眠っていた優秀な人材を活かす
労働力減・AI時代を見据えたリモートワークというスタイル
ワーママの働き方や介護との両立など、フレキシブルな働き方を考える上で欠かせない「リモートワーク」という働き方。企業側にはニーズを感じながらも、どう導入したらいいのか戸惑い、制度だけが先走りしている例も多々あるようです。今回LAXICでは、「いつ・どこで働いてもいい」働き方を推進し注目を集めるソニックガーデンの代表取締役社長 倉貫義人さん・代表取締役副社長の藤原士郎さんと、東京・世田谷で保育サービス付きのシェアオフィス「マフィス馬事公苑」を経営するオクシイ株式会社 代表取締役の高田麻衣子さんにご協力頂き、リモートワークで大切なことやメリット、労働力減時代を見据えた働き方などを対談して頂きました。
大切なのは「信頼関係」
秘訣はリモートでも「顔を見て話す」こと
宮崎ソニックガーデンの社員やマフィスの会員の方はそれぞれリモートワークで仕事を進めているわけですが、それぞれの会社についての簡単な紹介と、リモートワークの事例をお聞かせ下さい。
倉貫さん(以下、敬称略 倉貫)弊社についてまず説明させて頂きますと、もともと社内ベンチャーとして始まり、MBOで買い取ることによりスタートした会社です。渋谷にオフィスはありますが、社員の半分は地方に住んで在宅勤務をしており、東京近郊在住でも、午前は自宅・午後はオフィス勤務など使い分けています。
基本的にお客様のシステム開発をしているのですが、いわゆる従来の受託開発は決まった依頼を受け、開発したら納品する形態なので、何を作るのかを最初から具体的に決めなければならず、納品の前後でもめる原因にもなります。その問題を解決するために、税理士・弁護士さんたちと同じように、顧問として毎月契約することにしたのです。それにより、お客様の希望にあった形でシステムを絶えず変えていくことができるようになりました。
顧問なので、毎週お客様と打ち合わせをするのですが、僕らは客先に行かない会社です。お客様との打ち合わせは毎週オンラインで行い、だからこそ在宅勤務が可能なのです。
高田さん(以下、敬称略 高田)リモートワークの普及において、大切だと思うのが、会ったことがない人と人間関係を作っていくことですが、オンライン上のみで人間関係を作っていくコツはあるのでしょうか?
倉貫お客様と信頼関係を作る時に大切なのは「顔を見て話をすること」だと思っています。顔を見ていないとやっぱりダメです。ただしそれは、オンラインの画面越しでも良いんです。だから、きちんとした格好でPCの前に座ることが大切です。最近のシステムはクオリティがかなり高いので、オンライン上でもいろんなことが伝わります。
高田改めて私の自己紹介をさせて頂きますと、世田谷区の上用賀で「マフィス」という保育サービス付きのシェアオフィスを経営しておりまして、会員様には企業に属しながらリモートワークされている方がいらっしゃいます。元々私自身も企業に勤めるワーキングマザーで、都心に通勤しながら子ども2人を育て、毎日の保育園送迎の大変さ含め心身のバランスをどうとるかを常に考えてきて、それがマフィスの構想に繋がっています。東京の手狭な住宅事情を考えると子どものいる家庭は在宅ワークにはあまり相応しくないことも多いです。それを踏まえ、限りなく自宅に近く書斎的に使えるもの、「整理整頓しなきゃ」という雑念から解放される場所、通勤の負荷を下げるワークスペースという観点を大切にしています。保育サービス付きが特長なので、仕事がしたいけれど自分の近くで育てたい人や、預ける環境がない方に利用して頂いています。今はフリーランス利用の比重が高いのですが、個人的には場所を増やしながら、多くの企業様にリモートワークの拠点として使って頂きたいと思っています。
リモートワークの例としては、ママ自身がマフィスを見つけ、会社に利用料を負担してもらいリモートスタイルを確立した例、育児休業中にマフィスを使い少しずつ仕事を再開した例などがあるのですが、その中でも1つ、採用に直結した事例があります。
自社メディアを運営している企業の社長からマフィスのデスクを一つ借りたいという相談がありました。数か月後に入社予定の編集長には生後3ヶ月のお子様がいたのですが、初動を早めたいという話になっていたそうです。しかし、その時点でお子様を預けるところがない。彼女がたまたま世田谷に住んでいたこともあり、マフィスを使っていただくことですぐにでもお仕事を開始していただけました。さらに、編集部のスタッフ採用に苦戦していたため、「都心まで通勤できない人や子どもを預ける場所がない人までをターゲットにして採用をしてみよう。いっそのことマフィス内に編集部を作ろう」という話になり募集をかけたところ、2週間足らずでそうそうたるメンバーが集まったのです。その時確信したのが「働きたいけど環境が許さずに仕事ができない人、優秀な人はたくさん眠っている」ということでした。働きやすい環境を整えることでいろいろな可能性が生まれ、採用力の高くない企業にとっては優秀なママを採用できるというメリットにつながります。
倉貫採用については、僕もメリットが大きいと思います。起業したての頃、優秀な社員を採用したいと思いつつも、起業したての会社にそのような人材が来てくれるわけではありませんでした。なにか制約を外さなければと思い、まず東京近郊という制約を外してみたのです。全国から応募をつのれば可能性は広がるなと。募集をはじめて、すぐ応募してくれたのが、今でも働いてくれている兵庫県在住のメンバーでした。当時は半信半疑でしたが、試しながらリモートワークのスタイルを確立していきましたね。今では東京近郊より地方からの応募が多いです。
高田御社の人事評価は、時間ではなく成果となるのでしょうか。
倉貫そうですね。オフィスに来ている人も、在宅勤務の人も、成果に対する評価になります。
高田そこが大切であり、難しい一番のポイントではありますね。
リモートワークで時間の使い方は自由になる
宮﨑在宅でオンライン参加して下さっている藤原さん、リモートワークの具体的なメリットを教えて頂けますか?
藤原さん(以下、敬称略 藤原)実はこのあとすぐ幼稚園に娘を迎えに行き、習い事に送って、30分後にリモートでミーティングが入っています。必要な時間は30分ですが、これがオフィス勤務だったら物理的な制約があり、働いている時間とプライベートが完全に区切られていて、もっと時間がかかりますよね。リモートワークでは、働くこととプライベートを小刻みに区切っていくことができます。
高田預かり保育がない幼稚園と共働きを両立できているのは、リモートワークならではですね。教育熱心な幼稚園ほど延長保育をやらない傾向にありますが、マフィスを利用している方たちは子育てを熱心にやりたい人が多く、お子様が幼稚園に行っている9時〜13時30分にマフィスを利用して集中的に仕事をし、午後は子ども達との時間を過ごすスタイルが多いです。
単に「働く人を増やす」という施策のために、間に合わせで箱を増やすことが進められていますが、世の中にはフルタイムで仕事をしたい人ばかりではありません。今は保育園か幼稚園という選択肢しかなく、フルタイムで働かないとポイントが足りず保育園には入れませんが、そもそも子育てと仕事を長く質高く両立させるためにも、フルタイムという考え方はあまり適切ではありません。月40時間だけでも働きたい人を受け入れる箱があれば、単純に考えても3~4倍の数のママの悩みを解消していくことができるのです。今はまだ、福利厚生として国がお金を出してくれるような仕組みにはなっていませんが、選択肢としてマフィスのような形や、在宅で子育てと仕事を組み合わせていけるような形があったらいいなと思います。
倉貫国が作った制度は30年〜40年前のブルーワーカーの働き方を想定したままですよね。幼稚園・保育園も同じような状況を想定して考えられているので、1か0かしかありません。子育てしながら少しだけ働くなど、緩やかに徐々に増減していければいいのにと思います。
作られたルールや商習慣は、今の働き方からすると合わないケースが多々あります。僕たちは5年ほどリモートワークをやっていますが、最初は「離れて働くことがメリット」だと思っていました。でも実際やっていくと、場所じゃないなと。本当のメリットは「時間の使い方が自由になること」なんです。
とはいえ、僕らは会社としてチームで働いているので、コアタイムを設けていて、9時くらいからログインして「出社」し、ログアウトして「退社」します。物理的な出社の場合はオンかオフかしかないですが、在宅勤務すると、オンとオフが本人次第でいつでも切り替えられるようになります。先ほどの例のように途中で子どもの送り迎えに行くことも1つの例ですし、16時にいつも15分ほどオフになるスタッフがいるのですが、実はその時間に洗濯物を取り込んでいるそうなんです。その時間は仕事をしてはいませんが、少しだけ長く仕事をすればトータルで働く時間は変わりません。それができるようになれば、例えば子育て中の人であれば、オンの時間を少なくするなど柔軟に考えられます。でも昔の農家はこういう働き方だったわけですよね。そう考えると、ここ30年ほどの間に作られた欧米式の働き方にひっぱられることはないのでは、と。
高田昔の農家なんて、家族みんなで仕事をすることが当たり前でしたよね。家族みんなで田んぼにでて、子どもはあぜ道で待っている(笑)。お母さんとおばあちゃんが先に家に帰って夕食やお風呂の支度をする。日が暮れたらお父さんとおじいちゃんも帰ってくる、みたいな。高度経済成長期はとくに製造業が日本の成長を支えましたから、工場労働がベースの考え方で労働基準法ができています。体力と集中力が持続できる基準が8時間労働なのでしょう。当時は、昼間仕事をして家に帰ればあったかいご飯があり、整頓された家があって、疲れを癒して翌日元気に仕事ができるという環境がありました。これは、社宅なり配偶者手当などで企業側がコストを見てくれていたわけです。バブルが崩壊して、失われた20年の間に産業構造が変わり、専業主婦が家を守るという形も変わってきているのに、9時〜5時に会社に出勤するという就業規則だけは変わらないというのはやっぱりおかしい。倉貫さんをはじめ、意識の高い経営者さんはいろんなことに挑戦していらっしゃいますが、古くからある大企業はまだこの変化についてきていません。子育ては待ったなしという状況において、もっとスピード感は大切にして欲しいなと思います。
労働力減の時代は、眠っていた才能・時間を活かすことでしか成長できない
倉貫昔からある会社はその慣習でやれているからこそ、男性側も企業側も変わりにくい。リモートワークという言葉が響かない側面があります。僕らのような小さな会社・新しいことをやっている会社は、今のままでは人が採用できないと思っています。会社は成長させていきたいけど、人口統計的に見てこれから労働力が減ることを考えると、今まで通りの採用・働き方では勝負していけません。眠っていた才能・時間を活かしていくことでしか成長できないのです。だから小さな会社が変わっていけるという側面もありますね。
高田朝早く会社に行って、何も疑問に思わず、上司に逆らわないで言われたことをやっていれば給料がもらえる…という人が少なからずいるからこそ、性悪説になる部分もあると思います。「いないと働いていないのでは?」と不安になる。リモートワークで一番大切になるのは「信頼関係」なので、今、この瞬間に手を動かしていなくても、約束を守ってくれることが大切です。疑心暗鬼になるからこそ、日本のリモートワークが進まない側面もありますね。
倉貫「信頼関係が一番大事」というのはおっしゃる通りです。よくリモートワークの話をしていると、「社員さんを信頼しているのですね」とか「お客さんと信頼関係がありますね」と言われるのですが、逆に「なぜ信頼できない人を採用したの?」「信頼関係がないお客さんと仕事をしたいですか?」と思うのです。リモートワークにすると、ちゃんと働いていない人は成果を出せません。だからこそ、成果を出せる人しか残らなくなり経営者・会社にとってもメリットが大きいです。
これからロボットやAIが出てくることを考えると、「考えなくてもいい仕事」は間違いなくなくなります。そう考えると、会社に来て雑用だけしているような人はいらなくなってしまうんですよね。言われたことだけやっている人は、あと5〜10年でロボットやAIに置き換えられていくので、「そんな人を雇っていて大丈夫なの?」と言いたいですね。
宮崎リモートワークで会社に来ないスタイルが定着すると、教育という部分はどうしているのかなと気になります。例えば新入社員に対してはどういう教育をしているのでしょうか?
倉貫僕らの会社は基本的に全員がリモートワークOKなのですが、新入社員は例外です。一昨年から新入社員を採用していて、その人たちは会社に来ることになっています。信頼関係がある仕事をするためには、セルフマネジメントできる必要があるのですが、社会人1年目でそれは難しいなと。そもそも仕事の進め方や会社の哲学も分かりませんよね。また、時間よりも成果を出すためには実力がないとできません。だから、少なくとも最初は師匠の仕事を手伝うということにしています。今は師匠役の人は東京近郊にいて、朝は一緒にミーティングをし、毎週振り返りをしています。うちの会社では徹夜・残業は基本ダメなので、以前「睡眠時間を削って仕上げました」と報告していてとても怒られていましたね。
高田仕事は短距離ではなく持久走なので、働きすぎるとダメというのは大切なことですね。
倉貫日本人は「がんばれ」というと、「たくさんやる」と思ってしまいます。だから「がんばる=たくさんやることではない」を価値観として持って欲しいと伝えています。
宮崎ではリモートワークに向く職種・業種というのはあるのでしょうか?
高田極端な話、接客業やお医者さん以外はできると思っています。一般的な総務やバックオフィスを支える仕事をしている人も会員さんにいらっしゃいますし。職種は選ばないと思うのですが、企業さんとリモートワークの話をしていると、対象になる職種やクラスが決まっているという例が多いですね。
倉貫僕は、あらゆる仕事はリモートワークができると思っています。究極的には全ての仕事は場所に行かずに仕事ができる世の中になると。ロボットが発達するとお医者さんも遠隔で問診し、操作で手術できるようになるかもしれません。昔は肉体労働をすることでお金をもらっていたのですが、今はお金を払ってジムに行っていわば肉体労働をするような世の中になっています。だからこそ今後、「移動」は趣味や贅沢になり、仕事のためにわざわざ移動するなんてナンセンス、という価値観に変わっていくと。ではどこから変わっていくか…というと、やはりデジタルワークから変わっていくと思うのです。そういう人たちが先進的にやっていけば、他の仕事も変わっていくと思います。
目指すのは「会社として、チームとして仕事をする」というスタイル
宮崎リモートワークのデメリットはない…と。
倉貫リモートワークがもう馴染んでいるので、デメリットと感じることがないというか、「電話があってデメリットがある?」というのと同じですね。しいて言えば、リモートワークで運動不足になった…ということでしょうか。「健康」については弊社が今年取り組んでいきたい課題ではあります。
高田マフィスではフリーランスの人も多いので、今までは在宅で子育てをしながら仕事をしていて自分と同じ価値観の人と出会えなかったけれど、 マフィスに来て同僚ができたという意見は多く聞きますね。
倉貫よくリモートワークは孤独だと誤解されています。コワーキングスペースが広がり、クラウドソーシングが広がり、フリーランスの人たちも連帯感を持って仕事ができる場所はできつつありますよね。でも僕らが今後目指しているのは「会社として、チームとして離れて仕事をする」というスタイルです。僕らの社員もみんなと一緒にワイワイコミュニケーションをしながら仕事をするのは好きですが、ただ離れていて通勤ができないだけなのです。おそらく「どこでもドア」が発明されたらみんな出社してくるんじゃないかと。今のところ「離れた場所で仕事をすること」を実現するには、フリーランスになるか、諦めて会社に所属するしかありませんが、その間があってもいいのではないかと思っています。だからこそ、「リモートワーク」と言わず、「リモートチーム」とよんでいて、この働き方を当たり前にしていきたいと思っています。
宮崎チームで働くというのは楽しいことなので、企業でそういう働き方ができることは理想ですね。
倉貫僕らの会社はログインしたら社員たちの顔がライブで見えるんですね。岡山・千葉・富山・広島・兵庫など全国各地から、オンライン上の本社に出社しています。東京のオフィスは本社のように思われますが、いわば社員専用のコワーキングスペースです。仕事している時はオンライン上の本社で何気ない雑談もできるようにしています。
高田在宅で仕事をすると、お父さん・お母さんの働く姿を子どもが間近に見られるところもメリットですよね。いきいきと働くお父さん・お母さんの姿が子どもの記憶に残ることは、将来子どもが自分のキャリアを考えるときに必ずいい影響を与えると思っていて、将来はマフィスを就学前まで子どもの成長を見届けながら仕事ができる場所にしていきたいと思っています。
宮崎藤原さんのお子様は、お父さんがどんな仕事をしているか認識されていますか?
藤原そうですね、僕の場合は娘をオフィスに連れて行くこともありますし、家でもSkypeでお客様とよく話をしているのを見ているので理解しています。そして、弊社ではたまに「リモート飲み会」があるんです。
宮崎リモート飲み会いいですね。
藤原「ホタルの光」が流れないので、終わりがないです(笑)。
倉貫「リモート飲み会」の時は、家族で夕食を済ませて、ゆったり9時くらいから、バラバラに参加し、眠くなった人から消えていくスタイルです。「リモート飲み会」で大切なのは全員がリモートということですね。だからこそ、「リモート飲み会」がある時は、出社しているメンバーも早く帰ります(笑)。
高田例えば、子どもが生まれて預け先に困ってマフィスのような場所を使いたいとなった場合、リモートワークにかけるコストについてはどのように考えていますか?
倉貫基本的に僕らはリモートワークをコストカットの目的でやっていません。だからこそ必要な経費は全部出すスタンスです。
宮崎リモートワークを実施していく上で、企業側が意識すべきこと、働く人が意識すべきことは?
倉貫企業としてリモートワークを導入するにあたり、うまくいかないのは1人・2人に特別に許可している、というケースです。リモートワークがマイノリティのままだと苦しくなりますね。
弊社でもリモートワークのメンバーが4分の1位になった時「これからみんなリモートワークにしよう!」と言ったのですが、なぜかみんな会社に来る。それは、僕が会社に来るからなのですよね。だからこそ僕が思い切ってリモートワークにしました。トップがやることで、社内全体の考えが変わりますし、自分自身もリモートワーカーの気持ちが分かるようになりました。そうして会社全員をリモートにした上で、時間ではなく成果で仕事をするようにすべきです。そうすると次第にリモートワークならではの働き方が生まれます。例えば、僕らがやっていることに会議の「ラジオ参加」というものがあり、誰でも会議に聞くだけの参加ができるのです。こう言ったリモートならではの価値は、やっていくことでどんどん出てくるんですよ。
高田御社でリモートワークがうまく進んだのは、制度設計と運用のバランスがうまく取れていて、トップが現場まで見渡せている部分もありますか?
倉貫もしかしたら逆かもしれません。僕たちは管理のない会社経営をしているんです。勤怠管理も進捗管理もしないし、毎年の売上目標も設定しません。顧問型の仕事なので、自分のお客様に満足してもらえれば黒字にはなっていきます。採用も同じで、いい人がいないと採用しません。
というのも、クリエイティブな仕事に関しては、生産性は管理しない方が高くなるのでは、と思っているからです。「どこまで自由にしたら生産性があがるのか」をテーマに、「管理のない会社経営」をして、最初から全体を見渡すつもりがありません。だからこそリモートワークができているのだと思います。
基本的に好きな仕事をしていれば、管理せずとも一生懸命にみんな働きます。これから先の社会情勢を考えると、ずっと働かなくてはいけない感覚がありますよね。60歳・65歳で引退というのも、リアリティがない。だからこそ嫌な仕事をやっている場合ではなくて、働き続ける前提で好きな仕事を働きやすい会社でやった方がいいと思います。
ほとんどの業種・職種はリモートワークが可能と語るお2人。企業に属しながらチームで働くスタイルがもっと当たり前になれば、時間や地理的な制約を抱える人にも可能性は広がります。労働力減、ロボット・AIがさらに普及する時代を踏まえ、チームとしてリモートで成果をあげるスタイルがもっと広がっていくといいなと思います。
プロフィール
倉貫 義人さん
株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長
TIS株式会社にてプログラマやマネージャとして経験を積んだのち、2009年に「SonicGarden」を立ち上げ、MBOにより独立。「納品のない受託開発」という新しいビジネスモデルを展開し注目を集める。著書に『「納品」をなくせばうまくいく』『リモートチームでうまくいく』など。「心はプログラマ、仕事は経営者」がモットー。
藤原 士朗さん
株式会社ソニックガーデン 代表取締役副社長
1979年12月15日生まれ。2004年、TIS株式会社に入社。2005年、社内SNS「SKIP」の開発と社内展開に携わる。2009年、SKIP事業を専門で行う社内ベンチャー「SonicGarden」に参画。2011年、TISからのMBOを行い、ソニックガーデンを共同創業。代表取締役副社長に就任し、現在に至る。
高田 麻衣子さん
オクシイ株式会社 代表取締役
1977年生まれ。大阪市立大学卒業後、不動産デベロッパーなど数社で不動産廻りのフロントからバックオフィスまで全般的な業務に従事。プライベートでは1男1女の母。多くの女性に、子育ても仕事も自分らしく欲張りに楽しんでもらいたいとの思いから、2014年に独立し、世田谷区内に保育サービス付きシェアオフィス「Maffice馬事公苑」を開業。
文・インタビュー:宮﨑 晴美
ライター