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2023.02.07 2023/02/22

副業解禁からまもなく5年。
副業人材マッチングサービス代表に聞く企業・個人の「今」から見える意識の変化

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副業解禁からまもなく5年。<br> 副業人材マッチングサービス代表に聞く企業・個人の「今」から見える意識の変化

2018年、政府は、個々の事情に応じた多様な働き方を目指す「働き方改革」の一環として、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定しました。以降、企業側に従業員の副業を認める動きが広がっています。

たとえば、日本経済団体連合会が2022年10月に公表した「副業・兼業に関するアンケート調査結果」(※1)では、自社の社員が社外で副業・兼業することを「認めている」「認める予定」と回答した企業の割合は70.6%。副業人材の受け入れを「認めている」「認める予定」と回答した企業の割合は、回答企業の30.2%と、少数派ではありまが、過去3年間で急増しています。

とはいえ、まだ身近に副業に関する事例が少なく、具体的なイメージがわかない、という企業・個人は少なくないようです。

今回は、パーソルイノベーション株式会社が運営する、副業人材マッチングサービス『lotsful(ロッツフル)』代表の田中みどりさんに副業市場の「今」や、具体的な事例についての話をうかがっていきます。

(※1)一般社団法人 日本経済団体連合会『副業・兼業に関するアンケ―ト調査結果』

副業解禁後、企業・個人の意識に訪れた変化とは?

『lotsful』代表 田中みどりさん

編集部:2018年以降、政府は副業を推進しています。まず、副業を取り巻く企業・個人の現状についてお聞きしたいと思います。企業側の現状についてはいかがでしょうか?

田中みどりさん(以下、敬称略。田中):まず、コロナ禍以降、働き方の変化により、柔軟な働き方ができるようになったことは大きな変化です。さらに、2022年に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改訂され、厚生労働省は副業禁止の企業にその理由を公表することを求めています。働き方の選択肢が増えているなかで、副業ができない企業では働きたくないという個人も一定数います。

このような背景から、優秀な個人を確保して、人材が流出することを防ぐために副業を解禁せざるを得なくなった企業も見受けられます。

現在は、企業側が副業に対して真剣に向き合わなければならない段階に差しかかっていると感じています。

編集部:副業を希望する個人側の意識には、何か変化はありましたか?

田中:個人が副業を希望する理由として、収入の確保から、キャリアアップやスキル構築へとシフトしているように感じています。副業を通じて新たな経験を積むことを望む個人が多くなっており、20代後半~30代の正社員でその傾向が強く見られます。

仕事に大きな不満があるわけではないけれど、新しい経験を通じてスキルを磨きたい。でも、転職はハードルが高い。そのような人たちが、離職することなく、所属している企業の外を見るファーストステップとして副業を選んでいます。「転職」「副業」の区切りがなく、グラデーションになっているようなイメージです。

編集部:「企業の変化」と「個人の意識の変化」についてお話しいただきましたが、企業側が副業人材を求める動きについてはいかがでしょうか?

田中:現時点では「企業が積極的に副業人材を求めている」というよりは、「企業が副業人材を求めるという選択肢もあると気付き始めた」という段階だと感じています。

やはり多くの企業は、人員が不足したら「中途採用で社員として採用したい」と考えています。しかし、実際には転職市場で優秀な人を確保するのはますます難しくなっています。

そのような状況で、副業人材というアプローチなら、普段会えない優秀な人材に会える可能性がある、という発想が着目されつつある状態だと思います。

マーケティング、営業の領域での活躍例も。
副業人材の受け入れ事例とは?

編集部:『lotsful』のサービスでは、エンジニアやデザイナーといった、スキルが可視化しやすい案件ではなく、「ビジネス職」の副業案件を取り扱っていますよね。

田中:事業開発やマーケティング、営業、人事、広報など多岐にわたります。20代〜50代で第一線で活躍するハイスキル人材が多数登録しています。

編集部:副業人材を受け入れた企業の事例はありますか?

田中:導入事例(※2)を公開しているので、詳しくはぜひそちらをご覧いただければと思いますが、10人以下から1,000人を超える企業まで、導入いただく企業様の規模もさまざまです。また企業の課題も「専門領域のプロが社内にいないため事業のアクセルが踏めない」、「正社員採用よりもスピーディーに現場ニーズを満たしたい」などさまざまです。

『lotsful』導入企業の事例

株式会社Z-Works

2015年4月に創業したスタートアップである同社は、展示会や代理店の営業によって新規顧客を獲得しており、積極的なマーケティング活動はしていませんでした。しかし、新型コロナウイルス感染拡大を契機に、リアルの場での営業機会が急速に減少する事態に。そうした状況への対策として、Webを中心としたマーケティング活動に取り組むことにしたのです。そこで、『lotsful』を経由してマーケティング経験を有する副業人材を活用し、様々な施策をスタートさせました。※引用元記事はこちら

株式会社下堂園

これまでの同社の直販事業は電話などでの注文がメイン。ECサイトは立ち上げていたものの、上手く活用できていないという課題がありました。そこで、『lotsful』を経由してECのコンサルティング経験を持つ副業人材のマーケターを採用。

ECサイトの改善からデジタル広告の運用、LP制作、商品企画までD2C事業を加速させるべくさまざまな取り組みをスタートさせています。※引用元記事はこちら 

編集部:最近では、日本郵政グループ初となる副業案件を独占で募集するというリリースもありましたね。(※3)

田中:実践するにあたって社内の制度の整備をして、複数回に分けて勉強会を行ったうえで、全社員に一斉に副業を解禁するのではなく、トライアル的にスタートしています。自社の取り組みを振り返りながら、徐々に進めていくというやり方は、他の企業にとって参考になるのではないでしょうか。

(※2)『lotsful』導入事例
(※3)「日本郵政グループの“戦略的副業”パートナーに 副業人材マッチングサービス『lotsful』が、 日本郵政グループ初となる副業案件を独占で募集」

副業人材を「受け入れる企業」と、副業人材として「働く個人」のミスマッチを防ぐために

『lotsful』メンバー

編集部:続いて、副業人材を「受け入れる」企業と、副業人材として「働く」個人の、双方の心構えについてうかがいたいと思います。2つの立場から留意すべき点はありますか?

田中:まず、副業人材を活用する企業からよく聞かれるのが「限られた稼働時間の副業人材にどの業務を託すのか」という課題です。

編集部:「多様な人材を活用する」というのは、言葉で言うほど簡単ではないですよね。1つの成功例を別の事例に展開できるものでもないと思いますが、副業に適した業務の傾向はありますか?

田中:組織の中には、副業人材に適した業務と、社員がやらなければならないと厳しい業務があります。

試してみないと分からない側面もありますが「緊急度が低く、重要度が高いポジション」は、副業にマッチしやすい傾向が見られます。逆に「緊急度が高く、恒常的に動かなければならない」領域は、副業にマッチしにくい傾向があります。

事業のコアの部分は、正社員が保持しながら、その付随する業務を副業の人に任せてみると、やりやすいかもしれません。その視点で業務や課題を洗い出したうえで「副業人材に何を依頼するのか」を明確にしておくことが大切です。

副業のいいところは、1つのフェーズごとに最適な人をアサインできるという点です。初めから一度に任せすぎず、まずは短期的なマイルストーンで、小さな成功体験を積んでいくと、うまくいきやすいと思います。

編集部:逆に、副業案件がうまくいかなかった事例はありましたか?

田中:最初のオンボーディングが十分でなかったために、うまくいかなかったケースがあります。企業側は、最初の段階である程度の時間をかけて必要な情報を提供すること、何を期待しているのかを明確に伝えることが大切です。

優秀な人であればあるほど、必要な情報を渡せば素晴らしいパフォーマンスをしてくださるので、必要な情報提供を惜しまないことが重要です。

また、副業人材にその分野のことを依頼すれば、なんでもやってくれるわけではありません。「組織にコミットしてほしい」と過度な期待をせず、「この課題解決のために、このスキルを還元してほしい」と考えることが必要だと思います。

編集部:個人が副業をスタートするにあたり、心がけておくべきことはありますか?

田中:最初に企業とすり合わせを行い、自分ができることとできないことを明確にしておくことが大切です。

編集部:ビジネス職のスキルを副業に活用する場合、どのような準備をしたらいいでしょうか?

田中:豊かなキャリアを積んでいるのに「自分は会社の外で何ができるのか」という不安を抱えている人が少なくありません。正社員として働いている人の中には、メンバーシップ型の職場で、ジェネラリストとして組織内でいろいろなことをやってきた人がまだ多い印象です。

副業をする場合には、自分の経験を分解して「できること」の言語化をする作業が必要です。個人のキャリアやスキルを棚卸しして、漠然とした経験の言語化をすることが大切なので、『lotsful』 ではそうしたサービスにも力を入れています。

編集部:今後も企業が副業を受け入れ、個人が副業を望む動きが広がっていくと思われますが、最後に田中さんの展望について聞かせて下さい。

田中:人材不足により、企業の人材獲得が難しくなっています。当社は、プラットフォームを提供するだけでなく、お客様の課題を解決するサービスを一緒につくっていきたいと思います。

また、勉強会やコミュニティなどを通じて、副業を経験した人たちの知見や経験談を共有することで、副業を通じたキャリアアップを望む個人が、一歩踏み出すきっかけとなる場を提供していきたいと思います。

副業を通じて社外に挑戦機会やスキルアップを求めている個人が増加傾向にあるとのことです。一方、企業が従業員の副業を認め、副業人材を受け入れるためには、社内の制度を整える必要があります。人材難が深刻度を増すいま、副業について真剣に取り組むことは、多様な働き方を包括することと地続きなのかもしれないと感じました。

プロフィール

田中みどりさん

パーソルイノベーション株式会社  lotsful 代表

副業マッチングサービス『lotsful』代表。2012年株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に入社。正社員の転職支援領域における法人営業に従事。IT・インターネット業界を主に担当し、ベンチャー企業を中心に採用支援に携わる。
大手企業とベンチャー企業の事業開発支援を行う事業立ち上げを経て、『lotsful』を立ち上げ、代表として運営。

文・インタビュー:北川和子

ライター

北川和子

ライター

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