<転載・インタビュー>
伝えたいメッセージは、「楽しめ」とか「楽しもう」ではなく、「楽しんだって、いい」ということ

ラシク・インタビューvol.209

株式会社OVER ALLs 代表取締役社長 赤澤 岳人さん

店舗やオフィスの壁をアートで飾る事業を展開している株式会社OVER ALLs。実は、同社が提供しているのはアートの向こうにある価値観や、「『楽しい国、日本』を実現したい」という想いです。そんな会社の代表を勤める赤澤岳人さんに、事業にかける想いの出どころを伺いました。自身のキャリアについて立ち止まって考えてみたいビジネスパーソン必見です!

【記事提供元】35CoCreation メディア
※この記事は、組織開発、人事コンサルティング事業などを手がける35CoCreation合同会社のオウンドメディアより転載しています
※聞き手/35CoCreation合同会社 桜庭 理奈氏

“行き当たりばったり”でも、“必死のパッチ”で生きる

赤澤 岳人さん/オンラインにて取材

最近事務所を移転されて、チームも夢も拡大されていると思うのですが、赤澤さんご自身のこれまでの人生の旅路みたいなものを聞かせていただけますか?

 

赤澤 岳人さん(以下、敬称略。赤澤:自戒の念も含めていうと、「今も昔も“行き当たりばったり”の人生。でも、常に今を一生懸命に“必死のパッチ”で生きている」ですかね。キャリアビジョンとか、将来設計とか緻密に計画を立ててもその通りにならないし、「そんなに考えたってしょうがなくない?」と思うタイプで。とはいえ、「計画通りにならない」、というのは決して悪い意味ではないです。例えば、銀行の融資のために練りに練った事業計画書を作っても、5年後に振り返ると「物足りない」と思うわけですよね(笑)。それは、昔の自分がとうてい及ばないほど、自分が成長しているからです。

今、目の前にあることに必死になっていれば頭ひとつ抜けられるし、後々自分に返ってきます。人生とはそんなものだと思います。

ビジネスのリベラルアーツを鍛えた引きこもり期

その価値観はいつごろでてきたものなんでしょう?どこかでシフトなどはあったのでしょうか?

 

赤澤:先ほど「自戒の念も含めて」と前置きしたのは、もうちょっと考えた方がよかったかな?と思うこともあったからです。というのも、大学を卒業する時に、ロースクールに進む予定になっていたんですが、入学金を払い忘れていて…。特待生待遇だったもので、古着屋で働きながら1年待って、再度受験して入学しました。でも、元来勉強嫌いだったもので、向いてなかったんですね。ロースクールを卒業し、その後3年ほど“半引きこもり状態”になりました。

 

ものすごい変化ですね。

 

赤澤:はい。ただ、その間に普通なら20年くらいかかる量のビジネスに関する番組、書籍、漫画、映画に貪るように消費したんです。この体験でビジネスのリベラルアーツが身についたと思っていて、今の自分の礎になっていると思います。その時は何になるかわからないことでも、極端なほど一生懸命であれば、後々肯定されることはあるんだなと。このことに気がついたのが最近なんです。特に会社を立ち上げてから、自分がいきあたりばったりでも、必死のパッチでやってきたことがダイレクトに自分に返ってきているなと感じています。

どこか暗闇で苦しみ、もがき何かを掴もうとしてらしたようにも聞こえますが、赤澤さんが貪るように動いた背景には何か求めるものがあったのでしょうか?

 

赤澤:苦しさの裏には「今の自分は本当の自分ではない」との思いがどこかしらにあって、且つビジネスに意識が向いたということは、起業などで世の中に名を残したい、と思ったんでしょうね。しかし、現実はまったく違った状況にいて、まさに思いだけが大きい“頭でっかち”でした。だから、行動が伴っていないことに苦しみ、もがいていたんだと思います。

居場所があるとは、担う役割があるということ

アルバイトを経て、29歳で企業人として働き始めたということですが、そこから起業までの道のりはどんなものだったのでしょう?

 

赤澤:引きこもり期間を経て、28歳で就活を始めました。ハローワークで職探しをしていたんですが、リーマンショックやらがあった不景気なご時世に、職歴がまったくない30歳手前の人間には、それは地獄の様な日々でしたよ。それでも1年ほど就活した頃、ご縁があって人材会社のパソナへ契約社員として入社することができました。この時、ようやく自分の“居場所”を得たと思いました。私にとって、居場所とは、報酬の有無に関わらず、仕事上の役割をもって社会と繋がり、社会から認識されることを意味しています。ちなみに、この定義は今でも変わっていません。

働く上でベースになるリベラルアーツは持っていたものの、スキルを全く持っていなかった私は、誰よりも遅くまで働き、誰よりも量をこなしてそれをひとつひとつ積み上げていきました。そうこうしているうちに正社員で働く若手の指導も受け持つようになったのですが、時給で働くアルバイトの自分と月給で働く若い社員の格差を目の当たりにして、仕方ないと思う反面、大変悔しい思いをしました。同時に、20代をフラフラ過ごしてきた者が居場所を見つけることが容易ではないことを痛感したんです。それに気づいてからは、自分のように20代に就職を選ばなかった後進のためにも圧倒的な実績を残さなければと思い、さらに昼夜問わず働きました。そして、新規事業を提案するイベントで20もの提案を出し、うちのひとつが事業として立ち上がるタイミングで正社員になりました。当時、やっと認められたという嬉しさはありましたが、「ここまでやってきたんだから」との思いもあり、「居場所ができた」と思えた入社時の方が感慨は深かったです。結局、元の人材紹介の部署へ戻る打診を受けたタイミングで退職し、共同創業者でもある山本勇気の誘いもあり、OVER ALLsを起業しました。

 

赤澤さんの定義される“居場所”ってなんだか温かい感じがしますね。

 

赤澤:ハートフルというのとは違いますが、すべてのものは誰かの仕事で成り立っていて、その仕事で社会と繋がっていますよね。例えば、私がコーヒーを自販機で買って飲むまでの間には、たくさんの人の仕事があって、そのおかげで私がわざわざコーヒー農園から始める必要がないわけです。

古来より、社会で生きるためには、各々の得意を活かした役割を担う必要があったと思うんです。個々の役割の境界線が複雑化してきて見えにくくはなっていますが、それは現代社会でも変わらないでしょうね。先ほども言いましたが、報酬が発生する“労働”としての仕事ではなく、世の中に貢献する“役割”としての仕事を持つことが自分の居場所を持つことだと思います。仕事をしていない時は、それがなかったので暗闇の中にいるような気がしていたんでしょうね。

情報に踊らされず、「愛のために働く」

年齢問わず居場所を見つけられずに不安に思っている人や、役割の意義を見いだせないと思っている人っていらっしゃると思うんですが、それについてはどう感じていますか?

 

赤澤:今の日本社会において、選り好みをしなければ、居場所が見つからないということはほとんどないはずです。社会との接点を持ちさえすれば、あとはどうにでもなるんですから。それでも選り好みをしてしまうのは、ネット上に溢れる情報に惑わされているのではと思いますね。8割悪意で固められた情報を鵜呑みにして「これは自分のすべきことではない」とならないよう、むしろ嫌だと思う仕事をしてみればいいですよ。そこから気づけることも多々あるはずです。私もスーツにネクタイでサラリーマンとして働くなんて死んでも嫌だと思っていましたが、飛び込んでみたら、そこにちゃんと自分の居場所はあったし、生きているとはこういうことかとも感じられましたから。

当時パソナのキャッチコピーが「愛するために働く」だったんですが、きちんと居場所を得ることで安定し、初めて隣にいる人を気遣い、愛することができるんだと、文字通り“実感”しました。ちなみに、その時隣にいた人が今は奥さんです。

 

ちなみに、赤澤さんは、居場所がなくなる要因は何だと思われますか?

 

赤澤:企業が新卒一括採用を続けているからだと思います。全員右へ倣えの人材採用は、イノベーションだ、多様性だと言っていること真逆ですよね。皆とは違う道を自ら選び、道半ばで方向転換を図ろうとする者、例えば役者や芸人・バンドマンなどに、今の日本企業はあまりに閉鎖的です。自分自身も似た経験をして、後進のためになにがなんでも実績を残そうとしたし、いまもそんな部分にメスを入れなければと思っています。いい加減、高度経済成長の奇跡は忘れ、大量生産・大量消費を前提とした人の育成や組織構造はやめるべきです。

キーワードは「楽しんだって、いい」。アートで組織を前進させる

赤澤さんの会社の「楽しんだって、いい」というフィロソフィーと、これまでお話いただいたこととの繋がり、それを踏まえて、これから日本企業の組織はどうなっていくべきだと思われますか?

 

赤澤:高度経済成長前のHonda、TOYOTAの話を読んだりすると、今の大量生産・消費とはかけ離れ、目をキラキラさせながら物作りをしていたことがわかるんですね。しかし、日本人は私も含めて、幼い時から楽しむと怒られる文化で育っています。中高では、髪を染めたり、ピアスを開けたりするたびに怒られる。「中高生らしくしなさい」と。「なんでおしゃれを楽しんじゃダメなの?」「らしくってなに?」って思いますよ。

アメリカに出張で訪れた時に驚いたことがあって。彼らのガレージの中にあったのは、車という生活必需品ではなく、ヨットやDIY道具といった趣味のものだったんですよね。その光景を見て、この国の人たちは本当に人生・生活を楽しんでるなと感じたんです。その楽しむ姿勢が日本にも必要だと思います。ただ、「楽しめ」「楽しもう」というと真面目に捉えてしまうので、「楽しんだって、いい」くらい軽やかなコンセプトでいいんじゃないかと。

その楽しむキーツールとなるのが、“アート”だと思っています。なぜかというと、アートというのは「正解不正解」が一切当てはまらないからです。モナリザをみて「これは正しいですか?」とは誰も聞かないですよね。「好き」でも、「怖い」でも、みた人がそういうならそれでいい、というのがアートなんです。

今、外資系コンサルティング会社と協業して力を入れている事業「Art X」に可能性や未来が見えているのは、何が正しいかではなく、何が好きで、どうしてそれが好きなのか?を明確にすることで、組織と個人の間で会社を前進させていく関係性を作り上げていくことができるからです。

はじめは正しい意見を言おうなど思わずに、「なんとなく」でもいいんです。普段の会議で「なんとなく」なんていうと怒られるでしょうが、それでいいんです。

そんなことを「楽しんだって、いい」と許容できる組織が増えて、まず会社が楽しくなれば、日本が楽しい国になる一歩になると思います。

 

赤澤さん、本日は貴重なお話、ありがとうございました!

人と違った生き方を選ぼう、と理想を掲げても、実際には、社会構造や周りからの期待や基準軸によって、諦めねばならなかった。そんな経験がなかったか。

赤澤さんとの対談は、そう問われているような時間でした。

赤澤さんの歩んでこられた人生の旅路の中で、世の中に示していくロールモデルとしての生き様や、時には気合や勇気によって突き動かされたエモーショナルな行動は、OVERALLというチームの存在そのもののDNAとして、脈々と息づいていました。私たち一人ひとりが、自分の人生のアーティストなんだ、とドキドキワクワクするとともに、体温が上がりました。

赤澤 岳人さんプロフィール
HP:株式会社OVER ALLs

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:35CoCreation合同会社CEO 桜庭 理奈/小山佐知子

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