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2020.10.29 2023/05/31

テクノロジーで豊かな親子時間を!
Withコロナ時代のニューノーマルな育児とは?

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テクノロジーで豊かな親子時間を!<br>Withコロナ時代のニューノーマルな育児とは?

テクノロジーの進化により、今は子育ての情報収集や記録管理を効率的に行えるようになりました。一方、いまだ社会には「育児は手間ひまをかけてこそ愛情」という価値観も根強く残っており、子育て世代はテクノロジーを活用した利便性の追求との間で揺れ動いています。

このような中、2018年に子育てITサービス企業が集結した共同組織「子育Tech(コソダテック)委員会」が発足し、テクノロジーを使ったゆとりある子育てを提唱する取り組みが始まりました。
今回、「子育Tech委員会」に参画する企業からママ3名に集まっていただき、「子育て×テクノロジー」の現状とwithコロナ時代の新しい子育てスタイルについて話を伺いました。

子育Tech -テクノロジーを使って子育てをより豊かに-

コロナ禍で突然始まったステイホーム。仕事で、家でどう変わった?

編集部:みなさんは「子育Tech委員会」に参画する企業にお勤めで、現役子育て世代のママでもありますね。今年はコロナの影響でステイホーム期間も長かったですが、仕事や育児にどのような変化がありましたか?

 

彦坂真依子さん(以下、敬称略。彦坂):私は小学生低学年の娘の母ですが、ステイホーム期間もこれまでと変わらずに過ごしていました。お互いにストレスにならないために、娘は学童に行き、私は仕事をしてこれまでの生活と変わりなく過ごそうと心がけていました。あえていうなら毎朝、お弁当を作るために5時に起床するようになったことでしょうか。

 

齋藤明日香さん(以下、敬称略。齋藤):我が家は小学生と未就学児を含め、全員で在宅していました。上の子どもたちは手がかからないと思っていましたが、意外に宿題のフォローが大変で…… 子どももお母さんがそばにいると相手にしてほしくなってしまいますし、仕事は通常の半分もできませんでした。

 

森屋千絵さん(以下、敬称略。森屋):私はコロナ禍を機に仕事がリモートでもできるようになったため、東京から実家のある静岡に拠点を移しました。現在子どもは保育園に通っていますが、東京と地方の保育園の違いに驚く日々です。

 

編集部:みなさんそれぞれに変化があったようですね。ちなみに、ご家庭での過ごし方はどのように変わりましたか? おうち遊びや習い事、密を避けるレジャーなど何か工夫されていることがあれば教えてください。

 

彦坂:私の周囲ではトランポリンを購入している家庭がとても多いですね。我が家も購入しようか検討中です。あと、もう少し上の学年の子どもたちはボードゲームで遊んでいると聞いています。

 

齋藤:トランポリン、いいですよね! 我が家でも活用しています。わずかなスペースで子どもの体力維持に役立つので重宝しています。

 

編集部:トランポリン大人気ですね! ネット販売では売り切れ続出だったと聞いていたので納得です! お子さんの学習面はいかがでしょう? コロナ禍を機に、子どもの生活にもオンラインが浸透してきましたね。

 

彦坂:私の周辺では、4月以降、オンライン英会話や通信教育を申し込んだというママが多かったですね。保育園や幼稚園、学校に行けない間に何かしらオンラインでできることをと考えた保護者は多かったですね。

里帰り出産で感じたジレンマ。IT育児に感じる母親たちの本音

株式会社カラダノート 彦坂真依子さん

編集部:ステイホーム期間中、子育てではスマホを活用する時間が増えたという声も寄せられています。育児をしていると、スマホを使うのは便利だと感じる一方で、どこか後ろめたく感じる人も多いのではないでしょうか。

 

彦坂:まさに8年前の私がそうでした。里帰り出産している時、スマホを使って授乳記録をつけていたら、実母から「スマホ見ながら子育てしちゃダメだよ」と注意されたことがありました。

 

編集部:それはモヤモヤしますね……

 

彦坂:「別にゲームをして遊んでいるわけじゃなく、メモをとっているんだよ」と話してもなかなか理解してもらえなくて。この経験から、テクノロジーによって子育てが楽になるということを多くの人に理解してもらいたいと強く感じ、社内で「子育て×テクノロジー」=「子育Tech」という言葉を作りました。弊社では、「授乳ノート」や「陣痛きたかも」などママ向けのアプリを展開しており、アプリやITサービスを活用してもっと楽に子育てができる社会を目指したいと考えています。

 

編集部:「子育Tech」という言葉の誕生が、のちの子育Tech委員会発足につながるのですね。

 

彦坂:そうですね。ただ、やはり一社のベンチャー企業が新しい言葉を使って訴求していても、なかなか世の中には伝わりにくいと感じていました。そこで共同提唱という形で委員会発足という運びになりました。現在は7社の皆さんと一緒に活動を進めています。

 

編集部:「子育て×テクノロジー」という考えは新しい子育てのスタイルでもあるため、世代間ギャップが生じやすいと感じています。先ほどの彦坂さんの里帰り出産のお話にもありましたが、実母や周りからの「こうあるべき」という意見によってジレンマを感じた経験はありますか?

 

齋藤:ありますね。実母にはしつけについて「子どもが叩いたときは怒らないとダメよ」、「ひらがなの書き順は正しく覚えておかないと恥ずかしい思いをするわよ」など、生活の細部にわたるまで言われることがあります。私にとってはさほど大きな問題じゃなくても母にとっては絶対にダメなのでしょうね。「何を大事と捉えるか」は人それぞれだと思いますが、この価値観が相入れないときにどちらも譲れず、衝突してしまうのだと思います。子どもを大切に思う気持ちは実母も私も同じですけどね。

 

森屋:私もあります。実母は専業主婦でしたが、私に2~3歳頃から複数の習い事に通わせていたこともあり、「そろそろ子どもに英語やピアノをやらせないの?」と何度も言われます。習い事はどうしても平日がメインなので「働いているからできない」と伝えてもなかなか理解してくれません。

また、母は朝ごはんのおかずに5品ほど作らないといけないと思い込んでいますが、私は毎朝忙しくてそんなには作れません。それについても色々と思うところはあります。

 

編集部:周囲との価値観の違いから、「私はこうしたい。でもそれではいけないのかな」とママたちが葛藤している様子が伺えます。実際に子育Tech委員会の活動をするなかで、ママの中には育児にスマホを使う事に対して心理的ハードルがあるように思いますか?

 

彦坂:そうですね。2018年に弊社が実施した「子育て×テクノロジーに関する意識調査」のなかで、「子育てにITやテクノロジーを利用すると便利だと感じますか?」という質問に対しては97%の人が「便利だと感じている」と回答しています。一方、「手作りや手間ひまをかけることが愛情であると感じますか?」の質問にも57%の人が「感じている」と回答しているのです。

 

「子育て×テクノロジーに関する意識調査」より 株式会社カラダノート提供

彦坂:テクノロジーの便利さを理解しつつも、同時に「手作りで何かをやってあげたい」という気持ちを持っているのが、今まさに子育てをしている人たちの価値観なのだと思います。

 

編集部:なるほど。テクノロジーを活用するということは子育てを効率化することに繋がりますが、手作りは時間と労力を費やす作業であり、テクノロジーを活用する目的とは対極にあります。これはジレンマを生みやすいかもしれませんね。

 

彦坂:子育Tech委員会としても「手間ひまをかけることが愛情」という考え方は否定していません。それよりも、テクノロジーが便利だと分かっていても使いにくいというところに課題があるのかなと感じています。

 

編集部:というと?

 

彦坂:アンケート内の「育児中にスマホなどを利用していて、周囲から注意を受けたり否定的なことを言われたことはありますか?」の質問に対して、「携帯ばかり見てないで」「授乳の時は赤ちゃんの顔を見てあげないと」と言われるなど、約6割の人が何らかの注意を受けるというネガティブな反応をされた経験を持っていることがわかりました。周りからは親が楽するためにスマホに育児させていると捉えられ、スマホは便利だけど周囲の目が気になるから使いづらいと感じてしまうのかもしれません。

 

編集部:便利なスマホを上手く子育てで活用していくためには、「子育てに効率化や利便性を求めてはいけない」という価値観を社会全体で払拭していく必要があると思います。

テクノロジーでニューノーマルな子育てを。もっとラクに、もっと楽しく!

株式会社クレヨン 取締役 森屋千絵さん(右)と株式会社VOYAGE MARKETING 齋藤明日香さん(左)

編集部:スマホだけに育児をさせる「スマホ育児」にはデメリットが存在するのも確かかと。みなさんが提唱されている「子育て×テクノロジー」の定義は、一般的な「スマホ育児」の概念とはどのように異なるのでしょうか?

 

彦坂:「スマホ育児」と聞くと、代表的なものとして子どもにスマホを与えて大人がゆっくり過ごすシーンが想像されます。しかし、私たちは「ITやテクノロジーを活用することで親子の時間にゆとりが生まれ、新たに親子のコミュニケーションを図ることができる」と提唱しています。つまり、テクノロジーを使う目的は「大人のため」ではなく「親子のため」のものです。

 

編集部:ニューノーマルな子育てでは、あくまで親子が楽しく過ごせて、子育てを楽にしていくということがポイントですね。では実際の生活のなかでテクノロジーをどのように活かし、育児を楽にしていけるのか、皆さんの取り組みについて教えてください。

 

齋藤:我が家の場合、床掃除はロボット掃除機に任せる、お買い物はオンラインで定期便登録して毎月届くように申し込んでおくなど、できることはなるべくテクノロジーに任せるようにしています。

また、弊社が開発した「ポスリー」というアプリは、幼稚園や小学校からもらってきたプリントをカメラで撮影してアプリ内で管理することができ、お便りをファイリングしたり、カレンダーに書き込んだりする手間を省くことが可能です。私もこのアプリを使っていますが、プリント整理の手間が省ける分、空いた時間で子どもに絵本を読んだり、抱っこしたりとわが子との大切な時間を増やしていけるのが家族にとっての大きなメリットです。

 

編集部:確かにママ・パパの心のゆとりは家族全体を幸せな雰囲気にしますよね。

 

齋藤:本当にその通りだと思います。今は核家族が主流になり、親だけで育児をする家庭が増えていますから、子育てだけでもやるべきことが多いのに、それに加えて仕事もするとなると完全にキャパオーバーになります。だからこそ、日々のやるべきことを楽にするための工夫が必要だと思います。

 

編集部:先ほど「任せる」というキーワードが出てきましたが、自分でやるのを諦める、というネガティブな思考から、テクノロジーに任せるというポジティブな捉え方こそ、ニューノーマルな育児に必要な素養なのかもしれませんね。

 

森屋:私は自身の経験から、育児中はモヤモヤしやすい時期だなと感じています。話す相手が減ったり、復職への不安があったりと何かしら気になることを抱えている人が多いのではないでしょうか。夫にはなかなか妻の悩みを理解してもらえないし、特にこの時期は女性にとってキャリアの分岐点にもなりやすいので同志のようなママ友を見つけて悩みを共有できたらいいなと思っています。

弊社が開発したアプリ「Fiika(フィーカ)」は「ママ友」を作って情報交換ができるサービスを提供しています。テクノロジーを使って子育ての不安やモヤモヤを解決していくのも一つの方法だと思います。

 

編集部:現代の子育ての悩みをテクノロジーで解消できるというのは親にとっては非常に心強いですよね。

 

森屋:そうですね。リアルな場だとママ友を作るのが難しいと感じる人も少なくありません。また、最近はコロナ禍の影響で出会いの場も減っているので、ママが抱えるモヤモヤや不安を減らせるきっかけをテクノロジーが作れたらいいなと思っています。

 

編集部:今後はテクノロジーといかに上手に付き合い、使いこなしていけるかが、まさにニューノーマルな時代の子育てに求められることなのかもしれませんね。

彦坂さん、齋藤さん、森屋さん、本日はありがとうございました!

親が様々な形で影響を受けやすい「手間ひま」という言葉。子育てでは、時間と労力をかければ愛情があると思われることが多く、「手間ひま神話」にとらわれがちです。ひと手間かけることで感じられる愛情があるように、テクノロジーの活用によってゆとりある親子の時間が増えるとすれば、それもまたかけがえのない瞬間だと思います。手の込んだ料理を作る一方、騒ぐ子どもたちにイライラするというカオスな子育てではなく、親子が心を通わせ、本来の幸福感を取り戻すためにテクノロジーは大きな役割を果たしてくれるのではないでしょうか。

プロフィール

彦坂真依子さん

株式会社カラダノート 広報ブランディング部 部長

株式会社カラダノート 広報ブランディング部部長
1986年愛知県生まれ。津田塾大学卒業後、2009年に株式会社クイック入社。2013年に株式会社エーピーカンパニー(現エーピーホールディングス)に入社し広報に従事。2018年株式会社カラダノートに入社し、広報部の立ち上げを経験し、2019年現職。

齋藤明日香さん

株式会社VOYAGE MARKETING メディア本部

株式会社VOYAGE MARKETING メディア本部 Webディレクター
1983年埼玉県生まれ。2006年に株式会社VOYAGE GROUP入社。2018年に社内新規事業としてプリント整理アプリ「ポスリー」を運営する株式会社cosoralを立ち上げ。2019年株式会社VOYAGE MARKETINGに吸収合併し、2020年現職。9歳、7歳、4歳の3人の子どもを育てるワーキングママ。

森屋千絵さん

株式会社クレヨン 取締役

株式会社クレヨン 取締役
1986年埼玉県生まれ。2009年上智大学卒業後、外資系企業数社にて営業、トレーダー、ライターを経験。育休取得を経て、株式会社クレヨンを創業、事業開発とアプリ開発に従事。Fiikaアプリは2020年1月にローンチ後、アクティブユーザーが増えている。よりママに寄り添ったサービスを実現すべく奮闘中。

文・インタビュー:倉沢れい

ライター

倉沢れい

ライター

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