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2023.06.30

この10年、女性の「はたらく」はどうなった?
2つの人材マッチングサービスの歩みを通して考える<前編>

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この10年、女性の「はたらく」はどうなった?<br>2つの人材マッチングサービスの歩みを通して考える<前編>

働き方改革や女性活躍推進、コロナ禍によるリモートワークの普及などにより、働き方の選択肢は急速に増えました。働き方の多様化が進むことは喜ばしい一方で、「自分にはどんな働き方が合っているのか」と迷うことも。企業も、「どのような採用方法・契約形態が最適なのかよく分からない」といった課題を抱えているようです。

今回、ラシクでは、主に女性に向けた人材紹介を行うエージェントの代表を招き、女性のキャリア形成や企業の人材活用についてお話を伺いました。

社会的な働き方の変化や、それぞれの事業立ち上げの背景、昨今の女性の仕事探しの傾向や採用のリアルについて、前後編でお届けします。

田中 美和さん
株式会社Waris共同代表/一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会理事

三好 怜子さん
株式会社ノヴィータ代表取締役社長/駐在妻キャリア支援「CAREER MARK」共同代表/ラシク運営責任者

小山 佐知子
「ラシク」編集長

女性が直面する課題に対して、改革気運は高まってきている

左より、田中美和さん、三好怜子さん、小山佐知子

編集部今年2023年は、Warisさん創業10周年、CAREER MARKさんも事業化3周年とのことで節目の年ですね。田中さんと三好さんはそれぞれこの10年間で女性の働きやすさはどう変わったと思いますか?

田中美和さん(以下、敬称略。田中)2013年には女性活躍推進法も、働き方改革もなかったことを考えると、この10年で世の中はかなり変わりましたよね。

三好怜子さん(以下、敬称略。三好):肌感でも、10年前より仕事と育児を両立する人が増えたなと感じます。待機児童等、ニュースで当事者たちに触れる機会も増え、家事代行等ワーママ向けのサービスや男性の育児参加も積極的で、女性が働き続ける選択がしやすくなってのではないでしょうか。

10年間で私自身も出産し、働き方を模索する中で、選択肢の有無は働く意欲につながると社内外の事例から確信し、働き方の選択肢を増やしていったら、いつの間にか20種類を超えていました。

田中当時は、いかに長い時間を仕事に費やせるかで評価をされがちでしたよね。女性が責任ある仕事を任され、キャリアを築いていくには、とにかく長い時間オフィスで仕事をしていないといけなかった。でも、子どもを持つとその働き方をするのは無理がありますよね。そのころはリモートワークは一般的ではなく、出社ありきの働き方をするのが当たり前でした。

編集部Warisさんが2023年3月に発表した「女性の働き方に関する調査」※の結果を見ると、調査対象者の約7割が「働きやすくなった」と感じていると回答していますね。

田中男女問わず、30〜40代は結婚、出産、子育て、介護などライフイベントが多い時期です。働く場所と時間の自由度が高まったことが、働きやすさにつながっていると思います。

ラシク編集長 小山 佐知子(以下、敬称略。小山):女性が直面しがちな課題やモヤモヤに社会が以前よりも関心を持っていると感じます。以前は「両立をしたい」「子どもを持っても働き続けたい」と思うなら、自分たちでどうにかするしかないといった空気がありました。

実際に、母になっても働き続けたいと願う方たちは必死にロールモデルを探していたような気がします。ラシクでも多くの先輩ママを取材してきました。
「3/8国際女性デーに寄せて、Waris10周年記念「女性の働き方に関する調査」を公開 〜キャリアシフトしている人ほど、働きやすさを実感〜」(Waris)

キャリアを模索してのいま、三者それぞれのリアル

編集部ここからは、みなさん自身の「10年間」についてもおうかがいしたいです。きっとさまざまな変化を体感してこられたのではないでしょうか。

田中2013年はWarisを創業し、人生の転機となった年でしたね。創業前には雑誌の記者をしていたのですが、連日のようにさまざまな女性を取材し、働くうえでの悩みを聞いていました。そのうちに、記事を書いて発信するだけでなく、女性が抱く悩みを解消するために行動したいと思うようになりました。

編集部田中さんは、この10年の間に結婚、出産、子育てとプライベートで大きな変化を経験されています。母親となってからは、ご自身の働き方に何か変化はありましたか?

田中それが、そこまで変わっていないんです。Warisを創業した当初から、メンバーとオンラインでのコミュニケーションを取ることが当たり前だったことが影響しているように思います。時間に融通がききやすいので、子育てと仕事の両立がしやすいことにメリットを感じます。子どもの習い事の送迎もしやすいですしね。

編集部三好さんはいかがですか?

三好:10年前はママ社員は一人もいなかったんです。ママ社員が入社したこともありましたが、働き続けられず離職してしまいました。メンバーの約半数は女性だったのですが、当時の職場はどこか休みづらい空気も漂っていて、結婚して子どもを産み、仕事を続けるイメージを持てない状況でした。でも私は「いつか子どもを産みたい」と思っていて、それが会社にとっても変化のきっかけになればと。娘を授かり、社内で初めて出産・復帰したメンバーになりましたが、ママになって世の中で言われている両立の難しさを実感しましたね。子連れ出社にも挑戦したりしながら「自分が両立をすることで、後輩たちが将来描く両立の道を絶やしたくない」と思っていました。

編集部小山さんはどうでしょうか?

小山:10年前は人材の会社で編集者として働いていたのですが、妊活に本腰を入れようとした結果「不妊離職」せざるを得なくなりました。1日の多くをクリニックの待合室で過ごす中で、流れる時間がただ無意味に感じられて。フリーランスとして働いていたものの、「私、このままどうなっちゃうんだろう」といつも不安でした。出口のないトンネルの中で、右往左往しているような感じでした。

編集部仕事と家庭が今以上にトレードオフになってしまう時代だったのでしょうね。

Warisの出発点は「女性がキャリアの不安を払拭して、いきいきと働き続けるためのサポート」

編集部ここからは、田中さんと三好さんにお話をうかがいます。女性のキャリアをサポートする事業を立ち上げた背景にある「想い」とはどのようなものだったのでしょうか?

田中先ほど、小山さんが妊活による離職後にキャリアに悩んだとおっしゃっていましたね。ライフステージの変化に伴ってキャリアを中断せざるを得ず、その後にどうしていいか分からない女性を支えたい。そう思ったことが、Warisを創業した理由です。

記者時代にはさまざまな女性から話を聞き、女性が直面する課題を記事として発信していました。やがて、伝えるだけでなく、女性が抱くキャリアの不安を解決するサービスをつくり、「女性がいきいきと働き続けるためのサポートがしたい」という気持ちが湧き起こってきました。

現在は、管理職向けやブランクのある方向けの就業支援や、リスキリングを通じたマッチングなども提供していますが、もともとはフリーランスと企業とのマッチング事業からスタートしました。社員として働くケースが多い中で、フリーランスとして企業に関わるという働き方の選択肢をたくさんの人に知っていただけたことがうれしかったです!

企業からも「優秀なフリーランスを紹介いただけたから、新規事業を立ち上げることができた」といった声をいただきました。国内企業の多くは中小企業なので、それだけフリーランスの活躍が生み出すインパクトは大きいんですよ。

「子どもあり、海外生活でブランクはあっても」ニッチなキャリアを眠らせない、CAREER MARKの意志

三好:CAREER MARKはWarisさんとは違って、駐在妻に特化したサービスです。駐在妻というニッチな層をターゲットとしたキャリア支援をしたいと思ったきっかけは、大学時代の友人の悩みでした。

彼女はいわゆる「バリキャリ」だったのですが、出産後育休復帰直前に、彼女の夫の海外駐在が決まり、悩んだ末に帯同を決め退職し、約2年間イギリスで過ごしました。帰国後に就職しようとしたものの、全然見つかる気がしない。私も帯同中から、色々と相談を聞いていました。彼女には幼稚園に通う子どもがおり、組織ではたらく幼稚園ママの存在はあまりおらず、企業にあたることに積極的になれませんでした。さらに、仲間の企業へのアプローチを聞いて「幼稚園児がいては、働く時間に制約があるだろう」というマイナスな印象を持たれる現実に愕然としていました。

能力が高くて、働く意欲もある女性が「子どもがいる」「海外生活によるブランク期間がある」ことを理由に仕事を持てないのは、もったいないとしか思えません。そこで、まずは仕事に戻る心構えや書類の書き方を紹介するセミナーを開催しました。これがとても好評で、こうした情報のニーズの高さを感じましたし、セミナーに参加してくれたもと駐在妻と接して私自身も能力の高さや仕事への意欲を目の当たりにしました。これはぜひ企業に紹介したいと思い、駐在妻と企業をつなぐサービスをつくろうと思い、それがCAREER MARKの事業化につながりました。

駐在妻には、異国という慣れない場所での暮らしへの適応力や、現地の言葉を習得する力があります。また、それまでの当たり前を一度捨てて、新しい考えや価値観を受け入れる柔軟性も持っています。同じ課題を感じて集まった当事者経験のあるスタッフはもちろん、セミナーなどでお会いする帯同経験者の話を聞くたびに、駐在妻は高いポテンシャルを秘めているなと感じます。

編集部みなさんのお話にあったように、この10年で女性が働く環境も、仕事と育児の両立への認識も変わってきました。働き方のバリエーションが増え、個人の事情に合わせて働きやすい環境が整いつつありますね。

後編に続きます

企画・編集/小山 佐知子

後編では、田中さん、三好さんのおふたりに、人材マッチング事業の責任者として感じる、女性・企業双方が仕事や人材に求めることのほか、採用の傾向についてご紹介します。

プロフィール

田中美和さん

株式会社Waris 共同代表

働く女性向け雑誌の編集記者時代に感じた課題感をもとに、女性が生き生き働き続けるためのサポートを行うべく2012年に独立。フリーランスとしての活動をへて2013年に多様な生き方・働き方を実現する人材エージェント株式会社Warisを共同創業し現職。最近では女性役員紹介事業を通じて意思決定層の多様性推進にも尽力。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』。国家資格キャリアコンサルタント。5歳女児のママ。

三好怜子さん

大学時代から、ノヴィータの前身となる会社でインターンとして活動。2006年、ノヴィータ設立時に立ち上げメンバーとして参画。Webディレクターとして顧客折衝・企画営業・進行/品質管理などに従事する傍ら、自身や社員の将来も見据えて社内の労働環境整備に注力。2010年3月に取締役に就任し、経営者として現場と経営の意思疎通をはかりながら、業績向上、および社員の労働環境向上に従事。
2015年2月に代表取締役就任。同年8月に、女性の働き方を取り上げるメディア「ラシク(LAXIC)」を立ち上げる。翌2016年1月に第一子を出産、自身も育児と仕事の両立を図る日々。CAREER MARKでは共同代表として、主に意思決定、求人企業との折衝役を務める。

ライター

薗部雄一


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