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2020.03.06 2023/02/15

どうして立候補? 選挙は大変? 議員と家庭の両立は……?
ママ区議リアル座談会「はじめての区議」【前編】

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どうして立候補? 選挙は大変? 議員と家庭の両立は……?<br>ママ区議リアル座談会「はじめての区議」【前編】

最近、ママ区議(ジェンダー的に本来はこう呼びたくはありませんが、ここはあえて言わせてください)の活躍が目まぐるしいのをご存知ですか?

これまでの市区議会議員に占める女性の割合は全国平均15.3%。東京は全国的には最も多い28.1%(2018年総務省データより)でしたが、それでも全体の3割にも満たない状態でした。しかし、昨年2019年4月の統一地方選で状況は一変。東京区議選挙はこれまでで最も多い243人の女性が当選し、当選者全体に占める割合も31%になったのです。中でも、30〜40代の子育て世代が生活や地域にある課題の当事者として出馬し、高い支持を得て当選しました。この “ママ区議元年” とも言うべき2019年を境目に、これまで遠い存在であった区議という存在がグッと身近になりました。

今回のコロナウィルス対策で一斉に臨時休校要請を受けてからも、地域行政と区民との間をつなぐ立場として、子育て世代が必要な情報を迅速に、そして正確な情報を共有されている様子がSNS上でも見受けられました。(近々、こちらの件についても追加インタビューしたいと思っています。)

LAXICでは「ママ区議たちを全面的に応援したい!」との思いから、初当選された無所属の3名のママ区議たちに集まっていただき、座談会を開催いたしました。前後編でお伝えする本企画。今回、前編では、初選挙のこと、区議になってからのこと、家庭との両立、他のママたちへの影響についてお届けします!(※座談会は1月下旬に行われたものです。)

神薗さん:地域のリソースを学校、家庭につなげたい思いで立候補

編集部:まずは区議選に立候補した理由や、昨年の活動内容などをそれぞれお伺いできればと思います。

 

神薗まちこさん(以下、敬称略。神薗):渋谷区議会議員、無所属の神薗まちこです。

前職はベネッセということもあり、教育と子育てに課題意識があり立候補しました。地域が持つリソースを子育て家庭や教育現場である家庭や学校につなげる活動をしています。たとえば、渋谷区は全小中学校が “コミュニティ・スクール” なのですが、まだ中身が伴っていない状態なので、地域の方々と協力して実践を作りながら、教育委員会に提案しています。

 

編集部:昨年の活動を振り返られて、いかがですか?

 

神薗:子育てと教育は専門分野なのですが、それ以外のことはよく理解ができていない“テーマの狭い自分”に気がつきました。そこから一歩出ると途端、自分で判断がつかなくなる(苦笑) たとえば、障がいのある方や高齢者、生活保護世帯への支援をどうすればよいか、毎年どこかで起きる災害に備えてどういった防災計画がよいか等、まだまだインプットが足りていないので、専門外をもっと勉強せねばと思いました。

 

編集部:入口が子育て・教育でも、付随してくる課題はどんどん広がりますからね……

 

神薗:あと会社組織にいたので、ある程度人数がいてフローに沿って動いていましたが、区議の仕事は感覚的には完全に個人事業主。そういう意味ではとてもクリエイティブにできるのだけど、自由が故に「これで大丈夫?」と不安になることも。あと、議会には「こうでなければならない」という慣習が多く残っていて、違う方向でやるのに勇気がいるのですが、そこは変えていきたいです。渋谷区議員は34名いますので、まずは自分らしいスタイルで、自分を応援してくれている人たちの感覚に合うように活動したいなと思っています。

せおさん:当事者として障がい者支援のネットワーク充実させたい

せお麻里さん(以下、敬称略。せお):品川区議会議員のせお麻里です。5歳の息子はダウン症で、3歳の娘もいるので、今は双子を抱えている感じです。立候補したきっかけは、やはり息子のことです。今は早期療育の重要性が問われていて、わかった時点からすぐスタートするのが理想とされていますが、現状、住んでいる地域に療育が足りておらず、受けたくても待機で何百人…… という状態です。そうなると結局、遠方に通うしかなくなるので、同じ状況にある地域のご家族とは繋がれないですよね。「これは私が立ち上がってなんとかしないと!」と思い、出馬しました。

 

編集部:療育も足りていないのですね…… ちなみに、出産されたころから区政に興味が?

 

せお:最初は政治には興味なかったのですが、都議会議員さんとお話する機会があり、東京都への要望を伝えていました。そのころから「私も品川区を変えられるかもしれない」と思い始めました。

 

編集部:障がい者家族をつなぐ地域ネットワークはあるのですか……?

 

せお:ありません。地域に障がい者のいる家族をつなぐネットワーク自体がないので、情報も来ない。まずは自分の住んでいる地域からコミュニティを作って、自治体と連携を取りたいと考えています。

 

編集部:昨年の活動を振り返ってはいかがですか?

 

せお:神薗さんと同じく「勉強をしないと」「視察しないと」という思いでいっぱいでした。これまでは普通に看護師をしている母親だったので、政治のことも一から勉強しないといけない。あと、言い訳にはしたくないけれど、子どもが小さいのでなかなか遠方に行けず、活動範囲が限られてしまう…… 家庭と区議との両立もかなり模索しました。とはいえ、焦らず、まずは自分の特性を生かしたところで、どうやって課題解決できるかを中心に考えています。

 

編集部:当事者として区議会に入られたこと自体に大きな意味があると思います!

駒崎さん:産後うつ、待機児童、待機学童…課題は常に身近にあった

駒崎美紀さん(以下、敬称略。駒崎):北区議会議員の駒崎美紀です。小3女子と小1男子の二児の母です。前職は埼玉県戸田市役所に15年間勤務していました。議員になろうと思ったきっかけは、難産で産後うつになったことに遡ります。産後ケアを行うマドレボニータの教室に通っていたことや、当時住んでいた地区で、あるママが仕事の両立やパートナーシップを考えるワークショップを開いていて、そこで心が救われました。「これだ!」と思い、引っ越した先では自分で開きました。次に「仕事復帰!」と思ったら、保育園に入れない。やっとの思いで「保育園入れた!」と思ったら、なかなかレトロな区立保育園で使用済みオムツの持ち帰りとか、オール手作りの布団カバー持参とか……(苦笑) 今の働くママのことをあまりも考えていない前例踏襲ぶりに、同じ公務員として憤りを感じ、改革しようと父母の会会長になりました。保育園に交渉して小さな改革を続けて、最後に“発展的解散”という形で、父母会を無くしました。

 

編集部:産後からの身近な課題解決が、ずっと継続していたのですね。

 

駒崎:そうです。その後「学童に入れない」問題が起き、友人たちと署名集めて北区議会に請願書を出し、それも採択されました。そんな身の回りの活動をして行く中で、一区民としての限界を感じ「自分が区議になれば、自分の保育園や学校だけじゃなく北区全体が改善できる!」と感じ、思い切って立候補しました。

でも、区議会に入ってよくわかりました。当時、北区議は男性ばかりで平均年齢58歳。これでは子育て世代の声が届くわけがありません。でも区議になるには会社は辞めないといけないし、公人になるわけですから、普通の母親にとってはリスクしかないな…… と。でも、人生最大の挑戦をしました。

 

編集部:素晴らしい! 昨年の活動を振り返って課題は?

 

駒崎:せおさんと同じく、育児と区議の両立ですね。公務員の時は変な話、子どもが熱を出しても休めましたが、区議はそうはいきません。これまでも議会の質問の時に限って2回連続、子どもが熱を出してしまって…… その時は近所のおばちゃんにお願いしましたが、緊急時に備えて、助け舟を出せる先を増やさなきゃな、と。

無所属出馬で支援者も母親たち……
はじめての選挙はどうでしたか?

編集部:次は選挙活動について伺いたいです。皆さん無所属からの出馬ですが、後ろ盾がない中、支援者はどうやって募ったのですか?

 

せお:神薗さんの「パパママコミュニティ」のように、すでに活動していた地域コミュニティが私には何もなくて。突然、出馬してしまったので、最初はゼロからのスタートでしたが、障がいのある子をもつご家族からたくさん応援をいただきました。

 

駒崎:私も共感してくださるママ・パパたちにお願いしましたが、選挙期間の平日は、お母さん達はみんな働いていて、なかなかお願いできず…… 選挙カーに乗って手を振りながら候補者への支持を訴える「ウグイス」もママたちにお願いし、1時間交代で回してもらいました。

 

せお:私はウグイスもいなくて、森沢きょうこ都議に協力してもらい、二人でテープに吹き込みました。正直、選挙カーも…… いらないですね。これからの時代は、そう言う活動の仕方じゃなくて、政策をわかってくれる方に声を届けたいな、と。

神薗:人が足りないという問題は切実ですよね。最後の選挙期間の1週間はお祭りみたいに盛り上がるのですが、それまではほぼ一人の活動になります。選挙期間は駅立ちとかの場所取りもすごいんですよ。人気の場所って徹夜で場所取りしますから。

 

編集部:えぇ、そうなんですか? お花見みたいですね(苦笑)!

 

駒崎:私は小さな駅で一人活動していると、暴言を吐かれたり、物を蹴られたり…… 少し怖い思いをすることがありました。交番に駆け込みましたが、女性が立候補して活動する中で、そういうところにもハードルがあるな、と。あと、ポスター切られる、変な噂を流される…… などの嫌がらせもありました。誰だかわからないですが、足を引っ張りたいんでしょうね。

 

編集部:えぇ! 信じられない! ひどいですね!

 

神薗:警察に通報された事もありました。違反していなくても、そこで対応していると時間取られますから。

 

せお:私は選挙カーもいつも一人で運転していたので、不憫に思ったのか自民党の方たちが助けてくれました。剥がれた選挙のポスター貼り直してくれたり……(苦笑)

 

一同:え~! 優しい!!

 

編集部:それにしても今日集まって頂いたみなさんをはじめ、ママさん候補者のみなさんは、本当に大変な思いをして選挙に出られていたのですね…… 改めて尊敬の思いでいっぱいです……!

区議ってどんな働き方ですか? スケジュールや会派は?

編集部:区議になってからの働き方についてですが、議会へはどのぐらいの頻度で通われるのですか? 区役所に自分のデスクとかは?

 

神薗:定例会(毎年2月・6月・9月・11月の年4回)の期間が2週間~1ヶ月あるので、その間は毎日議会へ行きますが、あとは会議のある時は必ず行かなければなりません。それ以外は、視察や会合、勉強会など自由に組めます。ちなみに渋谷区は庁舎が新しくなったばかりなので、まぁまぁ立派な専用デスクがあります。

 

駒崎:さすが渋谷区さん! 北区は普通の机で、“フリーアドレスの営業さん” みたいな感覚ですね。仕事はどこでもできるので問題ないです。

 

せお:勉強会や視察もあるので。昨年はとにかく時間の使い方を学びました。夜に出ないといけない日は、合間に家事をすることもあります。

 

編集部:ちなみにみなさん、会派には所属されていますか?

 

せお:品川区は自民党会派が2つあり、私たちの第二会派は自民と無所属で8人構成です。幹事長が60代ですが新しい考え方を持っている方なので、どんどん新しく改革していきたいです。

 

神薗:会派は第二会派(20~60代の女性5人、男性3人、主に無所属議員で構成)に所属しています。会派内に経験も人脈もある先輩議員や、新人でもそれぞれ個性が違う方たちが複数いると、ものすごく心強いですよね。行政の中でも教育はこの人、地域はこの人…… と、押さえるほうがいい人がわかります。

 

編集部:なるほど、そういう経験値って大事ですよね。駒崎さんは?

 

駒崎:私は一人会派です。考えたのですが、今のところはそうしています。でも、自分自身が元市役所の職員だったので、「この辺りまではできる」「どこを抑えたらいい」などがわかっているつもりです。条例などの大きな改正となると、会派に入らないと大変ですが、細かな制度の改正などは可能です。あと、周りの議員も親切な方が多くて、地方の視察なども誘っていただいて参加することもありました。

ママ区議のリアル、家庭との両立ってどうしてる?

編集部:なるほど。それにしてもみなさんのお話を伺っていると、家庭との両立が大変そうですね……

 

一同:自分の代わりがいないので……

 

神薗:議会と委員会以外は自分でスケジュール調整できるメリットはありますが、土日にも行事が入ります。現場を知るためにはいろいろ出席したいのですが、夫と揉める原因になり…… 「一年目は案内きたものは全部行ったほうがいい」って言われましたが、いや、全部は無理です…… みたいな(苦笑)

 

せお:あと男性での前例として「こうしたらいいよ」があるけど、女性・ママとしての前例がまだあまりないので、無理が生じますよね。夜に公務がある時も正直困ります。所属している委員会に関連した団体の新年会とか、必ず行かないといけない。子どもがまだ小さいので……

 

 

一同:そうそう。家族の協力なしではね…… やっていけないですよね。

 

駒崎:泊まりもありますからね。ちなみに「足立区」議会は、宿泊の視察の際に宿泊・交通費等も含め自費でベビーシッターを確保すれば、子どもを一緒に連れての移動や宿泊等をできるそうですよ。

 

編集部:それはすごいですね! いや、それにしてもリアルなお話が聞けて、一気に区議という仕事が、身近に感じ始めました。引き続き、後半もよろしくお願いします!

今まで、政治そのものが縁遠い存在でした。ただ、知らないので考えもしなかった、もしくは、思考停止していただけかもしれません。でも、こうやって身近にお話を聞くことで、一気に距離感が縮まりましたし、自分たちと同世代のママたちが地域のために挑戦している姿に、感銘を受けました。育児や教育、福祉という各々の課題観から選挙に出馬し、そして大変な思いをされながら区議と家庭を両立。そして、先陣を切って子育て世代を引っ張ってくれている、そんな姿を目の当たりにすると、もう応援しない訳にはいきません!

後半はさらに区議と行政の関係性や、一般社会とのギャップ、政治に関わるからこそわかるリアルな部分に展開しています。お楽しみに。

プロフィール

神薗まちこさん

渋谷区議会議員:無所属

「渋谷で子どもも大人も育ちあうまちをつくりたい!」と思い、区議会議員に立候補、令和の時代とともに議員活動がスタート。それまではベネッセで全国4,500校の学校を支援し、ソフトバンクや鉄緑会などのパートナーと新規事業も立ち上げた。渋谷をフィールドに、0~3歳の子育て世帯向けのイベント「渋谷papamamaマルシェ」を企画運営、「渋谷をつなげる30人」の4期メンバー、拡張家族Ciftのメンバー、小学1年生女子の母でもある。

前回のインタビューはこちら

せお麻里さん

品川区議会議員:無所属

1977年東京都生まれ 成蹊高校、成蹊大学卒業。東京医科大学看護専門学校卒業。東京医科大学病院などで看護師として勤務。その後結婚し、約2年の不妊治療を経て、5歳長男(ダウン症)、3歳長女の二児の母。2019年の品川区議会議員選挙にて初当選。

駒崎美紀さん

北区議会議員:無所属

産後うつになりかけた経験から、2013年地域団体「北区はたらくママネット」設立。2018年 戸田市役所退職 もっともっと地域社会に関わり、地域をよくする活動を広げたい!15年間務めた市役所を悩みに悩んだ末、退職。地域の課題により向き合うべく、子育て支援のNPOに勤務後、政治家を志す。2019年 北区議会議員。 史上最多の7335票を賜り、トップ当選を果たす。小学3年生の女児、小学1年生の男児の母。

文・インタビュー:(文)飯田理恵・(インタビュー)LAXIC編集部

ライター

飯田りえ

ライター

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