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2022.11.30 2023/03/01

“企業型” が普及のカギに?
テレワークの課題とともに考える、ワーケーションのこれから <前編>

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“企業型” が普及のカギに?<br>テレワークの課題とともに考える、ワーケーションのこれから <前編>

ラシク編集長の小山です。今回は、「ワーケーションの“これまで”と“これから”」というテーマでコラムを書いてみました。テレワーク(リモートワーク)の普及はもちろん、イノベーション創出や地域創生の文脈も重なり、新しい働き方としてますます注目されるワーケーション。私も子連れで楽しむひとりですが、ラシクでも昨年からワーケーションにまつわる人や企業を取材し、その可能性や課題に触れてきました。

ワーケーションは、「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語ですが、実際意味するところはさまざまで、「休暇」という認識のもと「休み方」に注目するケースもあれば、チーム力や創造力を高める「働き方」として捉えるケースもあります。ラシクの取材を通して私が感じるのは、どちらかというと後者の視点。取り組み方次第では生活と仕事の両面に好影響をもたらすことができる。——これがワーケーションの醍醐味であり、これからの組織にとって大きなチャンス、可能性になると感じています。

働き方やライフスタイルの多様化とともに個人主体でじわじわ浸透

日本におけるワーケーション

日本でインターネット上に「ワーケーション」という言葉が出てきたのは、2010年ごろと言われています。意外と前なんだなぁ……というのが私の感想ですが、みなさんはどうお感じになるでしょうか。私は2011年に新卒で入社した出版社を退職しフリーランスになったのですが、ライター・編集者として駆け出しだったそのころ、ちょうど「ノマド」という言葉が注目されていました。私自身もコワーキングオフィスやカフェを移動しながら仕事をしていたので、場所にとらわれない働き方がもたらす可能性を感じはじめていました。

そんな私が「ワーケーション」という言葉を知ったのは、2017年。当時4歳だった息子と2人で1週間LAを旅し、帰ってきたタイミングでした。——あぁ、これってワーケーションだったんだ! 初めて聞くその新鮮な語調に合点がいったのを覚えています。

 

LAでの初めての親子ワーケーション。母(私)はホテルで細切れワーク、息子は現地の日系幼稚園を体験しました。

 

個人的なワーケーションを通して「働く」を切り拓いてきた人たち

フリーランサーの仲間の中にも、以前からワーケーションを実践していた方々がいましたが、これまでの取材を通し、中でも特に印象的だったのが、子育てと仕事の両立に悩む中でワーケーションに活路を見出した母親たちの姿でした。

「親子deワーケーション」を主宰する株式会社ソトエ代表の児玉真悠子さんはラシクの取材の中で、「ワーケーションは仕事と育児をトレードオフにしない、これからの働き方の選択肢」と話してくださいました。児玉さんは現在、子どもにも親にも、そして受け入れ先の地域にもメリットがある“三方良し”のワーケーションを推進すべく事業を運営されています。

毎日新聞で記者をしながら「親子ワーケーション」の社内新規事業を行う今村茜さんもまた、早くからワーケーションを実践してきたひとりです。ラシクの取材の中で、「低学年の娘を夏休み中ずっと学童に通わせることに罪悪感があった」という本音とともに、「子どもたちに多様な経験をさせてあげたいと願っていた」と話してくださいました。

組織に属している・いないに関わらず、場所を選ばず比較的自分の裁量で仕事ができる環境にいた人(もしくはその環境をつくった人)は自主的なワーケーションにチャレンジしやすかったのでしょう。新しい働き方への可能性とともに実践されてきた方の体験談はとても勉強になりました。

テレワークの普及で企業における働き方が一変

コロナ禍を境に急速に広がったテレワーク

旅先で仕事をするワーケーションは、そもそもテレワークできることが前提です。私の主観になりますが、コロナ禍前…特に10年ほど前は、テレワークというと「組織に身を置かない人の特別な働き方」といった印象がありました。企業でテレワークを導入している場合も、「子育てや介護などで出社ができない人のための特別な措置」という捉えられ方が多く、どこか限定的でネガディブな印象でした。

ところが、コロナ禍を機に状況は一変。必ずしも出社が必須ではない職種や仕事が明らかになったこともあり、テレワークを導入する企業が急激に増えました。日本生産性本部のデータ(※1)によると、2020年の全国のテレワーク実施率は約20%で前年の2倍に。それまで馴染みがなかった人もテレワークを経験し、“みんなのもの”になってきたことで、この働き方についての捉え方も変わってきました。

(※1)日本生産性本部 働く人の意識調査

大都市圏を中心に、新しい業務スタイルが定着

コロナの落ち着きとともに、地方企業を中心に出社勤務に戻る傾向が見られるなど、今年のテレワーク実施率は全体で3%ほど減りました。ただし、大都市圏と地方圏では実施率に大きな差があり、東京都23区では55%を超えています。「完全在宅勤務」とはいかないまでも、出社とテレワークをハイブリッドで行う企業も珍しくなく、大都市圏を中心に「新しい業務スタイル」として着実に浸透してきています。ラシク編集部はもちろん、運営会社であるノヴィータも2年前から在宅勤務体制になり、「出社の際は要申請」というスタイルがすっかり定着しました。テレワーク下で課題になりがちなコミュニケーション不足も、チャットを活用するなど、トライアンドエラーを重ねながら状況に応じたチームビルディングを意識してきました。

東京都が実施する「TOKYOテレワークアワード(※2)」について、ラシクでは第1回受賞企業にお声がけしオンライン座談会を開催。テレワークをうまく活用し事業を加速させる各社からさまざまな事例を聞くことができました。オフィスを縮小した企業や、社員に対し「原則出社禁止」という強いメッセージを発信し働き方改革を加速させた企業など、コロナ禍を事業加速のチャンスと捉える姿がとても印象的でした。

テレワークをはじめとした多様な働き方の選択肢はもちろん、福利厚生や人材活用に注力している企業ほどワーケーションに対する注目度や期待も高いように感じています。

後編ではコロナ禍以降に見られるワーケーションの特徴と今後について考えてみたいと思います。

(※2)TOKYOテレワークアワード

ライター

小山佐知子

ラシク編集部  旧編集長

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