テレワーク推進の専門家が語る、
Withコロナ時代の働き方スタンダードとは

ラシク・インタビューvol.173

株式会社ルシーダ 代表取締役社長 椎葉 怜子さん

「女性の働く、を応援したい」という想いのもとキャリアや働き方、テレワークをテーマにご活動されてきた株式会社ルシーダの代表・椎葉怜子さん。2015年秋の取材(※)では、当時まだ珍しかった「パラレルワーク」の実践者としてお話を聞かせていただきました。あれから5年が経ち、誰もが想像していなかったコロナ禍によって新しい生活様式とともにテレワークが浸透。これからは自分の『働き方』や『生き方』について、多くの方が見つめ直していると思います。そこで、テレワークをずっと研究してこられた椎葉さんに、コロナを受けてテレワークはどのように変化したのか、また企業側の人材活用はどのように変化しているのかお聞きしました。

(※)『パラレルキャリアで育児と仕事を両立中。キャリアカウンセラー、大学の非常勤講師、客員研究員の3つの顔をもつワーママ』

テレワークを推進し続けて5年、まさかコロナで浸透するとは……!

椎葉さん、お顔周りがよく映るように服の色やスカーフ、光の入り方等を調整されているとのこと、さすがプロです!

編集部:以前、ご登場いただいたときは3つの仕事をこなす働き方について教えていただきましたね。5年経った現在のフィールドを教えていただけますか?

 

椎葉怜子さん(以下、敬称略。椎葉):あの時は長女が2歳になった頃で、本格的に仕事を再開しようと動き出した時でした。子育てと仕事を両立するために、自宅を拠点にした働き方に挑戦し始めたのです。「キャリアカウンセリング」「大学の非常勤講師」「テレワーク推進」、これら3つ同時並行で「どれが伸びるかやってみよう」という気持ちでした。また、同時期に二人目の不妊治療を始め、11月に無事に妊娠。その頃からテレワーク推進が忙しくなり、今では株式会社ルシーダ経営者と日本テレワーク協会客員研究員の2本で主に活動しています。

 

編集部:2015年後半からテレワーク事業が忙しくなってきた背景には何が?

 

椎葉:安倍政権の「働き方改革」ですね。テレワークが強く打ち出されました。11月をテレワーク月間とし、セミナーや研究会の企画運営・ファシリテートを中心に活動していました。もともと、2020年のオリンピック期間中に首都圏の企業向けにテレワークを啓蒙していて、それ以降は「テレワークが当たり前の生活になってほしい」と普及推進を頑張っていたのですが、実際にはコロナがきっかけで浸透するとは。先日発表された、都内の従業員30人以上の企業のテレワーク導入率は57.8%(東京都HP)。東京都が掲げていた2020年度のテレワーク導入率の目標値が35%でしたから、すごい達成率です。

 

編集部:本当ですね。コロナ前の啓蒙は大変なご苦労があったと想像しますが、コロナになって、みんな手のひらを返したように「テレワーク」と言い出しました……

 

椎葉:そうですね(苦笑) それでも、一部の企業の社員だけでなく幅広い層が使えるようになった事は、非常に良かったと思っています。テレワークに懐疑的だった会社や上司たちが強制的に自分たちで実施することで、「テレワーク、できるね」ということにみんな気がついた。私としては大体の目標がクリアできたので、次の目標を模索中です。

 

編集部:次のフェーズに移られているのですね!

 

椎葉:次は福祉軸でテレワークの普及推進を考えています。子育て世代や介護をしている人はもちろん、不妊治療やがんの治療と仕事の両立をテレワークで支えられると思います。治療後に出社しないで自宅で仕事ができると、体力的にも精神的にもすごく楽になりますから。もっと言えば、出社することが大変な精神障がいの方や身体に障がいのある方も同様のことが言えると思います。あと、自分自身も40代になり、自分の体力や親の健康も気になり始めてきているので、私の中でも働き方も見直し中です。

テレワークのプロでも「子どもがいながらの在宅」はワケが違う

編集部:テレワークの先駆者である椎葉さんですが、春のステイホーム期間はいかがでしたか?

 

椎葉:現在7歳の女の子と4歳の男の子とがいるのですが、本当に、無理でした。特に下の子は私が仕事をしようものなら、PCを蹴ろうとしたり、WI-FIの電源を抜いたり……(苦笑) もう仕事になんてならない。上の子はピカピカの小学1年生のはずなのに、臨時休校でずっと家にて、ママと一緒に遊びたい、となるわけです。小学校から課された宿題もやるように促さないといけない…… もちろん子どもの年齢や性格、人数、自分の他に面倒をみてくれる人の有無にもよりますが、私の場合、ステイホーム期間中の子どもがいながらのテレワークは不可能でした。

 

編集部:本当に大変でしたよね。特に2~4歳ごろのお子さんのいる家庭はかなりキツそうでした。

 

椎葉:私が仕事をしていると、下の子が家を勝手に出て、隣の公園に遊びに行ってしまうことがありました。「私はもう、日中仕事は無理だ」と割り切って、早朝仕事をすることに。しかし、5時に起きても仕事は間に合わず、3時に起き、2時になり…… そうすると自律神経がおかしくなってきて、心身が不調を訴え始めました。

 

編集部:わかります……! あの頃、働く母たちのメールやチャットはほとんど早朝でしたから!

 

椎葉:5月末に病児保育のフローレンスさんが健康時のベビーシッティングサービスをしていたので、思い切って1週間、子どもたちのお世話をシッターさんたちにお願いしました。それがすごく良かった。自分がイライラしすぎて、子どものあらゆる行動に腹を立てていたのですが(苦笑) シッターさんが子ども達の良いところをどんどん指摘してくれて…… 自分がおかしいモードに入っていたことに気づかされました。

あと、外に出て一人になりたくても「仕事もしないでサボってると思われるんじゃないか」と自分の中でのある種、呪いのようなものがあり…… そう言う胸の内をベテランのシッターさん話すと「子どもにとってお母さんが元気なのが一番だから、カフェにでも行ってきて!」と言ってくださって。泣きながら数ヶ月ぶりにランチへ行き救われました。子育てにおける第三者の介入の大切さが、身にしみてわかりました。

 

編集部:それは救われましたね……! 一人で抱え込まない、のが大事ですよね。

 

椎葉:そうなのです。「子付きテレワーク」と言うこの状況を、同じ境遇の母たちとどうやって乗り切るかをFB上で情報共有していて、そこも励みになりました。ベビーシッターも内閣府の助成金制度が使えることをそこで教えてもらい、金銭面でも非常に助かりました。

自由度の高い働き方ができるかが、今後、会社選びの基準に

部会長を担当している日本テレワーク協会「働き方の未来特別研究プロジェクト」ではコロナの影響を受け、オンラインで研究成果を発表。

編集部:コロナ前と今では、企業側が持つテレワークのイメージに変化はありましたか?

 

椎葉:コロナ前は出社が大前提で、テレワークはオプションでした。月に2〜3回のテレワークで「よくテレワークしている人」というイメージを持たれていたと思います。しかし、コロナが始まって、継続的にテレワークすることが当たり前の企業が増え、「仕事を止めない」と言う危機管理対策とし導入されているのも、衝撃的なことです。一方で、出社前提に戻そうとする会社もあり、考え方の差も生じています。

 

編集部:テレワーク推進か、出社より戻しか…… その差は何でしょう?

 

椎葉:経営者の考え方によりますが、テクノロジーの波に乗れない会社はテレワークを嫌がります。DX感度の高い会社はどんどんクラウド化してファイル共有し、ペーパレスに動いています。内線も転送するなどして、お客さんへのレスポンスが早くなり、どこでも効率的に、スピーディーにビジネスが行える。こういう感度が低い会社は、今後の会社の経営としても……

 

編集部:確実に、働き方の自由度が、仕事選びの基準になってきていますよね。

 

椎葉:特にワーキングマザーとしては、テレワークできる方が圧倒的に効率的なので、自分の会社がテレワーク推進なのか、出社前提に戻すのか。トップの考え方も含めて「この会社、考え方古いわ」と思ったら、転職の動きはどんどん加速すると思いますよ。

 

編集部:テレワークの普及により、転勤制度もなくなるでしょうか?

 

椎葉:転勤したくない人がマジョリティな時代ですし、今後、メンバーシップ型からジョブ型に移行していくと考えると、先細りしていくと思います。そもそも、会社の一声で行きたくもないところに行けってこと自体、時代錯誤ですよ。ただ、大企業は地方転勤が人材育成の要に組み込まれているので、そこをどう変えていくのかが課題ですね。

完全在宅が良いわけではない。テレワークだからこそのマイナス面とは

東京テレワーク推進センターでのセミナーの様子。緊急事態宣言により急遽オンラインセミナーになったため、画面越しにトークセッションを実施。

編集部:コロナによって、女性特有の変化はありますか?

 

椎葉:オフィスワークをしている女性にとっては、テレワークは非常に追い風です。自宅で仕事ができれば育児や家事も効率良いですし、元々、ワーキングマザーは時間あたりの生産性が高いので、そこで評価してもらえると、昇格の対象にも。今後、ジョブ型に移行すると業務範囲を明確にして、どれだけパフォーマンスを出せたか、これを会社の中で評価しない理由がなくなりますから。もっと言えば、介護やがんなどの治療・通院、不妊治療などで人知れず悩んでいる問題に対して使える時間が増えるので、メリットが大きいかと思います。

 

編集部:心配していることはありますか?

 

椎葉:やはり非正規社員の多い飲食や宿泊などの…… テレワークができない職種、接客をともなう職種の方々の雇用の問題は非常に深刻です。あと、本来できるはずのオフィスワークの方でも雇用形態によって、派遣先との労働契約の点でテレワークができなかったり、仕事用のPCが配られなかったり…… 恩恵を受けられる人と受けられない人との差がここにも生じてしまっています。

 

編集部:ここは社会全体で支えていかなければならない課題ですよね。実際にテレワークをしている個人からはどんな声が?

 

椎葉:保育園や小学生のお子さんがいらっしゃる方々からは、時には出社したいけど、テレワークを続けたいという声はよく聞きますね。「WEB会議でカメラをオンにし続けるのが辛い」と言う声もあります。例えば、あまり親しくない人(例えば上司とか)とのWEB会議で、大写しになった相手の顔を見ながら話をしなくてはならないのは、想像しただけで息苦しくなりませんか? 多くの企業でテレワークを前提としたマネジメントの模索が始まっていて、その手段として上司と部下の1 on 1が強く奨励されていますが、リモートで実施する場合はカメラオンにこだわらないのも一策ではないでしょうか。あと、在宅続きで孤独感を感じている人も多い一方で、家庭のある方は「一人になりたい」という声も多くありました。

 

編集部:雑談ができる場がなく、気持ちを吐露できませんからね……

 

椎葉:雑談や対面って、とにかく大事なのです。雑談から新しいアイデアが生まれるし、仲良くなるのも雑談からじゃないですか。その機会がことごとくなくなっているのは、非常にマイナスです。私もずっとテレワーク推進していますが、完全オンラインは推進していませんので、対面で会える機会があれば、必ず行くようにしています。

 

編集部:ハイブリットできるのが一番ですよね。椎葉さんが在宅で工夫していることは?

 

椎葉:心配事や悩み事を話すときは、 WEB会議ではなく電話を使います。 電話だと声に意識が集中できるので、ニュアンスもとらえやすいのです。チャットも便利ですが、短い文章で感情が乗らないから誤解しやすい。チャットも「顔文字使った方がいいと」、言われていますからね。

 
編集部:なるほど! 用途によって使い分ければ良いのですね。

 

椎葉:コミュニケーションの取り方そのものが多岐に渡っているので内容に応じて工夫していけるといいですね!

 

編集部:椎葉さん、貴重なお話ありがとうございました!

まさにこのテレワーク激動の5年を、目の当たりにされてきた椎葉さんだからこその、貴重なお話がありました。印象的だったのは、テクノロジーの波に乗れない会社は選ばれない、と言うこと。企業だけでなく、学校も、自治体も、国も、同じだと思います。また、いくらテレワークの制度が整おうと、ワーママの追い風になろうと「子どもと一緒にテレワークはできない!」と、椎葉さんのようなテレワークのプロがはっきりと明言してくださったのが、非常に勇気付けられました。3月の一斉休校時、母親たちに全てを丸投げされ、結果的に子どもたちにしわ寄せが行ってしまったことを、忘れてはならないと思います。その大変さをもっと理解して、これから同じような状況が来た時の対策を社会全体で考えておかねばならないと思います。

椎葉 怜子さんプロフィール
株式会社ルシーダ代表取締役社長。国家資格キャリアコンサルタント。2012年よりテレワークの研究を開始。2014年、日本テレワーク協会客員研究員に就任。以降、政府・東京都のテレワーク普及促進事業に携わる。2015年よりテレワーク先進企業の経営者・人事担当役職者を対象とする研究会の部会長を務める。2020年7月に研究成果レポート『経営・人事戦略の視点から考えるテレワーク時代のマネジメント改革』を発表。著書「テレワークで働き方が変わる!テレワーク白書2016」(共著/インプレスR&D)、「テレワーク導入&運用の教科書」(共著/日本法令)。
HP:株式会社ルシーダ

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:飯田りえ

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