忙しいワーママでも諦めないで!
わが子の可能性を広げる、頑張りすぎない英語教育のコツ【前編】
2020年の「教育改革」、小学校での本格的な英語教育がスタートするのを前に、どのようにしてわが子を英語に親しませようか模索しているLAXIC読者も多いのではないでしょうか? ミキハウス子育て総研が2018年10月に実施した「子どもの習い事に関する調査」によると、「英会話」は人気の習い事部門でスイミングに次いで第2位にランクイン。一方で、「仕事も育児もどっちも欲張りたい!」というワーママからは、「平日は忙しくて習い事に行けないけど大丈夫かな…」 「自分では無理だから英語スクールや英語学童にまるっとお任せしてます!」などさまざまな声が寄せられています。
そんな中、英語教育に悩む親たちの疑問に答えてくれるトークセミナー(※1)が開催されるとのことで取材に伺いました。
・英語教育っていつからスタートすればいいの?
・日本にいながら英語が話せる子に育てるコツは?
セミナーでは、バイリンガル育児を経験した2人のママ、浜家有文子さんと筒井美華子さんが素朴な疑問に答えてくれました。英語講師の浜家さんはご自身のお子さんもバイリンガルに育て上げ、小学生から高校生までを対象に10年以上英語を教えてきたスペシャリスト。筒井さんは、日本で0歳から英語を取り入れた子育てをし、お子さんが7歳のときに渡米、ギフテット教育で有名な現地の難関校に合格させた経験の持ち主です。
編集部では、イベント終了後のお2人にインタビューを決行。
今回の前編では、忙しいワーママも気負わず取り入れられる頑張りすぎない英語教育のコツをお伝えします!
(※1)セミナーの詳細はこちら→【Himemama JAPAN】 今からでも遅くない、今から始めるべき、英語バイリンガルの育て方~親から子供にしてあげられるプレゼント~
英語はあくまでもコミュニケーションツール!
言語修得よりも子どもの可能性を広げることを第一に
編集部:今日のセミナーは「英語バイリンガルの育て方」がテーマとあって、平日にもかかわらずたくさんの未就学児ママがいらしていましたね。すごい熱量だったと思います!
筒井美華子さん(以下、敬称略。 筒井):今回イベントを行うことになり、私一人だと心細く、浜家さんを巻き込んでみました。先ほどのセミナーでもお話したのですが、実は浜家さん、私の娘に英語を教えてくれた先生なんですよ。
編集部:そうなんですね! 今日はセミナーに引き続き、たっぷりお話をお聞きしたいと思います! ところで、筒井さんは現在サンフランシスコにお住まいですよね? 今回の日本滞在はどのくらいですか?
筒井:2週間です。娘は11歳になるんですが、向こうを出てくるとき、「ママが2週間居ないのは寂しいよね……」って言ったら、「お父さんと2人だからすごいスムーズだし大丈夫!」ってあっさり(笑) 育児の渦中はなんだかんだ大変でも子どもはちゃんと育つんですね。
編集部:筒井さん、ご自身は国際線CAのご経験があるそうですが、先ほどのセミナーでは「自分は本当に英語が喋れなくて」とおっしゃっていましたよね。ちょっと意外な感じがしました。
筒井:はい、私自身はあまり英語ができません。今では娘の方が流暢な英語を話すので教えてもらうことがあるくらいですよ。実は、この間ちょっと恥ずかしい出来事があって。現地の方との会話で 「エイシックス」 と聞き取れるワードが出たんですが私にはさっぱり。あとで娘に聞いたら、「ママ、何を言ってるの!? “アシックス(asics)” のことだよ! こっちだと “エイシックス” って発音するんだよ!」 って(笑) 日本の企業名なのに…… 恥ずかしいですよね。
編集部:なるほど、そんなことがあったんですね(苦笑) とはいえ、娘さんが0歳の頃から日本で英語教育を積んで、7歳で渡米しサンフランシスコの難関校に合格させたというのはママの教育の賜物だと思います!
筒井: 私自身、進学で苦労した過去があるので、娘には当たり前に大学に行けるような教育をしたいと思っていました。私の希望で小学校受験をさせたので、英語もそうですが、幼稚園の頃から勉強はさせていました。
編集部:英語教育のスペシャリスト、浜家さんにお聞きしたいのですが、ズバリ日本にいながら英語が話せるようになりますか? 親がバイリンガルであったりどちらかがネイティブスピーカーだったりする場合は、子どもも自然に英語に触れながらスキルを身につけられるイメージがあるのですが。
浜家有文子さん(以下、敬称略。浜家):もしも子どもをバイリンガルに育てたいのであれば、パパママどちらかが日本語で話し、どちらかが英語で話すというのが理想ですね。あとは、よく「インターナショナルスクールに行かせると英語が話せるようになりますか?」と聞かれるんですが、もちろん、英語の環境にずっといればある程度は話せるようになります。でも、英語はコミュニケーションの手段でしかないので、英語を目的にせず、その先の可能性をしっかり広げてあげることが大事だと思います。
編集部:英語はあくまでコミュニケーションの手段…… 本当にそうですよね!
浜家:正直、日本の英語教育は世界で一番遅れています。世界では英語が出来て当たり前で、「で、あなたは何をする人なの?」が求められる時代です。この“何を”はインターに行けば必ず見つかる訳ではないので。
自主性の尊重と放任放置は似ているけれど大違い!
編集部:コミュニケーションツールという言葉が出ましたが、では具体的にいつから英語を始めるといいのでしょうか?
浜家:喋れるようになる、コミュニケーションを取れるようになるという意味では0歳から自然に英語に親しめるといいですよね。そこで大事なことは、耳からのふれあいです。私たちが日本語を話せるのも学校で教わったからでなく親や周りの大人が語りかけてくれたから。それと同じで、英語も、親が話しかけたり聞かせたりすることが大事です。
筒井:私もそう思います。赤ちゃんの時って寝ている時間やじっとしている時間も多いから、聞かせるのは楽ですね。 働いていて忙しいママも、たとえば朝の時間にバックミュージックとして英語を流すとか良さそうですね。
編集部:語りかけの重要性、わかります! 一方で、英語が苦手な親からすると、そこからすでにハードルが高いと感じる人もいると思うのですが……
浜家:話しかけといっても幼い子に難しい英語を話すわけじゃないですから大丈夫ですよ。英語が苦手な方でも数くらいは言えると思うので、たとえば、お風呂に入って子どもと数を数えるときに「じゃあ今度は英語で20まで数えてみよう!」とか、そんな工夫でいいんですよ。
編集部:なるほど! でも、やっぱり本気で英語を上達させたければ、プロにお任せしたいのも親心かと…… 英語スクールに通わせるのも早い方がいいのでしょうか?
浜家:みなさん、やっぱりどこかに通わせたいと思いますよね。でも、大前提として、週1回1時間程度の英語スクールに通ったからといってお子さんが流暢な英語を話せるようになる訳ではありません。毎日3時間英語漬けの環境に通うならまた別ですが。
編集部:そうですよね……
浜家:英語講師の私がいえるのは、週に1回でもスクールに通う意義はあるという前提で、スクールに任せっきりにしない、ということです。スクールで学ぶ1時間はただの“きっかけ”にしかないということを忘れないでほしいんです。つまり、自宅での“親子による”復習が大事だということですね。
編集部:親子での復習、ですか!
浜家:私のレッスンでは、今日やったことを必ず保護者に全てフィードバックしています。「~の歌を歌いました」、「~というワードを使いました」、「フォニックス(※2)は~をやりました」というように。そうすることで、できるママは必ず家で子どもの復習を手伝ってくれます。どこまでスクールを活用するかは親御さん次第なので、特にバイリンガルに育てたいのであれば親の協力が不可欠だと思います。実際、私のレッスンでも、伸びていく子は親子でちゃんと復習しています。
(※2)フォニックス (Phonics) とは
英語圏の子どもや非ネイティブの子どもたちに英語の読み書きを教えるための指導法。英語の「スペリング(つづり)」と「発音」の間にある法則を学ぶことで、英語の正しい読み方をマスターすることができます。
筒井:これってどんな勉強にも共通することだと思います。最近は塾なんかも「私たち(塾)が全部やりますから!」みたいなところが人気なんですよね。忙しいワーママも増えているのでいいシステムだとは思うんですけど…… でも、やっぱり子どもが小さいうちは親の手伝いが不可欠だと思います。
編集部:筒井さんは小学校受験も経験なさっていますしね。 受験はまさに二人三脚ですもんね。
筒井:受験もそうですが、学校の勉強、塾の勉強も、子どもが小さいときはある程度親が介入したほうがいいという理由に、コミュニケーションスキルの獲得があると思うんです。親が勉強をサポートすることで家族間での話題が増えるのでコミュニケーション量が格段に上がるんです。
編集部:そういえば、先ほどのセミナーでも、筒井さんの娘さんがサンフランシスコで通われている補習校の話をされていましたね。必ず親が子どもの勉強をサポートしないといけないとか!?
筒井:そうなんです。私も勉強は苦手なので本当は嫌なんですけど、それでもやっぱり一緒に勉強するとことで食卓の会話の質が変わりましたね。我が家では英字新聞を読んでいるのでだいたいニュースの話になるんですが、最近なら「プレジデントキャンペーンがどうなっているか」とか、そういう話題が普段の食卓の話題になるんです。特にアメリカでは自分の意見を発信することが大事なので、コミュニケーションスキルは不可欠ですね。
浜家:親子で一緒に学ぶ姿勢って本当に大事ですよ。
筒井:今回の日本滞在で友人に会ったんですが、子どもの塾の話になって。「今どんな勉強をやってるの?」って彼女に聞いたら「知らない」って言うんですよ。子どもが何をやっているか親が知らないと、家で質問ができません。自主性を重んじるのと放任放置は全然違います。厳しいかもしれませんが、「忙しいからスクールや塾にお任せ!」は避けたほうがいいなと私は思います。
忙しいワーママでも取り入れられる英語教育とは
編集部:英語上達に限らず、子どもの力を伸ばすためには家族のコミュニケーションが必要なんですね。
浜家:先ほど、お風呂の中で20数える例をお話しましたが、それ以外にも食卓で 今日の出来事を子どもに尋ねるときなんかも工夫ができますよ。子どもがもし「野菜の英語をやった!」って言ったら「へー! じゃあこのお野菜は英語でなんて言う?」と食卓の野菜について質問してみるとか。
編集部:いつから英語を習わせるか気をもむ前に親がやれることはたくさんありますね! 他にも、忙しいパパママでもできそうなことはありますか?
浜家:忙しいパパママにオススメで気負わずに取り入れられることを2つ紹介しますね。まず1つ目は「1日10分の英語タイム」です。毎日どこかで10分時間を使って英語とふれあうことをおすすめします。
編集部:たった10分でいいんですか?
浜家:はい! 仮に週1日、1時間勉強しようと思うとハードルが上がるけど、1日10分なら続けられると思いませんか? 私はいま大人のコーチングもしているんですが、みなさん口を揃えて「時間がない!」とおっしゃるんです。でも10分は探せば絶対見つかります。というか、時間は意識的に作り出すものじゃないかな。
編集部:確かに! 10分なら忙しいワーママも朝なり夜なり時間は作れそうです!
浜家:10分を5分ずつに分けるもいいですよ。たとえば朝の5分と夜の5分とか。そこで2つ目のポイントですが、私はYouTubeの活用をおすすめしています。中には「え? YouTube?子どもに見せていいの!?」って不安に思われる方もいるかもしれませんが、実はYouTubeは最高の勉強ツールなんです。
筒井:私あまりYouTube は活用してなかったのですが、確かにいい教材がたくさんありますよね。しかも無料!
浜家:私は自分の生徒のLINEにYouTubeのリンクを送ることもあるんですが、LINE上で再生するとアプリで観るときのような広告が入らなくていいですね。あとは観たい動画を LINEの「ノート」に溜めておくのもおすすめです。私も小学6年生の息子のLINEによく送っています。
編集部:YouTubeとは意外でした! いまはスクールだけでなく英語の教材もたくさんあるので、何から買い与えたらいいか悩んでしまう方も多いと思います。でも、こうやって無料のツールもうまく活用できるんですね。
筒井:先ほどのイベントでもお話したんですが、私も割と無料サンプル教材とかを活用していました。ただ、どんな教材をやるにしても、「あれこれたくさんの教材を試さない」というのが英語教育の鉄則じゃないかなと思います。コレ! って決めた1冊を擦切れるまで娘とやりました。先ほど「英語は耳から」と浜家さんがおっしゃっていましたが、私も娘が幼稚園のころまでは英語のCDをずっと家でかけていて、その上で8ページくらいしかない絵本をひたすら読んでいました。同じことを繰り返すことで自然と娘が英語に興味を持ってくれました。
浜家:「1冊を擦切れるまでやる」「いろいろやらない」というのは本当に鉄則ですね。年齢にもよりますが、たとえば小学生だったら『Sight Words』なんかがオススメです。ボックスの中に薄い本がたくさん入っています。フォニックスをやったあとにこれを読むといいですよ。
筒井:英語が苦手な親もこれくらい簡単な教材であれば気楽にできますしね(笑)
浜家:『Sight Wrods』は、theとかatとかlikeとかそういうワードを絵を見ながらひたすら繰り返す教材です。たとえば「see」というワードであれば、「I see a cow」「I see a monkey」など全部リピートになっているので音で学ばせる感じですね。『Sight Words』はアメリカだったら幼稚園くらいの子がやるものですが、日本だと小学校1年生くらいからがいいですね。ちなみに『Sight Words』もYouTubeでたくさんいい動画がありますよ。しかも100個の『Sight Words』が12分の動画に収まっています。さきほどお話した10分トレーニングにも最適です。
編集部:さっそく試してみたいと思います! 浜家さんは、娘さんが小学生になった頃には自分から進んで英語字幕でアメリカのホームドラマを観るようになったとお話していましたね。小さいころから英語と親しんでおけばそんな風になれるものですか?
浜家:娘は幼い頃からアメリカの人気ホームドラマ『フルハウス』がお気に入りでした。ちなみに我が家では英語の作品は日本語字幕か英語字幕で観るので吹き替えにはしていません。娘が日本語が読めるようになった小学生のころから勝手に英語字幕で観るようになりましたね。そんな彼女は成長とともに『ハイスクールミュージカル』や『GLEE』を観るようになりました。
編集部:ドラマも立派な教材なんですね!
浜家:『フルハウス』は英語の勉強にぴったりですよ! 昔のドラマなので、ほんとにスタンダードなジョークなんかが入っていますし。日本でいうオヤジギャク的なものなので今はもう言わないようなこともあるけど、ベースとしてそういうものを知っておくことで今のジョークも分かるんですよね。
筒井:ワーママに限らず、子どもに英語を習わせたい親にとって「どのスクール」「どの教材」は常につきまとうとは思います。でも、やっぱりその子が英語を含めた学びがどれだけ好きになれるかだと思います。好きになってしまえばこっちのもの。親はどれだけ広い視野で子どもの選択肢を広げてあげられるかですね。
(後編に続く)
英語はこれからの社会を生き抜く子どもたちにとって必要不可欠なスキルだからこそ、親にとっては悩みどころも多いものですね。でも、お二人のお話を聞いて、忙しくても、親が英語が苦手でもやれることはたくさんあるんだ!と学び、心が軽くなりました。
後編では、浜家さんと筒井さんそれぞれの子育て、そしてバイリンガル教育の経験で感じたこれからの英語教育のあり方やジレンマなどを中心にお伝えします!
グローバル化社会のスタンダードや多様性時代の子育てのポイントが満載ですのでぜひお楽しみに!
プロフィール
浜家有文子(はまや ゆうこ)さん
英語コーチ/子ども英語講師
発音矯正トレーナー/キッズヨガインストラクター/テレビ・ラジオ ナレーター/イベント司会
幼少期にアメリカとオーストリアに11年間滞在。大学在学中に受けた テレビ朝日 ”CNN Headline” のオーディションがきっかけで、卒業後は同番組のキャスターとしてデビュー。日本語と英語で原稿を書き、生放送でニュースを伝える。また様々な海外アーティストのインタビューや海外レポートを経験。NHK”ビジネスワールド”などの語学番組も担当。J-Wave ラジオでは バイリンガルでいくつもの番組をナビゲート。結婚出産と共に活動休止し3人の子供をバイリンガルに育てることを通して、英語を教える楽しさを実感し 子供英会話教室を開設。10年以上 小学生から高校生まで英語を教え、2017年からは”Glowbal English”と題して大人も対象にした英語のティーチングとコーチングを開始。
筒井美華子(つつい みかこ)さん
ひめままサンフランシスコ・ベイエリア代表
Moisteane Beauty System License取得 美容アドバイザー
20歳で初海外、アルゼンチンブエノスアイレス大学、経済学部へ1年間交換留学。帰国後は幼少期から憧れていた客室乗務員の道へ。日系航空会社の国際線担当として9年間勤めた後、夫の大学院留学のため退社しシカゴへ渡米。娘が6ヶ月のときに日本へ帰国。英語を日常に取り入れながらも小学校受験を決め、国立小へ合格後、夫の赴任に伴い2015年よりサンフランシスコへ。2019年、アメリカ教育省が選ぶ優秀校に過去3度選ばれたGifted教育校へ娘が合格
文・インタビュー:小山 佐知子
ライター