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2019.07.22 2023/05/20

「3時間だけ働く!」が可能になる
アパレル販売専用マッチングサービスMESHWell【前編】

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「3時間だけ働く!」が可能になる<br>アパレル販売専用マッチングサービスMESHWell【前編】

「アパレル販売員版ウーバー」と呼び名が高いMESHWell(メッシュウェエル)をご存知でしょうか。
すき間時間を利用して「2〜3時間だけ働きたい!」という働き手のニーズと、慢性的な人手不足が続いているアパレル業界の販売現場をつなぐマッチングサービス。幼稚園や学校に行っている間だけ働きたい元販売員ママや、Wワークしたい女性層にも届くと、これまでのアパレル業界にはない働き方で昨秋ローンチされて以降、注目を集めています。

このサービスを立ち上げたのが株式会社ベイクルーズの元取締役で、創業者のご子息である窪田光平さんと、奥様の伊藤ゆりさん。
聞けば、最初はベイクルーズの取締役時代にMBA取得を目指し夫婦で渡米。窪田さんは2年間ボストンのバブソン大学経営大学院へ通い、帰国後、ベイクルーズから独立して起業に至ったそう。その間、伊藤さんも語学とヨガインストラクターとしてのスキルを磨きつつ、長女をボストン滞在中にご出産。帰国後もヨガインストラクター、MESHWellの取締役、MESHWellでタレント(販売員の呼称)という、複数の肩書きを持つパラレルワークママ。

……とLAXIC的には、すき間時間で働けるMESHWellのサービスはもちろん、夫婦で渡米生活、さらには伊藤さんの働き方についても興味津々。そこで、お二人にインタビューを敢行し、転機となったボストン留学でどのようにしてMESHWellが誕生したのか、海外生活で受けた影響など、前後編でお伝えいたします。

偶然か、必然か…… 起業家育成に特化したビジネススクールへ

編集部:これまでの道のりと、MESHWellが誕生した経緯についてお聞かせください。

 

MESHWell代表・窪田光平(以下、敬称略。窪田):家業がアパレルだったので、小さい頃からファッションが非常に身近にありました。接客で得たバイト代は全て洋服に消えていった中、漠然と「自分もこの道に進みたいな」と思っていました。大学卒業後、海外で仕事をしたい思いもあったので、商社で6年間アパレルの仕事を。その後、ベイクルーズに戻って…… ちょうど今から3年前の2016年7月に渡米しました。当初はMBA修了後も、ベイクルーズに戻る予定だったのですが、学んだ学校がアントレプレナーシップに特化したバブソンというビジネススクール。そこですっかり刺激されてしまいました(笑)

 

編集部:あえて起業家精神に強い学校を選んだのですか?

 

窪田:そこは偶然でもあり、必然でもあったのですが…… 自分の特徴にあうスクールを紹介してもらった時に、ファミリービジネスの専門性にも長けている学校だったので受けてみようと。MBAランキングでは中堅ですが、アントレプレナーシップ部門ではダントツトップ。聞けば、トヨタの豊田章男社長はじめ、日本からも名だたる卒業生が数多くいらっしゃいました。

 

伊藤ゆりさん(以下、敬称略。伊藤):スコア云々より、彼にとても合っている学校だと思いました。アットホームな規模感とか、落ち着くところに落ち着いたな、と思いました。

 

編集部:その頃、伊藤さんもボストンへ?

 

伊藤:はい、結婚して1年ぐらいの時でした。家族として支えたい思いは当然ありましたし、私もヨガのインストラクターとしてスキルアップしたかったので、チャンスがあるなら…… と同行しました。語学を集中的に学びつつ、現地のヨガスタジオで改めて勉強したり、パーソナルトレーナーの資格を取得したり。お互い学びの時間でしたので、仕事をしている時とは違う”心のスペース”があり、相手のことをよく知れた貴重な時間になりました。

 

編集部:とても贅沢な時間ですね! その2年間の学びの中でアイデアはどのように形になりましたか?

 

窪田:長くアパレル業界にいたからこそ「この業界の課題解決したい」という思いはずっとありました。試行錯誤を繰り返しながら、MESHWellをゆっくり作り上げ、最終的に帰国した昨年5月に形になりました。

サブスク、シェアエコ、コミュニティ…… 一歩、先をゆく考え方へシフト

編集部:今から3年前というと現地ではウーバーなどのシェアリングエコノミーが浸透してきたころですか?

 

窪田:浸透しきっていて強豪とのバトルが始まっていた。あと、身近に使っていたのがサブスクですね。中でも有名シェフのレシピが付いたミールキットが毎週月額50ドル届く「ブルーエプロン」をよく利用していました。食の嗜好も選べたり、1クリックでスキップできたり、消費者側にも自由に選べる権限があるのも新鮮でした。

 

編集部:日本でもオイシックスさんがされていますね。

 

窪田:そうですね。アメリカだと買い物に行くのに車が必要ですし、パッケージの量が大きすぎて一人や二人で食べきれないで腐らせてしまう。エコ観点からも「フードロスをどうやって減らす?」という課題意識からミールキットが当時流行っていました。

 

伊藤:あと働く女性も多く、産後6週間で復帰するとか稀じゃありません。妊娠中にナニーを見つけておく、日常的にミールキットサービスを利用する…… こういった「頼ることを悪く思わない」価値観が社会に浸透しています。そこが日本との大きな違いでしょうか。子どもを産むことが大きな変化であると同時に、大きな変化ではないという捉え方なのでしょう。出産した時にすごく強く感じました。

 

窪田:ボストンってエコシステムが整っているエリアで、社会全体としてほかの人に対して興味が高い。僕たちも強固なコミュニティのおかげで、すごく助けられました。自らも連絡先をどんどん公開し「頼ってきてくれる人に対しては喜んで手を差し伸べましょう」という感覚です。「(コミュニティが日本に)あったらもっと世の中もっと良くなるよね」って二人で話していました。

 

伊藤:一番印象的だったのが、長女を産んで一週間後、夫婦でスーパーへ新生児用のオムツを買いに行った時のこと。レジのおばさまが「赤ちゃんどうしてるの?」「母が家で見てくれています」「二人なのね! じゃあ、絶対にコーヒーを飲んで帰りなさい。あなたたちの時間が大事なのよ!」って隣の主人にも念押ししてくれて。産後初めての外出で、その言葉はすごく染みましたし、社会全体が持っている価値観として、とても嬉しかったです。

 

編集部:すごくいい話! しかし、日本だとあまり考えられませんね……

 

伊藤:そうですね。私もボストンで生活してから、「頼りたい」という意思表示がしやすくなりました。日本では苦手意識がありましたが、「弱さを出せる強さを持つ」価値観にシフトできました。海外でマイノリティになり、そこで助け合うことを経験したからだと思います。

 

窪田:この事業を通じてもコミュニティへの貢献という思いを大事にしたいと思いました。業界への責任感は増しましたし、よりお客様への満足感に繋がるようなサービスへ、との思いが強くなったと思います。

帰国後、すぐに起業。そして初回のマッチングで起きた大事件

編集部:2018年に帰国されてから、起業に至るまではどのくらいかかったのでしょうか?

 

窪田:戻ってくる半年前に構想がまとまってきたので、帰国までにプロトタイプを作ろうと思いすでに発注をかけていました。3月ぐらいにアルファ版が完成して、日本に戻った時にベイクルーズに提案し、独立することに。7月には会社の登記が終わり、8月からテスト開始しました。

 

編集部:5月に帰国ですよね! 8月からテストスタートって相当早い。

 

窪田:これまでの人脈もありましたし、熱意を買ってくださったメーカーさんがいてくださったのでテストが実現しました。業界内にはこれまでにない働き方なので、プロトタイプを作っておいてよかったです。8月は大手スポーツメーカーさんのポップアップストアで、10月にはTOMORROWLANDさんと常設店でのマッチングが開始しました。

 

編集部:最初がTOMORROWLANDとは!

 

窪田:MBA在学時に人事の方向けにアンケートを取らせて頂いたのですが、そのアンケートのことを覚えて下さっていて、話はトントン拍子に進みました。記念すべき、初回のマッチングは平日の18時〜20時の2時間。終了間際に人事部長から連絡があり「あの方は何者ですか? いきなり2時間で沢山売り上げましたよ!」と歓喜の声で報告があったのです!

 

編集部:え! すごい!

 

窪田:通常、僕の販売経験から言うと、秋冬シーズンは1日8時間働いて15万ぐらい売れたら良い方。それが2時間で1日分以上、しかもその女性は、家具の販売経験はありましたが、アパレルの販売経験はなかったのです。商品情報も何も知らない状態で、とにかく目の前にいるお客様に「こんにちは」とお声かけしようと、説明会で僕らがお伝えしていることを、素直に行動してくださったのです。良い意味で仮説を実証してくれました。

 

編集部:ちなみに説明会ではどんなお話を?

 

窪田:MESHWellのビジョンである「お客様のお買い物体験を楽しくする」ために、このマッチングサービスがあるとお話しします。そして「売らないといけない」と言うプレッシャーだけは持たないでもらいたい、と。「お客様のために」という気持ちを一番大事に楽しい時間を過ごしてもらう、その結果としてその日買ってくれたらベストですが、あくまで結果です、とお伝えしています。

 

編集部:しかし、現場の人が一番驚いたでしょうね……!

 

伊藤:接客自体を楽しんでいるタレントさんの姿を見て「スタッフの良い刺激にもなりました」と言うお声を頂いています。この日をきっかけに「次もお願いしよう」と言う流れを汲むことができました。

 

編集部:本当に、お互いにとってもWIN WINの関係なのですね!

後編に続く)

これまでアパレル業界にいて問題視していたことを、ボストンでの様々な体験と学びを通じて誕生したMESHWell。実際に動き出して半年ほどですが、「すき間時間で楽しく働く」と「買い物体験を楽しくする」が確実に良い相乗効果を生み出しています。そして、ボストン生活でお二人が改めて体感した「コミュニティ」という観点を、MESHWellに取り入れているのが、より一層支持を受けているのだと感じました。それにしてもボストン留学時代はとても充実していて羨ましい限り……! 後編は実際に販売現場で働くMESHWellの意義や実際の働き方などをお届けいたします。

プロフィール

窪田光平さん

株式会社メッシュウェル 代表取締役

東京都出身。学生時代からセレクトショップで店頭販売と仕入業務に積極的に従事。大学卒業後、丸紅株式会社にてアパレル製品貿易及び生産業務に携わる。株式会社ベイクルーズに転職後、EC事業開発、経営企画、新規ブランド開発(CITYSHOP・2015)を経験。2018年、米国BABSON COLLEGEにてMBA修了し、起業。36歳既婚、一児の父。趣味は料理、マラソン、トライアスロン。

伊藤ゆりさん

株式会社メッシュウェル CCO

Lilyyoga主宰yogaインストラクター、株式会社メッシュウェル CCO、フリーランス販売員。20代営業としてウェディングプランナー、英会話学校マネージャーなどを経験、営業成績1位の実績も収める、その後、ヨガインストラクターとしてフリーで活動しながら、育児をしながらこれまでの経験を生かした、ギグワーカーと言う新しい働き方を体現、提案したいと考えている。趣味はランニング、読書。

文・インタビュー:飯田りえ

ライター

飯田りえ

ライター

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