私の人生は私にしか決められない!
結婚3ヶ月で乳がんになった女性が妊娠と起業を決意するまで【前編】

ラシク・インタビューvol.172

下着屋Clove 代表 ボーマン 三枝さん

経営コンサルタント 吉野 太佳子さん

「失ったものもあるけれど、“乳がん” はたくさんの出会い、そして“自分らしい生き方”と向き合うきっかけをくれた」

そう話すのは、乳がん経験者に向けた下着の開発・販売を行うボーマン三枝さんです。イギリス出身のパートナーと、2人の娘さんと岡山県で暮らすボーマンさんは、結婚3ヶ月だった31歳のときに乳がんに罹患しました。まさにこれからが新しい人生のスタートという矢先に起こった突然の病気でしたが、ボーマンさんは持ち前のパワフルさでがんと向き合いながら妊娠・出産に向けて取り組み、さらにゼロから起業にも挑戦してきました。手術、乳房再建を経て現在お腹に3人目の赤ちゃんを宿すボーマンさんに、自分らしく生きるヒントを伺いました。
 
今回は、ボーマンさんの起業をサポートした、経営コンサルタントの吉野太佳子さんにも同席いただき、初めての起業に挑んだボーマンさんの印象についてお聞きしました。

結婚と同時に若年性乳がんに。この先、私は子どもを産めるの……?

オンラインにて取材。左下がボーマンさん、左上が吉野さん、右上がLAXIC編集長小山

編集部:ボーマンさんが初めて乳がんに気づいたのはどのタイミングでしたか? 検診だったでしょうか?

 

ボーマン三枝さん(以下、敬称略。ボーマン):たまたまお風呂で体を洗っているときに小指の先くらいのしこりに気づいたのがきっかけです。日ごろからセルフチェックをしていたわけでもないので本当に偶然ですね。ちなみに乳がんの公的な検診は40歳からということもあり、検診は受けていませんでした。

 

編集部:なるほど…… たまたましこりのある部分に触れたのですね。

 

ボーマン:そうなんです、たまたまでした。ちなみに、15歳から39歳くらいまでの世代をAYA(アヤ)世代といいますが、まだ若いAYA世代の方でも乳がん罹患リスクはゼロではありません。生理が終わって一週間前後など、毎月1回日にちを決めて胸に触れセルフチェックをしてみて下さい。

 

編集部:ボーマンさんはしこりに気づいて病院へ行き、結果はすぐにわかったのでしょうか?

 

ボーマン:それが、すぐには結果がでませんでした。半年に1回の様子観察を繰り返している間、ずっとがんは見つからなくて…… 結婚して岡山県から埼玉県へ引っ越しをし、病院をかえたタイミングで告知を受けました。

 

編集部:ご結婚されてすぐのタイミングで、驚いたことでしょうね。

 

ボーマン:ショックでしたが、幸い早期発見で治療さえすれば命に別状はなさそうだとわかりました。そしてすぐに思ったのが妊孕性(にんようせい=妊娠するための力)のことでした。乳がんになった私は今後、母親になれるのだろうかと。そこで先生に、「私は妊娠して子どもを産めますか」と聞いたのですが、答えはNOでした。「ダメダメ、子どもに何らかの問題が生じる可能性が高いから」と言われたことが、ある意味乳がん告知以上に一番ショックでした。

 

編集部:結婚してすぐの30代で、妊娠、出産について完全に否定されてしまうのは大変なショックですよね。

 

ボーマン:よく話を聞いてみると、初期の乳がんであっても「5年から10年の間はホルモン療法が必要になるから、その間は妊娠を控えなさい」ということのようでした。私は「ホルモン療法を受けることでどれくらいがんの転移や再発が防げるのか」と考えて、主治医はもちろん、夫ともたくさん話し合いました。将来、乳がんが再発してしまう可能性と、長期にわたるホルモン療法による妊孕性の低下(加齢によって妊娠するための力が下がってしまうこと)とを考えると簡単には決断できませんでした。

 

編集部:お医者さんから「出産はダメ」と言われても鵜呑みにはしなかったんですね。

 

ボーマン:お医者さんは基本的に乳がんをやっつけるプロですから、乳がんを完治させたり再発したりしないようにする方法を一番に考えるのは当然ですよね。でも、私の人生をどう生きたいかは私にしかわからないことです。だから、私はこうありたい、こう生きていきたい、今の病状と今後の経過を考えるとどうするべきなのか、と、たくさん先生と話し合いました。

 

編集部:すばらしいですね。ちなみに、パートナーとの温度差や意見の食い違いはなかったのですか? 

 

ボーマン:夫はすべて私の気持ちを尊重してくれました。治療は乳がんに関しては手術だけ、薬の治療はしないというのは手術の後の病理検査の結果を受けて決めました。この判断が本当に正しいのか今でも分かりませんが、しっかり考えて納得した上で選択した事なので後悔はありません。

欲しい下着がないなら自分でつくろう!
乳がんを患ったからこそ「起業」への意欲がわいた

商品名の「Kimihug®(キミハグ)」は“ありのままのあなたをいちばん近くで抱きしめる”と言う意味を込めて名付けたそう。

編集部:20代や30代で乳がんだとわかり手術をしたら、なかなか前向きにはなれないと思います。ましてや起業という発想に向かないと思うのですが、ボーマンさんの進む力、モチベーションの源泉はどこにあったのでしょう?

 

ボーマン:20歳ごろから起業したいという気持ちはありました。でも「何がしたいのか」が見つからなかった。寝食忘れるほど打ち込めるものがなかったんです。就職をして10年は本当にガムシャラに働いてきて、結婚し人生の節目を迎えたタイミングで乳がんが見つかったのですが、胸がなくなると下着選びにこんなに困るのかと初めて知りました。その時に事業を興したいという思いがむくむくと起き上がってきたんです。

 

編集部:手術後に起業への意欲がわくなんてすごいですね!

 

ボーマン:これは私にしかできないという“うぬぼれ”もあったかもしれないですね。経験したからこそ患者目線でできることがある、よし下着を作ってみよう、起業しよう! と思ったら、一直線でした(笑)

 

編集部:最初から商品は下着と考えていたのですか?

ボーマン:そうですね。乳がんで手術を受けて日常生活で一番困ったのは下着だったので…… 乳がん経験者用の下着は主にネットで購入していたのですが、見た目が気に入って買っても着心地がよくないとか、サイズが少ないとか、好みのものがないとか、見た目が今ひとつとか、私にはなかなか気に入るものがありませんでした。そこで、「ないなら私が作ろう!」ということで起業しました

まずは動いてみよう!
起業も人生も「行動力」が大事

編集部:ボーマンさんにとって起業は初めての経験だったと思いますが、まずは何からスタートしたのでしょうか?

 

ボーマン:当時住んでいた埼玉県が開催していた女性のための起業スタートアップ塾に参加し、そこで起業や経営の基礎を学びました。その後、埼玉県の外郭団体が運営している会員制コワーキングスペース(女性起業支援ルーム・COCOオフィス)に入所しました。実はこの段階ではもうトライアルの下着もありパンフレットも作ろうとしていたのですが、それには住所も必要なので、COCOオフィスをいろいろな意味で活用しようと考えました。そこで出会ったのが経営コンサルタントの吉野先生でした。

 

編集部:吉野さんは、COCOオフィスに在籍されている起業女性のビジネス相談に乗っておられるとのことですが、最初にボーマンさんとお会いしたときの印象はいかがでしたか?

 

吉野 太佳子さん(以下、敬称略。吉野):非常に“前のめり”な感じでしたね(笑) 言葉も明確で、やる気満々といった印象でした。起業の相談にいらっしゃる方で「私はこんな事業をやります!」とアピールするタイプは実は少ないのです。思っていても最初のうちはなかなか口に出さない、出せない方が多い中、ボーマンさんはやりたいことが非常にハッキリしていたのがとても印象に残っています。

 

編集部:ハッキリ、というのは……?

 

吉野:やることが全部決まっていたことですね。販促などの相談で私のところへ来たときはすでに商品のサンプルも出来ていて「私、これでやっていくんです!」みたいな感じで。その当時はたしか二人目を妊娠していらしたのよね。

 

ボーマン:そうです、そうです。

 

吉野:「今のうちにやっておかないと赤ちゃんが出てきちゃうんです!」みたいな勢いで(笑) 私はさまざまな起業家の相談に乗っていますが、初回からもうサンプル商品ができあがっていて具体的な質問を受けることなんてめったにないですよ。

 

編集部:ちなみに、サンプルはご自身で作るわけではないですよね? メーカーさんはどうやって見つけたのですか?

 

ボーマン:当時は下着作りに関する情報を集めるためにネットで調べたり、人に会ったり、出かけたり、色々なことをしていました。片っ端から電話をかけたりもしましたが、断られてばかりで…… そんな時、「女性向けのイベントがあるよ」と教えていただき、そのイベントで素敵な下着を展示しているメーカーを見つけたんです! そこで私から声を掛け、訪問日を決め、商談に伺いました。

 

編集部:すごいバイタリティー! メーカーに出会うまでには苦労があったのですね。

 

ボーマン:以前の仕事で飛び込み営業も経験していたので(笑) ここでメーカーを探す事ができなければ下着づくりできない! と必死でした。

 

吉野:ボーマンさんは、「こんなところで足止めくらっているわけにはいかない!」、「下着を作ってくれるメーカーを見つけるのがゴールなわけじゃない、もっと先がある!」と非常に精力的に行動していました。何事も、やっぱり行動力ですね。

 

後編につづく。

吉野さんの言葉をお借りすれば、ボーマンさんは本当に風のように走る人です。新婚時代に乳がんという大きな試練に立ち向かいながら、ボーマンさんは後ろ向きにならず、自分の生き方を見つめ直し、もっとも欲しいものに迷いなく走っていった姿にパワーをもらいました。後編では、ボーマンさんの起業をサポートした吉野さんに、「女性と起業」についてお聞きします。

ボーマン 三枝さんプロフィール
下着屋Clove代表、若年性がんサポートグループ「AYA Can!!」代表
2013年、イギリス人の夫との結婚直後に乳がんが見つかり、右胸を全摘出。デザイン、胸への配慮、乳がん治療の副作用“ホットフラッシュ”(突然の発汗・ほてり・のぼせなど不快症状)への対策、これら3つに対応する乳がん下着がないことに気づき、自分でつくろうと決意し2016年に起業。工場探しからスタートして、タンクトップ型の下着「kimihug®(キミハグ)」を開発。生地とデザイン、優しく胸を支える上品なレースなどにこだわった。2017年、オンラインショップ「下着屋Clove」をオープン。企業、団体へ向けたがん啓発活動も行う。2児の母。
HP:下着屋Clove
吉野 太佳子さんプロフィール
株式会社アイコンテンツ代表取締役
中小企業診断士、MBA、上級ウェブ解析士
マーケティング、ブランディング、社内情報化にオフィス改革のあり方など、ネット活用を中心としたコンテンツを企画・運用する仕事に20年超経験し、「このノウハウを経営者の役に立たせたい」という思いで、経営コンサルタントとして独立。中小企業の付加価値の増大を図る「Web×ブランディング」の専門家として経営者を支援する。
特定非営利活動法人 東京都中央区中小企業経営支援センター理事
独立行政法人 中小企業基盤整備機構 中小企業支援アドバイザー
東京都よろず支援拠点 コーディネーター
公益財団法人 埼玉県産業振興公社 創業ベンチャー支援センター埼玉 女性起業支援ルーム『COCOオフィス』アドバイザー
HP:株式会社アイコンテンツ

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:大橋 礼(文)・小山 佐知子(インタビュー)

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