子どもたちが自分で道を選べる力を求めて長野・大日向小へ!
先駆者に聞く「教育移住」のリアル【前編】

ラシク・インタビューvol.183

TCS認定コーチ/MCS認定マザーズティーチャー 内村 智子さん

みなさんは、「教育移住」と聞いてどんなイメージがありますか? グローバル教育を求めて教育先進国へ移住すること? いえ、海外だけでなく、ここ数年、多様な教育環境を求めて地方へ移住するケースが増えているのです。

火付け役は、2019年に長野に開校した大日向小学校と、2020年に軽井沢に開校した風越学園の存在。コロナ禍でリモートワーク化が進み、働く場所に制限がなくなりつつある今、教育熱心なご家庭だけでなく、仕事も教育も、どちらも叶えられる「教育移住」にさらなる関心が高まりました。

とはいえ「家族で移住はちょっと…」と感じる方も多いのではないでしょうか。夫婦それぞれの仕事やお金の問題、将来のこと…… など、乗り越えるべき壁は山積。

そこでLAXICでは教育移住を果たした(or果たそうとしている)先駆者お二人にインタビュー。一回目となる今回は、千葉県から長野県に移住した内村智子さんにお話を伺いました。現在7歳、4歳児、2歳になるお子さんのママである内村さん。当初は「教育のために移住なんて」と思っていたそうですが、なんと準備期間10ヶ月で実現。そんな内村さんはどのように壁を乗り越え、家族揃っての移住したのでしょうか?

移住実現に至るまでの道のりや移住後の子ども変化について語っていただきました。

子どもの「考える力」を育みたいから、場所にこだわらず「移住」を決めた

内村智子さん。「移住をしたいけどできない…… と悩む人にコーチングの力と自分の経験からサポートしたい」と話してくれました。

編集部:内村さんは、どのような経緯でいつ頃から教育移住を考え始めたのでしょうか?

 

内村智子さん(以下、敬称略。内村):実際に考え始めたのは、2019年の夏頃、長女が年長の頃でした。以前から、地元の小学校に通わせている方の話を聞いていると、毎日宿題や習い事に追われていて、とにかく忙しい印象で。そこが少し引っかかっていました。

というのも、私はMCS認定マザーズティーチャーとして豊かな親子関係を築くためのお手伝いをしているのですが、その中で「子どもの心を育む」と「子どもの主体性を伸ばす」という2点が大事だとお話しています。これはそのまま我が家の教育方針にもなっていまして、子ども自身が自ら考え抜いて決断してほしいと考えています。

 

編集部:これから予測不能な時代を生きていく子どもたちにとって、既存の公教育だけが答えではないですからね。

 

内村:そうなんです。「学校へ行く意味は何だろう、何のために勉強するのだろう」と考えていた時に、長野県にある大日向小学校の存在を知りました。オルタナティブ教育(※)の1つに「イエナプラン」という教育法があるのですが、大日向小学校は日本初のイエナプランスクール認定校として開校しました。「自分自身の関心から生まれる問いに基づき自発的に学ぶこと」「児童が自分の特性を活かしながら学ぶこと」などを教育理念に掲げています。

(※)これまでの伝統や主流とされてきたものとは異なり、子どもの自主性を尊重する教育手法。「第3の学校」「第3の選択肢の学校」と呼ばれることもあり、子どもに寄り添った教育内容で「探究型」「少人数制」「年齢が異なる生徒が同じクラス」「教職員はサポート役」などが特徴。

 

その教育方法が、まさに我が家の大切にしていることと合致したんです。でも、最初は「長野だし、通うのは無理だな」とも思っていて。そんな時、コーチング仲間に大日向小学校1期生として入学された方がいたのですが、ご家族で引っ越されたと聞いて。そこで初めて「移住」というのが選択肢が入ってきました。

 

編集部:身近に移住された方がいたのは大きいですね!

 

内村:そうですね。知人でなければ「(スキルや経済的な面で)特別な人なんだ」で終わっていたでしょうね。その方が2019年7月に都内で「移住シェア会」を開催してくださり、大日向小学校や長野での生活の様子を聞いて「もう、早く行きたい!」と俄然やる気が沸いてしまって(笑) その後、9月に現地を訪れて学校と市内を案内してもらい、そこで生活のイメージが湧きました。

 

編集部:お子さんも移住に前向きだったのですか?

 

内村:娘には学校見学会に参加した後、「千葉の学校に行くこともできるし、長野に行くこともできるよ」と話をしました。すると「楽しかったから、行ってみたい。でも、千葉のお友だちと離れるのはさみしいな」と本音をポロリ。でも、初めてのお友だちや先生とも楽しそうに遊んでいる様子を私も見ていたので、「きっとこの小学校なら、娘は楽しめるだろうな」と不安はありませんでした。

 

編集部:最終的に決断したのはいつ頃?

 

内村:10月の説明会の後に、夫が「よし! 申し込もう」と。たとえ、大日向にご縁がなくても、長野に引っ越す気持ちで進めていました。11月に申し込み、面談をして11月下旬に合格の連絡をいただきました。

 

編集部:ご縁があってよかったです……! ちなみに、学校における移住者はどのくらいいらっしゃるのでしょう?

 

内村:児童の約8割が移住者と聞いています。首都圏が多いですが、北海道から九州まで、各地から来られています。

 

編集部:8割ですか……! 今後リモートワークも広まる中、居住地にこだわらず、教育の独自性で日本各地から学校を選ぶご家庭が、ますます増えそうですね。

キャリア、住居、そして経済的な不安…… 夫婦で「どうすれば実現できる?」を合言葉に立ちはだかる壁を突破

冠雪した雄大な浅間山を見にお隣の御代田町へ。冷えた空気も心地よくって…思わず大ジャンプ!

編集部:ちなみに、パートナーとの相談はスムーズでしたか?

 

内村:最初、夫は乗り気ではありませんでした。というのも、夫は会社員でしたし「長野は大好きだけど、仕事があるから無理だね」と。しかし、現地に出向いて学校の様子を見た時に、心が動いたようです。

そこからまずは、「夫が会社員のまま移住できる方法」を考えました。「平日は千葉から通勤して、週末は長野への二拠点生活」とか「新幹線で東京に通勤する」など、いろんな選択肢を出し考えました。他にもリモートワーク、変動時間労働など、あらゆる可能性を探っていきました。「無理」と言ったらそこで終わり、「まだ手はあるはず」と心の中で唱え続けました。

 

編集部:日頃から、ご主人とはよく対話を?

 

内村:今何を頑張っているか、3年後・5年後、自分がどうありたいか、夫婦・家族がどうありたいか、イメージを共有する時間は意識的にとるようにしています。去年は月一回「夫婦の会」を作り、ランチをしながら外で話をする機会を持ちました。

 

編集部:そういう時間の積み重ねが、前向きな相談につながるのですね。ちなみに、千葉のご自宅はどうされましたか?

 

内村:当時住んでいたマンションは売る準備を進めていたので、大日向小学校への入学が決まったらすぐに売り出しました。とにかく、マンションのローンと移住先の家賃が二重になることだけは避けたかったのですが、移住直前には無事に売れてほっとしました……

 

編集部:それはドキドキしますね。でも売れてよかったです…!移住先の住居はどうされました?

 

内村:2月の新入生説明会の時に探し始めたので、物件も限られていて。今は2LDKと5人家族にとっては狭いのですが、とりあえずこちらに住みながら、また物件を探していこうかと。学校へは車で30分ほどかかりますが、スクールバスがあるので問題ありません。

 

編集部:移住を決断するにあたり、最大のネックは?

 

内村:一番のネックは経済的な問題でした。でも夫婦で話し合ううちに、「新幹線定期代の負担は経済的に大変かもしれない。じゃあ、お金の不安を減らすために何をしよう」と考え、投資を始めました。お金を増やすしくみを作ったのです。「お金がない、どうしよう」と停滞するのではなく「何ができるかを考える」。これがまさに私が提供しているコーチングの考え方なのです。夫婦で話し合う時も、「どうすれば実現できる?」からスタートして、いろいろな問題に道筋を立てていきました。

 

編集部:不安で終わらせるのではなく「どうすれば突破できるのか」を考えて、まずは小さな一歩を踏み出すことがポイントですね。

給食の食器も自分で決める!? 「小さな選択」の連続で確実に育つ「決める力」

大日向小の学校ごはんの様子。食器の色、ごはんの量、飲み物、食べる場所まで…全て自分で決めていきます。

編集部:実際に学校の様子はいかがですか?

 

内村:とにかく、自分で選択していかないと何も進まない学校なのです。まず、時間割がないので、何をするかは自分で決めます。クラスは1~3年が同じ縦割りで、1週間単位でのゴールは決まっていますが、やり方・やりたいことはバラバラですので、教職員は大変だと思います。授業だけでなく生活の中の小さな選択でさえも「自分がどうしたいか」が問われるので、たとえば、お昼の食器の色も自分で決めて、ご飯の量も「少ない・普通・多め」を自分で決める。とにかく選択の連続なので、子どもたちにとっても大変だと思います。ただ、困った時には先生が「あなたはどうしたいの?」と声をかけてくれ、その子の考えを必ず尊重し、導いてくださるのです。

 

編集部:子どもの主体性を引き出してくださるのですね。

 

内村:「主体的である」というのは、子どもだけじゃなく、保護者も教職員も、みんなに言えることなのです。教職員も「イエナプランという理想郷があるわけではない」とおっしゃっていますので、子どもたちにとってよりよい環境を作るために、親である私たちも主体的に動いていかなければならないと思っています。

 

編集部:その共通認識は大事ですね……! 実際にお子さんの変化は?

 

内村:子どもたちは外で遊ぶ機会も増えたし、虫を捕まえたり、友達との時間、やりたいことをのびのびとしています。下の子どもたちの保育園ではイナゴを捕まえたり、りんご狩をしたりと自然の中で学んでいます。

長女も小学校はとにかく楽しそうだし、宿題はないけれども、自分の中で「やりたい、知りたい」を見つけて学んでいますね。最近はピーマンについてヘタの数や苦味の秘密など…自分で探求していました。また、先日、まだ1年生なのに3年生の算数のドリルを自分で選んで買ってきて、一生懸命に取り組んでいました。もちろん答えは間違っている部分もあるんですが、娘自身がこのドリルに取り組もうと考えたこと、数あるドリルの中から娘なりに考えてこのドリルに決めたことなど、娘が自ら「考えて決めた」ということを大事にしたいと思って見守っていました。

 

編集部:1年生にして探究心がものすごく芽生えていますね!

既存にとらわれず、自分の「これやりたい!」を見つけて生きてほしい

自宅からすぐの田んぼでカエル探し。最初は怖がっていた長男くんも、今やカエル探しの名人だとか!

編集部:大日向小学校は中学校までは併設されていますが、その後の進路はどうお考えですか?

 

内村:本当に考えていなくて…。長野の高校に通うかもしれないし、違う高校をオンラインで受けられるかもしれない。これから、もっと選択肢も増えていくと思いますし、その時の子ども達のやりたいことを尊重し、親は応援する存在でありたいな、と思います。日本には受験というシステムがあるので、それに対しての取り組みも必要な時があるかもしれませんが…、ただ、教科学習で良い点数を取ることだけが果たしてゴールなのか。生きていくためには自分の考えを伝える力とか何かを決断し、選択する力が重要ですよね。それは、家庭や学校の中で日々養われていくものなのでそこを大事にしたいと思っています。

 

編集部:学校だけでなく家庭の中、というのも大切ですね。

 

内村:私自身、就職活動中に「私は何がしたいんだろう?」と悩んだ経験があります。それまで「自分は何がしたいのか」を真剣に考えたこともなかったから、いきなりそんなこと考えようとしても、どう考えていいのかわからず随分苦労しました。100社くらい落ち挫折しました。だから子どもたちには自分が何をしたいと考えているのか、「自分で考えて決める」力を身に付けてほしいと思っています。どんな道であれ、子どもたちの決断を尊重し、応援できる存在でありたいなと思います。

 

編集部:まさに、今日のインタビューはコーチングを受けているような気分でした。貴重なお話、ありがとうございました!

リモートワークになりどこでも働けるようになった今、家庭の環境や家族の時間を見直す人が増えていると思います。しかし、これまでの概念を捨て、変化することは誰しも不安なことが多いのも事実。でも内村さんのように、まずは実際に行動してみて「その変化を感じる」ことが大切だな、と思いました。その変化が心地よければ、不安に思っていることや難しいと思っていることの解決策を考えていけるようになるのですね。いきなり「移住」と考えるとプレッシャーが大きいですが、「まずは人に話を聞いてみる」「実際に足を運んで見学してみる」、この積み重ねが、結果に繋がるのだと改めて思いました。パートナーの考えもありますので、日頃からお互いの気持ちをシェアしておくことも大切ですね。

内村 智子さんプロフィール
「ライフステージが変わっても未来は自由にデザインできる」をモットーに、コーチングを通じて子育て中のママをサポート。TCS認定コーチ/MCS認定マザーズティーチャー。3児の母。
HP:内村智子さんブログ

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:飯田 りえ

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