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2016.09.12 2023/05/31

社員みんなが子どもを産める会社にする! 成長を続ける人気通販化粧品会社の秘訣とは

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社員みんなが子どもを産める会社にする! 成長を続ける人気通販化粧品会社の秘訣とは

社員の約半数がワーママ、しかもほとんどの社員が17時に帰るのに、業績は10年連続右肩上がり。さらに子どもが急病でもシッター代は会社持ち。そんなワーママフレンドリーな会社が銀座にあります。そこにはどんな秘訣があるのか。株式会社ランクアップ社長の岩崎裕美子さんと、製品開発部の佐々木美絵さんにお話をうかがいました。

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長時間勤務の限界を「肌」で感じて化粧品会社をスタート

ラシク齋藤(以下、齋藤):会社を作るまでの簡単な経緯を教えていただけますか。

岩崎さん(以下敬称略):当社を立ち上げる前、私は、広告代理店の取締役でした。
いわゆるベンチャーで夜も休日も必死に働いていました。自分自身も猛烈に働いたし、社員を猛烈に働かせていました。

齋藤:当時はどんな生活をしていたのですか?

岩崎:自宅に帰ったらベッドに直行、朝起きてそのまま化粧もせずに会社に直行、朝から夜中まで仕事、それ以外は寝るだけの生活でした。食事はコンビニ弁当、仕事一色でプライベートは全くなかったんですが、仕事がめちゃくちゃ楽しくて「自分の時間が欲しい」という部下の言葉が理解できないくらいだったんです。その甲斐あって、会社は年で約20億円の規模に成長しました。

でも部下は数年で「結婚したいから」「将来子どもが欲しいんで」とみんな辞めてしまうんです。誰だって仕事のために生きているわけではないですよね。夜中の23時まで働く生活を一生は続けたくない。部下に「岩崎さんみたいになりたくない」と言われたこともあります。
私自身、35歳になるまでキャリアウーマンで頑張って来たのですが、もし子どもができて早く帰るようになったたらクビになってしまうんです。あるとき管理職が全員いっせいに辞めるのを目の当たりにして「長時間労働はダメだな」と心底思いました。

残業できない人はいらない、子どもができたら居場所がない。という会社はおかしいとその時思ったのです。社長に「長時間労働をやめましょう」と掛け合ったのですが「売り上げが落ちたらどうする」と言われて言い返せなかった。それで「化粧品会社を始めます!」と独立したんです。

齋藤:なぜ化粧品会社を作ろうと思ったんですか?

岩崎:その当時、まだ30代なのに40代に見られることがよくありました。連日の残業と3食コンビニ弁当の食生活で、すっかり老けちゃったんですね。自分自身もキレイになりたいし、女性をキレイにしたいということで、化粧品会社をやろう!とひらめいたんです。

齋藤:ずっと起業をしたいという思いはあったんですか?

岩崎:ごく普通のOLでした。会社を辞めて起業したのは37歳でしたが、22~3歳の頃に地元(北海道)の先輩が事業で成功したのを目の当たりにして、ずっと「私もいつかは!」と思っていました。

齋藤:そういう気持ちがあると、同じ仕事をしていても視点が変わってきますよね。

岩崎:お給料をもらいながら実践で営業の勉強ができる!だから死ぬほど残業をして頑張る!と思っていました。つらくても「将来のための丁稚奉公だ」と思っていたので、同じ仕事をしていても文句ばかり言う人とは違い、凄い働き方をしていましたね。

「女性をキレイにしたい」
あきらめなければ絶対うまくいく!と粘ってつかんだ成功

齋藤:独立してからもご苦労されたとか?

岩崎:立ち止まりたくなかったので失業手当ももらわず、すぐ起業しました。「0円で会社を作る方法」なんて本を見ながら定款を自分で作って。それまで広告代理店の仕事しかしてこなかったのに、キレイになりたいという気持ちだけで化粧品会社を始めて、最初はどうやって化粧品が作られるかさえも知らなかったんですよ。

齋藤:化粧品業界のことはどうやって調べたんですか?

岩崎:色々な店で化粧品を買って、ラベルを見て「製造販売」と書いてあるところに片っ端から電話をかけて「化粧品を作りたいんです」と話しました。「日本一女性がきれいになる化粧品を作りたいんです!」みたいな意気込みで、今思えば「ちょっと大丈夫?」という感じのテンションで、相手も「変なのが来た」と思ったんでしょうね。
多くの人は「いいもの作ったって売れないよ、サラリーマンに戻りなさい。苦労をするよ」って言いました。でも私からすると「何をおっしゃっているんですか、私が売るので、そんなことあなたに心配してもらう必要はない!」と。

齋藤:「女性をキレイにしたい」という気持ちだけで一直線に……

岩崎:とにかくいいものを作ってくれればいいのに、なんでこの人私が売る心配までするんだろう、と不思議でした。「いいものを作ってくれればいいんです、原価なんていくらでもいい」ともよく言っていました。お金じゃなくて、キレイになれるかどうかしか考えていなかったのに、女性の肌を本気で考える人になかなか会えなくて「どうしてこんなに真摯に向き合ってくれないんだろう」と悩んだこともありますね。自分が気に入ったものしか作りたくない。でも無理かもしれない。さらに自分がすごく気に入ったものができたとしても確実に売れるという保証はない。収入もない、するとだんだん気持ちが暗くなってくるんです。明日の米も買えない、キュウリ1本で過ごしたこともありました。定収入がなくなるとお金を使う気になれないんです。でも退路がないから前へ行くしかない。

齋藤:自分をふるい立たせて「もういくしかない」みたいな事でしょうか?

岩崎:あきらめなかったら絶対うまくいく、と思っていたんですね。

社員みんなが子どもを産める会社にする!
創業当初からの想いが現実に

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齋藤:ランクアップには、病児シッター制度や、スポーツクラブ助成金、図書代支給などワーママに嬉しいユニークな制度がたくさんありますね。制度は岩崎さんが考えるのですか? それとも社員から提案があるのでしょうか?

岩崎:私が提案したものもありますし、社員の声からできたものもあります。改善提案をすると採用されなくても500円もらえるという制度があるので、たくさんの意見が上がってきます。

齋藤:採用されなくても手当がもらえるなら、みんな改善案を考えちゃいますね。

岩崎:「社長になったら絶対長時間労働はしない、社員みんなが子どもを産める会社にする」と前の会社を辞めるときから決めていました。そして、今それが実現しています。

齋藤:現在は社員数とワーママ数ってどのくらいですか?

岩崎:社員は45名で女性が43名、そのうちほぼ半数がワーママです。男性は現在2人で、来年新卒で入る4人のうち2人は男性です。ゆくゆくは将来は男女同じくらいの数にしたいですね。

齋藤:では、製品開発部でいらっしゃる佐々木さんのお話を伺わせて下さい。現在どのような業務を?

佐々木:現在製品開発部におりまして、自分の悩みや女性のニーズをもとに、製品を企画・提案して作っています。

岩崎:ウチは、自分が作りたいものを作る会社なんです。

佐々木:「これが売れているから」といって作ったものだと、製品のレベルが下がってしまうと思うんです。自分が悩んでいることって、実は他の人も悩んでいる。共感してくれる方も多くいらっしゃると思うので。

岩崎:佐々木はヒットメーカーで、このBBリキッドバーは彼女がママになったからこそ出来た製品なんですよ。

佐々木:化粧に時間をかけられる頃は分からなかったんですが、子どもを産むと全く時間がない、少しの手間がかけにくくなってくる。不器用でも、ささっと1本でキレイにメイクができたら、みんな喜んでくれるんじゃないかなと。

好きな美容業界で仕事と子育てを両立していく

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齋藤:こちらに入社する前はどんなお仕事をされていたのですか?

佐々木:もともとは大手化粧品会社ビューティーカウンセラーとして10年以上店頭に立っていました。毎月のノルマが決まっていて、好きじゃない化粧品でもお客様に売らなければならない。改善案や要望も、あげたところで上層部には届かないですし、働きたい女の子はいくらでもいる。どんどん入ってきて辞めるという循環の会社で、長年いる先輩方を見て「将来あんな風に働くのか」と思っていました。さっきの岩崎さんと立場的に逆ですね。
結局退職して、美容業界の中で何度か転職したのち紹介でランクアップに来ました。

岩崎:「すごくいい人がいるよ」って紹介してもらったんです。

佐々木:当時、結婚したばかりで、子どもが欲しいと考えていたんです。好きな美容業界にずっといたいけれども、土日も仕事のことが多く、平日でも13時~23時というようなシフトもある。美容業界にいながら、子どもを育てることは可能なのだろうか?と悩んでいた時期に、ランクアップと出会ったんです。美容業界の中にありながら土日が休みだし、しかも社員が楽しそう。それだけで何も考えずに「行きます!」と手を挙げました。

齋藤:入社してから、お子様を出産されたんですね。現在はどのような働き方を?

佐々木:はい、2010年に入社して7年目になります。この間、5歳と1歳の2人の子どもを出産していますので、産休・育休を合わせると内2年くらいは休んでいますね。この5月に復職し、現在は時短で9時半から16時半まで勤務しています。一人目の時はフルタイム勤務だったのですが、二人目を出産し復帰してから時短勤務にしています。

齋藤:佐々木さんは最初から製品開発室で働いているのですか?

岩崎:もとは美容相談室で採用したんですが。製品をもっとよくしたいという情熱がすごくって、製品開発の部署に加わってもらいました。

佐々木:店頭にいたころは自分の本心と違うことを言って売るのは苦かったし、お客様には何回もお会いするので、後のフォローが大変なんです。だから今は徹底的に良いものを作りたいという気持ちがあります。前の会社は、自分が何を言っても遠くて通らなかった。でもここでは決断してくれる社長が身近にいる。せっかく近いのに、意見を言わなきゃもったいないじゃないですか。

岩崎:「そこがダメ」と言うと「じゃあここをこうしたらいいですか」と再度提案してくるんです、佐々木は。

佐々木:ダメな場合も根拠がはっきりしているので、もっと提案していこうという気持ちになります。

齋藤:風通しがすごくいいんですね。意見が言えるし、聞いてくれる。

佐々木:逆に、歯車の一員だったら、どうでもいいですよ。働くうちにどんどん暗くなって、やがて「ああはなりたくない」という先輩になってしまう。でも、今は自分が会社の売り上げを作るという気持ちがあるんですよね。会社にはどんどん成長して、大きくなって欲しい、自分がそれに協力していきたいという気持ちがあるので「こっちの方がお客様は絶対喜んでくれる」と思ったときは強く主張しています。

岩崎:うちの製品開発部はみんな強い。社長である私の言うことも聞かないよね(笑)

佐々木:強い者同士、みんな「自分の会社だ」と思っています。だから自分たちのやりたいことを通すときに、どうやって社長をクリアするかが課題で部内ですごく揉みます。「これじゃあ説得力に欠ける。言い方を変えて理論的に説明しなければ負ける!」みたいな。

岩崎:最初にちょっと言われてスゴスゴと引き下がるなら「たいしてやりたくなかったのかな」と思うのですが、何度も何度も「直してきました」と持ってくると「ここまで考えているんだ」と、強い気持ちが伝わりますよね。

女性のさまざまな課題を解決するための新たな挑戦

齋藤:これからの目標を教えていただけますか。仕事でもプライベートでも。

佐々木:ランクアップには社員がやりたいことを応援してくれる制度があります。製品開発は大好きですが、ずっと製品開発だけにこだわる気持ちはなくて、せっかく子どもを産んでいるので、子どもに関わる事業を何らか立ち上げられたらいいなと思っています

岩崎:うちの会社の価値観は挑戦なんです。新規事業提案をしてグループ会社を作ったりもできるんです。

佐々木:会社の枠組みを外して色々考えても否定せず逆に応援してもらえる。せっかくなので挑戦したいと思っています。

齋藤:そういう社員の存在が会社にとって宝だと思うんですが、それも社長の人望ですよね。

佐々木:社長のおかげか、社員みんながそういう志向になっているので、相乗効果がありますよね。

齋藤:岩崎さんのこれからの目標は何ですか?

岩崎:私たちの会社は「女性が幸せに生きる社会をつくる」というのがミッション。化粧品事業「美と健康のマナラ」として海外進出もスタートして、グローバル展開します。
化粧品以外にも、働く女性を応援する事業、働く女性がこれからずっと輝き続けるために問題解決していきたいことがたくさんあるじゃないですか。
子育て、教育など、女性を助けられるように事業は増やしていきたいと思っています。

「女性をキレイにしたい」と起業した岩崎社長と、「お客様に本当にいいものだけを届けたい」という佐々木さん、立場や年齢を超えて共通する思いを強く感じました。ユニークな制度やヒット商品ばかりにスポットライトが当たりがちですが、それを支えているのは挑戦を辞さない姿勢と「女性が幸せに生きる社会をつくる」というミッション。同社のように、ワーママが輝ける会社がもっと増えるといいなと思った取材でした。

プロフィール

岩崎 裕美子さん

株式会社ランクアップ 代表取締役

1968年北海道出身。旅行会社、広告代理店を経て、2005年株式会社ランクアップを設立。
試作を繰り返し、オジリナル化粧品ブランド「マナラ」を開発し、代表商品「ホットクレンジングゲル」は600万本を突破。現在、多くに女性に愛されている。2015年には台湾に子会社を設立。著書に『ほとんどの社員が17時に帰る10年連続右肩上がりの会社』(クロスメディア・パブリッシング) がある。

佐々木 美絵さん

株式会社ランクアップ 製品開発部

1976年千葉県出身。某大手化粧品メーカーで美容カウンセラーとして 10年勤務。2010年にランクアップに入社し、美容相談室にてお客様の声を直接聞くビューティーアドバイザーとして従事。入社 2 年目で製品開発部を立ち上げ、数々のヒット製品を生み出す。ランクアップ入社後に出産と復職を二度経験。現在は 1 才と5 才児の子供を育てながら、時短勤務で活躍中。

文・インタビュー:齋藤有子(インタビュー)・曽田照子(文)

ライター

ラシク 編集部


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