“3ヶ月目の鬱”の先で見つけた、夫婦円満の秘訣とアフターコロナの働き方 ~アメリカ駐妻の場合~
駐妻のキャリアについて考えていくこのコラム。前回までは私自身の経験をお話してきましたが、今回は駐妻へのインタビューをもとに綴っていきたいと思います。駐妻同士だからこそ分かり合えることはたくさんありますが、とはいえ、駐在する国や都市、滞在期間、また家族構成によって、細かい悩みは色々と変わってくるものです。
今回お話を伺ったのは、アメリカ・ニュージャージー州にお住まいのYさんです。ご主人の転勤に伴い、現在7歳と5歳になったお子さんを連れて家族で渡米。ご主人の任期は2年とのことで、もうすぐ渡米し1年半を迎えます。新型コロナウイルスにより3月より自宅待機を強いられている現在の暮らしを含め取材しました。
辞令からわずか4ヶ月で渡米! スピード決断の裏側
ご主人に海外転勤の辞令が出てわずか4ヶ月後には家族揃って渡米していたというYさん。帯同すべきか否か長い間迷った経験のある私とは全く違う潔さ! 迷いはなかったのかと尋ねてみると、Yさんは、「むしろ付いて行かない選択肢はなかった」と話してくれました。
「結婚したときから夫が海外勤務を希望していることは知っていて、それを見越して子どもをインターナショナルスクールに通わせていました。夫を一人で行かせるわけにもいかないし、2年間と決まっているのなら行ってみよう!」と。
「でも、まさか本当に外国で暮らすことになるとは思っていなかったんだけど」と笑うYさんでしたが、一方で覚悟は決まっていたようです。だからこそ、4ヶ月で引越しという素早いアクションを起こせたのでしょうね。
そんなYさんは、これまで結婚や出産を機に働き方を変えてきたそうです。
「新卒で勤めていた会社があまり女性にやさしくなかったというのもあり、結婚を機に退職しました。子どもが産まれてからも働けるように、違う業界に転職して在宅で仕事をしたり、ハンドメイドのものをネットで出品したり、いろいろな仕事をしてきました。やっぱり私は全く仕事をしないというのは嫌なんですよね」と話すYさんにとても共感する私。
「外の人とつながっていたいという気持ちと、子育ても手を抜きたくないという気持ちをいつも両立させていました」と、ワーママのリアルな胸の内をお話してくれたYさん。ご主人に転勤の辞令が出た頃は企業で社員として働いていたそうですが、駐在に帯同ため退職の道を選ばれました。
ライフイベントごとに柔軟に働き方を変えてきた経験から、自分が離職することについては特に思い悩むことはなく、むしろ自然な選択としてポジティブに受け止められたそうです。そんなYさんのお話を聞き、過去の退職や転職の経験は、駐在帯同による離職やブランクの捉え方に大きく関わってくるのだなと感じました。
私だけ家族から取り残されている気がする……
駐在帯同を素早く受け入れたYさんですが、とはいえ、駐在帯同中の過ごし方については少し思うところがあるようです。
「2年後、帰国したらどう働くのか。仮に会社員として働くことを考えると、再就職はできるのだろうか? 年齢的に就職は最後のチャンスになるかもしれない、と考えると、業界によってはブランクに厳しいだろうから、今のうちに資格とか取った方がいいのかな…… とかモヤモヤしました」と、Yさん。
「とはいえ、英語を勉強するといっても、たかだか2年アメリカに住んだくらいでビジネス英語ができるようになるわけでもないし。そこは少し悩みましたね」
渡米して半年。お子さんたちはすっかり学校にも慣れ、もはや「日本に帰りたくない」と言い出すほどだったとか。ご主人も、最初こそ「英語での仕事が辛い」と泣きごとを言っていたものの、少しずつ軌道に乗り出したようです。そんな中、まるで家政婦のように毎日家事をこなし続ける自分だけが家族から取り残されているような感覚に陥ったというYさん。誰に何を言われているわけでもないのに、「こんな毎日でいいの?」と勝手に焦りを感じてしまう気持ち、私はとてもよくわかります。
一方で、Yさんの先輩駐妻さんたちは、みなさん鬱々とした日々を乗り越え充実した “駐妻ライフ” を送っているそうです。「日本では仕事と育児に追われて自分の時間が取れなかったから、今のうちにやれることをやらないと! とワクワクしている人たちがとても多くて。みんなすごくポジティブで、駐在が終わって仕事に戻れるかな? なんてことは考えてなさそうな感じです」
とはいえ、そんなポジティブなみなさんも、一度は「辛い……」と感じ落ち込んだ時期があったそうで、在米駐妻たちの間では “3ヶ月目の鬱”という言葉があるくらいなのだとか。渡米後3ヶ月目までは精神的にも身体的にも何かしらの症状が現れやすいという “駐妻あるある”を指す言葉だそうです。でも、その時期を乗り越えれば、みなさん何かに開眼したかのように満ち足りた生活を送るようになるそうです。Yさん自身も、生活に慣れると少しずつポジティブさを取り戻したとお話していました。
アメリカ流の働き方で夫婦仲改善! アフターコロナの働き方のヒントも
キャリア観への影響といえば、Yさんはアメリカ人の働き方にもとても感化されたといいます。
「夫の働き方がガラッと変わったんです! 日本にいるときは朝から晩まで会社にいるのが当たり前だったのに、アメリカに来てからは家で仕事してることも多いんです。どうしてもオフィスに行かなきゃいけない予定がなければ、家とかカフェで仕事してる方も多いみたいですね。確かにパソコンさえあればどこでも仕事ができるから、オフィスに行く意味ってあるのかな? と私も思うようになりました!」と、働き方にとてもいい刺激があったようです。
「アメリカ人はとにかく家族を大切にします。子どもの送迎はパパが行くという家庭が多いし、子どもの学校行事の出席率もとても高いんです」と子育てについても、イキイキとした顔でお話してくれました。一方で、そんな暮らしも、新型コロナウイルスで一変したそうです。
Yさん一家が住むのはニューヨークのお隣、ニュージャージー。駐在の方も多く住んでいるハドソン川沿いは感染爆発が起こった地域のようで、そこから車で40分ほどのエリアに住むYさんご一家も、3月から自宅待機を強いられているそうです。日中に屋外に出るのは、1時間ほど家族で散歩するときくらいで、買い物は全てご主人のみなのだとか……
「夫はもともと週2~3日は在宅勤務をしていましたが、今はもちろん完全在宅勤務です。住んでいるのは2LDKのアパートなんですが、書斎がないのでは夫は寝室を締め切り仕事に集中しています。子どもたちは何かとパパの仕事を覗きに行ったり、彼らもオンライン学習が中心の生活の中で何かと喧嘩が絶えなかったり、私も一人になれる時間がほとんどないのでストレスは溜まりますね」と現在の生活について教えてくれました。
一方で、料理がご趣味のご主人がパン焼いたりと、家族での時間をポジティブに楽しんでいるようすもうかがえました。「今はコロナの影響で結果的に完全在宅勤務になってしまいましたが、やはりそれ以前から週に2~3日は在宅で仕事をしてきたのは大きかったです。日本に帰ってからも今みたいな柔軟でフレキシブルな働き方を導入してほしいし、自分もそういう働き方をしたいです!」とYさん。
家庭を大切にし、柔軟に働ける環境だからか、Yさんによるとアメリカ来てから夫婦仲がよくなったという日本人家族は多いのだとか! 今はコロナ禍で大変ですが、これを乗り越えた先には帰国後の新しい暮らしも待っています。「いろいろ悩んでもしょうがないよね!」と明るく語るYさんの姿を見て、私もなんだか気持ちが軽くなりました。
ところ変われば悩みも変わる、世界中にいる駐在員の妻たち。コロナ禍で帰国することもできず、現地で大変な思いをされている方、そのご家族も多いことと思いますが、駐妻同士励まし合って乗り越えていきたいですね!
お話を聞かせていただいたYさん、ありがとうございました!
ライター