナウイルスでは、外出自粛のため買い物に行けない日もあったと思います。

家庭での食料備蓄の必要性や防災への関心が高まるなか、家庭用食料備蓄の推進活動を行うDAILY STOCK ACTION®(略DSA 運営:一般社団法人日本ソイフードマイスター協会)は、「日常的に常温保存可能な食品を一定量ストックしながら食べていこう!」というローリングストック法について積極的に発信しています。
非常時の対策だけでなく、忙しいワーママなら一度は経験したことがあるであろう「買い物に行けない日に限って冷蔵庫の中が空っぽ!」という日常のトラブルも回避できるのがDSAの活動の特徴です。

今回はDSA実行委員長の池上紗織さんにオンラインにてお話を伺いました。

在宅避難時に役立つ災害時の新しい備蓄方法!? 食のローリングストック法とは?

編集部:保存食を日常的に食べて、消費したら新しく買い足して備蓄していくことを「ローリングストック法」というのですね。

 

池上紗織さん(以下、敬称略。池上):「ローリングストック法」は、国も積極的に広めようとしている言葉で、災害時の備蓄方法のひとつとして農林水産省のWEBサイトでも紹介されています。

 

編集部:そうなんですね!

 

池上:さまざまな食品メーカーなどのHPでもローリングストック法について情報が載っているのですが、すごく簡単にいうと、「“回し使い” しましょう」ということになります。

 

編集部:“回し使い” 、ですか?

 

池上:そう。日常的に消費し買い足しながら回し使いすることで、家の中に非常食が常にストックしてある状態にしましょうということです。ところで、非常食ってどんなものを想像しますか?

 

編集部:そうですね…… 乾パンや缶詰、カップラーメンなどを思い浮かべます。

 

池上:ですよね! ほとんどの方は非常食に同じイメージを持たれています。ただ、「非常」という言葉があまりにも日常とかけ離れているせいか、後回しにしがち。ですから、私たちは一般の人にも浸透しやすいよう、「防災食」という言い方をしています。

 

編集部:確かに、非常食はもしものときのためのお守りみたいな感覚があります。長く日持ちするものをわざわざ探して買う割に、床下や戸棚にしまっておいたら賞味期限が切れていたりして経済的じゃないですしね。

 

池上:実は、地震や台風などの災害が起こった場合、避難命令が出されたとか、家が住めない状態にならない限り、避難所に行かず家の中で避難する(在宅避難)が基本です。道路が通行止めになり物流がストップしてしまうと食料調達は難しいですよね。そんなとき、備蓄していた乾パンや、5年日持ちするおでんなど、いま初めて口にするものを開けて食べるってドキドキじゃないですか?

 

編集部:それはドキドキですね! 正直、食べるのが怖いです(笑) 以前、私も缶詰入りの非常食パンというのを食べてみたんですが、自分の口には合わなかった経験があります……

 

池上:不安な時こそ食べ慣れたホッとできる食事がとても大事だと考えています。そのためにも、事前に試食する機会が必要です。

2020年5月のアンケート調査によると、「予定通り食料品を調達できなくなった時のために、普段から準備はしていますか?」という問いに対し、3日分のストックが無い家庭は約4割、5日分のストックが無い家庭だと7割まで増えてしまいます。でも現在は、7~10日分のストックがあることが望ましいとされています。

 

編集部:なるほど、7〜10日分のストックができている家庭はほとんどないのですね……

 

池上:中には食材がなくなってから買うと答えた方もいました。都心の便利なところに住んでいて普段の食材調達がしやすい場合は要注意です。利便性のいい場所は人が多いので、有事の際は店舗から食材がなくなるのも一瞬ですから。

 

編集部:今回のコロナ渦でもスーパーの棚から食品がなくなる映像がたびたびテレビで放映され、ショッキングでしたね。では、乾パンなどの長期保存できる非常食は必要ないのでしょうか?

 

池上:大きな避難所や商業施設などの備蓄には長期保存可能な非常食は必要です。でも、各家庭での備蓄を考えると、そうしたものよりも普段食べ慣れているものがいいです。DSAでは、防災のプロとしてではなく食の専門家として、家庭で普段使いできる常温保存食品のストックをおすすめしています。

 

編集部:常温保存食品ですか?

 

池上:そうです。北海道胆振東部地震のときは、1日停電になり冷蔵庫が使えませんでした。冷凍食品を買いだめしておいても1日でダメになってしまいます。それに冷蔵・冷凍食品はすぐに冷蔵庫内がパンパンになってしまい収納が大変。だから常温保存食品もストックできるといいですね。

 

編集部:確かに冷凍食品のストックだけだと停電のときに困りますね。

 

池上:災害時、食品を備蓄していることで余力のある家庭が多いほど、それがその地域の底力にもなります。また、被害がより深刻な場所へ支援を集中させることができます。支援を受けなくても生活できる家庭を増やすことはとても重要です。ですからDSAでは日持ちという観点からもローリングストック法を推進しています。

常温保存食品の選び方と日常使いするためにベストな保存場所は?

編集部:常温保存食品はどこに行けば手に入りますか?

 

池上:みなさんが普段行くスーパーマーケットは、実は常温保存食品だらけなんですよ。もちろん店舗によりますが、たとえば野菜コーナーには野菜の水煮という真空パックになった茹で野菜が置いてあります。豆の煮ものパックなどは冷蔵コーナーに並べられているんですが、実は常温で保存できるものも陳列されています。こうした商品は賞味期限も長めのものが多いです。

 

編集部:冷蔵コーナーに置いてあるものは、冷蔵食品だと思い込んでいました。どこを見て判断すればいいですか?

 

池上:パッケージの裏などに保存方法が記載されているので参考にしてみてください。

 

編集部:なるほど! では、池上さんがおすすめの常温保存食品はありますか?

 

池上:私が良く使うのは、乾燥野菜です。キャベツとか、ニンジン、ほうれん草など種類も豊富ですよ。葉物を生鮮食品で買うとかさばりますが、乾燥野菜は容量も少なくてストックもしやすいです。

 

編集部:乾燥野菜はあまり使ったことがなかったです!

 

池上:私はお味噌汁を作るときなどによく活用しています。野菜を切る手間も必要ありませんし、保存容器に入れてストックしておけば便利。すぐ出来上がりますし。あとは、真空パックの野菜の水煮もいいですね! 豚汁をつくるときに、豚肉を炒めて野菜の水煮を活用すればあっという間。普段の料理に上手に組み合わせて使ってほしいなと思います。

 

編集部:なるほど! 防災食としてだけでなく、忙しい日常生活にもすごく役立ちそうですね! ところで、常温保存できる食材は添加物が多く入っているイメージがあるのですが……

 

池上:そういう心配の声もよく聞きます。たとえば先ほど紹介した乾燥野菜は、野菜を天日干しにするなど昔ながらの製法で作られ添加物は入っていません。あとは、チキンの水煮で常温保存できる真空パックのものがありますが、原材料を見ると、鶏肉、塩だけといったものもあります。ですので、常温品はあやしい! と先入観で敬遠するのではなく、自分が納得できる食品を探してみてください。

 

編集部:イメージ先行でしたが、安心安全な常温保存食品もあるんですね。表示を見て判断しようと思います。

 

池上:あとは、冷蔵庫で保存するのが当たり前と思っている牛乳も、実は1ヶ月以上日持ちするものもあります。

 

編集部:えっ、牛乳が!? 常温保存可能なんですか?

 

池上:常温保存が可能な「ロングライフ牛乳」という製品があり、ネットスーパーなどで手軽に購入できます。菌が繁殖しないように紙容器の内側にアルミ箔が貼られていて、あと滅菌の仕方で常温でも長期保存が可能なんですね。パンも同様に「ロングライフパン」というのがあって、これも保存料を使用しているかというとそうではなく、使用する酵母菌の違いや、カビが発生しないようにアルコールを含ませたシートが入っていて包装フィルムの技術で長持ちするんです。

 

編集部:パンも牛乳も、毎日消費する家庭では特に備えておけば安心ですね!

 

池上:食品を揃えるときは、常温品を使って主食・おかず・副菜・汁物といった定食ができあがるイメージを持っておくといいと思います。

 

編集部:では、食品の収納場所で気を付ける点はありますか?

 

池上:棚の奥底にしまっていては賞味期限切れになるまで使いません。日常的に使ってほしいので、普段食材をしまっておく冷蔵庫のそばとか、調理する場所の近くに置いておくといいですよ。しかも引き出し収納がおすすめ。私は、よく使用する乾燥野菜やツナなどおかずになるものを仕分けして入れています。引き出しにすることで奥まで見渡せるので、どの食材の在庫がなくなっているかストック状況が一目でわかります。

 

編集部:日常で消費しながら備蓄することが何より大事ですものね。

 

池上:住宅事情にもよりますが、収納場所には限りがありますよね。そんな時パッケージにも気を付けてほしいと思います。瓶や缶詰は使って空になってもその容器の大きさは変わりませんよね。処分のことを考えると、買い過ぎない方がいい家庭もあるでしょう。また、袋に入ったラーメンなどはかさばるので、棒状のラーメンや乾麺をストックしておくといいですよ。ストック時にかさばらないもの、というのも選ぶポイントになります。

忙しいワーママこそ活用してほしい!防災食を日常の献立に取り入れて使いながら備える

編集部:忙しいワーママが活用できる、お助け時短メニューがあれば教えていただけますか?

 

池上:楽天レシピのファンページ内に、DSAで公開しているレシピがあります。現在1万2000人が登録されていて、手軽にパッと作れると喜ばれています。ちなみに、現在1位のレシピはサバ缶を使った丼ぶり。サバ缶の汁に調味料と片栗粉を入れてレンジで加熱してとろみをつけてご飯にかけるだけなのですぐにできますよ!

 

編集部:お手軽なのに美味しそう! 池上さんがお気に入りのおすすめレシピはありますか?

 

池上:真空パックのあさりを使って、日本酒と昆布だしを加えた和風ボンゴレは美味しいですよ。あとはツナとお麩の卵とじ丼もフライパン1つでできるので嬉しいです。

 

編集部:すごいです! 本当に日常と非常時の境目がないですね。

 

池上:日常の中でいろいろなレシピを試してみることで、家族の食の好みや苦手な食材を把握できるのもメリットなんです。以前、TBSラジオでDSAの活動を取り上げて下さったのですが、その際に、アナウンサーの小倉弘子さんがサバ缶を使ったバジルマヨソース和えのレシピを活用してくださいました。そこで、「うちの子はサバ缶が苦手だと分かりました! 知れてよかった!」とおっしゃっていました。

 

編集部:大人には美味しい料理でも、子どもは食べないということはよくありますよね。

 

池上:そう。だから、家族全員の好みを「知る」ことが大事なんです。普段使いをしながら、家族にとってホッとする味を見つけて常備してほしいなと思っています。お母さんがじっくり時間をかけて作ったものだけが家族のホッとする味ではないと思います。

 

編集部:家族全員のお気に入りを常備しておけば、もしもの際もホッとする食事が提供できますよね。常温保存食品を活用することで料理のレパートリーも増えそう!

 

池上:家事・育児・仕事と女性の負担がまだ大きいのに、食においては、レトルト食品を活用した時短メニューに手抜き感や罪悪感をもつママは多いんです。でも、自分の体調が悪いときに料理の支度がままならない、下の子が熱を出して買い出しにいけない、時間が足りない働くママにはそういった日常のプチトラブルってたくさん起こり得ると思うんです。

 

編集部:そういうプチトラブルは日常茶飯事ですよね。

 

池上:そんなときに、簡単に調理ができるストック食品があれば乗り切ることができます。食事は楽しい家族団らんの時間でもあると思うので、ささっと用意できる食事法をポジティブにとらえてほしいと思っています。例えば、レトルトカレーの日があっても「ごめんね」と言って出すのではなく、「ご当地カレーの日」とかイベントにして楽しんでほしいんです。ストックがあって助かった! と思えればママの心理的負担も減らせるし家族もハッピーになれると思います。

 

編集部:ママがイチから手作りしている間、子どもがお腹を空かせて待っていないといけないほうがツライですものね。

 

池上:日常のプチトラブル発生は小さな防災訓練だと思って、常温食品を試すチャンスと捉え、スマートに乗り切ってほしいと思います。

 

編集部:ママの時間と心にも余裕が生まれそうですね。貴重なお話をありがとうございました。最後に今後こんな活動をしていきたいなど目標はありますか?

 

池上:DSAの活動の知名度をもっと上げていきたいなと思っています。たとえば今、フードロスが問題になっていますが、備蓄とフードロス問題を組み合わせていくとか。賞味期限が3ヶ月を切ると店頭に並ばない商品もあり、本来まだ食べられる食品なのに廃棄するのはもったいないですよね。その点、日持ちする常温保存食品って、家庭でストックしておけば賞味期限ぎりぎりまで使えますし、乾燥野菜を常備しておけば生鮮食品のように悪くして捨てることもなくなります。

 

編集部:フードロス問題について考えているママも多いと思いますので、そういう点でもこの活動は素敵な取り組みですね。

池上さんからお話を聞いたその日に、普段買い物をしているスーパーへ行ってみました。すると、いつも素通りしていたコーナーに乾燥野菜や野菜の水煮などを発見! パッケージを見てみると「未開封の場合は常温で保存できます」といった表記があり常温保存可能な食品を多く見つけました。「そうか、食事は生鮮食品を中心に作るものという習慣が選択肢を狭めていたんだ」と取材を通じて気付きました。このストック法で備蓄もかねて料理に取り入れていけば、毎日の食事作りがラクになるだけでなく非常時の備えにもなるなんて! 働くママのピンチを乗り切るストック法ぜひ活用していきたいと思いました。

プロフィール

池上 紗織さん

DAILY STOCK ACTION® 実行委員長

一般社団法人日本ソイフードマイスター協会代表理事
2018年、家庭備蓄推進プロジェクトDAILY STOCK ACTION®を発足。実行委員長として活動を続ける。働く二児の母という視点から、実生活に浸透する備蓄食品の在り方を訴求している。

文・インタビュー:北向由紀子

ライター

ラシク 編集部


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