1. トップ
  2. 働き方・生き方
  3. 雑誌編集者から海外ブランドのマーケターに「思いきり」でキャリアの地平を開く
2024.01.19 2024/02/08

雑誌編集者から海外ブランドのマーケターに
「思いきり」でキャリアの地平を開く

FacebookTwitter
雑誌編集者から海外ブランドのマーケターに<br>「思いきり」でキャリアの地平を開く

キャリアチェンジは、今後の人生に大きな影響を与える「ライフイベント」です。岐路に立ったときは判断に悩むこともしばしば。勇気を持って決断の一歩を踏み出すことが、これからを開くきっかけになるかもしれません。

今回インタビューしたのは、イギリスに本社を構えるスポーツ栄養ブランド「MYPROTEIN」(会社名:THG Nutrition Limited)で日本ジェネラルマネージャーとアジアのマーケティング統括を務め、2児の母でもある國生敦子(こくしょう・あつこ)さん。国内雑誌の編集者から世界的ファッションブランドのマーケター、そして現職へと、一見華やかなキャリアを歩んできた彼女ですが、その裏には、堅実な努力といくつかの大きな決断が。これまでの歩みやキャリアにおいて大切にしていること、今後の展望について語っていただきました。

「経験したことのない世界に飛び込んでみよう」
初のキャリアチェンジでフランスへ

國生敦子さん / オンラインで取材しました

私のキャリアの始まりは、国内ファッション雑誌の編集者でした。小さいころからファッションが好きで、雑誌編集者は憧れの仕事でしたから、夢が叶った就職でした。

伝える仕事は確かに楽しかったんです。けれど一方で、編集者として仕事をしているうちに「伝える側よりつくる側に関わってみたい」という思いが大きくなって、徐々にキャリアチェンジを考えるようになりました。

私はそのとき20代後半。「1回目のキャリアチェンジだし、思いきって今まで経験したことのない世界に飛び込んでみよう」と、フランス・パリのビジネススクールのMBA(経営学修士)コースで、マーケティングを学ぶことに決めました。

もともと「ファッションの都・パリ」に興味があったので、大学でフランス語を第二外国語として選択していて、社会人になってからも「いつか役に立つかもしれない」と、夜間学校や通信教育でフランス語と英語を地道に学んでいたんです。それまで温めていた海外、フランスへの挑戦という感じでした。

MBAコースではラグジュアリーマーケティング(高級ブランドが展開する、簡単には手に入らないような憧れ、欲求といった感情を想起させ、ブランドや商品の価値を高める販売戦略のこと)の授業を受けることができて、インターンとして現地で就業もしました。当時、私のビジネススクールのMBAコースには就学しながら働きたい人のための休学制度があって、しかも、インターン制度が盛んなフランスでは正社員並みの責任があるプロジェクトを任されることも。もちろん給与もでますし、やりがいがありました。

渡仏から2年半が経ち、学生ビザの期限に合わせて帰国するタイミングで、世界的ファッションブランドの企業からお声がけいただいて日本で働くことになり、そこではCRM(Customer Relationship Management)とセールスプロモーションの仕事を担いました。

業務内容は、マーケティングによる販売促進やイベント企画、サービス開発などです。「MBAで学んだことがそのまま生かせそう」と思っていたら、案外そうでもなくて。理論では「こう」と思っていても、現場に出るとなかなか理論通りにはいかないものですね。

日本だとおもてなしの文化がありますし、ひと口に「お客様目線で」といっても、そのきめ細かさが違います。当時の上司からは、ヨーロッパで身につけたことを生かしつつ日本のお客様に寄り添う、という視点でマーケティングを学びました。

2度目の海外挑戦はロンドンへ
ウェルビーイングを意識するように

2度目の海外挑戦先であるイギリスのパブでの1枚

2度目の海外挑戦は、社内異動でロンドン本社に移ったときです。英語だけの世界に飛び込むのは初めてで、最初はすごく怖かったです。しかも、ロンドンの人って日本の江戸っ子みたいにしゃべるスピードが早いんですよ。「え、なんて言った?」みたいに、最初の3ヵ月間は話していることが全然分からなくて苦労しました(笑)

そんな難しさも、時間の経過とともにすっかりなくなって、7年が経ったころに再び転職を考え始めました。大きなきっかけは、新型コロナウイルス感染症の流行と出産です。

そのときの仕事はイベントやショーが多くて、休日や夜間も出勤があったりと、プライベートの時間を十分に取ることが難しかったんです。「もっと子どものために時間を取りたい」と転職に前向きではいたものの、具体的な動きには至っていませんでした。

そんな矢先に、コロナ禍で第2子を出産したのですが、産後、自分のからだがどんどんボロボロになっていく中で、健康やプライベートをないがしろにしていたことに気がついたんです。「ファッションもラグジュアリーも、身につける人が健康であるからこそ輝くんだ」って。

そういう経緯があって、人のからだに寄り添うような仕事をしたいと、健康食品やウェルビーイングの分野を意識し始めました。

プロテインに興味を持ったのも、出産後に友人から勧めてもらったことがきっかけでした。コロナ禍でeコマースが注目されていましたし、さまざまなリサーチを重ねて、結果、デジタルマーケティングの経験を積むためにMYPROTEINに転職しました。

日本人のライフスタイルをサポートするために活動
身につけてきたスキルが“今”に生きている

2022年9月の表参道ポップアップイベントにて

MYPROTEINでは、「さまざまなライフスタイルを送る人に向けて、心身の健康をいつでもサポートする」をテーマに事業を展開しています。世界112か国以上でプロテインやスポーツグッズを販売していて、ボディビルダーからスポーツ愛好者まで幅広く、日本でもたくさんの方に愛用されているブランドです。

一方で、たんぱく質の摂取が重要となる、女性のお客様をもっと増やしたいと思っています。私自身の経験から、「男性だけでなく女性にも広く使用してほしい」という思いを持ちながら活動しています。

職場の仲間たちは多国籍で、今なんのサプリを飲んでるか情報交換したり、帰りにみんなで筋トレに行ったりするような、大のトレーニング好きばかりです(笑)私はその中で、日本チームのジェネラルマネージャー兼アジアのマーケティング統括を担っています。

日本チームには10人以上のメンバーがいますが、マネージャーというポジションは、一人ひとりの役割やキャリアビジョンを踏まえて、個々に合ったマネジメントをする必要があります。責任の大きい仕事ですが、それ以上に楽しいですね。MYPROTEINにはポジティブなメンバーがそろっていますし、仕事をしながら元気づけられたり、学ばせてもらうことがたくさんあります。

マーケティング統括の役割は、アジア地域でどんな味が好まれているのかなどの市場調査をして、商品開発や販促活動につなげることです。私はキャリアの中でCRMを中心に経験を積んできましたし、最初の編集者としての仕事も「読者はどんなことを知りたいか」という顧客視点が重要でした。これまで経験してきたことが、「今」の仕事に生きているんです。

風向きを変えたいときは「口に出してみる」

有酸素運動として最近注目を浴びてるときいてボクシングを体験

MYPROTEINの本社はイギリスで、私自身、ロンドンに住んで10年になります。パートナーと娘2人の4人暮らしで、日本人が多く住んでいるエリアが近かったり、日系のスーパーや飲食店なんかもあったりして住みやすい地域です。

こうやって自身のキャリアについて振り返ってみると、やりたいことをずっと口にしてきたから、それが実現しているような気がします。

風向きを自分で変えられないときには周りに言っていくことで、逆に助けてもらって流れが変わるみたいなこともあって。ファッションに興味があるって言っていたら、「こういう企業があるよ」って紹介してもらえたり、MYPROTEINに就職したのだって、友達がプロテインを勧めてくれたのが最初のきっかけですからね。

「口に出してみる」の姿勢は大切だと思いますし、性格的にも「有言実行」が好きです。

今後の個人的な目標としては、せっかくグローバル企業で働いているので、より視野を広げながらデジタルマーケティングのスキルを伸ばしたいと思っています。その中で、自分自身の可能性を広げられたらうれしいです。

何より、MYPROTEINを通して、今以上に日本人のライフスタイルを支えたい。そして、MYPROTEINがより愛されるブランドになるように、大切に育てていきたいです。

 

ライター

紺野天地

ライター、文筆家

この記事をシェアする

FacebookTwitter