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2024.03.06 2024/03/05

働きやすいのに辞める「ホワイト離職」。
若手の育成に企業ができること

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働きやすいのに辞める「ホワイト離職」。<br>若手の育成に企業ができること

厚生労働省の調査によると、大卒の新規就職者の離職率は1年目で10.6%、3年目までは32.3%に達しています。これまでも入社数年で離職するケースはあったものの、若手社員が会社を辞める理由は変化しています。かつては待遇が悪い、長時間労働など、いわゆるブラックな環境に嫌気が差していたのですが、近年では一見すると恵まれた環境を理由として辞める「ホワイト離職」をする若手社員が増えています。この記事では、ホワイト離職が起こる理由や若手社員の仕事観、企業ができることなどについて考察します。

※新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)

ホワイトな職場とは

ホワイトな職場とは「若手社員の能力や仕事への期待に対して仕事の負荷が少なく、やりがいや成長を感じづらい職場」を指します。

たとえば、責任を求められない仕事をする、挑戦する機会がない、褒められるだけでフィードバックがないといったことが該当します。上司からすれば若手社員に配慮をしたのでしょうが、若手はそのような状況に不満を感じて退職してしまうのです。

ホワイトな職場が生まれた背景

ホワイトな職場はなぜ生まれるのでしょうか。それには、ブラック企業への社会的な関心と働き方改革が深く関係しています。2013年には「ブラック企業」が流行語大賞候補に選ばれ、「社員を不当に酷使する企業を許さない」との考えが政府を動かしました。

その後、2019年に「働き方改革関連法」(以下、働き方改革)が施行され、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得義務化などの法律化が進みました。「ワークライフバランス」なる言葉を見聞きする機会も増え、仕事一辺倒の生き方ではなく、仕事とプライベートのバランスを取ろうとの考えが広がったのです。

働き方改革が目指すものは、ホワイトな職場?

果たして、働き方改革が目指すのはホワイトな職場なのでしょうか。

厚生労働省のサイトに書かれた内容を要約すると、働き方改革の目的は、「個人の働きやすさの実現を目指すこと」とあります。

個人が抱える事情に関わらず、働き方を選択できる環境を作ることが働き方改革の目的です。決して、ゆるい職場、社員にきついことを一切させない環境を目指すことがゴールではないのです。

管理職は「自分の頃と同じように育てられない」と悩み抱える

働く環境が良くなるにつれて、企業は「社員の教育」という壁に直面しています。なぜなら、管理職や上司など若手社員を教育する立場の社員は、自分たちが教えられた方法とは別の方法で若手を育てる必要に迫られているからです。日本ではプレイングマネージャーが多いため、部下の育成に時間を割きづらく、「若手が定着しない」「育たない」といった悩みを抱える管理職も少なくありません。

リクルートワークス研究所の調査(※)では、管理職から「自分の頃と同じように育てられない」「若手の成長にとって十分な業務経験や機会が提供されていない」「若手育成と労働環境改善の両立が難しい」といった回答が挙がっています。

(※) 大手企業管理職の若手育成に関する定量調査報告書 

ホワイトな職場は何が問題か

ホワイトな職場による問題点を会社・若手社員双方の目線で簡潔にまとめてみます。

<会社目線>

  • 成長志向を持った社員を歓迎し、優秀な社員とみなすことが多い。
  • 「ホワイトすぎる職場」によって優秀な社員ほど退職を考え、成長への意欲が弱い社員が残るという事態に陥る
  • 教育を担当する社員の負担が増してしまう

<社員目線>

  • 「ホワイトすぎる職場」は、負荷が少なく職場環境は良い一方で、仕事を通じて成長を感じづらく満足できなくなる
  • 若手社員は、この先40〜50年働くこととなる。VUCAの時代で先行きに不安を感じており、成長できない、スキルが身に付かないことにストレスを感じる
  • 職歴が浅くあまり成長をしない状態で辞めてしまうと、転職先の選択肢が狭まる。また、本人の今後のキャリアへの影響も心配

若手社員を理解することから始める

新入社員や若手社員のホワイト離職を防ぐために企業ができることは何なのでしょうか?まず、若手社員が仕事に対してどのような価値観を持っているかを知ることが大切です。

Z世代は物事の意味と価値を重視する傾向が高い

現在の若手社員の多くは、1990年代中盤以降に生まれています。その世代の人を「Z世代」と呼びます。彼らは幼少期よりネット環境に触れたデジタルネイティブで、「モノ(商品)」よりも「コト(サービス・経験)」を重視する傾向にあります。

リクルートマネージメントソリューションズ 新入社員意識調査2023 より

リクルートマネージメントソリューションズは今年6月、「新入社員意識調査2023」を発表し、若手社員の仕事上の価値観の傾向をまとめています。

<働くうえで大切にしたいこと>

高ポイント「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」

低ポイント「何事も率先して真剣に取り組むこと」

<仕事をするうえで重視したいこと>

高ポイント「成長」と「貢献」

低ポイント「競争」

<上司に期待すること>

高ポイント「相手の意見や考え方に耳を傾けること」

低ポイント「言うべきことは言い、厳しく指導すること」

<得意なスタンス>

高ポイント「協働」 と「相手基準」

低ポイント「試行」と「自発」

若手社員はスキルを身に付けたい、成長をしたいと思う一方で、何でもやってみる、ライバルと切磋琢磨して実力をつけたいとの欲求が低いことが読み取れます。

自分がやることに意味を求め、自分には合わない、納得ができないと感じることには消極的な態度を取る傾向があるわけです。

リクルートマネージメントソリューションズは調査の中で、「新入社員が物事の意味や価値を重視する傾向にあるため、『1位になって表彰される』 などの外発的動機付けよりも、『成長実感』や『貢献実感』のような内発的動機付けを必要としていることが背景にあると考えられる」と理由を分析しています。

若手社員をどう育成すればいいか

若手の傾向を掴んだうえで、企業が取るべき行動について見ていきましょう。

「働きやすさ」に加えて「理想のキャリアの実現しやすさ」にも意識を向ける

若手社員を教育する際に参考となる考え方のひとつに「キャリア安全性」があります。これは「職場で働き続けることで、理想のキャリアを手に入れられると思える状態」のことで、リクルートワークス研究所主任研究員の古屋星斗氏が提唱しました。

企業は、職場環境や待遇といった「働きやすさ」に加え、「理想のキャリアの実現しやすさ」にも意識を向ける必要がありそうです。

上司やマネージャーに育成を任せきりではなく、全社で取り組む

Z世代は物事の意味や価値を重視する傾向があるため、教育を担う社員は若手社員と目線を合わせて「なぜやるのか」「どんな結果を出すか」を一緒に考えることが求められます。

若手社員の育成を教育担当の社員に任せきりにせず、全社で取り組むことが大切です。たとえば、特定のテーマに詳しい人がいればその人を育成担当にする、若手社員と年齢が近い社員を育成担当者にしてみるといった施策が想定できます。

社内だけにこだわらず、OFF-JTのように職場外での研修や勉強会を活用するのもありでしょう。現に、勉強会や副業・兼業、ボランティア活動など社外での交流をする若手社員ほど、会社に良い印象を持ち、会社を好きになる傾向があることがわかっています。

一方で、社外との関わりを持つ若手社員ほど実は離職率が高いことも調査結果(※)で示されています。「逆効果では?」と思われるかもしれませんが、会社が嫌いで退職したわけではないのであれば、元社員として仕事に関わってくれる可能性はあります。何らかの形で自社に関わる人を増やすという視点に立てば、「離職=悪いこと」ではないといった見方もできます。

(※)『若手社会人のキャリア形成に関する実証調査』結果報告書

<インタビューまとめ>

一言でZ世代と言っても、個人差はあります。中には同期やライバルとの競争を好む、率先して物事に取り組むのが好きな若手もいるでしょう。教育担当者は「若手はこうだ」と一括りにせず、対話をして、どのような育成方法が最適かを探ることが必要です。

上司世代と若手社員との間には、大きな隔たりがあるかのように思えるかもしれせんが、両者にはそれぞれの強みがあります。上司世代には業務についての深い知識や経験、組織を引っ張るリーダーシップがあり、それらの要素は若手社員の学ぶポイントとなるはずです。

働き方が変われば、教育法も変わるもの。上司世代と若手社員が良い関係性を築き、上司世代は育て方を、若手社員は育ち方を掴んでいけるといいですね。

ライター

薗部雄一


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