親である自分の生き方をも問い直すきっかけに!
先駆者に聞く「教育移住」のリアル【後編】

ラシク・インタビューvol.184

一般社団法人母親アップデート 理事 桑原あやこさん

多様な教育環境を求めて地方移住する「教育移住」。
既存の教育方針とは異なり、子どもの自主性を尊重するオルタナティブ教育を実践する学校が各地方で開校されています。さらに今回のコロナが追い風となり、仕事も生活も「地方をメインフィールド」として選ぶ人が増加しています。
そこでLAXICでは教育移住を実践している方に取材を開始。前編記事では、3児を育て、千葉県から長野県に移住した内村智子さんにインタビューを行いました。

今回お話を伺ったのは、2022年に長野・大日向小への入学を目指し、移住を計画している桑原あやこさんです。お子さんが2~3歳の頃からオルタナティブ教育を視野に入れ、地方移住のために会社を辞めて独立した桑原さん。移住する頃には自身の不動産事業も軌道に乗るように、中長期スパンで動いています。「移住に興味があるけど仕事はどうする? お金は……?」そんな不安をお持ちの読者必見です!

前編「はコチラ

従順に生きてきた私が大人になって気づいた、
「私は一体どうしたい?」の問い

桑原あやこさん

編集部:お子さんが2~3歳の頃から既存の公教育ではない学校を考え始めたそうですが、その選択をした背景にはどんなことがあったのでしょうか?

 

桑原あやこさん(以下、敬称略。桑原):教育移住について、私自身に原体験はありません。私は公立小から中学受験をし、女子校に進学して短大までエスカレーターでした。卒業後の進路も、親の勧められるまま銀行に就職したのですが、25歳ぐらいの時にやっと自我が芽生え初めて転職を経験しました。そのころ、「いかに自分が親の敷いたレールに乗って、従順に生きて来たか」ということに気づいたのです。「自分はどうしたいんだろう……」と初めて考えたんです。

 

編集部:今の桑原さんはコミュニティの運営などにも携わっているとお聞きしていますし、とてもアクティブな方という印象です。なので、ちょっと驚いてしまいました……! ご自身が母親になったことでこれまでの人生経験を踏まえ、何か考えることがあったのでしょうか?

 

桑原:それもありますが、子どもが生まれて職場に育休復帰したときに先輩ママたちから「東京では幼稚園や小学校から受験するのがスタンダードだよ」と言われたことが大きいですね。私も夫も地方出身なので、事情が分からない上に、生まれてすぐ受験のことを考える感覚が理解できなくて…… そこで初めて子どもの育て方や教育方針について考えるようになり、「とにかくのびのびと、子ども自身が自由に笑顔で過ごせる環境を整えていこう」と決めました。

 

編集部:大きな方針が早い段階で決まったのですね。オルタナティブ教育との出会いは?

 

桑原:2019年に教育や社会、自分のキャリアに課題意識を持った母親たちと出会い、「母親アップデート」というコミュニティに参加しました。そこではこれまでの自分の働き方や生き方、人生そのものの考え方など、固定観念が一気に崩れるぐらい、衝撃的な出会いがたくさんありました。

新しい価値観に触れる中で、自分自身が抱いていた公教育に対する違和感に気づき、それを解決してくれそうな解の一つに「オルタナティブ教育」がありました。ちょうど、コミュニティ主催で教育ジャーナリスト・おおたとしまささんの「世界7大教育法に学ぶ 才能あふれる子の育て方」勉強会が開催されたので、そこへ参加し、わが家の教育移住計画が一気に進みました。

 

編集部:公教育に対する、違和感というのは?

 

桑原:これからの時代に生きていく子どもたちが、果たして今の変わらない公教育を受けていて、未来は明るいのかな……? と。公教育を否定するつもりは全くないのですが、自分たちが望む教育は、自分で考える力や表現できる力、選択する力を育める子ども主体の教育だったのです。そう考えていた時に長野に日本初のイエナプランを用いた小学校ができると聞いて、これは、おもしろそうだなと。ほかの地方のオルタナティブ教育も調べましたが、結婚式も長野であげて以来、毎年訪れる土地だったので愛着もありましたし、教育基本法に則った一条校(※)であるという点も大日向小学校を選んだ一つの要素でしたね。

(※)学校教育法(昭和22年法律第26号)の第1条に掲げられている教育施設の種類およびその教育施設の通称で「学校教育」。ここに該当しないホームスクールやインターナショナルスクール、オルタナティブスクール、フリースクールなどは「自由教育」と呼ばれる。

感覚的な妻と論理的な夫
夫婦お互いの強みを生かしたパートナーシップ

編集部:いろいろな要因が重なって大日向小を選ばれたのですね! 学校を見られた感想は?

 

桑原:2度ほど見学(コロナ後はリモートで)に行きました。時間割もないなかで、1~3年・4~6年という縦割りのクラス編成や、椅子の並び方や黒板のない教室、壁のない教員室を目の当たりにすると、学校の方針と物理的なところが合致していておもしろいな、と。

 

編集部:パートナーであるご主人との話はどのように話を進めましたか?

 

桑原:最初は私からの提案でしたが、私自身、物事を感覚的に大きく捉えるタイプなので、細かくは把握しておらず…… 一方、夫の方は本や資料を読み込み、丁寧に調べて、論理的に情報を集めて、いつも私にキャッチアップしてくれるので、勉強会には夫が参加し、私が感覚的に捉えたことを、論理的に裏付けてしてくれました。

 

編集部:夫婦でお互いの得意分野が生かされているのですね! 日頃のパートナーシップがうまくいっているからこそ、移住の話もスムーズかと思いますが、その辺りはいかがですか?

 

桑原:今は私以上に主体的に子育てしていますが、私が育休中は物理的に家にいるし、夫も仕事が忙しく帰りが遅かったので、子どもが3ヶ月ぐらいのときまでは完全に「お手伝い要員」でした。その状況を変えるため、夫は転職をし、共働き夫婦のためのセミナーに夫婦で参加しました。そこで、子育てしていく上で何を大切にするかを考え、最後にアクションとして発表することになりました。私は「自分ごと化」、夫は「情報共有」と発表したので、合わせて「夫婦で情報共有し、自分ごと化する」と夫婦の方針が決まりました。それから続けていて、もし馴れ合いになったな、と感じたときはその都度、話し合っています。

 

編集部:なるほど。馴れ合いにならない様、お互い注意しあって持続しているのが素晴らしいですね。

「教育」を起点に移住を考え始めたものの、
自分たちの働き方や生き方を考えるきっかけにつながった

長野に購入した戸建て住宅を家族でDIY。左がDIY中、右が完成後

編集部:ご主人はWeb系のお仕事なので仕事場所は融通が利きそうですが、桑原さんご自身は元々不動産系の会社員を辞め、移住のために起業したそうですね。

 

桑原:勤務していたのが不動産開発の会社で、このコロナ禍でさえ出勤しなければならないような体質の古い会社でした。移住に向けてひとまず辞めて、リモートでできる仕事をフリーランスで請け負いながら、夫と一緒に共同代表で不動産の賃貸業とWeb事業の会社を立ち上げました。そして、まず投資的な意味合いで長野に家を買い、運用をし始めようと。

 

編集部:え! もう家を購入されたのですか?

 

桑原:長野に移住する上で、戸建ての賃貸物件がなくて困り、「ないなら自分たちで作ろうか」と。住んでもいいし、賃貸にしてもいいし…… 移住者向けにあと何軒か進める予定です。また、母子移住も多いので、シェアハウスか何かも構想しています。

 

編集部:そういえば、前回でお話を伺った内村さんも「お金の不安を減らすために投資を始めた」とお話しされていました。

 

桑原:1年前から物件自体は見ていたのですが、そのときは確信が持てず、買えませんでした。でも、コロナになって世の中の人のマインドが変わったときに確信に変わり、4月に購入。コロナが世の中に良くも悪くもパラダイムシフトを起こし、地方に移住したい人にとっては追い風になっていますから。こうして移住を検討するときに、働いてお金を稼ぐ手段のほかに「お金に稼いでもらう仕組み」も検討すると余裕がでてきますよ。でも、大日向小の人気が上がってしまい、実は面接と抽選で合否が決まるのです。家とか買っているけど、入れないかもしれない(苦笑) もし入れなかったら1年後、また再チャレンジします。

 

編集部:家まで買っちゃっているのに……!? そんな状況なのですね。ちなみに娘さんは?

 

桑原:長野の家で11月までDIYしていたのでこちらにも家があるのはわかっているし、こちらにも友達がいるので楽しい場所とは思っています。とはいえ「今の保育園のお友達が行く学校に行きたい」とも言い出すので…… とりあえず選択肢を用意して、やってみてダメだったら違う方向に動けるように、準備だけはしておこうと。何ごとにも「正解」はないと思いますし、その選択した「解」を正しく導いていく中で、戻ったり、やめたり、進めたり、柔軟性を持つことが大切だと思っています。

 

編集部:柔軟性は大事ですね。それにしても教育への決断が早かったからこそ、仕事や生き方をどうするか考えて、試せる時間があるのですね。

 

桑原:そうですね。「既存の教育じゃない」と決まったから、それに対して「親の私たちはどうする?」と、働き方や生き方を真剣に考えるきっかけになりました。 子どもには「生きる力をつけさせたい!」と言いながら、いざ「自分は?」と問うたときに「あ! 自分が一番生きる力弱い!」と焦りましたから(苦笑)

将来の長野移住に向けて
ズバリ、不安材料と安心材料は?

編集部:移住するにあたって、不安要素や一番のネックは?

 

桑原:それが…… 寒さなんですよね。雪が降らない寒さ、それだけが怖いです(苦笑) あとは車の運転。かろうじて地方なら頑張れるかな…… 程度のドライバー歴なので。

 

編集部:そういう生活環境の不安もありますね。逆に、安心材料は?

 

桑原:既に大日向小学校へ通われているご家族と何組かつながって、仲良くさせてもらっているので、知りたいことや不安なことはいつでも相談できる点です。学校自体、始まったばかりなので、どうしても子ども主体の環境を整えるために、親の関わりや考え方の擦り合わせが必要になってくると思います。

そういった中では、普通以上に対話が必要になると思いますが、そこは積極的に重ねていきたいです。自分たちも主体的にイエナプランを作っていきたい、というところで選んでいる部分もありますから。

 

編集部:お子さんが今後高校、大学に行く頃にはどういう進路をお考えでしょうか?

 

桑原:長野県は教育熱心な土地柄なので、どこにでも行く先はあると思うし、国内だけでなく海外も選択肢に入れて子どもが行きたいところへ行けばいいかと。

 

編集部:教育移住を少し考えているけど二の足を踏んでいる方に、何かアドバイスがあればぜひお願いします!

 

桑原:「自分がこうしたい」って思ったことを、「じゃあどうやってできるか」という発想で物事を考えたらいいのではないでしょうか? とにかく、自分たちにとって、何が大切かを一番に決めちゃう。選択肢はいくらでも出てくるし、なんとでも理由づけできますから。その選択肢が思いつかないなら「一緒に考えますよ!」と言いたいです。

 

編集部:今日は貴重なお話をありがとうございました!

考え始めたタイミングも早く、時間をかけて仕事も住まいも移住準備をする桑原さん。まだ入学も決まっていない状態ですが、夫婦でビジネスチャンスと捉えて動いている姿も感心するばかり。その原動力となっているのは「子どもには生きる力をつけさせたい、と思うならまずは親である自分が実行」との考えから。働き方やビジネスも模索しながら、子どもに求めるだけでなく、自分で体現している辺りがすごく共感できました。地方移住することは生き方も働き方も選択肢が減ってしまうものだと勝手に思っていましたが、考え方次第ではこれまで以上に広がりができるのかもしれませんね。教育移住、いかがでしたでしょうか? また今後も、追っていきたいと思っています。

桑原あやこさんプロフィール
東京在住。夫と娘の3人暮らし。
20019年1月23日 経済メディア‪NewsPicksの「WEEKLYOCHIAI ー母親をアップデートせよー」の番組観覧をきっかけに「母親アップデートコミュニティ」に参加し、多様な女性の生き方・考え方に感化され、自分らしく生きる道を模索中。‬2020年5月、23年間の雇われ人生に終止符を打ち、夫婦で起業。フリーランスとして仕事を請けつつ、地域活性化をメインに長野県で賃貸不動産業を開始。夢は長野県に住み、大日向小学校へ娘を通わせ、東京へ月数回遊びや仕事で行くライフスタイル。
HP:母親アップデート

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:飯田 りえ

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