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2019.07.29 2023/05/20

すき間時間で働く「販売員版ウーバー」MESHWell
ネット時代に求められる接客スキルと働き方とは?【後編】

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すき間時間で働く「販売員版ウーバー」MESHWell<br>ネット時代に求められる接客スキルと働き方とは?【後編】

すき間時間を利用して「2〜3時間だけ働きたい!」という働き手と、慢性的な人手不足が続いている販売現場をつなぐマッチングサービスMESHWell。これまでのアパレル業界にはなかった働き方で、昨秋ローンチされて着実に成果をあげていらっしゃいます。前編では代表の窪田光平さんと奥様の伊藤ゆりさんに事業が誕生した経緯を伺いました。後編ではMESHWellの接客で大事にしていることや、実際にお店に立っている伊藤さんのリアルなお話を聞いてまいりました。


前編はコチラ

店舗に買いに来られる方への接客には…… “共感”と“経験”で

編集部:手元でポチッと押せばなんでも買えてしまう時代に、わざわざお店に買いに行く。このお客様の潜在的なニーズはどのようにお考えでしょうか。

 

伊藤ゆりさん(以下、敬称略。伊藤): ECと店舗との違いは「自分では気づかない、新しい出会い」と考えています。私もアパレル販売のプロではないので、いつもタレントとしてはいる時は「一緒に探していく」と言うスタンスですから、必ずしも商品知識がマストではないのです。窪田は以前から「お客様が求めている接客とは”共感”と”経験”だ」と常々考えていました。そこに信念があったので、このMESHWellのスタイルが確立できたのです。

 

編集部:確かに、ネットで買っても共感してくれませんね。経験と言うのは?

 

伊藤:ママ達に子ども服を担当してもらうと、ものすごく力を発揮してくれます。出産祝いなど贈答用で買われる方って、実際に何が必要かあまりわからないで店頭に来られますよね。そういった時に例えば「みんなが使えるおくるみでしたらベビーカーの時に冷房よけにも使えますし、オムツ替えの時に下にも敷けるし、一枚あれば何かと便利ですよ」これらは商品知識ではなく、彼女たちの経験からくる情報ですよね。的確なアドバイスばかり!と人事の方々がいつも驚かれます。

 

窪田:その人それぞれの経験から伝え、情報だけでもその日持って帰ってもらえればそれでOK。その結果、購入につながれば良いだけのことですから。ここでも「自分ができることで誰かをハッピーにする」という、ボストンで刺激を受けたコミュニティの感覚を取り入れているのです

 

編集部:なるほど。だからこそ“タレント”という呼び名なのですね。

 

窪田:そうなのです!才能がある人、情熱がある人という意味で、販売員と呼ばずにタレントとしています。あと、自分自身で価値を決めて、自分で仕事を引き受ける。自己責任はしっかり持った上で助け合う、ここにも海外での影響が価値観としてあります。さらに売り上げが取れればもっと自分の価値を上げられるので、自分のスキルと経験を生かしながら自己実現につなげて行ってもらいたいです。

 

伊藤:接客業の人は”主体的”にお客様に何かを届けたい、という方がほとんどです。タレントさんの声としても「自分も楽しかった」「リフレッシュできた」と言うのがほとんど。例えば、子育て中で自分の時間は月に1〜2回だけしか取れないけど、働くことで少し心に余裕が作れますよね。自分が認められるから、相手を認められる。子育てにも良いエネルギーにもなります。

 

編集部:それに、一度長くブランクを空けてしまうと、復帰するのにハードルが上がってしまいますよね。

 

伊藤:そうなのです。今は無理でも「そろそろ(正社員)いけそうだな」って思えた時に就職すれば良いので、キャリアを続けるためにも上手にMESHWellを利用してもらえればと。

売り上げを立てるよりも、自分のできることで接客を楽しむこと!

編集部:実際にゆりさんはお店に立たれていますが、初めてのお店でいきなり店頭に立つのって、正直わからないことだらけで…… 緊張しませんか?

 

伊藤:お店としても忙しい時間帯やスタッフが手薄な時にオファーがあるので、まずは一人でも多くのお客様に「こんにちは」「いらっしゃいませ」を伝えるところからはじめています。もちろん、初めてのお店だとできないことやわからないことはたくさんあります。ただ、お店の方はそれを理解してMESHWellを利用してくださっているので、そこはスタッフに尋ねるなり頼るなりします。そのことを「申し訳ない」「できない」とマイナスに捉えないで。もし私がいなければそのお客さんは対応できなかったわけですから、とにかくお客様との時間を楽しむようにしています。最初の10分ぐらいですかね、緊張しているのは。

 

編集部:接客する側も楽しむことが大切なのですね! そう聞くと、なんだか楽しそうですし、自分でもできそうな気がして来ました(笑) 実際に登録される方はどんな方でしょうか?

 

窪田:やはり女性のアパレル経験のある方が多いですが未経験の方もいらっしゃいます。主婦の方はもちろん、子育て中だったり、今は違う仕事に転職していたり、妊活をするのに立ち仕事を減らしていたり、Wワークの方も多くいらっしゃいます。

 

伊藤:私も含めて、アパレルの未経験で活躍している方も多いです。誰かのために役に立ちたい、という思いのもとお仕事されてきた方には、ぜひチャレンジしてほしいです。自分のスキルと経験を正しく評価してもらい、さらに売り上げが取れればもっと報酬もあげていけるので、自己実現につなげて言ってもらいたいです。

 

編集部:ちなみに、業務時間は何時間ぐらいが多いですか?

 

窪田:平均は3時間40分です。登録すれば自分のアカウントに業務日時と場所、報酬をトピックと呼ぶカードに記載して登録するのですが、2~4時間の設定がほとんどです。お店側からのニーズが高い時間帯は、スタッフが休憩時間に入る平日の11時〜14時と、お仕事帰り平日の夕方17時以降、あとは週末ですね。

 

編集部:1日8時間店頭に立っているより、そのぐらい短期決戦の方が結果も出やすいでしょうね。

 

窪田:そうなのです。ただ、僕らは「結果を出してくださいね」とは絶対に言いませんが、本人達が「自分だったらどういう接客をされたいか」ということを考えて接客されているので、自ずとついてきます。実際、タレントは店舗スタッフより計算上3割ほど販売効率が高いという実証データも取れています。

 

編集部:高いですね! それにしても、自分で値段をつけるのって難しくないですか?

 

窪田:最初は参考データをお渡ししていますが、みなさんすぐに報酬を上げていかれます。と言うのも、販売が成約した時に売り上げデータを取っているのですが、売り上げがどんどん立ってきたら、報酬を上げていいとアドバイスしています。現在、報酬が高い方で時給換算3500円、平均でも2200円ぐらいになっていますね。

 

編集部:マッチング後はどのような評価を?

 

窪田:はい。他のタレントさんやお店にオススメしたいかどうか、と言う判断でお互いが10段階評価します。売り上げだけで決まる評価でないので、売り上げが立たなかったとしても、評価の高い方もいますよ。気に入ってもらえると、同じお店からリピートもありますし、自分から直接お店にオファーすることもできます。

 

編集部:なるほど。ちなみにマッチング率はどのくらいですか?

 

窪田:現状、7割ぐらいですが、まだまだ成約率は上がっています。何度も同じお店に入る方もいれば、色々なお店を試してみて好きなお店を見つける方も。あと、オファーがあったところは全部行く方もいらっしゃいます。

 

編集部:色々試したい人もいれば、ずっと好きなお店で働きたい人もいて、そこも各々自由度高くて良いですね!今後の展開を教えてください。

 

窪田:事業の方は東京、神奈川、大阪でまずサービスを成長させるためにも、大手人材サービスとの提携を予定しています。年々、人材が確保できなくなるのは確実ですから、タレントをどんどん増やしてマッチング数も増やしていきたいです。

 

伊藤:私個人としては子育てをしながら、ヨガも教えながら、お店でタレントとして販売もしながら、MESHWellの中の仕事もしていますが、このバランスがまた変化する時がくると思います。そのあたりは柔軟でありたいな、と思っています。

 

編集部:ご夫婦では?

 

窪田:僕たちの野望があって、幸い娘も向こうで生まれたので、また海外に戻りたいのです。向こうのコミュニティでお世話になった分、自分もたちも日本で社会に貢献できたら、そのあとは海外に戻って(今、犠牲にしている)二人の時間を取り戻したいのです。それに、まだ見えてない世界があると思うのでそこをまた見に行きたいと思います。

 

編集部:なんて素敵なビジョン! これからも注目しています。お忙しい中、ありがとうございました。

MESHWellとは、素材のメッシュのように編み込むという単語と、よくするというWellを合わせた造語。窪田さんの「働き手のすき間時間と、店が必要としている時間や人材をうまく編み込ませたい」という思いが込められています。

意外にもアパレル業界は保守的で「商品知識がないのに売れるわけがない」「接客マナー講習は最低限受けてほしい」など、すき間時間で社員以外のスタッフが働くことに対して理解されない部分があったそうですが、蓋を開けてみると…… タレントさんたちのこの快進撃。
こうして、固定観念にとらわれず「自分のできること」で少しずつ補いあえたら、窪田さんの思い描く「うまく編み込められた柔らかいメッシュ」の様に、優しく包み込まれる社会になる気がしました。

プロフィール

窪田光平さん

株式会社メッシュウェル 代表取締役

東京都出身。学生時代からセレクトショップで店頭販売と仕入業務に積極的に従事。大学卒業後、丸紅株式会社にてアパレル製品貿易及び生産業務に携わる。株式会社ベイクルーズに転職後、EC事業開発、経営企画、新規ブランド開発(CITYSHOP・2015)を経験。2018年、米国BABSON COLLEGEにてMBA修了し、起業。36歳既婚、一児の父。趣味は料理、マラソン、トライアスロン。

伊藤ゆりさん

株式会社メッシュウェル CCO

Lilyyoga主宰yogaインストラクター、株式会社メッシュウェル CCO、フリーランス販売員。20代営業としてウェディングプランナー、英会話学校マネージャーなどを経験、営業成績1位の実績も収める、その後、ヨガインストラクターとしてフリーで活動しながら、育児をしながらこれまでの経験を生かした、ギグワーカーと言う新しい働き方を体現、提案したいと考えている。趣味はランニング、読書。

文・インタビュー:飯田りえ

ライター

飯田りえ

ライター

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