「私、このままでいいのかな……」
男性社員が多い企業で働く2人のワーママの葛藤と新たな挑戦

「私、このままでいいのかな?」

結婚や出産を経ると、ある時ふっと「このままずっと今の職場でやっていけるだろうか」と、今の働き方や生き方について漠然とした不安や疑問がうまれることがあります。

今回、ふたりの女性にオンライン取材をしました。ふたりとも、男性社員が多い企業で育休・時短などの制度を活用し、10年以上働き続けてきた女性です。彼女たちは働くなかで「私、このままでいいのかな?」と自身に問いかけ、それぞれ見事な「自分の答え」を見つけました。今回のコラムでは、そんなふたりの言葉を引用しながら、女性の働き方について考えていきたいと思います。

コロナ禍で時間ができた分、あるいは常よりハードな条件で働き続けている分、「私の働き方はこれでいいの?」と今どこかで思っているママたちへ、この記事が少しでも参考になり、同時に応援の声として届けばいいなと思っています。

なぜふたりは「変化」を求めたのか

中古車買取販売店「ガリバー」を運営するIDOM社に児西さんは13年、下村さんは19年勤めています。norico(IDOM社運営のクルマ情報サイト)に掲載された『ママたちのクルマ事情』という座談会の進行役を務めさせていただいたのがきっかけで、IDOM社に勤務するふたりの女性のお話を伺えることになりました。

ふたりに共通しているのは、仲間や上司に恵まれていることと、会社が好きなこと。「だから、自分自身も会社もこのままでいいのかな、変えられるんじゃないかなって迷ってきたんです……」と教えてくれました。

子どもが生まれ、産休・育休から復帰して、しばらくたった頃ですね。少しだけ余裕ができたとき、改めて自分の働き方やこれからについて考えるようになりました。このまま週5日、フルタイムで働くことをどれだけ続けられるだろうかと思いました。妻であり、また母となり、「前と同じにはできない」ことが分かったんです……

その上で「私はこれがやりたい!」という夢や、理想の働き方について初めて真剣に考えたんです。振り返ってみると学生時代から今まで、私は自分の夢というのを持ったことがなかった。だから、「私はどうしたいの? 何をしたいの?」と自分に問いかけ続けました。(児西さん)

2019年、私は自分の働き方についてとても悩みました。それはもう、これまでにないくらい。時短で以前のようなパフォーマンスを出せる? 子育てと両立しながらフルタイムで働ける? ……と。時短制度を利用しながらも、フルタイムとの差や働き方の違いに、この先の不安を感じていました。だからこそ「ここに居続けていいのかな」「将来はどうなのかな」と悩んだのです。「この先はどう働けばいいのだろう」という不安があって……

そんな時に社内の女性と話す機会があり、結婚や出産した人の多くが似たような漠然とした悩みを抱えていることを知りました。さらに「結婚しても子どもがいても、働き甲斐があって自身の能力を最大限発揮できる会社、もっと女性が活躍している会社へと変えていきたい。それが会社の成長に繋がる」と話している女性と出会い、まさに同じ考えだと思いました。

大好きな会社で大好きな仲間のために今私にできることを考え、女性視点でアイデアを出し提案をして働きかけていくべきではないか。IDOMにはチャレンジする風土があるんです。それが動き出すきっかけとなりました。(下村さん)

ふたりとも、育休後に復職し、しばらくした時に「あれ? 私、これでいいの?」という思いが生まれた気がする、と話してくれました。

「自分の働き方を見つける」 児西さんが手にしたリアルな夢

児西さんのお話で印象に残っているのが、「私はこれまで夢をもったことがなかったんです」という言葉です。目標をはっきりと定めて人生を設計する人もいるけれど、与えられたところで結果をだしつつ、やりたいことや夢や何をしたいかなんて考える余裕なく過ごしてきた人も少なくありません。

児西さんは、「今までは夢なんて考えたことがなくて……」と肩をすくめ、それから一度伏せた目をあげ、「だからこそ何かを見つけたい! と思って、いきついたのがWEB制作でした。パソコン1台があればできる仕事、在宅も含めて柔軟な働き方ができる、手に職をもつことが具体的な目標になりました」と穏やかな口調で答えてくれました。

児西さんは、「自分だからできること、やりたいこと、柔軟に働けること」を考え、仕事を継続しながらWEBデザイナーの勉強をスタートします。彼女が初めて「自分の夢ってなんだろう」「自分がやりたいこと、今望んでいる働き方ってなんだろう」と考えた結果です。

その後、彼女は社内でサイトのデザインやコーディングを行う仕事に就きました。一般的に女性も多い職種と思いますが、児西さんの部署では女性はひとりだけ。男性が多い職場は以前と変わりません。一方で、このようにも続けました。

コロナ禍の影響で結果的にテレワークとなりました。実際に家で仕事をするのは保育園に子どもを預けられない今は正直大変です。でもとにかく、会社だけではなく様々な働き方ができるスキルを身につけたことは正解だったと思います。周りに迷惑をかけないよう、「ママだから」を言い訳にせず、やっていきたいです。

児西さんは自分自身を変えることで「会社のなかで働きやすい居場所を作った」わけです。さらにたとえば今後もし「子育ての状況や家庭環境によってフルタイム勤務ができないと思ったとしても」リモートワークも選択肢のひとつとしてあります。

「このままでいいのかな?」の答えは、自分が変わること、でした。

会社に流されるのでもなく、会社に抗うのでもなく、今の会社でも引き続き働けて、なおかつ自分が求める働き方に少しでも近づける方法を現実的に選び、躊躇せずにそのためのスキルを学び、しっかり会社内の異動を実現させたのです。

「大好きな会社をもっともっと良くして働きやすくしたい」下村さんの挑戦

一方で下村さんは「より働きやすい会社に!」とIDOM社独自の「さくらプロジェクト」に参加しています。

「さくらプロジェクト」とは、女性がイキイキ働ける職場を目指して2008年に立ち上がったプロジェクトで、出産後の復職支援や制度設計だけでなく、活躍推進もテーマに、増加する女性営業スタッフのサポートも行っています。

ところがこのプロジェクト、発足当時に比べてここ数年は大きな変化がみられなかったそう。「せっかく社内に女性社員に向けたプロジェクトがあるのに活動自体まだまだ社員に届けられてないのはもったいない!」「これを立て直そう!」という動きが社内にあることを知り、下村さんは今、積極的にさくらプロジェクトに参加しています。

日本の社会では、結婚すると女性の働き方は固定されがちで、働ける部署やポジションも限られてしまうところがまだまだあります。会社がそうしているのではなくても、なんとなく「今のまま続けるのは厳しい」と感じる女性社員が多いのは事実です。

IDOM社では女性もアグレッシブに働ける環境があります。ジョブローテーションもあり、様々な経験も積めます。でも結婚後は環境の変化とともに違和感がある。同僚や上司と良い仲間に恵まれても、どうしても自身の選択肢が狭くなってしまう。

私は最終的にさくらプロジェクトによって、女性に限らず会社の中での「少数派」でも多様な働き方で最大限の力が発揮できる「多様性を活かせる会社」、それが当たり前と誰もが思うような風土・それに伴う仕組みや制度の確立ができるといいなと思っています。

今はまず、人数の少ない女性社員に焦点をあて、結婚したら続けられないんじゃないか、という疑問がうまれない企業風土を少しずつ築き上げていきたい。結婚前も結婚後もシングルでも、女性が楽しく活躍できれば会社はもっと成長すると思うからです。

それは結婚や個々のライフイベントにとらわれない女性社員の活躍が会社の成長にもつながると感じています。

下村さんはニコニコしながら、ときおりピシっと強い口調で語ります。懐の深さを感じさせる独特のたたずまいがあり、下村さんが多くの後輩女性に慕われ、頼られていることもうなずけます。

悩めるニッポンのお母さん! 一緒に乗り越えていきましょう

柔軟に対応できる力を武器にして生活スタイルを崩さず、会社に自分の席を新たに作り、これからの人生に向かっていこうとしている児西さん。仲間と共に少しずつ「新しい風」を大好きな会社に吹き込んで、停滞しがちな企業風土に風穴をあけようとしている下村さん。

ふたりとも「迷った、悩んだ、でも会社を辞める選択肢はとらなかった」と、そこに会社に対する愛着、愛情を感じ、大切に思うからこそ「自分が変わる」あるいは「会社と共に変わっていこう」という答えを見つけられたのです。

肩をゆすり笑いながらニッポンのお母さん代表! という雰囲気で話す下村さんは、ときおり鋭い感覚で「キャリアや会社の体制」について指摘しました。ズバっと会社の課題や制度に切り込みつつ、下村さんからはIDOM社への愛情もこぼれおちてくる。「好きな仲間がいて大事な会社だから、変えていけること、変えてほしいことをどう伝えて改革していくかチャレンジする」姿勢に「ニッポンのお母さんは強い」ことを改めて思い出しました。

言葉を選びながら、噛みしめるように「私の夢」を語ってくれた児西さんは、店舗業務から社内オペレーション業務とジョブローテを渡り歩き、一転、自分がかかげた目標にむかって学び、スキルを得て、新しい働き方を実現しつつあります。今ある状況や制限に屈せず、文句を言わず、でも決して自分がめざしているものをあきらめずに一歩一歩確実に歩んでいく。ああ、やっぱりニッポンのお母さんは強いなぁ! と感嘆せざるをえません。

 

考えてみれば、私もあなたもニッポンのお母さんです。保育園までダッシュして帰りにはスーパーの袋を2つ持ち、泣き叫ぶ子どもを片腕に抱えてベビーカーを引っ張って帰宅する、力持ちのニッポンのお母さん。子どもを寝かしつけながら化粧したまま寝落ちして、夜中にハッとめざめて「ま、いっか」と子どもの寝顔にほんのちょっぴり癒される、大きなハートを持つニッポンのお母さん。

ニッポンのお母さんは迷ったり悩んだりゲンナリしたりイラっとしたりしながら、でも、今日も頑張っている。迷うことも、ふいに「これでいいのかな」と思うことも、答えが簡単に見つからなくても、ニッポンのお母さんはそれでも今日も明日も明後日も頑張ることでしょう。

コロナによる閉塞感が日々、家族や私たちが住む街をじりじりと締め上げて厳しい日々が続きますが、きっとニッポンのお母さんたち、乗り切りますとも!

IDOM社でがんばるふたりにエールを。これを読んでいるあなたにもエールを。一緒に行きましょう。みんなで生きましょう。がんばれ、ニッポン! がんばれ、ニッポンのお母さん! ……と、おもわず応援したくなった。そんな前向きなパワーを与えてくれた取材でした。

ライター 大橋礼
年の差15歳兄弟の母。DTP会社勤務後、フリーで恋愛・料理・育児コンテンツを執筆中。今や社会人長男のママ仲間とは「姑と呼ばれる日」に戦々恐々しつつ、次男の小学校では若いママ友とPTAも参戦中。飲めば壮快・読めばご機嫌! 本とお酒があればよし。

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