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2019.07.17 2023/02/15

ブランクからの復職。職歴や条件だけじゃない、自分らしく働くために大切なこと
~第2回・元駐妻向けキャリア支援プロジェクト(イベントレポート)

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ブランクからの復職。職歴や条件だけじゃない、自分らしく働くために大切なこと<br> ~第2回・元駐妻向けキャリア支援プロジェクト(イベントレポート)

夫の海外駐在に帯同した妻、「駐妻」。

彼女たちは仕事を退職・休職して帯同している場合がほとんどで、帯同期間中は仕事ができずブランクを抱えることとなります。そのため日本に帰国後も復職に二の足を踏んでしまう方が少なくありません。

 

働きたいのに踏み出せない元駐妻のキャリアを考えるべく発足したのが、ママ支援コミュニティHimemama(ひめまま)と本ラシクの共催による駐妻向けキャリア支援プロジェクトです。

「新しい働き方を知る、みつける、考える」をテーマに始動したこのプロジェクトは運営メンバーとして元駐妻も多数参加している、元駐妻の元駐妻による元駐妻のためのキャリア支援なのです。

 

今回レポートするのはそのプロジェクト第2回目の様子です。

先だって開催された第1回目では「今」から見た「過去」を振り返るワークが行われ、駐妻たちが抱える喪失感の原因は何なのかを紐解いていきました。

2回目となる今回は「未来」に目を向けた内容となっています。

 

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第1回目の様子はコチラ!

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共感できるようで、中身はそれぞれ異なる“自分らしい働き方”


前回のワークで参加者のみなさんの共感を呼んだ、「また働くための軸が欲しい」「仕事と家庭のバランスが取れるような働き方、仕事を見つけたい」「海外での経験や、駐妻になる前の仕事の経験を今後も活かしたい」という言葉たち。

これらは確かに想いを共有しやすい言葉ではありますが、ひとりひとりが思い描く具体的な内容は実は異なっているはずですよね。

 

そこで、今回のゴールは「自分らしい働き方を、自分の言葉で表現する」と設定されました。

 

仕事を探す上でも、お給料や勤務時間等の条件だけでなく、自分が何を大事にしたいのかをきちんと言葉で伝えることで、紹介会社や雇用主に対してもより明確に働き方を共有することができるようになるでしょう。

 

とはいえ、その「言葉にする」という作業がとても難しいのですよね。そもそも言葉にする前に、まずは自分が思う“自分らしい働き方”を自覚する必要があります。ということで、早速“自分らしい働き方”を深堀りするためのワークが行われました。

「何から手をつけたらいいのかわからない」の原因とは


前回同様、キャリアコンサルタントの小橋友美さんを講師として招きワークが開始されました。きっと自己分析のワークが始まるのだろうな…… という雰囲気の中、まず配られたのはなんと実際の求人票でした。

最初は、「楽しそう」「在宅可って書いてある!」「時短正社員だ!」「お給料いいですね」といったポジティブな言葉が飛び交っていました。しかし、より具体的に自分の生活と照らし合わせて考えてみると、この条件では働けなさそう…… そんな声が多くあがりました。

 

「この求人は、もし私がみなさんのような元駐妻の話を全く聞いたことがない状態で『海外の経験を活かしつつ、仕事と家庭のバランスも取りたくて』と聞いたらどんな仕事を紹介するかな? という目線で選んだものです。

実際には、短時間の仕事ならいいというわけじゃないし、英語を使う仕事だからやりたいと思うわけじゃないですよね。

結局は自分らしい働き方を自分の言葉で表現していかないと、どんな転職エージェントに行ってもピンとくるものにはたどり着けないというわけです。

でも、そもそも言葉で表現する前に、イメージする自分らしい働き方とは何なのか、知っておく必要がありますよね。

実は今、みなさんに求人票を見ながらやっていただいたワークは『環境理解』というものなんです」

そう言って小橋さんが紹介してくださったのは、カーニー氏が提唱した「人はどのようなルートを辿って意思決定するか」を示したマトリクス。「環境理解」と「自己理解」の両方を進めることで計画的な意志決定が可能になるということを表しています。

環境理解とは、自分が置かれている環境への理解のこと。キャリアという観点では、今の雇用環境や求人情報の理解が進んでいるかどうかを指します。駐在帯同を経て日本に戻ったばかりだと、今の日本での雇用のトレンドが掴めず、自分が再就職市場でどんな評価なのか予想することもできない、つまり環境理解が十分でないということもあり得るでしょう。

 

環境理解がままならず、自己理解も進んでいない状況だとマトリクス上の“混乱型”に当てはまり、何から手をつけたらいいのかわからない、という状態に陥るのだとか。

「また働きたいけど、何から手をつけたらいいのかわからない……」とは、元駐妻さんからよく出てくる言葉。それは環境理解と自己理解が共にできておらず、意思決定をする上で混乱していたから、ということなのですね。

 

「今求人票を見ながら、環境理解ってどんなものか、ちょっとだけ体験していただきました。実際に働いている人や求人を見て、『これは合う』『これは合わない』と考えるだけでも環境理解は進みます。環境理解が進めば、一歩前進。次は自己理解を進めて、計画的に意思決定ができる状態にもっていきましょう!」

小橋さんのエールを受け、次のワークへと進みます。

キャリアの棚卸しをしても、ピンとくる仕事に出会えないのはなぜ?


続く自己理解を深めるワークは、働き始めてから今までの出来事を曲線で表現していく「ライフラインチャート」と、その中で一番プラスとなった出来事をさらに深堀りするというもの。

 

ここで小橋さんから、このセミナーの「核」とも言える説明がありました。

「こうした仕事振り返りのワークをやっていると陥りがちなことがあります。それは細かくやればやるほど個別性が高い内容になってしまうということです。

例えば『あのときイベントの仕事で成功してすごく嬉しかったから、次はイベント企画ができる会社で働こう!』という風に、経験のある仕事しか選べなくなってしまう。

でも本当は、イベントで打ち出した商品に価値を感じていたのかもしれないし、人前で話す才能が開花して嬉しかったのかもしれないんですよね。

ここでやりたいキャリアの棚卸しは、個別化ではなく、むしろ普遍化です。

『どうすれば自分はハッピーなのか』を、過去の体験を普遍化して知るためにこのワークをやります」

 

キャリアを振り返り、ピークだった頃の出来事を普遍化して出てきた“自分がハッピーになれる仕事の本質”を、小橋さんは“ライフキャリアの幹”と表現していました。それこそが、今後仕事をしていく上で大切にしていくべきキーワードであり、「私らしい働き方」の軸となるのだそうです。

これからの働き手に必要な“「私×仕事」のストーリー構築力”

それにしても、「キャリアの普遍化」とは聞き慣れない言葉ですね。

キャリアの棚卸しをすれば自分に合う仕事がわかるのだろうな…… そう思っていた参加者のみなさんも、ちょっと不安げな表情です。

 

そこで小橋さんが話し始めたのは、働く人を巡る社会の大きな変化でした。

「こういう職歴ならこの仕事ができますよ、とスペックだけで転職できる時代ではなくなりつつあります。それは社会のニーズや技術の変化が早く、スキルの多くがすぐに古くなるからです。職歴や特定のスキルにこだわって転職しようとするのではなく、活かしたい知識や経験をどう仕事に落とし込むか、そのストーリーを自分で考えなければいけない時代が来ます

これからは『私』と『仕事』を掛け合わせて、どんな仕事ができるかな、どんな仕事を生み出せるかな、と”働くストーリー” を考える力が求められるようになると私は思います。それが “『私×仕事』のストーリー構築力”です」

 

終身雇用が当たり前ではなくなりつつあるこのご時世、離職や転職はもはや珍しいものとは言えなくなってきましたよね。それに伴い、会社から与えられた社内キャリアパスに則って仕事をしていけば安心、という時代も終わりを迎えつつあります。

これから働き手に求められるのは、自分で自分のキャリアパスを描く力。それが“「私×仕事」のストーリー構築力”というわけですね。

バラバラに思える活動も“ライフキャリアの幹”でつながっている


難しいと思われた今回のワークでしたが、会場では活発な意見交換が行われ、みなさん熱心に課題に取り組んでくださいました。

そして、自分でも気が付かないうちに「私×仕事」ストーリーの構築を始めていた参加者も。彼女の発言を一部ご紹介します。

グループではまず「やっぱり、時短とか週3勤務みたいな条件が仕事を選ぶポイントじゃないんだね。」っていう話になりました。私自身は今、業務委託という形で週3回会社で働いているのですが、他にも週1回は大学院に通い、さらに空いた時間でやりたい仕事をしています。
仕事はひとつに決めないっていうのが私が大切にしている価値観なんです。多面性があるってすごく武器になる。5年後は、今のいろんな仕事の掛け算で新しい仕事の形ができるのでは? と思います。それが、“「私×仕事」のストーリー”という話とつながるのかな?と思いました。
週3日会社で働くときは、社会の中で自分の得意な仕事をすることでお金というフィードバックがもらえています。一方、やりたい仕事では自分の才能や好きなことを、私が私らしくいられるためにやっています。
そうすると、やりたい仕事でお金が稼げなかったとしても会社で働いているということで社会から認められてお金が稼げるし、逆にお金があまり稼げない月があったとしても、やりたい仕事の方で自己実現はできているので、すべてが回っているという感じがします。だから仕事はひとつに決めなくてもいいのでは? という話でグループでは盛り上がりました。

 

実は他にも、このプロジェクトを通じて自身の特性を客観視でき、未経験の業界・職種への挑戦も視野に入れて転職活動をスタートさせた、という参加者もいらっしゃいました。

自分らしい働き方のポイントになる“ライフキャリアの幹”。

それを自覚していれば、一見バラバラに思える活動も、もしかしたら掛け算で新しい仕事につながるのかもしれない…… そう考えると、まずは一歩踏み出す勇気が湧いてきますね!

「条件が合わないから」「ブランクがあるから」と諦める必要はないのです。

条件よりも、“ライフキャリアの幹”を育てることを重視しよう

転職や復職を考える際、ブランクがあればなおさら、「スキルが活かせる仕事」「過去に経験がある仕事」を探してしまいがちです。

でもそうした職歴や、時短や正社員といった雇用条件に当てはまる仕事だけではなく、自分の“ライフキャリアの幹”を育てられる仕事も広く見てみてはいかがでしょうか。そこにこそ、長い目でみた“自分らしい働き方”を実現できるヒントがあるのかもしれないと気付かされる回となりました。

 

残念ながら、ブランクがあることや、またいつ夫の異動に帯同するかわからないという理由から、希望する条件では雇用されにくいという現実もあります。そんな事実に直面しても、落ち込んでいる場合ではありません! やむを得ず退職しリセットする機会を与えられた駐妻だからこそ、“自分らしい働き方”を体現するチャンスがあるとも言えるのですから

 

本プロジェクト最終回となる第3回目では、多様なワークスタイルを知って「新しい働き方」へシフトするためのプログラムが予定されています。
少しずつ働くモチベーションと自信が増してきたみなさんが、どのような働く決意を抱くのか楽しみです!

取材協力/小橋友美

ライター

高野萌奈

編集・ライター

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