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2016.11.18 2023/02/15

【LAXIC編集長対談】
「世の中的正解」を選ばされるような生き方からは卒業しよう!76世代編集長が語る、女性活躍推進の矛盾

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【LAXIC編集長対談】<br>「世の中的正解」を選ばされるような生き方からは卒業しよう!76世代編集長が語る、女性活躍推進の矛盾

「何かしたい」「新しい自分を見つけたい」「一歩踏み出したい」。生活を大切にしながら、10年後・20年後に自分がありたい姿であることを応援するメディアが「ハレタル」です。「ハレタル」を生み出したのは、東洋経済新報社で働くママ編集者、堀越千代さん。自身も4歳のお子さまがいるワーママです。ちょうど、LAXIC編集長と同じ1976年生まれの40歳。76年生まれと言えば、就職氷河期世代であり、就活・婚活・保活と何かにつけて活動を迫られてきた世代なのです。というわけで、76世代同士、かなり熱く「女性活躍推進」や「子育て」と「働き方」について語らせていただきました!

企業・学校・ママ友との関係
ママに求められることを全てやったら、ママが過労死する

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LAXIC編集長 宮﨑(以下、宮﨑):堀越さんは、子育てに専念したい!と思われたことはあるんでしょうか。

ハレタル編集長 堀越さん(以下、敬称略。堀越):専念したいというよりは、「今日は一緒にいた方が良さそうだなあ」という時ってあるじゃないですか。なんか様子がおかしい、という日とか。そういう時に一緒にいられることって大事だと思うんです。

時間が短くても愛情を伝える手段はいくらでもある・・・とも言われますが、そうではなくて「タイミング」だと思うんです。その「タイミング」を自分の仕事と子どもとの間でコントロールできることが大切なのではないかと。

宮﨑:ああ、わかります。その「タイミング」を大切にしたいという気持ち。働いていることで「タイミング」をうまく合わせてあげられないと、モヤモヤも溜まっていきますよね。

今年、子どもが小学生になってより一層思うのですが、働くという側面では「一億総活躍」というスローガンのもと、女性は活躍して欲しいと言われ、一方で学校社会では何かにつけてまず最初に出てくる言葉は「ママ」なんです。「ママは保護者会に出てください」とか・・・・・。もう、ママってなんだろう?と思うんですよね。ママに求められることが多すぎじゃないかと。

堀越:女性活躍とママという文脈とで全然別のことが語られているわけですよ。同じ人なんですよ!と言いたくなるくらいに。

宮﨑:企業、学校、そしてママ友との関係。社会の中で、ママに求められることを全てやっていたら、ママの過労死が起きてしまうのではないかと思うくらいなんです。生きにくい社会だなあと。でも堀越さんのような、バリキャリの方が理解してくださるのはすごく心強いです

堀越:私は全てバリバリやらないと両立できないという「女性活躍推進」にいつも疑問を持っているんです。

女性活躍推進の文脈からは「お母さんの大切さ」がすっぽりと抜け落ちている

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宮﨑:以前から、様々な女性の働き方について取材されていらっしゃいますよね。そこに注目されたきっかけはやはりお子さんが生まれたことですか?

堀越:私が出産した4年前は、「女性活躍推進」がものすごく叫ばれるようになった時期で、目指す方向性になんとなく違和感を感じていたんです。もちろん仕事はしたいのですが、子どもはとても可愛く、子育てを優先したい人の気持ちもとてもよくわかる。この気持ちはおそらくユニバーサルなもので、子どもとの生活を優先したいと思う人は一定以上は減らないだろうと思ったんです。

一方で女性活躍推進という側面で語られるのは「もっと働いて」とか、「管理職を目指して欲しい」というものばかり。「お母さん」という立場も大切なのに、女性活躍推進の文脈からは「お母さんの大切さ」が抜け落ちているんですよね。そう考えると、働きたい女性のみんながみんな「両立」「保活」「待機児童」に悩んでいる社会はおかしいなと思ったんです。子育てを優先させながらでも働けるような、選択肢がたくさんある社会の方が、よっぽど女性活躍推進だと思うんです。

だからこそ、子どもがお母さんを必要としている数年だけでも、自分のペースで働くという形があってもいいのではいいはずですし、「子育てを優先させたいんです」という一番大切な気持ちが言えないような社会はまずいなあと。

宮﨑:そうなんですよね。企業側から見ると、子育て期の女性が男性と対等に働くためには、「時短は取らない方がいい」とか言われるわけですよ。将来を見据え、女性が平等に働いていくためにその取り組みは必要だと思うのですが、今は女性活躍推進の過渡期にあり、男性側の長時間労働はまだまだ改善されていない。でも、自分には「今」、子どもとの生活がある。その過渡期において、子どもをきちんと見られない状況があるならば、それはおかしいと思ったりするのです。

一方で、企業では「自分のやりたい働き方」をすることはできないと、フリーランスや起業を目指す女性がどんどん増えています。それはそれで素敵なのですが、組織では自由な働き方はできないんだろうか?と残念に思う気持ちもあるんです。企業の中でできることもあるのではないだろうか・・・・と。

堀越:そうそう、そうなんです。組織の中にいても、働き方を自分でコントロールすることはできればいいのに、ということですよね。

宮﨑:はい、私自身フリーランスなので思うのですが、仕事をする上で組織だからできること、やりやすいこともありますからね。人材の流出という意味でも、もったいないなあと思います。

堀越:私自身、10年後の働き方を考えると、企業であってもそれ以外であっても、自分のペースで働き方を決めることができていたらと思っています。フリーランスだけじゃなく、企業の中でもそういうことができる社会を作っていかなければいけないと思うんです。

例えば子育てって、価値観が100人100様じゃないですか。仕事の仕方も、100通りあってもいいなと思うんです。

宮﨑:はい、働き方は本当に多種多様になるべきですよね。

一方で、子育てに関しては、選択肢が色々あるけれども、自分の取った選択肢を正解としたいと思うあまり、他人に押し付けがちな傾向もあるんですよね。例えば少し上の世代の人たちが「私たちの子育て世代は、そんなことは普通にやっていたのよ!」と言ったりするような、あれです。それが子育てのし辛さを生んでいる気もするんです。子育ても働き方ももう少し多様で、寛容であってほしいですよね。

堀越:ホントそうなんです。正解はないですから。子育ても働き方も、自分で正解を作ればいいんですよね。

仕事って作り出すもの
自分のスキルを活かして、小さくてもビジネスを創り出す人たち

宮﨑:ハレタル」を創刊されて、今までとは違うタイプの方との出会いも増えたのでは?

堀越:そうですね。新しい分野の方達とお会いすることが多く、自分が今までいた世界を外から見られるようにもなってきました。

最近、強く思うのは「仕事って作り出すものなんだな」ということなんです。ものづくりだったり、代理店業だったり、一人でビジネスをやっている人たちがたくさんいらっしゃって、そういう人たちから学ぶことも多いですね。

宮﨑:小さくても自分のスキルを活かして仕事にしているということですよね。

堀越:例えば、「魚屋あさい」という魚屋さんがあるんです。もともとご主人が魚屋さんで働いていて、独立されたんですね。奥様は、かつてはバリバリ働かれていたのですが、結婚されてお仕事を辞められたんですよ。そこで、ご夫婦で「ノマド魚屋」という業態を作り出すんです。なんらかのイベントの時に、お魚を持って行くとか、パーティに魚を持って言ってお刺身を振る舞うなど、店舗を構えずにいろんなところにいく魚屋さんなのです。奥様は、その営業をされているんですね。

会社を辞めて「仕事ができません」というのではなく、ご主人の魚屋さんと自身が持つ営業スキルを掛け合わせて自ら仕事を作っていらっしゃるんです。働くってそういうことだと思うんですよ。

世の中が求める「正解」のような生き方を選ばなくていい
自分のことは自分で評価しよう

キャプション;右)ハレタル編集長 堀越さん 左)LAXIC編集長 宮﨑

右)ハレタル編集長 堀越さん 左)LAXIC編集長 宮﨑

宮﨑:ハレタル」の読者はどんな方が多いのでしょうか?

堀越:専業主婦と働くママが半々くらいですね。育休中に新しい気づきを得たいという方も来てくれています。それは私としてはとても嬉しくて、復職前に「働き方」の選択肢がたくさんあることに気づいてほしいんですよね。

私自身も復職してから「辞めたいな」と思ったことはあるんです。どうもうまくいかなかったり、そういう時に限って子どもがぐずりがちだったり。そういう局面って復職してから何年経っても必ずあって、「辞めたい」と「続けたい」というのは表裏一体のところにあるんですよ。ちょっとこちらに転ぶとスイッチが入ってしまって辞めてしまうみたいな。でもそこで、辞めるのではなく、「違う方法を考えようよ」という提案ができたらいいなと思うんです。

宮﨑:綱渡りで仕事を続けている人は本当に多いと思います。辞めたい理由が積もり積もって、最後には後から考えるとどうでもいいことがきっかけで、辞めることを決意したり。

堀越:この間「私は産休育休を取って復帰したいと思うんですけど、その時に効率よく仕事ができるように今のうちに社内に信頼預金を作っています」と言っていた20代の女性がいたんです。その方法が、選択肢の一つとしてあるのはいいんですけど、世の中が求める「正解」のような生き方ばかりでなくてもいいのではないかと。育休中に自分がやれることを棚卸しして考えてもいいのではないかなと思ったのです。

宮﨑:育休中に自分がやりたいことや働き方・生き方をもう一度考えることはとっても大切ですよね。私自身、夫が海外出張が多く、両親が近くにいないので、自身の育休中は働き方を変えるべきなのだろうかと、ものすごく考えていました。結局、会社勤めは辞めてフリーランスになったわけですが、自分のやりたい働き方・子育ての仕方を踏まえた上で行動しないと、どこかにズレが出たり、モヤモヤしたりするんですよね。

堀越:はい、自分のやりたい働き方・生き方を考えたり、自分がやれることを棚卸しせずに、「世の中的正解」を選ばされているような人たちが増えるとまずいなと思います。

宮﨑:私の最近のテーマが、「自分で自分を評価してあげる」ということなのです。人の評価軸や世の中的評価軸で自分を評価すると、「もう少し」という場面もあるかもしれないのですが、自分で自分を褒めてあげてもいいのではないかと(笑)。求められている正解ばかり選ばなくてもいいんですよね。

堀越さんがおっしゃる「世の中的正解を選ばされている」という点。世の中的正解のような生活を送ることができたとしても、自分が満足できる人生かどうかは別問題なんですよね。だからこそ、自分の評価軸で自分を評価して、納得できる人生を選んでいきませんか。

プロフィール

堀越 千代さん

株式会社 東洋経済新報社「ハレタル」 編集長

2006年に東洋経済新報社に入社。業界担当記者を経て、『週刊東洋経済』などの執筆編集に携わる。2014年、女性たちの生き方、働き方について集中的に取材を始める。数々のママイベントや子育てサークルに足を運んでは、そこにいたママたちをつかまえて話を聞き出し、ベビーカー連れのママランチ会に潜入しては、その場でノートを取り出しメモを取ってきた。プライベートでは4歳児の母。週3日勤務で週末の山暮らしが夢。

文・インタビュー:宮﨑晴美

ライター

ラシク 編集部


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