男性育休は ”育児優等生”だけのものじゃない !
”意識フツー系”パパの192日間の育休リアル

ラシク・インタビューvol.114

株式会社 電通 魚返洋平さん

これまでもラシクでは男性育休の経験者にインタビューをしてきましたが、世の中ではまだまだ少数派で、男性育休取得率はたったの3.16%。しかもその約6割近くが5日以内という短期間です(2016年度厚生労働省)。
そんな中、「ウェブ電通報」のコラム『男コピーライター、育休をとる。』筆者である魚返洋平さんは、2017年6月に長女が誕生してから、約半年間育児休業を取得し、育休中の奥様とお二人で子育てに専念した後、1月に復帰したばかり。「家族ため、というより ”自分” のために取得した」と言います。さて、どんな育休生活だったのでしょうか?
「ウェブ電通報」のコラム『男コピーライター、育休をとる。』はこちら
https://dentsu-ho.com/booklets/286

仕事を休むこと・育児に専念すること
両方をやってみたかった

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編集部:まず、育休を取るに至った経緯を教えてください。

 

魚返洋平さん(以下、敬称略。魚返):実は、16年前の就活の頃から興味はあり、妻の妊娠がわかった瞬間「よし、取ろう」となったんです。妻の要望に迫られてではなく、自分の興味本位でした。

 

編集部:かなりレアケースですね! 奥様の反応はいかがでした?

 

魚返:「そうなんだ、いいんじゃない?」と結構、平熱な感じで(笑) 付き合いが長いので、驚きはなかったようです。

 

編集部:ご自身の実験的な要素が多かったのでしょうか?

 

魚返:そうですね。仕事をしないってことと、育児に集中するってことを両方やってみたかったんです。

 

編集部:育休取得中、現場から離れた時の焦燥感はありましたか?

 

魚返:全くなかったですね。社歴も15年になると、自分の裁量でできる部分も多いので。ただ、コピーライターという仕事上、「書く」 という技術的なトレーニングをしていないと鈍るだろうな、と思いました。コラムを書くことが、結果的に良いトレーニングになっていたかと。

 

編集部:では仕事は完全にノータッチ?

 

魚返:はい。会社の携帯は切りっぱなしで、メールは自動返信にし、週に2〜3度閲覧する程度。そうでもしていないと在宅勤務と変わらないし、育休を取ったからには育児に集中したかったんです。

 

編集部:なかなかそこまで割り切れるのも素晴らしい。ちなみに育児のイメージはどう思っていました?

 

魚返:正直、もっとドラマチックだと思っていました。人からは「最初の1年は目まぐるしいスピードで成長するので、見届けるべきだよ」と聞いていたので。しかし、24時間一緒で、点ではなく線で見ていると、日々、ルーティーンなので…… 確かに1ヶ月前と比較すると変化はありますが、日々の成長の中に劇的な感動って、思っていたほど頻繁にはなかったです。あと体力的には自信があったのですが、こんなにも自分が寝られないと思わなかったです。仕事では何かしら結果が出るのでメリハリがありますが、育児はメリハリ無くただ寝られない(苦笑)

 

編集部:でも、奥様と一緒にスタートラインに立てた事はすごく良いことですね!

 

魚返:呼吸を揃えるってことでもよかったと思います。妻も4月から職場復帰を予定していまして、4月からの体制を整えるのが現在の課題ですね。

お金のことは、育休期間と連動して試算した

編集部:育休の時に話題になるのがお金に関してですが、どう捉えました?

 

魚返:お金のことと育休期間は僕の中で繋がっていて。最初は育休期間を1年間で考えましたが、給付金だけで1年間生活するのはきついかなぁと思い、5〜7ヶ月と想定。人事に相談すると同期のクマキ(制度と数字に強く、育休について精通している育休マイスター的存在)を紹介してもらって。クマキがアドバイスしてくれた結果、より賢く制度を利用することができたと思います。もう少し長くとればよかった、と思っているぐらい。

 

『男コピーライター、育休をとる。』クマキさんが登場するのはNo.3「僕はこうして育休を取った」

『男コピーライター、育休をとる。』クマキさんが登場するのはNo.3「僕はこうして育休を取った」

編集部:コラムにも出てきているクマキさん、いいキャラですよね! しかし経済的な理由で育休を諦めるケースも多い中、何かアドバイスはございますか?

 

魚返:やっぱり貯金はしておいた方がいいですね。僕は財形貯蓄をしていたので心強かった。あとここで有給休暇を使えるだけ使った方がいいなど、細かなテクニックは大いにあります。クマキの受け売りですが(笑)

 

編集部:職場復帰後、相談を受けることもありますか?

 

魚返:「突然のメールすみません、育休について……」と先輩や後輩から連絡ありますね。ネックになっている部分がお金だと話は早くて、そこはクマキが的確なアドバイスをしてくれます。お金以外の相談だったら、僕が話せることもあると思います。あと最近は勝手に忖度(他人の気持ちを憶測する)しちゃう人も多くて。育休取りたいけど周りに迷惑かけるし、よく思わない人もいるかな…… だったらやっぱり辞めておこう、と自己完結してしまう。それは本当にもったいない。

 

編集部:ちなみに、魚返さんが育休を取得することについて、上司の反応はいかがでしたか?

 

魚返:僕が相談した時は「いいね! せっかくだから、なんか書いたら?」と。とても恵まれていました。世代間の差もありますが、周りの先輩や上司が「育休取れよ!」って言ってくれるような雰囲気が理想ですね。

仕事感覚が活かせる“保活”は、夫が大活躍できるチャンス!?

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編集部:魚返さんは保活もされていたとか! 旦那さんが積極的って珍しいと思います。

 

魚返:保活は普段の仕事感覚をフルで生かせます。見学にいくところへアポをとり、そこで情報を集め、質問をして情報を整理して…… って極めてデスクワーク。もし生まれた直後に育休を取っていなくても、保活のためだけに1〜2週間取って、そこで集中して頑張るって言うのもアリだと思います。子どもが数年間通う場所なので、ある程度、自分の目で見て確認しておいた方が安心できますしね。

 

編集部:最初から前向きに取り組めましたか?

 

魚返:僕の住んでいる地区は、子どもが生まれる前から、シビアなエリアだと認識していたので、「割り切って楽しまないと損だ!」と心に決めていました。夫婦で見学した後は、近くの美味しいパン屋さんに寄り道しつつ、お互いに気になった所を言い合って、とにかく楽しみながら、最終的には20園ほど回りました。「どこにも入れなかったどうしよう……」と不安になる日もありましたが、なんとかある保育室にご縁を頂けたのでひと安心です。

 

編集部:よかったですね! 保活を通して何か変化はありましたか?

 

魚返:自分たちの街や地域の見え方が変わりましたね。今までと同じ場所なのに違って見える。よく行くお店とかもどんどん新しい文脈で塗り替えられてゆく。暮らし直している感覚になりました。

夫婦それぞれを「孤独にしあう」ことだけは避けよう

編集部:話が変わりますが、魚返さんはウェブ電通報のコラム内で、「夫が理解してくれない、と妻が言うとき、夫もまた孤立している」と書かれていました。これを読んだ時にハッとして。

 

魚返:社会の声として、「ワンオペ育児は孤独だ」と常々聞いていましたが、実際に自分が育休を取るまではそこまでピンとこなかった。でも、実際、孤独ですよ。夫が経験できない限りその状況は知りようがない中で、「理解してくれない!」って言われている夫も孤独じゃないですか。お互いに孤独にし合って溝が深まってしまう…… できるだけ、そうならないようにしたいな、と。

 

編集部:何か具体的な衝突を経験されたのでしょうか?

 

魚返:特に大きな何かあったわけではないのですが、SNSなどで見ていると、育児に対する孤独な声が多すぎて。これだけ多くの妻たちが「夫がわかってくれない」と言っていて、その数だけ孤立している夫がいる…… この悲しい現実。育児に携わるようになってから気がつきました。

 

編集部:孤独にしあわないためにはどうすれば良いでしょうか?

 

魚返:月並みですけど、やっぱりコミュニケーションでしょうね。自分が体験してみると大変さはもちろんわかりますし、わからないことがあったとしても疑問を言葉にする努力は必要ですよ。なんて言いながらも、妻がこの記事を見たら「わかった風に言っているけど」とか思っていたりして……(苦笑)

育休は夫婦で一緒に思いだせる「新婚旅行」のようなもの

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編集部:復職後はどのような働き方をされていますか?

 

魚返:復帰後も朝は離乳食を食べさせてから出社したり、お風呂のサポートをするために早く帰ったり。できる限り育児をしようと心がけてはいますが、時間のコントロールがなかなか思い通りには行かず…… 悩ましいところです。

 

編集部:その理解力は半年間育休を取ったからこそ?

 

魚返:そうだと思います。24時間一人でみていることが、いかに大変かがわかったので。ただ、今はまだ仕事が忙しくないので良いですが、これからどうなるか……

 

編集部:育休を終えられて、ご自身の中で一番の変化は何でしょうか?

 

魚返:「子育ての楽しさと大変さがわかった」でしょうか。コラムにも書いたのですが、この思い出があるかどうか、この先の長い人生影響していくと思うのです。10年後、20年後、夫婦で同じことを思い出せるかどうか。娘との関係どうこうって言うことより、夫婦での共感みたいな所が大きいと思います。ずっと共通言語として持っていられる、新婚旅行みたいなものですよ。あと、もう一つは「謙虚になれたこと」。育児ってみんな当たり前のようにやっているけど、こんなに大変だったなんて! みんなすごいなぁ、俺なんてまだまだ…… と。

 

編集部:何か失ったものはありますか?

 

魚返:「一人になれる時間」ですね。良くも悪くも一人になれない。会社では一見、人まみれですが、実は一人になれている。労働の中には「自分と向き合える時間」がある、だからみんな働くのかもしれません。

 

編集部:最後に、まだまだ敷居が高いイメージの男性育休。「育児優等生の占有物じゃない」と書かれていましたが、どうすればもっと身近なものに?

 

魚返:一見、妻のためのようでも、なんだかんだで自分の喜びのための人も中にはいると思います。僕は自分の興味本位で育休を取った。そこに対して「興味だけで育休取るな」って言われる筋合いもない。本人の自由だし、それぞれの家庭でそれぞれの理由があって当然なので「とってよかったね」と最後に家族で思えれば、それで良いのだと思います

以前から周囲に「(育休とって)えらいですね!」と言われることに、居心地の悪さを感じていたと言う魚返さん。育児休業は男女問わず労働者の権利であり、無条件に取れるはずなのですが、なかなかそうもいかない現実。取る・取らないは本人の自由だとしても、取れることが当たり前になったら、もう少し孤独な妻たちが救われるのではないでしょうか。「育休こそは最強の出産祝いである。彼とその家族を、それは一生あたためる。」コラム内でのこの言葉が一番刺さりました。「男コピーライター、育休をとる。」すごく面白いので読んでみてください。オススメですよ!

魚返洋平さんプロフィール
株式会社 電通 コピーライター。1981生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2003年電通入社。2017年6月に第一子が誕生し、7月から6カ月間の育児休業を取得。その体験をコラムとして「ウェブ電通報」に連載中。2012年より作詞活動も。『男コピーライター、育休をとる。』
HP:男コピーライター、育休をとる。

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文・インタビュー:飯田理恵

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