売り手市場化が進む中、中小企業にとって人手不足は特に深刻な課題です。採用においても、中小企業における人材獲得は大企業以上に厳しい状況にあり、採用難が深刻化しています。
「求めている人材が応募してこない」「採用してもすぐに辞めてしまう」「採用にコストや人的リソースをかけられない」といった採用課題に頭を悩ませることもあるのではないでしょうか。
本記事では、中小企業に多い採用課題と解決のポイントを説明したうえで、採用代行サービスを導入・活用した事例として、株式会社メタリテール・コンサルティングの取り組みをご紹介していきます。
中小企業に多い5つの採用課題
1.採用にコストをかけられない
マイナビが公表した新卒採用の予算に関する調査結果(※1)によると、上場企業では採用費の総額平均が約1,237万円、非上場企業が約372万円と大きな差があります。また、売り手市場下では、従来よりも広告費や説明会費用といった採用コストがかさみやすく、予算面から活用できる採用手法や媒体が限られてくると、思うように新たな人材を確保できないケースがあります。
2.人事や採用担当者がいない
経済産業省の調査(※2)によると、企業に専任の採用担当者がいないケースは約4割に上り、経営者や社員が兼務で採用業務を担わざるを得ない状況にあります。とはいえ時間的な余裕やノウハウが乏しく、思うような成果が出ないといった課題につながります。
3.求人に対する応募が少ない
中小企業は、大手企業に比べて知名度による母集団形成ができないため、コストをかけて求人広告を掲載しても、応募が集まりにくい傾向があります。ただ応募を待つだけの採用手法では、欲しい人材を採用することはなかなか難しいのが現状です。
4.採用ミスマッチ
適切な人材が見極められないことで、自社に合わない社員を採用しミスマッチ(企業と求職者の間に生じる認識のズレ)を生んでしまうケースも。ミスマッチは本人だけでなく、職場にも影響を及ぼしやすいため、結果的に離職率の上昇や生産性の低下を招く恐れがあります。
5.内定辞退
内定を出しても、一定数の辞退者が出るケースもあります。大手企業とのバッティングといった外部要因だけでなく、採用担当者や現場スタッフの内定者フォローの経験不足、コミュニケーション不足による心変わり等の内部要因も挙げられます。
(※1)マイナビ サポネット「新卒採用の予算について」
(※2)経済産業省 「未来人材ビジョン」
採用成功のポイントは?
採用ブランディングで自社の「ファン」を創出
採用ブランディングとは、自社の「ファン」を創出し増やしていくために、求職者に向けて企業理念やビジョン、自社の魅力や特徴、社員や職場の雰囲気などを戦略的に情報発信していくことをいいます。強み・特徴の明確化によって他社との差別化を行い、魅力を積極的に訴求していくことが大事です。即戦力の採用に成功している企業は、ブランディングにも成功していることが多く、採用と企業ブランディングは地続きだといえるでしょう。
ダイレクトリクルーティングで候補者に直接アプローチ
「ファンづくり」に欠かせないのは情報発信です。発信の仕方や工数はさまざまですが、必ずしもコストや時間がかかるわけではなく、たとえばSNSやブログサービスを利用する方法もあります。
ポイントは、候補者一人ひとりに合ったメッセージを送ること。ひと目で一斉メールと分かるような画一的な内容ではなく、候補者の志向や経験に沿ってカスタマイズした内容をつくることが大切です。
採用代行サービスの活用でプロの知見とノウハウを生かす方法も!
採用代行サービスとは
採用代行とは、企業の採用活動業務をアウトソーシングすることです。採用に関する業務を全般もしくは一部を委託することで、担当者が重要な業務に集中できるようになります。採用のノウハウがある企業に依頼することで、売り手市場の中でも他社に負けない「引きつけ」を強化することもできます。
中小企業に採用代行がおすすめな理由
昨今の採用活動は実に多様化しています。従来の求人サイトや自社サイトだけでなく、人材紹介やリファラル採用、SNSによるダイレクトリクルーティングまで、さまざまな採用手法を駆使するようになっています。新たなトレンドを受け入れるとしても、利用前の下調べや新たな対応が必要となるため、人的工数に余裕がない中小企業において、採用のプロである採用代行は有効な一手といえるでしょう。
また、採用代行会社は独自のノウハウを持っていることが多く、採用ターゲットに合わせた採用活動を行ってくれるため、効率的に質の高い応募者と出会える可能性が上がりやすくなります。
採用代行導入企業の事例 | 株式会社メタリテール・コンサルティング
抱えていた採用課題
株式会社メタリテール・コンサルティングは、主に流通・飲食系のITコンサルティング、眼鏡店向けシステムやバイオ作業支援システムなどのパッケージをはじめ、ITシステム運用代行サービス等、多様なITシステムサービスを提供する企業です。
事業運営自体は好調ではあったものの、採用活動がはかどらないことに課題感を持っており、思い切って採用活動を外部に依頼することにしました。
採用代行サービスの取り組み
採用代行サービスを利用して最初に取り組んだのは、ビジネスSNS「Wantedly」の運用でした。求人内容(求める人物像や期待値)を第三者観点でヒアリングしてもらい、求人記事やブログ記事(ストーリー)を作成。コーポレートサイトでは発信しきれていない社内の動きや社員の取り組みを発信することで情報量を高め、会社や社員のファンを獲得するのが狙いでした。
その後は、社長のインタビューを実施し、同じくWantedlyの「ストーリー」で発信。これにより1名の新卒採用につながりました。翌年よりさらに改善を続け、新卒向けの記事作成、媒体掲載、大学・専門学校への求人票送付などを実施。さらに2名の新卒採用が実現できました。
<採用代行サービスの成果で入社した新入社員の声>
ホームページを見て、「おもしろそうな会社だな」と思い、直感で「ここに入りたい!」と思いました。SNSも見ましたが、雰囲気が良さそうだったことも決め手でした。面接もテンプレートではなく、自分の良さを引き出してくれるもので好印象でした。(2年目社員Hさん)
IT系に進みたいと思い、就職活動をしていたときに求人サイトで弊社を知りました。社長の面接を受けたときに雰囲気が良かったことが入社の決め手ですね。一人ひとりに時間をかけて、面接というよりも話やすい雰囲気で進めてくれたのが印象的でした。(3年目社員Nさん)
ITに絞って就職活動をしていました。社長が私に寄り添った会話をしてくれたことで「ここで働きたい!」という気持ちが強くなりました。(2年目社員Sさん)
採用活動の自走に向けて、自社でSNS運用を開始
当初は、採用活動のすべてを代行会社にお任せしていましたが、2年間でノウハウやナレッジが少しずつ社内にたまったことで、現在は少しずつ内製化しています。
新卒で入社した社員が中心となり、SNS(Facebook・Instagram)を活用した採用広報を任せることで、自分たちの手で採用活動を進められるようになっています。採用代行会社からは、SNS運用についてのアドバイスと投稿内容の確認といったサポートを受け、それ以外はすべてを自社で行っています。
まとめ
採用手段が多様化している現代だからこそ、中小企業は採用代行サービスを使って優秀な人材を得る必要があります。外部パートナーに協力してもらうことで、自分たちだけだと客観視できなかった採用要件を言語化し、具体的な活動につなげることで中小事業者でも積極的に採用活動が可能になります。
ライター