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2022.08.25 2023/02/15

産後パパ育休も10月からスタート!
いま理解しておきたい男性育休の必要性と土壌づくりのポイント

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産後パパ育休も10月からスタート! <br> いま理解しておきたい男性育休の必要性と土壌づくりのポイント

2022年10月に産後パパ育休(出生時育児休業)がスタートすることを受けて、社会的な育休整備の動きが強まっています。しかし、男性が育児をすることの必要性を根本的に理解していないと表面的な制度になってしまい、結果として、夫婦にとって有意義な休みにはならないはずです。

一方で、男性育休の整備にあたって「制度を敷くだけではいけない」と頭では理解しているものの、具体的な取り組み方が分からずに悩む企業は多いでしょう。男性育休の推進にはさまざまな要素が絡んでおり、「これをすればいい」と一元的に解決できるとは限りません。

今回インタビューするのは、男性育休推進支援サービスを提供するセントワークス株式会社の一ノ瀬幸生(いちのせ・さちお)さん。多くの自治体や企業で研修講師を担当し、コンサルティングも行われています。男性育休の必要性と、休みやすい土壌づくりのポイントについて、専門家の視点から教えてもらいました。

いまだに根深い役割分担意識…
だからこそ必要な根本からの理解

資料/一ノ瀬さん提供

編集部:今年の10月に産後パパ育休が始まるように、法律が少しずつ整備されてきました。実態として、育休への意識も変わっているのでしょうか?

 

一ノ瀬幸生さん(以下、敬称略。一ノ瀬):社会全体で見ると、性別による役割分担意識はまだまだ根深いです。男性育休の法律が整ってきても、意識自体が大きく変わっているとは言えないと思います。

 

編集部:やはり「男が育休なんて!」と考える人も多いのでしょうか…

 

一ノ瀬:心の中でそのように考える人は多いと思います。ただ、「男性育休が必要」と頭で分かっている人は増えているはずです。

 

編集部:市場全体で労働力が不足しているので、企業としては人材確保の面でもジレンマがありそうです。

 

一ノ瀬:「できれば育休を取らないでほしい」というのは、多くの企業にとって本音でしょうね。だからこそ、男性育休の取得を促進するには、制度を敷くだけでなく「なぜ必要なのか」を根本から理解することが大切なんです。

 

編集部:企業がまず取り組むべきことは?

 

一ノ瀬:当社でのアンケートを含めさまざまな調査で、育休促進にあたっての課題として「雰囲気づくり」が挙げられています。どれだけ制度が整っていても、休みやすい雰囲気がないと休めませんからね。

女性の育休ですら最初は理解が進まず、社会全体で取りづらい空気感がありましたが、数年かけて意識が変わってきたんです。男性育休でも、多くの企業が雰囲気づくりに悩んでいます。

トップの表明が大切!
多くの企業が実施する、管理職への理解促進

一ノ瀬幸生さん / オンラインで取材

編集部:男性育休を取得しやすい雰囲気をつくる上で、何が大切なのでしょう?

 

一ノ瀬:大きく2つあると思っています。ひとつ目は、社長をはじめとした組織のトップによる意思表明です。制度内容を周知すると同時に、「休みを取ってほしい」という気持ちを明確に伝えます。人事部門から淡々と制度を説明するだけでは、休みやすい土壌をつくることは難しいんです。

 

編集部:トップから伝える際のポイントは?

 

一ノ瀬:例としては、「動画を作って配信する」「“男性育休100%宣言”をする」など、インパクトのある工夫が挙げられます。あとは、1回だけでなく何度も伝えることが重要です。

 

編集部:ありがとうございます。雰囲気づくりにおけるポイントのふたつ目はなんでしょうか?

 

一ノ瀬:しくみの工夫です。たとえば「育休を取得する場合は、2ヵ月前までに相談しましょう」というしくみを作ると、時間をかけて引き継ぎができるので、休む人を周囲がカバーしやすくなります。期日が明確であれば、部下は上司に休みたい旨を伝えやすいし、逆に上司も取得の意向を聞きやすい。

「おめでとうカードを作る」「人事も交えた三者面談を行う」など、ほかにもさまざまな取り組みがあります。自社に合ったしくみを作れるといいですね。

 

編集部:セントワークス様が実施した調査で、育休を取得しやすい雰囲気づくりのために、多くの企業が「管理職への研修」を実施している結果が出ています。この背景にはどのような理由があるのでしょうか?

 

一ノ瀬:ベテラン層が多い管理職は、自分たちがやってきた環境といまの環境が違うことで「自分の経験が否定されている」と感じてしまうケースが多いんです。「自分の世代は妻がひとりで頑張っていた」というように。なので、経験を否定しているのではなく、社会環境が変化していることを理解してもらうのがポイントです。私が研修の講師を担当するときも、「なぜ男性の育児休業が必要なのか」を最初に丁寧に説明しています。

産後の女性は男性が思っている以上に大変!
体内で起きている異変とは?

写真/一ノ瀬さん提供

編集部:管理職への研修では、まず何を伝えるのでしょうか?

 

一ノ瀬:まずは大きなくくりで、社会全体や企業に求められている課題を説明します。大きく分けると、「現在の労働力を増やす」「未来の労働力を増やす」「職場の生産性を上げる」の3つですね。

その後に説明するのが、管理職の多くが今後直面するであろう「介護」と「育児」の類似性です。実は、介護と育児の生活サイクルは非常に似ています。妻に介護を任せてしまうと、心身の負担がどんどん重くなってしまい、介護うつをはじめとした不調につながるかもしれません。夫婦での協力が必要なのは、介護も育児も同じなんです。

 

編集部:介護と育児が似ているとは驚きです!ほかにはどのようなことを伝えられていますか?

 

一ノ瀬:企業へのメリットも伝えます。たとえば、エンゲージメントがアップして、生産性が向上します。長めの育休であれば引き継ぎが発生するので、業務の属人化防止にもなる。さらに、部下の事情やライフスタイルに寄り添う中で、次世代リーダー育成にもつながると思っています。これらは一例で、社員と企業の両方に複数のメリットがあるんです。

 

編集部:感情に訴えかけるようなアプローチもするのでしょうか?

 

一ノ瀬:理論に偏らぬよう、もう一歩先に踏み込んで「産後の生活実態」「産後女性の心身の変化」「以前と現在の育児環境の変化」「父親になる過程」の4つを伝えています。特に重視しているのが、産後の生活実態と産後女性の心身の変化です。女性の産後は大変と知っていても、具体的にどう大変なのかを知らない男性は多い。女性が赤ちゃんを産んだ後は、基本的に1ヵ月の安静が必要なんです。

 

編集部:女性の心身について、男性が知る機会ってなかなかないですもんね。

 

一ノ瀬:私自身、これまで育休を2回取っているのですが、1回目は反省ばかりでした。女性が赤ちゃんを産むときは20~30cmの胎盤がはがれ落ちて、筋肉がむきだしの状態になります。体内で起きているので目には見えませんが、相当な痛みを伴うと分かるでしょう。重い物を持ったり、自転車に乗ったり、動くたびに尿漏れをしてしまうこともある。1回目の育休では私がこれらを知らなかったので、妻が相当つらそうにしていたんです。

2回目は1ヵ月間の育休を取って、妻を全面的にサポートしました。そうすると、妻のつらい様子がなくなり、いつも笑顔でいてくれたんです。男性がサポートするだけで、ここまで変わるのだと実感しました。

育休取得の促進は、
個々が活躍しやすい土壌づくりになる

写真/一ノ瀬さん提供

編集部:育休取得中の課題として「周囲の負担増加」があります。この点は、どのようにカバーするといいのでしょう?

 

一ノ瀬:一般的なのは、休む社員の業務を見直した上で引き継ぐことですね。企業規模によっては、チームや部署を飛び越えて引き継ぐ場合もあります。その機会に業務を洗い出し、ほかの従業員の視点が入ることで工夫が生まれたり、やめる業務が出てきたり。部下の成長につながることもあるかもしれません。ある職場では、5名ほどのチームリーダーが育休を取得しましたが、部下たちだけで業務をまわすことができるようになったため、育休復帰後、それまで手がまわらなかった業務に着手できるようになったチームリーダーもいます。やってみるとなんとかなるケースは多いんですよ。

 

編集部:育休が取得しやすい組織づくりは、ダイバーシティの促進にもつながりそうですね。

 

一ノ瀬:そうですね。全体的に休みを取得しやすい雰囲気があると、介護に集中する人も肩身の狭い思いをしなくてすむなど、多様な人材が活躍しやすい土壌になると思います。

 

編集部:組織づくりの上で、管理職以外へのアプローチも必要でしょうか?

 

一ノ瀬:組織全体で協力し合うには、一般社員や取得対象者への研修も大切です。全員の理解が進めば、個々が大事にしているものを応援できる職場にもなります。

実際に、管理職研修を実施した企業から、一般社員や取得対象者への研修を依頼いただくことも多いんです。ただ、全社員に研修するのは労力とコストの面で負担が大きいと思うので、当社の『ワーク・ライフバランスeまなび』のようなオンライン研修サービスを実施するのがいいと思います。

『ワーク・ライフバランスeまなび』は、
男性育休の本質を立場やニーズに合わせて理解できる

資料/一ノ瀬さん提供

編集部:『ワーク・ライフバランスeまなび』について、詳しく教えてください。

 

一ノ瀬:男性育休の理解促進に活用できる、eラーニング研修サービスです。「管理職向け講座」「一般従業員向け講座」「取得対象者向け(プレパパ)講座」「両親講座」の4コースに分かれており、各講座は90~120分。1ユーザーあたり550円(税込)と低コストで受講できることに加え、10~20分のチャプターで構成されているので、空いた時間で気軽に学習できる特徴もあります。

 

編集部:豊富なコースが用意されているので、従業員の立場やニーズに応じた学習ができますね。ちなみに、「両親講座」とはどのようなコースでしょう?

 

一ノ瀬:夫婦で受講でき、育休中の過ごし方や仕事との両立について、ふたりが同じ認識を持てるようにするためのコースです。夫が考えている「妻が求めていること」と「妻自身の求めていること」って、ギャップがある場合が多いんですよ。「両親講座」では、両方の視点から妊娠や育児について学べるので、ギャップを埋められます。結果として「取るだけ育休」も減るんです。夫婦にとってより有意義な育休になるよう、ぜひ活用していただければと思います。

 

編集部:男性育休への理解が進み、良い雰囲気が社会全体でどんどん醸成されたらいいですね。本日はありがとうございました。

一ノ瀬さんが2回目の育休で休んだ1ヵ月間は、ご自身にとって「ものすごく幸せな時間」だったそうです。育休取得は妻のサポートのため、と認識している人は多いかもしれませんが、男性にとっても日々を充実させる制度になります。男性が家庭内で活躍できれば、女性が社会活躍しやすい土壌づくりにもつながるでしょう。周囲の理解を深めた上での男性育休推進は、個人や企業、ひいては社会にとって好影響があることを実感したインタビューでした。

プロフィール

一ノ瀬幸生さん

セントワークス株式会社

1999年旅行会社に入社。営業、企画、添乗まで幅広く知見を重ねる中で、長時間労働が慢性化していた当時の働き方に疑問を持つようになり、業務効率化を実現する働き方のスキルを追求、推進するように。全国優秀社員賞(個人/チームリーダー)を2度受賞する。
2013年セントワークス株式会社に入社。ワーク・ライフバランス担当および働き方改革担当として、意識改革、残業削減、売上アップを実現する取り組みに従事。内閣府をはじめとする各種機関から、ワーク・ライフバランスに関する認定や表彰を受けるなど、ホワイト企業としての土壌づくりに貢献。現在は、ワーク・ライフバランスコンサルタントとして、国、自治体、企業などで働き方改革に関する研修、コンサルティング等を行っている。

文・インタビュー:紺野天地

ライター

紺野天地

ライター、文筆家

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