苦しいのはやり方を知らないだけかも?
元ガミガミママに学ぶ、叱ってばかりの子育てを変えるヒント

ラシク・インタビューvol.196

ファミリーワークス合同会社代表/親の学校プロジェクト主宰 生駒 章子さん

わが子についガミガミ、くどくど叱って、あとになって落ち込む……。思い当たる方はきっと少なくないかもしれませんね。

毎日口うるさくしてしまう親も辛ければ、叱られる子どもも辛いものです。しかし、現状の子育てを変えたくも方法が分からず「苦しい子育て」を続けざるを得ないことも。言うことを聞かない子どもにガミガミ言うのではなく、円滑な親子間コミュニケーションを図りながら親としての役割を果たすにはどのように行動していけばよいのでしょうか?

今回は、親のためのリーダーシップトレーニング「親業講座」のインストラクターとして活躍する生駒章子さんに、よりよい親子関係の作り方についてお伺いしました。

親業インストラクターとして10年ものキャリアを持つ生駒さんですが、自身の子育てでは鬱状態になるほど追い詰められた経験があったとか。

そんな彼女がガミガミ子育てから脱却したきっかけとはどのようなものだったのでしょうか? 生駒さんが提供する親業講座を通して、親子関係が改善できたという成功事例についてもご紹介します。

虐待ギリギリの子育て。助けを求めて育児書を読み漁った日々

生駒 章子さん/オンラインで取材を行いました

編集部:生駒さんのプロフィールを拝見した際、「元ガミガミママで今は親教育の専門家」という自己紹介文がまず目をひきました。現在は親業インストラクターとして活躍されている生駒さんが “口うるさい不機嫌なママ” からどのように脱却していったのでしょうか?

 

生駒章子さん(以下、敬称略。生駒):実は一人目の子育てでは、虐待してしまう人の気持ちがわかると思ってしまうほど、子育てに追い詰められた経験があります。

上の子は2歳まで保育園に預けていたのですが、離職をきっかけに3歳から幼稚園に入園しました。ちょうどそのあたりから箸の使い方、走り方、姿勢、勉強、友達づきあい、ありとあらゆるものが気になるようになりました。「これもできるようにしないと」「あれもできるようにしないと」という焦りが出始め、子どもには口うるさく言うことが増えたと思います。

 

編集部:口うるさく言ってしまうのはわが子のことを思っての親心でもあるんですけどね。すごくわかります。

 

生駒:そうなんですよね。とはいえ当時の私は「何で出来ないの!」「やる気あるの!?」と小言を繰り返しばかり。いつの間にか笑顔は消え、気づけば毎日が不機嫌な子育てになっていました。そんな現状をどうにか変えたくて育児書を読み漁る日々を過ごしていました。

 

編集部:さまざまな子育てメソッドを学ぶなかで、何か変化はありましたか?

 

生駒:いえ、状況はあまり変わりませんでした。育児書も読み尽くし、このまま我慢をして子育てしていくしかない…。そんな時に出会ったがトマス・ゴードン博士の『親業』という書籍でした。読んだ瞬間、雷に打たれたような衝撃を受けたことを今でも覚えています。

 

編集部:というのは?

 

生駒:これまで読んできた書籍は概念について書かれたものがほとんどだったように思います。でも、『親業』には具体的にどうアクションすればよいのかが体系的に書かれていたんです。「これならやり方を訓練すれば子どもとの関係もやり直せるはず!」と思い、これが最後のチャンスという気持ちで親業を実践したことが私の子育てを大きく変えるきっかけとなりました。

変わるべきは親だった。子育ての悩みを見える化する

編集部:具体的に親業とはどういったものなのでしょうか?

 

生駒:「親業」とはアメリカの臨床心理学者トマス・ゴードン博士が創始した親子のよりよい関係を作るための親教育プログラムです。「聞く」、「話す」、「対立を解く」という3本の柱を元にコミュニケーションを学びます。「子どもがいかに育つか」に重点を置くやり方から、「子どもが育つ上で親がどのように関わるか」という親の関わり方に焦点が当てられた世界で最初の講座でもあります。

 

編集部:要するには子どもを変えるのではなく、親のやり方を変えるということですね?

 

生駒:はい、まさにその通りです。親子の信頼関係を作るために、どのように子どもに伝えるのか、話を聞くのか、話し合うのか、親のやり方を学び、実践していくのが親業です。

いつ、どのように話せばいいのか、話を聞けばいいのかが学べるうえ、うまくできなかったとしても「次はこうしてみて」と代替案も示してくれます。

 

編集部:具体的なアクションを教えてもらえるのは助かりますよね。では実際にどのように行動すればよいのか教えていただけますか?

 

生駒:はい。親業では、よりよい親子関係を作るために、まずは「子どもの行動の見方を変える」ことを提唱しています。

 

編集部:行動の見方を変える、とは?

 

生駒:そもそも親業において行動とは「目に見えて耳に聞こえるもの」と定義付けています。そのため「行動の見方を変える」= 「目に見えて耳に聞こえるものに着目する」ということです。

 

編集部:この「行動の見方を変える」という方法は親業のほかにも「ペアレントトレーニング」という手法で聞いたことがあったり実践されていたりする方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

生駒:そうですね。認知の部分で行動にレッテルを貼らないで見るという点では同じかと思います。

では、ある受講生の例を挙げて解説していきますね。

 

編集部:はい、お願いします。

 

生駒:先日、子育てについて悩みをたずねたところ受講者さんのなかで「子供が宿題をやらないくせにテレビばかり見て妹に乱暴するんです」という方がいらっしゃいました。

 

編集部:よくあるお悩みのひとつですよね。

 

生駒:そうですね。ただ「宿題もしないくせに」の“くせに”とは目に見えませんし、耳にも聞こえない。「テレビばっかり」と言う“ばっかり”も目に見えない。「乱暴する」というのもその瞬間は目に見えていません。「乱暴しないの!」と注意した時には「乱暴してないよ」と言われてしまいますよね。

今の言葉を“目に見えて耳に聞こえるもの”という行動で捉えるとしたら、「テレビを見ている」「妹のおもちゃを取った」ということになります。

 

編集部:なるほど。「子供が宿題をやらないくせにテレビばかり見て妹に乱暴するんです」という言葉自体、親のバイアスがかかっている可能性も考えられますね。

 

生駒:そうなんです。「テレビを見ている」「妹のおもちゃを取った」という行動に対して親は「毎日毎日長い時間だらだらテレビ見て……」と反射的に思ってしまう。

大切なのは子どもの行動だけに着目したうえで、その行動に対して評価をしないということ。さらに評価はせず「どう感じたのか」、心の内を見つめてみることです。すると何に対して不満を感じているのか、そもそもの子育ての根本原因が見えてきます。

受講生から「子育てが変わった」!親業が果たす役割

ワークショップのようす

編集部:生駒さんはこれまで親業講座に加え、108回ものワークショップを提供されていらっしゃるそうですね。受講生の方たちの事例を教えていただけますか?

 

生駒:4名の方の事例をご紹介しますね。

Aさん 営業事務(受講当時の子どもの年齢は4歳)

毎日の保育園登園で泣き叫ぶわが子。調べると「愛情が足りない」といった記載が多く、いつも自分が責められてる気がしていました。子どもに怒らないようにしたけど子どもが憎たらしく思えていた時、講座を受けました。「親も嫌だと感じていい」と言われて心が楽になりました。当時は子どもが1人でしたが、今では3人に。あの時学んでいなかったら3人も産んでいなかったと思います。

Bさん 事務(受講当時の子どもの年齢は3歳)

夫は子どもに甘く、怒るのはいつも私。そのため、子どもはパパっ子で私の言うことを聞かず、毎日イライラしていました。そんな時、講座で「アイ・メッセージ*」を知り、自分がなぜこんなにイライラしているのかを見つめてみました。「2人が楽しそうなのを見ると自分が否定されたようで寂しい。」そんな気持ちに気づき、それを夫に伝えてみると、「そんな風に思っていたなんて知らなかった」と理解してくれて、それ以降、私が怒ると「ママが言いたいのはね…」と子どもに代弁してくれるようになりました。夫が分かってくれると思ったら、怒ることも減って前より子どもと仲良くなれました。
*アイ・メッセージとは、主語を私(アイ)に変えて伝える方法

Cさん 総合職(受講当時の子どもの年齢は3歳、0歳)

下の子の育休中に受講しました。上の子の赤ちゃん返りがひどく、妹をつねったり癇癪を起こしたり。優しく言っても聞かないので、最後は「お兄ちゃんなんだから!」と怒鳴ってしまって。講座で学んだ「気持ちに寄り添う聞き方」を実践したら、子どもが驚くほど落ち着いていきました。あれから3年。今では妹のお世話をしてくれる頼れるお兄ちゃんになっています。

Dさん 営業(受講当時の子どもの年齢は4歳)

仕事がら、人の話を聞くことは得意だと思っていたのに、対子どもや夫だと上手く話を聞けない。親業でコミュニケーションを体系的に知ることでその謎が解け、前より子どものや夫の話を聞けるようになりました。何より、職場で人の話を聞くのも楽しくなりました。

 
編集部:みなさん、伝え方や聞き方を見直した結果、前向きに子育てに取り組まれている姿が素敵ですね。

 

生駒:そうですね。例えばBさんの場合は自分の心のうちを観察することでイライラの原因に気付けたとおっしゃっています。そのうえで「私」を主語にしてメッセージを伝える「アイ・メッセージ」の方法を取り入れることで夫婦のコミュニケーションも円滑に進んだことが功を奏しています。

 

編集部:Aさんの「先ずは親も嫌だと感じていいんだと言われて楽になった。」という言葉もすごく印象的でした。

 

生駒:役割に縛られてしまうと冷静になれず感じ方が変わってしまいます。親としてではなく「私」としてどう感じているのをよく観察し、気持ちを整理するのがポイントです。ちなみに親業は親として「心の整理の仕方」を学ぶことも基本としています。

 

編集部:確かに子どものことになるとつい感情的になって、本当はどう感じているのか、どうしたいのか、よくわからなくなってしまいます。

 

生駒:そういう方はきっと多いと思います。まずは自分の気持ちと向き合い、心の中を整理することが最初の一歩です。すると何が問題であり、誰が問題を持っているのかが見えてきます。そのうえでどう解決していくべきなのかを明確化できるというのが親業の果たす大きな役割でもあります。

地域から企業へ。働く人の家庭の悩みを解消したい!

編集部:今後は個人向けの活動のみならず、企業に向けて支援の幅を広げられるご予定だとか?

 

生駒:はい、そうです。今年に入って法人向けに「企業内家庭教育学級」という事業を立ち上げました。“働きながら子育ての悩みを解消する”を目指し、企業内で子どもの悩みを解決するための研修を行うものです。研修では脳科学と発達心理学をベースにした人間発達論や適切な相互コミュニケーション方法についてお伝えしていきます。

 

編集部:立ち上げにあたってはどのような背景があったのでしょうか?

 

生駒:きっかけは親業講座の受講生さんから職場で子育てに悩む方々についてのお話を多く聞くようになったことです。「同僚が子どもの不登校に悩んでしばらく仕事に来ていない」、「子どもの問題行動で学校に呼び出されて仕事に集中できない」という問題です。

 

編集部:仕事の生産性にも関わってくる問題ですよね?

 

生駒:まさにその通りです。これまで受講生500名にとったアンケートによると「親子や夫婦の問題」が仕事の生産性やモチベーションに影響すると答えた人は約7割にものぼりました。何より子育て世代は忙しいため、職場で子育ての悩みを解消することができたら効率的だと考えています。

 

編集部:確かに正しい情報や方法を得る時間的余裕がないなか、職場で解決できるというのは子育て世代にとっては非常に助かります。多くの働く母親たちにとっての助け舟になったらいいですね!では最後に子育てに仕事にと毎日忙しいLAXIC読者に向けてメッセージをお願いします。

 

生駒:子育て世代はとにかく忙しいです。気がつくと仕事も100%、子育ても100%を目指して苦しくなってしまうこともあるかもしれません。でも完璧な両立なんて目指す必要はありません!仕事と子育てを合わせて100%でいいんだと思います。今日は仕事60子育て40の日もあれば、仕事80子育て20の日もある。それでも「自分は今日も100%頑張った!」、そんな風に思える日が増えていくといいですね。いつも怒らない優しいお母さんではなく、いつも満足している内外一致のお母さんを目指してください!

 

編集部:生駒さん、本日はありがとうございました!

まさにこの原稿に向き合う数日のなかでも、わが子にガミガミ言って我に返るような時間を過ごしていました。この“ガミガミ”を自分なりに因数分解すると、単純にわが子に対する愛情が根本にあるわけです。なのに純粋な親心はわが子を前にするとどうにも歪んでしまう。この状況を変えるために必要なのは何なのか?考えてみると、生駒さんがおっしゃる通り、適切な伝え方、聞き方を親側がきちんと身につけることなのだなとあらためて強く感じました。勉強でも人生でも、知らないということだけでつまずいたり失敗の原因になったりする。ならば親としての役割を果たすための学びを得ることが、少なくとも親としてのつまずきに手を差し伸べてくれるヒントになるのかもしれません。

生駒 章子さんプロフィール
臨床心理学者トマス・ゴードン博士が創始した「親業」のインストラクターとして講座、ワークショップを提供するほか、学校、企業での講演多数。2021年1月ファミリーワークス合同会社を設立し企業研修事業をスタート。私生活では、漫画を読むのが大好きな21歳と17歳の二児の母。
HP:親の学校プロジェクト

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:倉沢れい

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