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2023.02.27 2023/03/01

対話ではじめる組織づくり。
「みんなのルールメイキング」プロジェクトから学べること

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対話ではじめる組織づくり。<br> 「みんなのルールメイキング」プロジェクトから学べること

多様な人が働く職場には、いろいろなルールがあります。育児休暇制度や時短勤務制度のように規定として設けられたものもあれば、暗黙のルールとなっているものも。「この制度、実は使いにくいなぁ」「もっとこうしたらいいのになぁ」と思ったとき、皆さんはどうしますか?そのルールがオフィシャルなものであればあるほど、「仕方がない」と諦めてしまう人が多いのではないでしょうか?

職場と同じくさまざまなルール(校則)がある中学校や高校で、校則を見直し、自分らしい学校生活を実現しようと活動する生徒たちがいます。2022年12月、あるイベントが行われました。ティーン向けの企画ではあるものの、職場環境づくりを考えるヒントがありそうです。

大切なのは「対話をしながら納得解をつくるプロセス」

2022年12月末にオンラインで実施されたイベント「ZOZOのユニークなルールって? ”自分らしさ”を大切にするルールを作るためには」。

10代の居場所をつくり可能性を広げることを目指して、社会に働きかけるプロジェクトに取り組む 認定NPO法人カタリバ(以下、カタリバ)と、ファッションEC「ZOZOTOWN」を運営する株式会社ZOZO(以下、ZOZO)とのコラボで行われました。

このイベントは、カタリバが運営するプロジェクト「みんなのルールメイキング」の一貫です。ルールメイキングとは何なのか。カタリバのウェブサイトには次のように書いてあります。

“『ルールメイキング』は学校の校則・ルールの対話的な見直しを通じて、みんなが主体的に関われる学校をつくっていく取り組みです。校則を見直したり、変えたりすることが目的ではなく、生徒や先生同士で対話を重ね、みんなの納得解をつくっていくプロセスを大切にしています”(※)

なるほど、校則を変えることではなく、「対話をしながら納得解をつくるプロセス」に重点を置いているのですね。「学校の校則」を「職場の制度」に置き換えても、大切なことだといえそうです。

カタリバはルールメイキングの取り組みを、2019年に開始。現在は、全国で180校を超える学校がルールメイキングを実践しているといいます。今回のイベントは、ZOZOの社内ルールづくりから各学校が生かせるヒントを考える内容で、全国14校47名の中高生が参加しました。

イベントではまず、ZOZOのCIフレンドシップマネージメント部の篠田ますみ(しのだ・ますみ)さん、鹿子聡美(かのこ・さとみ)さんが、ZOZOの取り組みを紹介。その後、ブレイクアウトルームに分かれて、テーマごとにディスカッションが行われました。やはり実際にルールメイキングに向き合っている生徒たちだけあって、具体的で考えさせられるコメントばかり!活発に意見が交わされる様子に、大人の私もエネルギーをもらいました。

(※)引用元 認定NPO法人カタリバ「ルールメイキングとは」みんなのルールメイキング

株式会社ZOZOが実践する「らしさ」を大切にした職場づくりとは

講演中の生徒さんたちの様子

では、ZOZOのどんな取り組みが紹介されたのか、簡単に2つご紹介しましょう。1つ目は「家族時短」制度。育児や介護のための時短制度は法律で定められていますが、たとえば育児短時間勤務制度は、企業独自の定めがない限り3歳以降は利用できません。ZOZOの篠田さん自身、お子さんが3歳を迎え法定の時短制度が終了になったとき、仕事と家庭のバランスに悩んだのだとか。「育児や介護以外にも時短制度を使いたい人はいるのでは?」と考え、いろんな人に話を聴きながら、制度化に向けて動いたそうです。 

そうして導入された「家族時短」制度は、社員自身が「家族」と認識する人やペットをサポートするためなら、利用OK。柔軟で使いやすそうな制度です。育児による時短制度は、お子さんが小学校卒業まで利用可能です。

もうひとつの取り組みは、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)や「らしさ」について社員と考える社内イベント「People@ZOZO」。DE&Iとは、答えのないテーマ。答えを見つけることに注力するのではなく、さまざまな意見や想いに触れる機会にすることを大切にしているそうです。第1回は女性活躍、第2回はジェンダー、第3回は世代をテーマにディスカッションを行い、その様子は社員向けに生配信されたといいます。

実際に新しいルールや私らしさを考える場をつくっている、ZOZOのお二人。ブレイクアウトルームでは、たくさんの質問が寄せられました。

ある生徒は、「ルールメイキングについてのアンケートに一部の生徒しか答えてくれない」とのお悩みを相談。家族時短の制度化を経験した篠田さんは、このお悩みに共感し、「アンケートを送るのではなく、一人ひとり声をかけて時間をもらい、ヒアリングした。少しずつ巻き込むといいのでは」とアドバイス。

別の生徒からは「そもそも自分らしいってどういうこと?自分らしさが分からない」との声が。「らしさ」を考える社内イベントに参加した鹿子さんは、「もともとは自分にあまり自信がないタイプだった。でもZOZOは等身大の自分を受け入れてくれる環境だったので、入社して肩の力が抜けた感じがする」とコメント。自分らしさを見つけるヒントとして「自分の考えや心の声に嘘をつかず、他人と違っても良いと認めることでは?」と続けていました。

篠田さんと鹿子さんお二人の答えを合わせて考えると、「その人」に関心を持ち「その人」のありのままの声に耳を傾ける姿勢が、「らしさ」を大切にした職場づくりに不可欠なのではないかと気づかされます。前向きな改善を生む前提には「聴く姿勢」がありそうです。

個々の「多様性」と組織としての「まとまり」は両立可能なのか?

大阪の公立中学校での新制服導入の話し合いの様子

とはいえ、「聴く姿勢が大事」といっても、現実はどうでしょうか?自身の職場の面々を思い浮かべて「あまりにいろんな意見の人がいて、受けとめすぎるとまとまらない……!」とお感じになる方もいるかもしれません。多様な背景の人が集まる職場でルールをつくっていくとき、どこかで妥協しないと決まらないような気もします。

そんなことを思っていると、こんな質問がありました。「『自分らしく』をみんなが追求したら、組織がばらばらになってしまいませんか?」

個人の多様性を尊重することと、組織としてのまとまりは、果たして両立可能なのか……。DE&Iの時代に、ますます多くの企業が悩む問いではないでしょうか。鹿子さんはこんなふうに答えていました。

“意見が違うことは、もちろんあります。私たちは物事を決めるとき、お互いが納得のいくまで話をします。妥協したらすぐ終わる話かもしれない。でも妥協せずに、誰のためにどうしたいのか、どういう世界がいいのか話し合いを続けます”

表面的な「違い」で立ち止まって妥協するのではなく、本質を見極めるために話し合うのです。

“意見が違うのは当たり前。一見、違うかもしれないけど、話し合っていくと実は目指しているところは似ていることもあります”

そして「(話し合いは)スキルではない」という言葉も。普段の生活を振り返ってみると、傷つくことを恐れて、安易に共感してしまうことがあるかもしれません。それに、つい「同じところ」を探して安心したくなることも……。でもそうではなく、「違うのは当たり前」と捉える。違いを恐れず、むしろ違うからこそ生まれる議論の深まりを楽しむ。この発想の転換を職場のみんなで共有できたら、多様性を尊重しながらも、組織としての一体感を生む話し合いが実現するのではないでしょうか。

働きやすい職場づくりは対話から

大阪の高校で行われた生徒・先生の対話活動の様子

「みんなのルールメイキング」では、実際にいくつもの学校で、校則の見直しにつながった例があるそうです。ある学校の生徒は、「就職面接のときに印象が悪いから」という理由で長年続いてきた髪型の規定を変えるため、本当に印象が悪いのかどうか地域の企業にヒアリング。結果を踏まえて教師の理解を得て、規定変更に至ったのだとか。

「当たり前」で、受け入れざるを得ないものとして捉えがちな校則を、自分たちで行動し変えていく生徒たち。彼らにとって、「社会は変えることができる!」と感じる原体験になっていそうです。この世代が大人になって企業に入ってきたとき、どんな職場が生まれるだろうと楽しみになります。

最後の感想タイムでは「先生にきちんと意見を伝えようと思った」との声が。それを受けカタリバからは「まずは声を上げることが第一歩」とエール。職場のルールづくりもきっと同じはず。諦めたり、思考停止したりするのではなく、まずは声を上げ、向き合い、対話をする。違いを恐れず、「聴く」「話す」。

働きやすい職場づくりは対話からスタートします。

 

【参考】

みんなのルールメイキング「12月26日、みんなのルールメイキングとZOZOがコラボ生徒交流会を開催。担当者に開催経緯や思いを聞いてみました!」note

ライター

近藤圭子

ライター

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