1. トップ
  2. 働き方・生き方
  3. バズったブログ『主婦業9割削減』著者と考える主婦業削減と家族の当事者意識
2021.11.12 2023/05/31

バズったブログ『主婦業9割削減』著者と考える
主婦業削減と家族の当事者意識

FacebookTwitter
バズったブログ『主婦業9割削減』著者と考える<br>主婦業削減と家族の当事者意識

2020年に開設したブログ『主婦業9割削減を目指すブログ』が大きな話題となった唐仁原けいこさん。

3人目のお子さんの出産と、コロナ禍における全国一斉休校をきっかけに生活スタイルの違う子どもが3人家の中にいるという状態となり、仕事・家事・育児がキャパオーバーとなった唐仁原さんは深く悩んだ末、“主婦業9割削減”という答えにたどり着きます。

多くの人にとって役立つアイデアを共有したいと始めたブログは開設3ヶ月でメディアに取り上げられ、ついには書籍化へ。忙しい女性たちを救うヒントになると、多くの母親たちから共感と支持を集めています。

そんな新しい主婦業のあり方を打ち出す唐仁原さんに、主婦業が抱える根本課題や家庭内の役割分担について話をうかがいました。

「#主婦業9割削減」が議論のきっかけに!賛否の声から見えた主婦業の根本課題

唐仁原けいこさん/オンラインで取材しました

編集部:「主婦業9割削減を目指すブログ」は開設3ヶ月でメディアに取り上げられ、同時にSNSでも多くの反響を呼びました。便利な家電やサービスを取り入れて柔軟に家事を削減していく唐仁原さんのスタイルに対して、さまざまな意見があったと伺いましたが、これらの反響をどのように受け止められたのでしょうか?

 

唐仁原けいこさん(以下、敬称略。唐仁原):やはり家事をお金で解決することへの抵抗感がこれほど強いんだなとあらためて実感しました。たとえば、会社であれば業務効率化を図るために先に投資をしなければならないという考えが一般的でも、家庭内の問題となると全く別問題なんだなと。家事育児に関しては、いかにコストをかけないで工夫するかということに注目されがちだからこその反響内容だったと思います。

 

編集部:確かに多くの女性は、自分の手間でいかに安く済ませるかを考える傾向にあると思います。

 

唐仁原:私も同様に、「家電が壊れてくれないから買い替えられない」みたいなタイプだったので、家事に対してお金を払って効率化するという発想に切り替えることはとても苦手でした。

 

編集部:そんな唐仁原さんがどのようにして「お金」より「時間」を優先する思考に切り替えて、家電などへの投資を始められたのでしょうか?

 

唐仁原:以前からお世話になっていた「価値育塾(かちいくじゅく)」という学校を主催している山崎潤弥さんに仕事と家事育児の両立について相談したことが大きかったですね。彼は経営コンサルタントでもあるので、「あなたの1時間はそんなに価値がないの?」という視点でアドバイスをいただいたんです。そういう考えもあるのかと思い、まずはドラム式洗濯乾燥機を取り入れてみることにしました。すると30分の時間を獲得できたのですが、これが時間以上の効果を実感できたんです。

 

編集部:というのは?

 

唐仁原:ドラム式洗濯乾燥機に変えたことで、いかなる晴れた日も乾燥機しか使わないことに決めたら、1日中洗濯物のことを考えることから解放されたんです。心配ごとが一つ減ったことで、思考に余白が生まれ、仕事にもよい影響が生まれました。結果として家電を変えたときの効果が、時間以上であることを体感できたことで、「お金」より「時間」を優先する思考に切り替えられたのだと思います

 

編集部:思い切って一つ家電を替えたことで、それ以上の効果を体感できたということですね。とはいえ、考え方を切り替えることは、なかなか難しいものです。そもそも現状の課題を解決するには、投資なり何かアクションが必要なのに、今のままあふれそうなタスクを夫婦2人の手で無理に回そうとしてしまいがちです。さらに妻側が夫の家事に対して文句や不満を抱えてしまい、「夫はダメだ、だから私が大変」という負のループから抜け出せないということも少なくないような……。

 

唐仁原:確かにそうですね。妻側も自分のタスクを夫に押し付けようとすると、どうしても小競り合いが増えてしまいます。それならば家事の総量を夫婦2人とも減らした上で、どちらがやっても大してストレスではないレベルで分担をするのがスムーズかなと思います。

家事育児の分担問題 未来を描くことで役割が見えてくる

編集部:家事育児の分担は共働きが進むなかでも、女性側にどうしても比重が偏りがちです。性別によって決められる役割からまだまだ脱却できない側面もありますが、家庭内の役割について唐仁原さんのご家庭ではどのように取り組まれていますか?

 

唐仁原:わが家の場合、私が働くことが大好きで、夫は子どもと遊ぶのが好きだったにも関わらず、3度の妊娠・出産もあり、気づけば夫が家計の中心として働き、家事は私になっていました。

ただ3人目出産後、あまりにタスクが増えすぎて、仕事・家事・育児の両立に悩んだ時、相談相手だった山崎さんが経営コンサルタントの視点から、「あなたが仕事に集中することは家族にとっていいこと」というアドバイスをしてくださったんです。家族を会社に見立てて考えたら、パフォーマンスを最大限に発揮できる人員配置が適切だからこそ、夫婦それぞれが得意なこと、好きなことをやった方がいいと

 

編集部:なるほど。家族を会社に置き換えて考えれば、性別ではなく能力やパフォーマンスによって最適化されますね。

 

唐仁原:山崎さんからのアドバイスを受けて、私も夫も「確かに!」とそれぞれの適性に気づけました。でも逆に、私はこれまで無意識に「男なんだから」と夫に自分の価値観を押し付けていたことに気付き反省もしました。

 

編集部:男女の役割における無意識のバイアスは誰にでもあると思います。

 

唐仁原:そうなんですよね。私自身もいざ収入の柱を抱えるとなると、それはそれで怖くなりますしね。だからこそ、夫婦それぞれの立場をお互いに理解し合うことはすごく大切だと思います。家事育児に関しても、女性ばかりが大変だと一方的に訴えたとしても、この問題は解決しないんですよね。やはり男性側も大きな責任を背負っていたりするので、まずは夫婦で話し合うことが大切なのだと思います。

 

編集部:具体的にはどのような話し合いを行えばよいのでしょうか?

 

唐仁原:たとえば私と夫の場合は、「わが家にとって一番良いのはどっちなんだろう」ということを夫婦で明確にしたからこそ、協力的になれたのだと思います。「今は私が集中して働いていた方が家庭にとっていいよね」ということがお互いに分かったことで、今は夫が家事育児の多くを担ってくれています。

 

編集部:夫婦ですり合わせが必要ということですね。

 

唐仁原:まさにその通りです。自分たちが行きたい未来へのすり合わせがない中で、日々の業務に怒りをぶつけ合っていると全く問題解決はしないんです。だからこそ、「自分たちがなりたい家族はこういうことだよね」ということをお互いに分かったうえで、どこをどう分担していくのか、どちらもやりたくないのなら機械に頼むのか、外注するのか。外注するならお金がかかるから、その分稼ぐのかということを2人の問題として考えていくことがすごく大切なんです。

 

編集部:なるほど。さきほど、家族を会社に置き換えてお話されていましたが、まさに家族経営の観点からも人員配置の最適化を図るということですね。

 

唐仁原:そうですね。それに女性だからといって家事育児が得意ということはないと思います。逆もしかりなのですが、私自身は「男なんだから働きなよ」と夫に対して役割を押し付けていました。だからこそ、家族で会社を経営しているという感覚で、性別なく、どちらがやったらパフォーマンスが高いのかを基準に考えてみるのも効果的だと思います。

主婦業9割削減とは「家族の幸せ」を追求するもの

編集部:今回唐仁原さんから直接お話をおうかがいして、主婦業9割削減とは、単純に家事をラクにするというだけではなく、本質的に家族の幸せにつながっていくものだと感じています。

 

唐仁原:ありがとうございます!実際に私自身も主婦業削減を実践したことで、笑顔が増えて以前と比べて家庭内がとても明るくなりました。

 

編集部:それは素晴らしいことですね!

 

唐仁原:これまでは家事育児で常にギリギリだったこともあり、イライラしているのは私の性格なんだとずっと思っていたんです。でも主婦業を削減してみて気づいたのは、性格ではなく、単純にタスクがキャパを超えていただけだったんだなと。

 

編集部:なるほど!大切な気づきですね。

 

唐仁原:主婦業を削減することは、心のゆとりを生み、家族の幸せにもつながるものだと思います。やはりよき母であり、よき妻であろうとしても自分が満たされていないと、難しいんです

 

編集部:確かに自分自身に余裕がないと家族にも優しくできないです……。

 

唐仁原:だからこそ時には“サボる”ということもすごく大事なんです。たとえば、ちょっと疲れたときにお気に入りのカフェに行って、満たされた時間を2時間過ごして帰ってきたら、自然と家族に感謝したくなるものなんですよね。なのに、自分で自分にタスクを強いて勝手にイライラしてしてしまう。家族からしたら、2時間どこかでサボってきてもらって、ご機嫌でいてもらった方が助かるはずなんです。

 

編集部:確かにその通りですね。

 

唐仁原:それに今回主婦業をどんどんやめていったら、時間と思考に隙間ができて、意欲が湧いてくるようになりました。それで始めたのが「主婦業9割削減を目指すブログ」だったんです。これも余白の時間を持てたからこそ、叶えられたことだと思います。主婦業を手放し、時間の使い方を変えることは、家族の幸せはもちろん自分自身のやりたいことを見つけ、歩み出す一歩を後押ししてくれるものだと思います。

 

編集部:なんだかとても前向きな気持ちになれます。そして母親になっても、やりたいことを叶えたいという意欲を持ち続けることはすごく大切ですよね。唐仁原さん、本日はありがとうございました!

日々のタスクに追われるまま、現状を変えない自分自身に深く反省をした今回の取材。振り返れば私の日常は、思い通りにいかない家事育児へのストレスと、夫がやる家事に対する不平不満であふれていました。本当に現状を変えたいならできることは山ほどあるはずなのに、できない理由を探して思考を停止させていたこと。そして家庭内における夫婦関係を男女の役割でしばっていたのは、それこそ私自身であったことにあらためて気付かされました。母親だからを隠れ蓑にせず、「私はどうありたいのか?」「この先どんな未来を描いていきたいのか」、そんな小さな目標を設定してみることで、不平不満のループから抜け出し、私なりの“主婦業◯割削減”を見つけられるような気がしました。

プロフィール

唐仁原 けいこさん

9.6,2歳の3人子育て中でパラレルワーカー。女性が主体的に生き方を考えるコミュニティ“ライフキャリアcircle”主催。
2020年6月に「主婦業9割削減を目指す」と宣言して書きはじめたブログが話題になり書籍化。各種メディアから取材を受ける。「こうあるべき」から解放されると評判の主婦業9割削減エッセンスを伝授した人は述べ1万人以上。 ジェンダーの平等、女性活躍推進、少子化 今の日本が抱える課題に一石を投じる発信だという声をいただく。講談社公式共働きwithにて連載中。

文・インタビュー:倉沢れい

ライター

倉沢れい

ライター

この記事をシェアする

FacebookTwitter