1. トップ
  2. 働き方・生き方
  3. SDGsでも着目される「働きがい」とは?GPTWジャパン荒川陽子さんに学ぶ、ワーママがいま考えておきたい「働く」の未来
2021.07.09 2023/05/31

SDGsでも着目される「働きがい」とは?
GPTWジャパン荒川陽子さんに学ぶ、ワーママがいま考えておきたい「働く」の未来

FacebookTwitter
SDGsでも着目される「働きがい」とは?<br>GPTWジャパン荒川陽子さんに学ぶ、ワーママがいま考えておきたい「働く」の未来

「働き方改革」の名のもと、企業では長時間労働の削減や各種休暇制度の充実、テレワークといった多様な働き方の推進など、さまざまな施策が進められるようになってきました。家庭に仕事に、自分らしく頑張りたいLAXIC読者とって、“働きやすい環境” が整うのはとてもありがたいはず。

一方、このコロナ禍、働き方がフレキシブルになったことで、男性・女性関係なく「働く意義」や「働きがい」を意識する人が増えてきたようにも感じます。SDGsの17の指標でも『働きがいも経済成長も(目標No.8)』が掲げられているなど、最近の社会機運は「働きがいを感じながら経済成長も目指していこう!」へと変わりつつあるようです。

今回、LAXIC編集部は、働きがいのある日本企業について調査やランキング発表をしている株式会社働きがいのある会社研究所(Great Place to Work® Institute Japan)代表取締役社長の荒川陽子さんにインタビューを行いました。VUCA(予測不能)と呼ばれる時代に活躍できる会社はどんな会社…? 働く個人はどう働きがいを作っていけばいいの…? 管理職にはなるべき…?などなど、気になるテーマで伺いました!

あなたの職場はどのタイプ?
「働きやすさ × やりがい」、 職場の4タイプ

引用元:GPTWジャパン

編集部:御社では、職場の傾向を4つのタイプに分けて定義しているのですね!

 

荒川陽子さん(以下敬称略 荒川):はい、「A:いきいき職場」「B:ばりばり職場」「C:ぬるま湯職場」「D:しょんぼり職場」という4タイプに分類しています。仕事内容に充実度のある職場を「やりがいのある職場」、福利厚生や制度などの、仕組みに充実度のある職場を「働きやすさのある職場」と分類しています。その両方そろっているのが「A:いきいき職場」です。

 

編集部:とてもユニークなネーミングですね。ちなみに、貴社のHPでは「A:いきいき職場」は、「C:ぬるま湯職場」「D:しょんぼり職場」に比べて、職場の業績が前年比で37%ほど高いと記されておりました。職場の雰囲気が業績にも反映されているケースなのかなと感じます。荒川さんからご覧になって、いきいき職場はどの位増えているのでしょうか?

 

荒川:「D:しょんぼり職場」の状態から、働きやすさを優先して「C:ぬるま湯職場」に変化した企業は増えていますね。ですが、「C:ぬるま湯職場」から、「A:いきいき職場」への変化は、まだまだスローペースという実感があります。

 

編集部:働きやすさはここ数年の働き方改革の影響と、この1年のコロナ禍で大きく前進した気がします。

 

荒川:「働きやすさ」については、特にこの1年でテレワークやフレックスなどの「働き方」だったり、副業(複業)が許可されるなど、いろんな形で「職場環境の整備」が進んでいます。でも、同時に「やりがい」も高めている企業はまだまだ足りない状況ですね。

 

編集部:あくまで「働きやすさ」が優先されているのですね。

 

荒川:残業が何%減ったとか、有給消化率がどのくらい増えたとか、「働きやすさ」の方が目標設定がしやすく、目に見えて結果が分かるので企業側も着手しやすいのです。「C:ぬるま湯職場」から「A:いきいき職場」になるためには別の視点が必要になるのです。

「働きやすさ」と「働きがい」はどう違う?

GPTWジャパン代表 荒川陽子さん(オンラインで取材)

編集部:企業として「働きやすさ」を推進しやすいということはわかりましたが、どうしたら「働きやすさ」と「やりがい」の両方を備えることができるのでしょうか?

 

荒川:「働きがいのある会社」について私たちは『マネジメントと従業員との間に「信頼」があり、一人ひとりの能力が最大限に生かされている会社のこと』と定義しています。具体的には「信用」「尊重」「誇り」「連帯感」「公正」という、5つの大切な要素があるんですが、「尊重」と「公正」が「働きやすさ」、「信用」と「誇り」と「連帯感」が、「やりがい」に分類しています。

 

引用元:GPTW

荒川:「やりがい」を高めるには、一人ひとりが自分の仕事や会社に誇りや自信を持って仲間との連帯感を感じながら仕事をする、そして上司と部下が信用できる関係になるということが大切なのです。

 

編集部:連帯感を高めるというと、何となく飲み会やイベントなどを通したコミュニケーションを想像してしまうのですが…?

 

荒川:チームビルディングを高める上でイベントを行うのはありますが、やりがいを高めるという目標においては、まずは上層部の意識を変えていくということが大事だと考えています。メンバーの一人ひとりは、まず自分が相手を信頼する、チームや部のメンバーを信頼する。上司は、部下に対して期待の声をかける、キャリアをきちんと一緒に考える、会社のビジョンを発信する、説明をすることが大事です。上がこういったことが大事なのだ、と認識して実行していけば、信頼関係が構築されて自然に「誇り」や「連帯感」が生まれていきます。

「働きがい」のある会社にはジェンダーギャップが少ない

編集部:2021年版「働きがいのある会社」女性ランキング(※)を拝見しました。今年の動向の一つとして、「女性の働きがいが高い会社は男性にとっても働きがいがある」と読み取りました。

 

荒川:ランクインしてる企業は男女間のジェンダーギャップが小さく、働いている人の性別や働き方に関係なく、平等に扱われてるという実感が高いようです。

 

編集部:LAXICの読者からは、「やりがい」はないけれど「働きやすい」職場でガマン、そしてマミートラックに陥ってしまって悩む…という声を聞くことがあります。

 

荒川:直接的な調査をしたわけではないのですが、ジェンダーギャップが少ない企業ではマミートラックは起きにくいと思います。今後、日本でもマミートラックは少しずつ解消されていくとは思いますが、個人的には、女性の意識にもまだ課題はあるのかな…とも思っているんです。

 

編集部:女性の意識、というと?

 

荒川:子どもが小さいうちは、どうしても育児が優先になりやすいですが、だんだんと子どもが大きくなってきたら生活の状況も変化します。どのタイミングで仕事の比重を変えたいか。自分なりのライフワークバランスを考えること、それを周囲や上司に伝えることが必要ではないでしょうか。このコミュニケーションが取れていないと、周りが良かれと思って配慮したり気を遣いすぎてしまい、それがマミートラックにつながってしまうような気がします。

 

編集部:自分の中で育児やプライベートを優先する時期を決めて、ワークライフバランスのライフの割合が多い時期から、いつワークの方に比重を切り替えるかを、上司や会社にきちんと伝えることが重要なんですね。

 

荒川:自分の考えをしっかり持ち、上司と気兼ねなく話をできる、信用信頼の関係です。それがマミートラックに陥らないための大切な視点ですね!自分の考えを整理するためには、忙しい中でも1ヶ月に1時間で良いので自分と対話する時間を取るなど、余白の時間を作ることが大事です。
(※)2021年版「働きがいのある会社」女性ランキング

管理職にはやりがいの種がたくさんある

編集部:「やりがい」や「働きがい」を生む一つの要因として、「管理職に就く」ということがあげられると思います。とはいえ日本の女性管理職の割合はまだまだ目標の30%よりも低いですよね。

 

荒川:以前管理職に就いている男女に「やりがいや成長を感じるか?」というアンケート調査をしたことがありました。すると、男性管理職よりも女性管理職の方が、成長実感があり仕事への誇りを持って自分らしさを生かせているという結果となりました。でも同じ母集団に聞いた質問では、管理職になる前は女性の方が「なりたくない」と思っていた人が圧倒的に多かったんです。

 

編集部:なるほど…おもしろい結果ですね。

 

荒川:また、女性管理職の方が部下への関心が高いという結果も出ていました。メンバーのコンディションを把握しながらモチベーションを高めていくということに、女性管理職は長けている印象です。成果が目に見えてくると、「やりがい」もさらに高まるという相乗効果もあって、女性管理職の方が男性管理職より「やりがい」の数値が高くなる傾向があるようです。

 

編集部:⼥性管理職を増やすために、さまざまな企業がダイバーシティ推進などに取り組んでいますが、なかなか進んでいないようです。そうした状況にモヤモヤしている読者にヒントをいただきたいです。

 

荒川:ダイバーシティを推進するためには、企業のトップが強い意志で変えていかないといけないです。日本企業は旧来の価値観のままで成果を出してきていて、そこを壊していくには反発が強いため、トップが強く推進する必要があります。一方で、会社が仕組みを変えてくれるのを待つだけではなく、みなさんも自分からどんどんチャレンジをして欲しいです。ダイバーシティは会社だけではなく、一人ひとりが推進していくものですから。

 

編集部:管理職になると今まで以上に働かなくてはいけない、という不安もあります。

 

荒川:管理職は決して猛烈に働かなくてはならない訳ではないのです。それは、今まで男性優位の社会の仕組みだったからというのも影響しています。これからは仕組みと、女性管理職の活躍が一緒になって変化していきますので、自分が活躍できる場を探して欲しいと思いますね。

 

編集部:まずは、自分の周りを知ることから始めてみようと思います。他の会社がどういう取り組みをしているか、情報交換や交流を深めていくことって大切ですね。

 

荒川:「他の会社にはこんな取り組みがあるな」「こうやって女性のキャリアを広げているんだな」と視野を広げることで、「私にできることってこんなことがあるよね?」とか「自分はこれからはこうしていきたい」と自分の軸や姿勢ができてくると思います。そのための情報収集をぜひしていただきたいです。

 

編集部:周りを知り、自分の軸を作ること!自分の「働きがい」のために一歩一歩挑戦していきたいなと思いました。荒川さん、本日はありがとうございました!

「働きやすさ」と「働きがい」って一見すると同じようにも見えますが、実際は違うんだと、お話を聞いて実感できました。まだまだ心のどこかで何となく「ママだし…」「100%戦力になれてない…」と遠慮を感じている人も多いと思います。すぐに変化をしなくても、まずは周りを知り、自分を知ること。「ママとしての自分」ではない、「社会人としての自分」に向き合うことで、一歩前進できそうな気がしますね。

プロフィール

荒川陽子さん

株式会社働きがいのある会社研究所(Great Place to Work® Institute Japan) 代表取締役

2003年HRR株式会社(現 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業職として中小~大手企業までを幅広く担当。顧客企業が抱える人・組織課題に対するソリューション提案を担う。2012年から管理職として営業組織をマネジメントしつつ、2015年には同社の組織行動研究所を兼務し、女性活躍推進テーマの研究を行う。2020年より現職。

文・インタビュー:永見 薫

ライター

永見薫

ライター

この記事をシェアする

FacebookTwitter