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2021.03.22 2023/05/31

全社員リモートワークで成果を上げる!
ソニックガーデンの哲学に学ぶ、これからの働き方

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全社員リモートワークで成果を上げる!<br>ソニックガーデンの哲学に学ぶ、これからの働き方

コロナ禍、私たちの働き方は大きく変化しました。以前は通勤を必須としていた企業も、リモートワークを導入したことで、社員は自宅でも会社と同じように働ける環境が整いました。

LAXICではここ数ヶ月、そうした働き方の変化を記事にしてきましたが、仕組みに呼応して、ワーキングマザーの働き⽅も、「両⽴」から「柔軟に働く+活躍」というテーマにシフトしてきていると感じています。

新しい働き方を始める上での戸惑いは、会社もまた同じように抱えているのではないでしょうか…?
「在宅勤務は社員がサボるのでは?」「コミュニケーション不足に陥るのでは?」
コロナ禍、そんな不安を抱えながら手探りで在宅勤務に踏み切った企業も少なくないはずです。

そこでLAXICでは、5年前から「全社員フルリモートワーク」を導入している企業を取材しました。ウェブアプリの開発やソフトウェアの提供を行う株式会社ソニックガーデンでは、18都道府県にまたがり、全社員がリモートワークを行いながらチームワークを活かした働き方をしています。2016年の取材時にはすでに「リモート飲み会」というキーワードも飛び出していたほど!

2020年12月には一般社団法人at Will Workが主催するアワードでテーマ部門賞(コミュニケーション、コラボレーション、チームビルディング)も受賞。リモートワークとチームビルディングの最先端を走るソニックガーデンの倉貫義人社長にお話を伺いました! 迷えるリモートワークスターターや人事の方も必見です!

※前回の記事はこちら

試行錯誤の10年間で見つけたリモートワークスタイルの秘訣

倉貫義人さん/オンラインで取材を行いました

編集部:御社では、もう5年近く全社的なフルリモートワークの実績があるのですね!

 

倉貫義人さん(以下敬称略。倉貫):はい。弊社では2011年からリモートワークを開始し、2016年にはオフィスへの出社を撤廃しました。それ以降、全社員がリモートで働くことを実践しています。

 

編集部:すでにリモートワーク歴10年とはすごいですね! ちなみに最初はオフィスがあったんですよね?

 

倉貫:はい。創業して数年目に、第1号の社員として兵庫県在住の人材を採用することになったんです。このタイミングでリモートワークが始まりました。

 

編集部:なるほど。ちなみにその頃は、物理的に距離のある社員とどのようにコミュニケーションを取られておられたのでしょうか?

 

倉貫:初めはskypeをつなぎっぱなしにしてコミュニケーションしていましたが、だんだん社員数が増えてくると、徐々にやり方に限界が出てきました。そこで文字のやりとりが中心のチャットシステムを導入しました。でも、そうすることで今度はお互いの存在感が見えなくなってしまったんです。

 

編集部:存在感、ですか! 確か倉貫さんのブログも、「slackを導入したけれど、うまくいかなかった」と書かれていましたよね。それもやはり社員の存在感が見えにくくなったということからでしょうか?

 

倉貫:オフィスに出社していると当然姿が見えるはずの社員が、オンラインだと見えにくくなる。たとえば、チャットだと発信量が多ければ存在感は出せますが、入社したばかりだったり、プロジェクトに入ったばかりだったりすると発信量は多くないですよね。それに、みんながみんな“雑談チャンネル”みたいなところに書き込めるタイプの人ばかりではありませんから、人によって姿が見えにくくなるのは問題だと思ったのです。

 

編集部:確かに…。

 

倉貫:発信が少ないばかりに存在感がなくなると、みんながその人のことを忘れてしまうというか、気にかけてもらえない状態になりやすい。そうするとお互いのことが思いやれなくなってコミュニケーションの質も悪くなり、悪循環になっていくんです。

 

編集部:なるほど、仮想オフィスRemottyを開発したのはそうした経験からというわけですね!?

 

ソニックガーデンのRemottyの画面。バーチャルオフィスに出社している人たちの顔が2分おきに更新される。チャットでのくだけたあいさつや雑談がコミュニケーションの潤滑油に。

 

倉貫:出社の際には仮想オフィスというバーチャル上の場所にログインするのですが、こうすることでお互いの存在感を感じることができるようになりました。この積み重ねでお互いの存在認識が定着化でき、実際のオフィスを解約するに至りました。
編集部:まさにRemottyを開発したことが転機になったのですね。

 

倉貫:オフィスがビルの中にあってもオンライン上にあってもあまり関係なく、物理的な物はオマケなんですよね。本質的に大切なのは、場所がどこであれお互いの顔や存在感を感じられる仕組み。バーチャルとかオフィスというのは働くための手段の部分が変わっているだけであって「チームワーク」とか「一緒に働く」ということを大事にしています。

完全フルリモートスタイルに移行した2016年は弊社にとって確かにターニングポイントでしたが、その背景にはRemottyの開発と自分たちで活用して得たさまざまな気づきがありました。

厳密な勤怠管理は社員の自律性とセルフマネジメント力を低下させる

リモート入社式のようす

編集部:オフィス勤務型の企業ではコロナをきっかけにリモートワークを導入したところも多いですが、お互いの存在が見えないがゆえに「部下がサボっているのではないか」と管理職が疑心暗鬼になったり、逆に「社員が働き過ぎている」という課題に直面したりしている企業もあるようです。御社では社員の勤務時間管理についてどんな工夫をしていますか?

 

倉貫:勤怠管理の仕組み面では、勤怠時間をログで記録していて可視化できるので「働き過ぎ」などのケアも含めてできてはいます。ただ、本質的な話としては、仕事をサボろうがサボるまいが成果を出していればいいと思っているんですよね。もっというと「”サボる”って何をしていることか」な気はします。たとえば、コーヒーを飲んでちょっと休憩したとしても、頭の中で仕事のことを考えていればそれはサボっているとは言えないですよね。

 

編集部:確かにそうですね…! 線引きが難しい部分でもありそうです。

 

倉貫:この辺は正直、仕事の種類によると思っています。マーケティングや企画、コンサルティングといったクリエイティブな仕事…つまりナレッジワーカーの場合は、そもそも勤怠で縛る意味があまりないと思うんです。もちろん、働き過ぎはいけないので仕組みとして管理ツールは必要であり、弊社も導入はしているのですが、本質的に大事なのは一人ひとりがいかに気持ちよく、楽しく働けるかだと考えています。

そういう意味で「健康」は欠かせないキーワードですが、リモート体制下でも上司が部下の行動を細かく管理するというのは少なくともナレッジワーカーにおいてはナンセンスだと思います。ですから、弊社では成果が出ていれば、1日の仕事に割り当てる時間の使い方に会社からの細かい指図や強い強制はしていません。

 

編集部:御社では男性社員の育児時間が多いと伺っておりまして、3年前に「ホワイト企業アワードイクボス部門賞」も受賞されていますよね。勤務において柔軟で自律的な時間管理ができることも育児時間の多さに影響しているのでしょうか?

 

倉貫:育児世代に限らず、全社の多世代が当たり前のように仕事と日常を上手に織り交ぜて過ごしています。自律的に働いているから結果として育児するパパも多いんでしょうね。

 

編集部:企業の中には、どこからがどこまでが勤務時間で、どこからが休憩、私用でと、時間の切り分けや使い方に悩まれているところも多いような気がしています。

 

倉貫:少なくとも弊社では、セルフマネジメントが基本なので、中抜けといったことも当たり前のこと過ぎて逆にピンときません。子どもがいる社員が朝夕に送迎などで抜けたり、中には免許の更新に行ったりする人もいますからね。

だからといって「これが正解」というわけではないですし、難しい部分ではあるとは思いますが。弊社に関しては、ナレッジワーク型の組織であるということと、社員にセルフマネジメントが徹底されていることという2つをベースに、どうすれば一番成果が出るか、を考えた結果、こういうスタイルがいいと思ってやっているのです。

自律的に働く個人の集合体でありたい

テレビ会議のようす。コロナ前から当たり前にこのスタイルをとっていた。

編集部:個々人のセルフマネジメント強化のために、組織としてはどのような工夫をしていますか?

 

倉貫:やりたいことを尊重し、社員それぞれにやりたい仕事を選んでもらっています。内発的動機付けです。成果に対して報酬を与えたり、「これをやらないとペナルティがあるぞ」と懲罰する外発的動機付けでは、社員のやる気は引き出せません。でも、内発的動機付けに結びつけると、おのずと仕事をコントロールしながら自律的に行いますし、仕事の活発化、企業の成長にもつながるのです。

 

編集部:先ほどの時間管理ともお話が通じるところですね。仕事の進捗管理や成果管理などもしていないのですか?

 

倉貫:仕事の進捗度合いを確認する仕組みはありますが、成果で成績を評価はしません。そもそも弊社には管理職を置いていないので、上司が部下を評価するということがないんです。社員全員が同じ権限を持ち、フラットな立場です。もちろん、すべての会社には当てはまらない仕組みだとは思いますが。

 

編集部:管理することを手放し、各々の意志を尊重する。それが個人と会社の好サイクルを生み出しているのですね。ところで、昨今、社員の副業を解禁する流れが加速していますが、御社は副業についてはいかがでしょうか。

 

倉貫:現状は制限していないです。ただ、会社の中で成長する場があるのであれば副業する必要はないとは思っています。

 

編集部:というと?

 

倉貫:弊社では「これがあなたのやる仕事」と指名するのではなく、自分が「やりたいこと」に手をあげて100%の意思で選んだ仕事をしてもらっています。自分でやりたいことができれば、社内で試せる場所がいくらでもあるのでわざわざ社外に場を求めなくていいという意味です。

 

編集部:「この企業にいたい」と社員が思えるような大切な仕組みですね。最後に、そんな働き方の最前線にいる御社がいま試行錯誤していることがあればお聞かせください。

 

倉貫:これからの時代、社員はいつ会社がなくなったとしてもどこでも生きていけるスキルや働く姿勢があることが大切です。自律できる人ばっかりの集団というのは会社がなくなったとしても強い。自律していて強い人たちがそれでもなお「この会社にいたい」と思えるような会社を作ることが目標ですね。

 

編集部:企業にとっても、働く人にとってもこれからの大切な視点がお聞きできました。貴重なお話をありがとうございました!

今回2016年の取材記事を改めて読みましたが、時代が今と何も変わらないと思うほどソニックガーデンさんの取り組みは一歩進んでいるなと改めて思いました。一見なんてことないように全社員フルリモートワークの取り組みがされていますが、オンラインであってもオフラインであっても、企業も人もお互いに信頼し、尊重し合えるかどうか。顔が見えないからこそ人間関係をより大切にしていきたいですね。

プロフィール

倉貫義人さん

株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長

1974年京都生まれ。1999年立命館大学大学院を卒業し、TIS(旧 東洋情報システム)に入社。2003年に同社の基盤技術センターの立ち上げに参画。2005年に社内SNS「SKIP」の開発と社内展開、その後オープンソース化を行う。2009年にSKIP事業を専門で行う社内ベンチャー「SonicGarden」を立ち上げる。2011年にMBOを行い、株式会社ソニックガーデンの創業を行う。月額定額&成果契約で顧問サービスを提供する「納品のない受託開発」を展開。全社員リモートワーク、オフィスの撤廃、管理のない会社経営など新しい取り組みも行っている。著書に『管理ゼロで成果はあがる』『「納品」をなくせばうまくいく』など。

文・インタビュー:永見 薫

ライター

永見薫

ライター

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