ベネッセ&ママコミュ運営から”地域”のリーダーに
区議になられた神薗まちこさんの解決したい課題とは?

ラシク・インタビューvol.138

渋谷区 区議 神薗まちこさん

最近、政治に課題感をもち、政治に参入しているママが非常に増えています。中でもより生活に近い”区議”が多く、4月の統一地方選では中央区の山本りえさん、港区の清家あいさん、目黒区の山本ひろこさんはトップ当選を果たしました。東京区議選のあった20区の計60人のうち女性は半数を占め、大半は無所属、民間出身の新人ママ区議さんが当選しています。30~40代の同世代のママたちが、今の社会課題のひとつである、子育て環境(特に待機児童や保育園問題)を中心に、より良い社会づくりを目指して、地域のリーダーとして実践していこうと動いているのです。そんな、最も身近な政治家である”区議”という存在を、私たちはまだまだ認知していないのが実状。そこで、今回、渋谷区の新人区議として当選され、実際に区議として活動されている神薗まちこさんにインタビューをお願いしました。

これまでベネッセコーポレーションでワーキングマザーとして活躍してきた神薗さん。直近では、ベネッセとソフトバンクが立ち上げたClassi株式会社で、高校や中学の教育現場において、ICTの導入をはじめテクノロジーを教育に生かすための学校支援に従事。プライベートでは「渋谷papamamaマルシェ」の実行委員長として0~3歳の子育て世代に向けたイベントを開催。これまでにも民間や個人、地域レベルで子育てや教育についてアクションを起こされています。そんな彼女がなぜ区議になろうと思ったのか? 民間ではなく行政だからできることって? じっくりとお話を伺ってきました!

「学校教育」の現場を知ることから見えて来た、未就学時代の大切さ


編集部:神薗さんはベネッセで働きながら子育て世代のコミュニティ運営もされていますが、次のステップがどうして“区議“だったのですか? 決定的な出来事とかあったのでしょうか?

 

神薗まちこさん(以下、敬称略。神薗):決定的という訳ではないのですが、ベネッセで「やりたかったこと」が実現しつつある時期に、自分が課題意識として「もう少しやりたい」ことを考えた結果、”議員と”いう立場が適しているな、と思ったのです。

 

編集部:実現しつつある…… というのは?

 

神薗:入社時から自分が思い描いていた「学校教育」が実現できるフェーズに来たことです。いわゆる「探究学習」と呼ばれるものです。高校生が社会課題に目を向けて、それに対して自分自身どう解決できるのか、一人orチームでプロジェクトを組んで学ぶ活動が盛んになってきました。ひとり一人の子ども達が社会に対しての課題意識を持って世の中に出ていけると、世界全体がより良い社会になると考えています

 

編集部:何のために勉強するのか、高校時代って模索しますよね。学生時代から教育に対しての課題意識を?

 

神薗:大学時代に環境問題の活動をしていて、その時の合言葉が「一人の100%より、100人の1%」でした。その中の50人が2%でも3%にでもなれば、社会は随分変わる。そのために、学校教育でできることはないか、との思いで学校を支援するベネッセに。それが十数年経ち、私が目指してきたことが、実現しつつある状況まで来たのです。「明治維新以来の大改革」と言われる教育改革が文部科学省を主導に行われており、学校もまさに今、変わろうとしています。もちろんベネッセそして神薗自身として、学校現場の支援をしてきました。そういった大きな環境変化もあり、私が目指してきたことが、実現しつつある状況まで来たのです。

 

編集部:一方で「もう少しやりたい!」と思った課題意識とは?

 

神薗:未就学児〜小学校低学年までの子ども達の土台を育てたいのです。その土台が良い状態でないと、いくら高校で探究学習をしよう! としても積み上がらないので。

 

編集部:仕事で高校を担当する上で、新しい課題が出てきたのですね?

 

神薗:トータルで1000校近くの学校に行き、「伸びる子」と「伸び悩む子」の差があり、聞いてみると家庭の中で不安定な状況だったり、他者依存の学習を幼いころから続けていたり。人から言われることはできるけど、自分で興味を持って何かを掘り下げることはできない。もっとひどい状態だと、生活自体が成立しない、朝起きられないとか、集中できないとか…… 人としての土台が作られる時期が重要だ、と気づいたのです。

 

編集部:確かに。土台がグラグラだといくら積み上げても上がらない……

 

神薗:以前、岐阜県で高校教諭をされていた浦崎太郎先生(現:大正大学 地域構想研究所 教授)が、保育園〜高校の教員たちを集めて「子ども達の学びとつまずきが、どこで起こっているのか」というワークショップに誘ってくださいました。その時に参加してわかったことは、未就学児の「寝る・食べる・排泄する」「特定の大人と愛着形成出来ていること」が成長の基盤としてとても重要、ということ。ここがグラグラだと次のフェーズ「遊びから学ぶ」に上手く移行できない。その後、就学した後に「学習に集中できない」「好奇心が持てない」といった状況が出ていることが分かりました。この時期を大事にしないと、根本的な解決には至らないことがわかったのです。

渋谷papamamaマルシェの活動から”地域”と言うセーフティネットを知る


編集部:その流れで渋谷papamamaマルシェを?

 

神薗:自分が親になり0~1歳児の悩みが多い時期に、同じ学齢の子を持つママサークルに入りました。このコミュニティの存在が非常に有り難く、親子共に成長させてもらいました。これから子育てする家族や、まだコミュニティのない家族に同じような環境を提供できないのかと。最初は「渋谷の中心で母が叫ぶ」みたいなイメージで、初代代表を務めた坂井加代ちゃんはじめ仲間のママとイベントを企画することに(笑)

 

編集部:同じ世代だから、すごくわかります!

 

神薗:横のつながりだけでなく、渋谷区にある子育て支援団体の皆さんともつながれるといいな、と2016年にスタートしました。生活習慣をはじめ、育児のサポートをしてもらえたり、悩みを相談できる仲間ができたり…… 保護者が次のフェーズに安心して一歩踏み出せるようにと考えています。

 

編集部:0~3歳のお子さんを持つ家族、孤立している世代にコミュニティを提供する、と言う課題意識がここでできた訳ですね。そこから、なぜ”区議”に?

 

神薗:私自身、同世代のパパ・ママたちとは絡みがあったのですが、地域となるとつながりはなく。最初は「渋谷に地域なんてあるの?」って思っていたのですが、実際にはあったんです。例えば、60~70代のシニア世代が子育ての支援活動をされていて、渋谷papamamaマルシェの活動を通じて仲良くなりました。近所で出会ったら、「元気でやってる?」「ちょっと(子どもを)見といてあげるわよー!」と気軽に声をかけてくれるんですね。「あ、これか」「徒歩10分圏内で行けるところが地域なんだな」と感じました。

 

編集部:徒歩10分圏内は非常に大事です!

 

神薗:保育園でもパパ・ママ仲間とつながるようになって「緊急の仕事で帰れないので子どもをお願いできない?」って頼れる人が近所にいる・いないでは全然違います。あと、近所を歩いている時に偶然出会って、立ち話ができる関係がある=地域、と改めて実感しました。地域と接点を持たせることによって、子育て環境や学校が良くなっていくと、あらためて感じました。地域がセーフティネット、サポーターとなって子育て環境が良くなる形が作れないか、と思い始めたのです。

 

編集部:新しい課題が見えて来たのですね!

 

神薗:地域と家庭をつなぐ、そして課題解決していける立場=区議、と思えたのです。渋谷区長の長谷部健さんがプロデューサー的立場で地域のリソースを引き出して、課題解決しているのを区議時代から見ていたので、そう感じることが出来ました。「あ、この立場ならできるかも!」という期待感を持ち、そこから具体的に考え始めました。

地域、企業をつなぎ、社会のために自分のやりたいことができる!

編集部:立候補するまでの期間はどのぐらいでしたか?

 

神薗:実際の選挙の準備としては半年です。その間、ベネッセは私用で休職していました。最初はやめようと思いましたが「こういうキャリアプランを考えていて」と上司に相談したところ「落ちたらどうする?」「戻りたいです」「それなら休んだら?」と(苦笑)

 

編集部:会社も上司の方もさすが、寛大ですね! ただ、社会や教育に対する課題感から、民間や個人で動くのはわかるのですが、そこで”政治”という選択肢が出てくるのが意外だな、と。どうしても、生活と政治が遠い存在なので…… 

 

神薗:ベネッセは日本全国にある5000校ある高校のうち4500校のご支援をしていて、ある意味公共インフラに近い存在でしたから。インパクト出すことを考えると一行政単位でやる方が良いな、と。ただ、行政職員として中に入るのは違うなと感じていて、でも行政側に近いところでやったほうが大きな動きを作れるのでは、と考えたのです。

 

編集部:なるほど。ベネッセにいたからこそ、の発想ですね。

 

神薗:それに地域と、行政と、民間と、それらをどう繋げるのか考えると「中間的立場」がいいなぁと。あと、こんなことを言ったら怒られるかもしれませんが、議員になったら少なくとも4年間は生活が保証される=地域の課題に全力投球でできると考えました。生計を立てることを考え始めてしまうと、本質的に目指すべきこととずれてしまう。”政治”としてというより、選択肢として一番良かったのが区議だったのです。

 

編集部:これで全てがつながりました……!

 

神薗:やっぱりロールモデルとして長谷部区長がいたことは大きかったです。あまり政治家っぽくなく、見せ方やアプローチが新しかったんですよね。「渋谷だったら何かできそう」「面白そう」と思えましたから

なかなかワークしない〜選挙ロスになるまで。知られざる選挙活動の実態

編集部:実際、政治・選挙活動は大変でしたか?

 

神薗:大変だったのは、最初の立ち上げですね。自分のために人にお願いすることが下手で(苦笑) 例えば友人に「ボランティアお願いできない?」と誘うのですが、「協力はするけど、で、何やればいいの?」ってなりますよね。会社みたいに役割が細分化されていて、この目的のためにこの役割が必要で、そのためにあなたに依頼する、ではないじゃないですか。そこが最初うまく設計できなくて、ワークしない日々が続きました。

 

編集部:会社のプロジェクトチームとは違いますよね…… どう乗り越えたのですか?

 

神薗:起業しているベネッセの後輩がサポートしてくれました。客観的な視点で「神薗まちこはこういうビジョンを持っていて、チームとしてこういった役割が必要。だから〇〇をやるために力を貸してもらえますか?」と、ちゃんと役割と必要なスキルを明確化して、協力をお願いしたい人に提示してくれました。チームができたら、時間や体力との勝負なので、効率的に成果を出す戦略と優先順位をどうつけるか? ということを意識しました

 

編集部:選挙カーの利用も最小限で、街頭演説も控えめ。手法が違ったと伺いました。これまでと違う政治・選挙活動だったそうですね。

 

神薗:私は一番、紙媒体に力を入れました。私に投票してほしいターゲットは、パパ・ママ世代。限られた時間で、「おしゃれなフライヤーだから、開いて読んでみよう」と思っていただける紙媒体づくりにこだわりました。また、MeetUPというワークショップを何度も実施して、実現したい政策をみんなでつくり上げていきました。

 

編集部:既存だと「とにかく名前を連呼して、顔を覚えてもらう!」ですものね。逆に今の人は好まない。

 

神薗:そうなんです、ちゃんと政策を一緒に作って、それをおしゃれなデザインとメッセージで伝えていきました。制作チームやワークショップチーム、事務局チーム、選挙期間のボランティアチームなどみんなの力で作り上げた選挙でした。誰一人欠けても実現できなかった結果です。まさに、文化祭のような感覚で、終わってからみんなで「選挙ロス」に(笑)

 

編集部:本当にあるのですね! ご主人をはじめ、娘さんやご家族の反応は?

 

神薗:夫はずっと一緒に戦ってくれたていたので、一番の理解者でした。娘は小1なので「お母さんは渋谷のリーダーになるチャレンジするんだよ。18万人の大人が一人1枚紙を持っていて、名前を書いて34人のリーダーを決めるの。お母さんの名前をたくさん書いてもらったらリーダーになれるんだよ」と選挙については説明していました。特に選挙期間の一週間は6時~20時ぐらいまで不在だったので、小学校始まったばかりの彼女にとっては、心細かったと思います。

 

編集部:周りのお友達や同級生のご家族の反応はいかがでしたか?

 

神薗:家族づれでポスター張りを手伝ってくれたり、ワークショップに参加してくれたり、協力してくれました。またその時の様子を子ども達が絵日記に描いてくれて…… それにはとても感動しました。

 

編集部:そりゃ印象残りますよ! 「友達のママが選挙で渋谷のリーダーになったんだよ」って、これこそ探究学習ですよ!

街が変わっていくサイクルを、みんなで一緒に体感してほしい

編集部:実際区議デビューしてから3ヶ月経ちました。どのような活動を?

 

神薗:最初に活動フローを作り、それに沿って進めています。まず6、7月は街頭でのアンケートやWEBリサーチをして課題をまとめて、8月にワークショップを開いてみんなで議論。これを議会や区長に提案して、結果をレポートにまとめて、さらにシェアして…… これを繰り返します。こうすることで、街がどんどん変わっていくサイクルを一緒に体験できるかなと思っています。

そして、この活動は私一人だと広がりにも限界があるので、同会派の森田ゆき議員や東京都議の龍円あいり議員と一緒に進めています。3人とも渋谷区で子育てをするママであり、議員になる前から子育ての活動を一緒にやっていたので、同じ方向を目指して活動ができています。

 

編集部:何かギャップと感じることはありました?

 

神薗:議員という立場だから、逆に”できないことがある”ということですね。例えば区の事業に対して、議員はチェックする立場だから、一緒に実践はできない。ずっと実践側にいたのでどうしても踏み込みがちですが、行政の仕事はきっちりラインを引かれます(苦笑) 実践者としては「渋谷をつなげる30人」というコミュニティにいるので、そこでプロトタイプを作り、議会に提案するやり方があるかな、と考えています。

 

編集部:以前「区議活動はマーケティング」とおっしゃっていました。地域の人がどういうことを思っているか、リサーチして解決の糸口を見つける。それが印象的でした。

 

神薗:そうですね。この前も地域の祭りに出席しましたが、挨拶して終わりっていうのも勿体ないので、マーケティング観点を持っていきました。神宮前のお母さんたちから「遊び場が少なすぎる」という声が上がっていたので、長年地域づくりを行なっている方とお母さんたちのつながりを作り、一緒に考えていこう! ということになりました。

 

編集部:さすがです! 今後、実現したいことは?

 

神薗:とにかく未就学児の0~3歳の孤立化しやすい子育てを解消し、子ども達がしっかり生活の基盤を作れるようにしたい。あとは遊びを充実させて、遊びの中から学べる環境を作りたい。あとは150年続いているこの学校というスタイルを変えたい。学習者が中心にいる、“学ぶ人が主体的に学べる”学校づくりをしていきたいです

 

編集部:エデユケーションではなくてラーニングですね!

 

神薗:そう、まず1〜2校で事例を作って、他の学校に展開したいです。長谷部区長が”民間人校長”を採用しようとおっしゃっていますが、新しい学校をどう作っていくのか。また、既存の学校と一緒にプログラムを変えていくのをやっていきたいです。

 

編集部:最後に。母業と区議の両立はいかがですか?

 

神薗:ベネッセ時代より、平日の時間はコントロールしやすくなりました。逆に土・日に結構行事が入ってくるので、その優先順位をしっかりつけて、家族との時間をちゃんと取れるようにしていきたいです。

 

編集部:これからの神薗さんに期待しています。お忙しい中ありがとうございました。

取材時も「朝しか時間が取れない!」ということで朝8時半からの渋谷区新庁舎インタビューでした。それぐらいお忙しいスケジュールにもかかわらず、そんな大変さを一切感じさせない、自然体でとても魅力的な方でした。「区議になりたい」「政治家になりたい」という動機ではなく、自分がこれから生涯通して課題解決したいことを本気で考えた結果、区議だった。このなかなか取れない選択と、一本筋の通った考え方にもとても好印象でした。神薗まちこさんはじめ、同世代のママ区議が活躍してくれると、私たちの生活と政治がぐっと近くなると思います。LAXICではこれからもママ区議応援企画を進めたいと思います。

神薗まちこさんプロフィール
「渋谷で子どもも大人も育ちあうまちをつくりたい!」と思い、区議会議員に立候補、令和の時代とともに議員活動がスタート。それまではベネッセで全国4,500校の学校支援を志事とし、ソフトバンクや鉄緑会などのパートナーと新規事業を立ち上げた。渋谷をフィールドに、0‐3歳の子育て世帯向けのイベント「渋谷papamamaマルシェ」を企画運営、「渋谷をつなげる30人」の4期メンバー、拡張家族Ciftのメンバー、小学1年生女子の母でもある。
HP:神薗まちこ

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:(文)飯田りえ・(インタビュー)三好怜子

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