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2023.12.01 2024/02/08

Z世代の早期離職に悩む企業が増加。
世代間ギャップを埋め、自律を促すコツ【後編】

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Z世代の早期離職に悩む企業が増加。<br>世代間ギャップを埋め、自律を促すコツ【後編】

企業では若手人材の早期離職が大きな課題となっています。
相互理解の不足から生じる“もったいない離職”を食い止めるための打ち手が必要——こう話すのは、株式会社リクルートマネジメントソリューションズの武石美有紀(たけいし・みゆき)さんです。

前編に続き、後編では育成者側と新人・若手側のギャップを埋めて、最適なアクションに替えるために必要な具体的な取り組みについてお伝えします。

ジェネレーションギャップをポジティブに生かす

武石 美有紀さん/オンラインで取材しました


編集部
前編では、「鍛え合うより『助け合う』。まずはZ世代を正しく知ることから」とうかがいましたが、違いを“相容れないもの”として捉えるのはもったいないなと感じました。

武石いつの時代もジェネレーションギャップはありますが、お話しした現在職場で起こりがちなことというのは、新しい価値を生み出すチャンスでもあると思っています。正解がない時代だからこそ、世代を超えてさまざまな強みや経験、価値観を持ち寄ることが重要ではないでしょうか。両者は新しい価値を共創していくパートナーになれると思います。

 

引用:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(2023年6月)「新入社員意識調査2023〜「個」の尊重へ向かうZ世代。生かすための鍵は「共通目的」と「セルフリーダーシップ」〜」

 

人材不足など、さまざまな課題に直面し本当に忙しい育成者世代からすると、細かいことを言わなくても動いてくれる部下はありがたいかもしれませんが、しっかり向き合うことでこれまで気づかなかった視点に気づくこともあります。

キーワードは「共通の目的」
目線をそろえたコミュニケーションがポイント

引用:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(2023年6月)「新入社員意識調査2023〜「個」の尊重へ向かうZ世代。生かすための鍵は「共通目的」と「セルフリーダーシップ」〜」


編集部
双方が歩み寄っていくうえで、どんなアクションが必要になるのでしょうか。

武石さまざまな策はあるのですが、協働するうえで必ず必要になるのはやはり対話ですね。特に「共通目的をもった対話」が必要です。価値観が違うからこそ、目線をそろえるためにお互いに共通した目的を立てるのです。

そもそも、これまではどちらかというと、目標や目的は一方的に決められて上から下に下りてきてそれに従って動くものでした。一方、これからの共創社会では目標や目的について、ともに意味付けしていくものへと変化していきます。個人単位、部署単位、そして企業単位といった形で、それぞれ分解して目的や目標と向き合うことで、全体的な共通目的が出来上がります。

編集部確かにトップダウンで目的や目標が下りてくるのと比べて自発性が生まれそうですし、一人ひとりの個人が「自分ごと」にしやすいですね。

武石そうですね。個人単位では、たとえば上司や同僚との対話を通して、自分の価値観やビジョンと照らし合わせながら意味付けをしていきます。対話というと「1on1する時間なんてない」や「そもそも対話ってどうすればいいの?」といったお声もあるのですが、たとえば今まで上司と部下の間で指示命令的な一方通行のやりとりしかしていなかった場合は、やり方から変えてみるといいかと思います。目標や目的に対して、どんな点を魅力に感じているのかなど、コーチング的な関わりがベースになってくると、個性を生かして共通目的を共有することができると思います。

編集部Z世代は「昇進したい」「出世したい」「稼ぎたい」といった価値観を持つ人は少なそうですが、そうした人と目標を握る場合はどうしたらいいでしょうか。

武石確かに、Z世代は、出世や高収入よりも自分らしい働き方ができたりすることに価値を感じる傾向にありますよね。業務のどの部分で自分の強みを生かせるのか、そしてその結果、どんな形で成果につながりそうなのかについて、一緒にシミュレーションしていくといいのではないでしょうか。

編集部部署やチーム単位ではいかがでしょうか。

武石「私たちってどんなことを目指しているんだっけ?」とか、「どういうところを大切にしようか」といった部分を、意見交換という形で話してみるのがいいと思います。

新人・若手の育成についてもいえることですが、今までのように育成担当者だけが面倒を見るのではなく、チームや組織で連携していくことがとても重要になっていきます。たとえば特定のテーマについて困っている人がチームにいた場合、チームの中でそれが得意な人がいれば育成担当かどうかに関わらず対応するとか、他の部署でそれが得意な人につなぐなど、組織ぐるみのサポートですね。

 

引用:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(2023年6月)「新入社員意識調査2023〜「個」の尊重へ向かうZ世代。生かすための鍵は「共通目的」と「セルフリーダーシップ」〜」


あとは、社外のプロフェッショナルも該当すると思いますし、新人同士、同じ入社タイミングの人がいたらそこでの学び合いの場をつくるとか。こういった意図的なしくみをいかにつくるかが非常に重要になってきているかなと思っています。

実際に実施されて、組織の風土が変わってきたという企業もいらっしゃって、本当に新人育成だけじゃなくて、人の成長をどうやって支援しようとか、相互に交流をどうはかっていこうかというところで、かなり組織内の連携が深まったという企業もありますのでお勧めしています。

セルフリーダーシップの力が自律学習・成長の基盤となる

編集部どんな環境でも、自分でよりよい状況をつくっていくためには「セルフリーダーシップ」が大事だと御社では発信されていますが、セルフリーダーシップについて教えてください。

武石新人・若手の成長・育成においては、「自分起点で動くことで、よりよい状況を自らつくっていく力」が鍵になります。文字通り、自分自身に対して発揮するリーダーシップのことをいいます。

引用:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(2023年6月)「新入社員意識調査2023〜「個」の尊重へ向かうZ世代。生かすための鍵は「共通目的」と「セルフリーダーシップ」〜」

 

武石弊社ではセルフリーダーシップを高める研修も行っていまして、ワークショップの中でプチ成功体験を積んでもらいながら、それぞれが目指したいよりよい状況を目指していきます。

具体的には6つの「スイッチ」を意識していただき、やってみたらいい結果になりましたという小さい成功体験を積んでいただいて、1on1等でそれを認知してもらうところまでを少しずつ繰り返していくことがすごく重要かと思っています。

お話ししてきたように、新人・若手側は自律に対する苦手意識が強く、その背景には成功体験の不足が挙げられます。なので、日頃の対話に加え、こうした研修などで小さな成功体験を積み重ねていくことで、自信を持ってアクションできるようになります。周囲でフォローする側も、目標や目的を共有する中で、多様性に触れながらともに成長できるのではないでしょうか。

編集部武石さん、前編・後編に渡り、大変貴重なお話をありがとうございました!

ダイバーシティが叫ばれて久しいですが、改めて多様な他者と働く難しさ、そしておもしろさを知った取材でした。一方的な価値観に囚われているままだと成長や創造のチャンスを逃してしまいかねません。「ものの見方を変える」というのは意識しないと難しいものだからこそ、異なる世代やバックグラウンドを持つ人たちと協働する中で、セルフリーダーシップを高めていきたいと強く感じました。

プロフィール

武石 美有紀 さん

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

2016年、株式会社リクルートキャリア(現株式会社リクルート)入社。企業の採用領域の課題解決支援や、社内の新人研修の企画・研修講師業務に携わる。現在は、株式会社リクルートマネジメントソリューションズにて、主に新人・若手社員向けのトレーニングサービスの企画・開発に従事。

ライター

小山佐知子

ラシク編集部  旧編集長

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