乳がんの経験をバネに起業した女性に学ぶ、
本当にやりたいことを仕事にする方法【後編】

ラシク・インタビューvol.172

下着屋Clove 代表 ボーマン 三枝さん

経営コンサルタント 吉野 太佳子さん

前編では、乳がん経験者に向けた下着の開発・販売を行うボーマン三枝さんに、若年性乳がんに罹患してからの生活や出産までのお話を中心にお聞きしました。20歳くらいから漠然と起業に興味があったボーマンさんが、乳がんを経験したことで使命感に駆られるように「乳がん経験者向けの下着を作ろう! 起業しよう!」と奮起する姿にとてもパワーをもらいました。

今回、後編では、そんなボーマンさんの起業をサポートした、経営コンサルタントの吉野太佳子さんに女性ならではの起業スタイルやについてお聞きしました。

前編はこちら

「やりたいことで起業する女性」と「できることで起業する男性」

ボーマンさんが出展したイベントの展示ブース。さまざまな人との出会いの場に。

編集部:吉野さんは女性の起業支援をなさっていて、起業における男女の違いなど感じることはありますか?

 

吉野 太佳子さん(以下、敬称略。吉野):女性は「やりたいことで起業する」人が多く、男性は「できることで起業する」人が多いのかなと感じますね。特に女性は仕事としては全くの未経験というジャンルでも起業しようとすることがよくあります。趣味でやっていたことを本格的な事業にしたいというケースなんかがそうですね。本業としての仕事がある一方で趣味を極めていらっしゃる方の中には、趣味でやっていることで食べていけるメドが立てば起業したいという方もいらっしゃいます。

 

編集部:趣味でやっていたけど、ビジネスになるかも? といった流れは確かに多いかもしれないですね。男性のようにいきなり会社を作ったり多額の資金調達をしたり…… と大きく始めるよりも、自分のスキルを原資に小さく事業を始める“プチ起業”も女性ならではのスタイルなのかな? と思います。

 

吉野:そうですね。ただ、女性の場合はそうしてミニマムに始めるケースもあるぶん、なんでも自分でやろうとして頑張り過ぎてしまう印象もあります。

 

編集部:というと?

 

吉野:女性には「プロにお金を支払って仕事を依頼する」という考えが割と出てこないなと感じます。

 

編集部:確かにそうかも…… 起業する=自分ですべてやるというイメージが強いのでしょうか。

 

吉野:ベースにあるのは女性特有のコスト感覚かなと思います。生活者として日常的に家計のやりくりをしていたり、消費者としての感覚を持ちすぎているのかもしれません。その感覚のままビジネスをすると、「外注する」という考えが少なくなるのかなと思います。

 

編集部:人を頼ったり、あるいは巻き込む力も必要なスキルですよね。そういう意味では、ボーマンさんは、起業家としての素養がバランスよく揃っていたのでしょうね。

 

ボーマン 三枝さん(以下、敬称略。ボーマン):私は“手縫い”ができないので、メーカーさんが見つからないとそもそも起業なんて無理! って思っていました。なので自分のやりたいことに対して共感してご一緒してくれるメーカーさんが見つかったのは本当に嬉しかったです。

 

編集部:なるほど。自分にできないことはコストを支払ってでも頼る姿勢は大事ですね! ちなみに、吉野さん、起業において逆に女性だからできる、という強みはどんなところだと思いますか?

 

吉野:女性は着眼点、視点がユニークだなと感じますね。自分が生活している中で必要性に気づく、そして色々な人に相談し、周囲を巻き込む力が強い。自分の中であたためていくというよりも、周りをどんどん巻き込んで具体化して力を発揮する、そういう女性が非常に多いと感じています。

 

編集部:そういう意味でも、ボーマンさんの事業がどんどん加速するのは行動力の賜物ですよね。

 

吉野:ボーマンさんは、とにかく走っていますからね(笑) 走っているという言い方はおかしいかもしれないけど、とにかくトライしてますよね。

走り抜ける! だって「私の人生」だから

ハワイでビーチヨガ体験。喜ぶボーマンさんとは裏腹に退屈そうな娘さん

編集部:ボーマンさんがそんなふうに走り続けられるのは背中を押してくれるパートナーの存在が大きいと思うのですが、いかがですか?

 

ボーマン:そうですね。身近な人が応援してくれるってすごく力になるし、本当にありがたいことだと思っています。ちなみに、夫はひとつの企業に長く勤務するのが大事などと考えるタイプではないこともあり、私の起業に関しても最初からとても応援してくれました。

 

吉野:治療や日常生活のケアはもちろん、育児も当たり前のようになさっていて素晴らしいパートナーですよね。

 

編集部:ボーマンさん一家は今、埼玉から再び岡山に戻られて1年半とのことですが、岡山では仕事のほかにも乳がん患者さんたちのサポート活動も行っていらっしゃるんですよね。

 

ボーマン:はい。岡山には若年性がんの会がなかったので、必要性を感じて「AYA Can!!」という団体を立ち上げました。がん種や性別を問わず、AYA世代でがんが見つかった“AYA世代がんサバイバー”ならどなたでも参加ができます。20代や30代でがんを患うということは、若い年代だからこその悩みもあります。たとえば恋人との関係もそうです。治療と働くことの両立とか、妊娠出産のこととか、知りたいけれど、どこにも書いていなかったような色々なことを発信し、伝える活動をしています。それは、私自身が30代で乳がんを患ったとき「知りたかった」ことだからです。

 

編集部:乳がんという辛い経験をしながら、起業し成功したボーマンさんの気力と意欲には本当に感服しました。最後に、読者の皆さんへのアドバイスと、それから今後の展望をお聞かせいただけますか?

 

ボーマン:がんは今やふたりにひとりはかかる病です。若い人でもかかることはあり得ます。がんが見つかった時に「まさか! どうして私が……」となってしまわないよう、次の3つについて、常に考えていてほしいです。ひとつは、「働き方」、二つ目は「妊孕性(にんようせい)=妊娠するための力」、三つ目は「お金」です。

たとえば、お金のことでいえば10代や20代で医療保険などに加入している人は少ないと思うのですが、治療費はもちろん、生きていくにはお金がかかります。保険に入らないというポリシーがあるなら別ですが、なんとなく入っていないなら、ぜひ考えてほしいです。

保険は健康な時でなければ加入が難しいです。私のように、がんが見つかった後に子どもを授かったケースでは“守りたいもの”ができても保険に加入ができず、経済的な不安が残ってしまう場合があります。

今はまだできなくても、「やりたいこと」をイメージし続けよう

編集部:ボーマンさん、吉野さん、本日はとても貴重なお話をありがとうございました。最後に、それぞれ、ご自身の今後のことやLAXIC読者へのアドバイスをお願いします!

 

ボーマン:今後はもっと幅広い方のサポートをしたいと思っています。具体的には、子宮がんとか子宮頸がんの治療で後遺症が残ってしまった方のための下着、尿漏れショーツの開発をしています。そもそも「尿漏れショーツ」という名前もどうかと思いますし、だいたい女性の4人にひとりは尿漏れに悩んでいると言われているので、そんな方々を応援できるような下着を作りたいなと思っています。また、働き方と言う面では、 がんに対するアンコンシャス・バイアスをなくし、“がん退職”をゼロにする働きかけをもっともっと企業側にしていきたいと考えています。

 

編集部:吉野さんはいかがでしょうか。吉野さんも母であり働く女性のひとりですが、読者へのメッセージをぜひお願いします。

 

吉野:毎日、お母さんは忙しいですよね。自分の時間もなかなか持てない中で頑張っていらっしゃいます。そうした中でも、5年後、10年後を考える機会をぜひ持って頂きたいです。いずれ子どもは成長します。今すぐ動けなくても、将来こんなことをやりたいと考える時間をまず持ってみませんか、と伝えたいですね。

 

編集部:ボーマンさん、吉野さん、ありがとうございました。

前後編でお送りした今回の企画。何かに向かって命を輝かせて走る人の美しさと強さを改めて感じました。働き方が多様化する中で、副業をしたり「自分が本当にやりたいこと」を模索しながら過ごす方も増えてきましたね。ボーマンさんも起業は初めてでしたが、持ち前の行動力を生かしつつ上手に他者を活用しているなと感じました。周りの人や専門家の力を借りることで「やりたい!」という想いは確実にカタチになるのだと思います。

ボーマン 三枝さんプロフィール
下着屋Clove代表、若年性がんサポートグループ「AYA Can!!」代表
2013年、イギリス人の夫との結婚直後に乳がんが見つかり、右胸を全摘出。デザイン、胸への配慮、乳がん治療の副作用“ホットフラッシュ”(突然の発汗・ほてり・のぼせなど不快症状)への対策、これら3つに対応する乳がん下着がないことに気づき、自分でつくろうと決意し2016年に起業。工場探しからスタートして、タンクトップ型の下着「kimihug®(キミハグ)」を開発。生地とデザイン、優しく胸を支える上品なレースなどにこだわった。2017年、オンラインショップ「下着屋Clove」をオープン。企業、団体へ向けたがん啓発活動も行う。2児の母。
HP:下着屋Clove
吉野 太佳子さんプロフィール
株式会社アイコンテンツ代表取締役
中小企業診断士、MBA、上級ウェブ解析士
マーケティング、ブランディング、社内情報化にオフィス改革のあり方など、ネット活用を中心としたコンテンツを企画・運用する仕事に20年超経験し、「このノウハウを経営者の役に立たせたい」という思いで、経営コンサルタントとして独立。中小企業の付加価値の増大を図る「Web×ブランディング」の専門家として経営者を支援する。
特定非営利活動法人 東京都中央区中小企業経営支援センター理事
独立行政法人 中小企業基盤整備機構 中小企業支援アドバイザー
東京都よろず支援拠点 コーディネーター
公益財団法人 埼玉県産業振興公社 創業ベンチャー支援センター埼玉 女性起業支援ルーム『COCOオフィス』アドバイザー
HP:株式会社アイコンテンツ

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:大橋 礼(文)小山 佐知子(インタビュー)

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