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2023.09.19 2023/09/15

旅行業界に身を置く中でのコロナ禍、出産
挑戦を続けることがキャリアの彩りに

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旅行業界に身を置く中でのコロナ禍、出産 <br> 挑戦を続けることがキャリアの彩りに

大学時代は中国へ留学も
知見の広がりと地元貢献がかなう旅行会社に

松井早紀さん / 2022年、3年ぶりの開催となった竿燈まつりにて

私は秋田市で生まれ育ち、高校時代までを大好きな地元で過ごして、大学進学と同時に1度秋田を離れました。進学先の新潟大学では、主に生涯学習について学び、在学中に中国の北京師範大学珠海(じゅかい)分校に1年、北京聯合(れんごう)大学に半年、合計で1年半留学しました。

実は入学当初、目標にしていた大学に進学できなくて、「私はこれからどうしたらいいのだろう」と悩んでいたんです。留学したのは、「何か新しいことに挑戦しよう」と、自分を奮い起こす目的もありました。中国では、現地に行かないと見られない景色や得られない学びがたくさんあって。その経験をもとに、校内のプロジェクトや研究会で中国語の通訳をしたりと、個人的な活動に生かすことができました。

2018年に大学を卒業して、新卒で就職したのが現職の旅行会社です。当時、企業選びの軸が大きく2つあって。1つ目は「海外に行ける機会があること」、そしてもう1つが「将来的に地元の秋田に戻れる可能性があること」でした。秋田には「竿燈(かんとう)まつり」という有名なお祭りがあります。私自身、小学4年生のころから囃子方(はやしがた・笛や太鼓などを演奏して祭りを盛り上げる人)としてお祭りに参加していて、地元に対して強い思い入れがあったんです。大学進学で地元を離れるときから、いつか秋田に戻ってきて、地域に貢献したいという思いがありました。運よく入社当初から秋田配属となり、いち早く地元への帰還がかないました。

「このままでいいのだろうか」
労働環境が一変したコロナ禍で、新たな挑戦を始める

入社2年目に添乗で訪れたスイスにて

入社してからの2年間は、お客様企業の社員旅行の企画・手配・添乗・経費精算といった、ツアーに関する一連の業務を担いました。県外や海外に行く機会が多くて、一緒に働く方々にも恵まれたので、忙しくも楽しい毎日でした。

けれど、2020年の春から新型コロナウイルス感染症の流行が始まったことで、労働環境はガラリと変わりました。外出自粛に伴い、予定されていた社員旅行は軒並みキャンセルになって、業界全体で実案件は激減。当社も例外ではなく、できる仕事は、県内で旅行をする方のお手伝いや、旅行と直接関係のない事業などに限られました。

入社3年目を迎えて、ちょうど業務に慣れてきたころだったので、正直、先の見えない中で不安や焦りは大きくて……。「このまま働き続けていいのだろうか」「今後コロナ禍が明けても生き残っていけるのだろうか」と考えたこともあります。

でも、私は昔から、追い込まれてから頑張るタイプ。堂々と言えることではありませんけどね(笑) 不安を解消するためにも、「何かやらないと!」と仕事以外でできることを探し始めたのがこの時期です。

オンラインスクールやオンラインコミュニティに参加しながら、観光やマーケティングに関する知見を広げたり、友人のつながりから、ワードプレスの操作やコンテンツ制作など、未知だったWeb上でできる仕事に挑戦したり。中国を身近に感じてもらうために、中国語を学びたい方が集まるコミュニティをつくったりもしました。一生懸命動いていく中で、少しずつ気持ちも前向きになった気がします。

社会的に人の移動が回復してきてからは、幸い、業務量がコロナ禍前と同じくらいに戻って、私は団体旅行のお手伝いや、地域と連携した観光課題の解決などを担当しました。コロナ禍前は当たり前だった日常ですが、そのありがたみを改めて実感しました。

目まぐるしい変化の中で学んだこと
「最適なタイミング」は待っていてもやってこない

ランニングにも挑戦

コロナ禍で仕事環境が目まぐるしく変わる中、大切にしていた考え方があります。

それは、未知の領域でもまずは挑戦して、挑戦する中で学びを得ることです。仕事に限ったことではありませんが、何もしないと、何も分からないままで終わってしまう。当たり前ではあるけれど、それってすごくもったいないと思ったんです。今振り返ると、大学時代の留学も、目標の大学ではなかったけれど「このままでいるのはもったいない」っていう気持ちが根っこにあったのかもしれません。

何かをするのにベストなタイミングって、待っていてもやってこない。「このイベントに応募しようかなあ」と悩んでいたら募集が終わっていたり、むしろタイミングを逃すことのほうが多いとすら思います。

私は今まで、「仕事が忙しい」など時間や環境のせいにして、選択を先延ばしにしたり、諦めたりすることがありました。でも「これをする」って腹を決めると、意外とやりくりできるもので。「時間」や「環境」のせいで何かができなくなることってないのかも、と最近よく思うんです。

現在も、将来に対する不安がないわけではありません。でも、コロナ禍で自分なりに挑戦できたことが自信になっていて、常に前を向くことができています。オンラインで仕事をする術を知ることができたことも、未来への視野が広がるきっかけになりました。

育休中こそできることをしたい
自分のやりたいことも、家族のやりたいことも大切に

妊娠中に訪問した美郷町のラベンダー園にて

私は今、産前休業中で、これから出産を控えています(取材時2023年8月)。出産は初めての経験だし、人生においてとても大きな出来事。ワクワクするけれど不安もあります。

一方で、出産前のこの期間は、自分の時間をつくりやすいときでもあると思って、ライティングやマーケティングの勉強を始めました。というのも、旅行会社で仕事をする中で、ライターさんやマーケターさんと協働することがあって。発注された側の仕事を経験することで、もっと相手の立場で物事を考えられるし、やりとりもさらに円滑になるんじゃないかって思ったんです。

出産後落ち着いてきたら、子育てをしながら今の仕事を続ける方法を考えます。在宅勤務含め、自分と家族にとって最適な働き方を、職場の方々と相談しながら見つけていきたいですね。

仕事関係でいうと、いち個人として地域の課題解決に携わることも目標です。今は会社の名前ありきで関わっている部分があります。「自分だからできること」を探して、「地域の中の松井さん」として、少しずつ、地元に貢献できることをやれたらうれしいです。

せっかくなのでちょっと視野を広げて、人生における展望も。出産を控える中で、家族を大事にしたいという気持ちが日に日に強くなっています。自分自身がやりたいことも大切にしつつ、家族のやりたいことを応援し合えるような家庭をつくりたいですね。

これまで、自分なりの挑戦を通じて、公私ともにさまざまな方にお世話になりました。出会った方々とのつながりをこれからも大切にしていきたい。日々生活する中で、感謝の気持ちを忘れずにいたいです。

 

ライター

紺野天地

ライター、文筆家

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