コロナ禍で加速する…… 「見えない貧困」を知っていますか?
NPOカタリバから学ぶ、”分断社会”を食い止める教育とは【前編】

ラシク・インタビューvol.169

認定特定非営利活動法人カタリバ代表理事 今村久美さん

連日、新型コロナウィルス関連の話題が続いています。第2波を思わせる感染拡大のニュースはもちろん、お盆の帰省や旅行といった夏休みの過ごし方についてもさまざまな意見が交わされています。一方でコロナ禍による経済的打撃から収入が減り、今まで通りの生活が厳しくなった方も…… そういった社会問題が巷に溢れているにも関わらず、『貧困』や『格差』といったテーマはどこか「ニュースの中の話」「自分には関係ない話題」と思われがち。本当にそうでしょうか?

私たちの日常のあらゆる面でこれまでの常識や当たり前が大きく変わり、様々な影響を受けはじめています。先の見えない状況下で、貧困というテーマは決して遠い世界の話ではなくなっているのではないでしょうか?

そんな想いを胸に、今回、編集部は認定特定非営利活動法人カタリバを訪ねました。カタリバは、どんな環境に生まれ育っても未来をつくりだす力を育める社会を目指して活動する教育NPO。貧困家庭や過疎地、被災地などに向けて20年に渡り、子どもたちへ居場所や学びを届け続けています。

今回のコロナ禍では、2月末に一斉休校要請が出された4日後には『カタリバ オンライン』を開設。学校に通えなくなった全国の子どもたちに対して、安心・安全な居場所や学習機会をオンライン上で展開されました。その後、生活困窮世帯に向けて「あの子にまなびをつなぐ」プロジェクトを立ち上げ、ただ今、大規模なクラウドファンディングに挑戦されています。

今回、代表理事の今村久美さんに、現代の日本における貧困というテーマから、カタリバの活動についてお話を伺いました。前後編でお伝えします!

学校にいけないけど集まろう【カタリバオンライン】
クラウドファンディング【あの子にまなびをつなぐプロジェクト】
 ※2020年8月31日までREADYFORで寄付を募集中

パソコンとWIFI環境がない=学べない・居場所もない子どもたちがいること

編集部:読者の中には「貧困」という言葉を日々、身近に感じている人はそう多くないかもしれません。一方で、コロナ禍でこれまでのように「当たり前に働けなくなった」「将来の見通しが立たなくなった」と言う声も多く、自身のキャリアや働き方を含め、経済的なことにも危機感を覚えた人も多いようです。

 

NPO法人カタリバ 今村久美代表(以下、敬称略。今村):もともと、日本では子どもの7人に1人、ひとり親世帯においては2人に1人が「相対的貧困」、いわゆる「見えない貧困」と言われています。つまり、国の水準の中で大多数よりも貧しい状態にある人が、それだけいる社会なのです。こうした苦しい家庭は雇用状態も安定していませんし、今回の状況でさらに苦しくなる一方です。しかし、この様な予測不能な事態が起こってしまうと、決して、他人事ではありませんし、ましてや、ひとり親になる可能性は誰にでもあり得ます。

 

編集部:ひとり親家庭は2人に1人……?! そんなに多いのですか……! 全然知りませんでした。貧困と聞くと、もっと目に見えてわかるものだと思っていました。

 

今村:「見えにくい」「分かりにくい」というのは、ある意味、日本の貧困対策がうまく機能している証拠でもあります。生活保護制度は憲法にある「健康で文化的な最低限度な暮らし」に基づいて存在しているので、イメージするような、見るからに貧しい状態ではありません。スマホさえあれば身の回りのものや洋服も、メルカリで買えますから。

 

編集部:だから、実態が分かりにくいのですね。

 

今村:3人の子育てをしながら必死に頑張っておられるシングルマザーの方にお話を聞くと、「子ども食堂などにも行きたくない」とおっしゃいます。自分の置かれている状況を知られたくないし、惨めな思いをしたくないからだそうです。置かれている状況が周囲にわからないのは、尊厳を守ることにもつながっているのです。私たちも「尊厳を大切にする」と言うことは常に意識して、支援活動を続けています。

 

編集部:そうなのですね…… 尊厳を守りつつ、支援の輪を広げるのは、なかなか難しそうですが……

 

今村:そうなのです。助けを必要としている人にたどり着かない危機感もありますし、また、表面化しないことで、社会的には認識されず「貧困=遠い世界の話」とされてしまう側面も。

 

編集部:恥ずかしながら、私もそう思っていました。

 

今村:多くの方が、日本で起きていることだと思っていません。被災地や災害支援などに対してはみなさん理解も早く、疑問を持つことなく支援してくださるのですが、子どもの貧困に対しては、家庭の中に隠れているので非常に理解されにくいです。

今回の『あの子にまなびをつなぐ』プロジェクトは、貧困の連鎖を止めるため、パソコンやWIFI環境を無償貸与し、オンラインで面談をしながらAI教材などを使って学習支援していくプロジェクトです。おかげさまで、多くの方に賛同いただいていますが、中には「貧困=サボっている」というような誤認もあり、「(サボっている家に)贅沢品を与えるなんて……!」という意見もあるぐらいですから。

 

編集部:そんな声もあるのですね…… 実際に教育にはどのぐらい違いがあるのでしょう?

今村:子どもにかけられる学校外教育費を世帯年収別で比較すると、400万円未満家庭と800万以上家庭では、かけられる教育費が3倍以上違います。ですから、このコロナ禍で学校に行けなくなり、オンライン学習にシフトできたとしても家にはお母さんのスマホ1台しかない…… そんな状況で子どもの学習にはなかなかつながらないですし、そのためにデバイスを買い揃えることなんてできないのです。

 

編集部:なるほど、実態が少しずつつかめてきました……

やっと浸透し始めたオンライン学習も、当たり前に学べるわけではない

編集部:2月末の休校要請の後、全国の子どもたちに向けてすぐ「カタリバオンライン」で居場所や学習機会を提供してこられました。その時に、「オンライン上に入ってこられない子どもたちがいる」という課題が浮き彫りになったそうですね。

 

今村:そうなのです。オンライン上に入るには、まずはPCやタブレットなどのデバイスとネットワーク環境が揃っていること、接続する上でのテクニカルなサポートがあること、あとは安心・安全なコンテンツにつなげるための大人のナビゲートがある、この3点が必ず必要です。この条件が揃わないと、オンライン上の居場所や学習にはつながりません。ですので、最も居場所を必要としている子どもたちに、居場所を届けられていなかったのです。

 

編集部:学校という居場所がなくなり、オンラインでつながることもできない子どもたちは、どうなるのでしょうか?

 

今村:これまでの被災地支援や過疎地での経験から考えられるのが、リスクの高いコミュニティに子どもたちが接続し、巻き込まれてしまう危険性があります。そこでPCを無償貸与し、しっかりと大人がついて、学習機会をサポートするプログラムを作ろうと決めました。

 

編集部:実際に募集が始まり、反応はいかがでしたか?

 

今村:生活困窮世帯という定義で募集し、生活保護保受給や児童扶養手当(シングル、障がい者)、就学援助を受けている証明を提出してもらえればPCを貸与する、手続きもいたって簡単な形にしました。テレビや新聞でも大きく取り上げられたので、申し込みが殺到すると思ったのですが…… 最初はなかなか集まりませんでした。

 

編集部:え!?  今すぐ必要とされる支援なのに。しかもメディアで発信されても応募がないとは…… どうしてでしょう?

 

今村:おそらく、見ているメディアが違うのだと思います。今は、自分に関心のある事や最適化された情報が優先的に届きやすい時代なので、マスで発信しても当事者には届かなかったのです。結局、社会福祉協議会にお願いしたり、当事者とつながっているNPOと繋がったり、SNSで困難な発言している人と直接つながったり…… 地道に広めていきました。当事者とつながることが、こんなにも難しいなんて思ってもみませんでした。

 

編集部:私たちも自分が見たい情報しか見えていないから、貧困という問題も見えていないのですね…… 

 

今村:届く情報にも“分断”があるのです。困難を背負った弱い立場に置かれている方が人生の選択肢や切り拓きかたを知らなかったら、自分の子どもにも伝えられません。学習の力で貧困の連鎖を止めなければならないのです。

各界の著名人がムーブメントに参加することで、共に考える機会に!

ドリームサポーター 有森也実さん/女優 為末大さん/為末大学学長・元陸上選手(男子400メートルハードル日本記録保持者) 一青窈さん/歌手 丸山敬太さん/ファッションデザイナー MEGUMIさん/女優・タレント 山口絵理子さん/株式会社マザーハウス 代表取締役社長兼チーフデザイナー

編集部:このプロジェクトでは、女優やタレント、ミュージシャン、デザイナー、起業家に大学教授など各界の著名人が設立発起人やドリームサポーターとしてチャリティ参加していらっしゃいますね。クラウドファンディングで寄付を募る際のリターン特典では、オリジナルの返礼品やオンライン講座が選べるプロジェクトになっていますが、どのような発想からこの様なアクションにつながったのでしょうか?

 

今村:最初はカタリバの中でのプロジェクトとして立ち上がりました。ただ、カタリバだけで発信していても「多くの人には伝らない」と確信したのです。「子どもの貧困って日本で起きている事なの? 海外の話でしょ?」という友人からの一言がきっかけでした。

 

編集部:「貧困=遠い世界の話」という感覚ですよね。

 

今村:これまで貧困問題に向き合ってきましたが、私は「貧困=遠い世界の話」と考えている人たちが多いことに、気づいていなかったのです。格差社会と言うよりは”分断社会”と戦っている、ということを改めて自覚しました。それならば、多くの方の助けが必要だと考えたのです。

 

編集部:なるほど……! その様な背景があったのですね。

 

今村:まずは幅広い層に認知してもらいたいので、普段から仲良くさせていただいていた方々にサポートをお願いし、ボランティアでチャリティ グッズを企画してもらいました。寄付というよりは「この運動に参加したい!」と思ってもらえる様な取り組みにしたかったのです。

 

編集部:日頃から寄付に慣れていないビギナーにも入りやすいですね。何よりも、ムーブメント感があります。

 

今村:こうして多くの方にご協力いただき、多様な人と人がつながり、対話していくことで、社会の分断は防げる。私たちはこのように考え、この長期的なプロジェクトを走り抜きたいと思っています。

(後編に続く)

 

※『あの子にまなびをつなぐプロジェクト』のクラウドファンディングでは2020年8月31日11:00PMまで寄付を募集しています。ご支援をお考えの方はぜひお早めにお願いいたします。
詳細はこちら

「分断社会と戦っている」という、今村さんの言葉が胸に深く刻まれています。私たちになかなか実感が伴わない理由も、非常によくわかりました。でも実際に起こっていることで、貧困は連鎖してしまう…… 子どもたちの未来に、分断された社会を作り上げていいはずがありません。そのためにも学びの機会を届ける今回のプロジェクトを、全面的に応援したいと思いました。

後編はこのプロジェクトが単なる寄付ではなく、未来の教育のための壮大なプロジェクトとして機能している、その秘密についてお話しを伺いました。ぜひお楽しみに!

今村久美さんプロフィール
認定NPO法人カタリバ代表理事。岐阜県高山市出身、79年生まれ。慶應義塾大学卒。2001年にNPOカタリバを設立し、高校生のためのキャリア学習プログラム「カタリ場」を開始。2011年の東日本大震災以降は子どもたちに学びの場と居場所を提供するなど、社会の変化に応じて様々な教育活動に取り組む。「ナナメの関係」と「本音の対話」を軸に、思春期世代の「学びの意欲」を引き出し、大学生など若者の参画機会の創出に力を入れる。地域・教育魅力化プラットフォーム理事。中央教育審議会委員。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会文化・教育委員会委員。
HP:学校にいけないけど集まろう【カタリバオンライン】

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:飯田りえ

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