目の前にある「やりたい!」をキャッチし行動に移す大切さ。
児童労働問題の先駆者・白木朋子さんに学ぶ自分育て&子育て術【後編】

ラシク・インタビューvol.159

特定非営利活動法人 ACE 事務局長・共同創業者 白木朋子さん

学生時代に児童労働問題に出会い、その課題解決のために活動を続けてこられたNPO法人ACE事務局長の白木朋子さん。前編記事では子どもの人権について、そして、日本で浸透しにくい状況や私たちの中に潜む考え方をアップデートする方法を伺いました。

後編は、白木さんの生い立ちや子育てを通して、これからの時代に求められる「自ら課題を見つけて、解決していく力」について考えていきたいと思います。どうしたらそのような力が養われるのか。その秘密に迫ってみました。

前編はこちら

偶然の出会いが次につながり新しい扉が開いてきた20年間

編集部:白木さんは学生時代から世界に目を向けて活動されていらっしゃいましたが、何が白木さんをそこまで突き動かしたのでしょうか?

 

白木朋子事務局長(以下、敬称略。白木):高校の時にアメリカに留学して世界に目が向き、大学の時に国際学部に進みました。そこでインドのジェンダー問題に出会って、児童労働のゼミを選びました。実際にインドへフィールドワークに行った時に、世界で起きていることの大変さを目の当たりにしたのです。特に衝撃的だったのは、移動中にバスの車窓から見た、道端で等間隔に並んで人が寝ている光景でした。その後も児童労働している子どもたちや、エイズに母子感染している子どもに出会い、心が大きく動かされたんです。子どもは何も悪くないのに、生まれてきて命を落としてしまうことの哀しさ、そんな状況に対して何も動かない大人たちへの怒り…… 知識としては頭に入っていましたが、「人が人として扱われていない」その現実を自分の目で見た時に「こんな悲しい世界は嫌だ、でも、自分に何ができる?」と思ったのです。

 

編集部:その後、ACEを立ち上げたのですか?

 

白木:ACEの創業者である岩附由香から、『児童労働に反対するグローバルマーチ』と言う世界的ムーブメントがあるから「日本でもやろう!」と誘われました。そこで1997年12月に学生5人で期間限定のNGOとして立ち上げ、翌年5月に児童労働の現実を伝えるグローバルマーチを東京と大阪で行いました。

ACEは森永製菓の「1チョコ for 1スマイル」キャンペーンの支援パートナーとなり、対象商品の売上の一部をガーナのカカオ生産地域で行う支援活動に活用しています

編集部:そのまま、ACEとしての活動を続けたのですか?

 

白木:いいえ。大学卒業後、まずはイギリスの大学院に行き、その後、日本でODA(政府開発援援助)のコンサル会社にインターンで入り、その後社員になって4年ほど働きました。それと同時にボランティアでACEを再開していた頃、2002年日韓ワールドカップが開催されて。インドから依頼もあり、サッカーボール産業における児童労働を伝える活動を実施しました。この時期からぐっと活動が広がり、2005年にACEをNPO法人化しました。

 

編集部:最初から大きく立ち上げた訳ではなかったのですね。

 

白木:明確な何かがあった訳ではなく、偶然の出会いが次につながり新しい扉が開く…… まさにACEで作った書籍『チェンジの扉』で書いてある通りで、ここまで20年歩んでこれました。

「自分がやりたいことを、やりなさい」と言われ育った家庭環境

編集部:しかし、学生時代に同じ経験をして同じ衝撃を受けていても、結局は行動には繋がらず…… 日常の感覚に戻ってしまう人も多いのでは?

 

白木:そう言う意味では、家庭的に恵まれていたかもしれません。私の両親は、「子どもには子どもの人生がある」という考えのもと子どものサポート役に徹してくれていました。私の気持ちを理解し、「自分がやりたいことをやりなさい」と背中を押してくれていたので、高校の時に留学に出してくれたり、インドへ行ったりする時も親に反対されたことは一度もありませんでした。心配してはいたと思いますが。母は大学の教員で、祖母も市役所の職員と当時としては相当珍しくバリバリ働いていましたし、96歳になった今でも元気です。

 

編集部:なるほど。「やりたいことをやりなさい」と育てられているから「やりたい時にやりたいと動ける」のですね。

 

白木:そう言うことみたいですね(苦笑) 前編の話とつながりますが、「子どもは子どもで判断できる」と信じてくれていたのですね。父方の祖母も当時、海外に出かけていたみたいですし、外の世界に向いている人がおばあちゃん世代にいた。そう言う意味では、子育てする上で、やはり母がどうあるかは重要ですね。

 

編集部:まさに母が変われば、次の世代が変わる…… ですね。

 

白木:そうです。そして「母たるものこうでなければならない」「母だからできない」これをまず手離しましょう。私も時々ありますが…… そこは自分に言い聞かせる。意識しないと忘れてしまうので、お互いに声を大にしていきましょう。

 

編集部:児童労働のことも、子育てのことも、教育のことも…、大きく捉えると、「できない」って思ってしまいますが、何事も、目の前の小さなことから丁寧に続けていく先に、大きな問題解決があるのですね。

 

白木:ACEの20年も、目の前の偶然の出会いを積み重ねてきた結果でしかありませんね。

直感を頼りに。まずは自分を大事にし、そこから家庭、社会へとつなげる

編集部:思った時に目の前にあることからすぐ動く、これが鍵ですね。

 

白木:私はどちらかというと直感的な人間です。プランを立ててガチガチに動くよりも、自分が「今これだな!」って思ったことを掴みに行くタイプなので、参考にならないところもあると思いますが。その直感や感性って大事だと思っています。でも世間的には「論理的」なことが善しとされ、「感情的」なことが悪とされる雰囲気、ありませんか?

 

編集部:あります。仕事の時は特に、論理的に説明できないもの、エビデンスのないものは問題外と処理されてしまいます。

 

白木:実は感情も論理もスピリチュアルも、全て人間が持つ機能であって、そこに優劣はない。これもアップデートしないといけない考え方の一つで、直感は体が感じる一つのサインで、重要な機能の一つです。私自身は頭で考えたことと比較しても、直感の判断を優先させることが多く、「嫌だな」と思った違和感や「これだ!」と思える感覚は、結果につながることが多いです。

NVCで取り入られているニーズカード。108のニーズを可視化していています

 

編集部:その感覚を周囲にはどう伝えますか?

 

白木:社内では研修に取り入れて皆で学んでいます。今、取り入れているのが「ニーズカード」。前半にも出てきたNVC(非暴力コミュニケーション )の時に、感情からニーズ読み取る話があったと思いますが、これがまさにそのトレーニング。「このニーズに対してこういう風に感じた」をチャットルームで意見をシェアしています。自分のニーズに自覚的になると、相手のニーズに気付きやすくなるので、いつも見えるところに置いています。

 

編集部:108の感情があるのですね。煩悩と同じ、不思議ですね。

 

白木:社会を変えようとしている私たちが「自分は本物である」「自分と自分はつながっている」このことを体現できないと、他の人たちに促すことはできないじゃないですか。まずは自分で実践する。そして、その次に家庭が一番の実践の場。夫のことを変えることができなければ、一般の人の消費行動を変えることなんてできませんから(苦笑)

 

編集部:まずは自分を大事にする、そして家族、そして社会。本質的に自分が幸せじゃないと続かないですものね。

 

白木:そうなのです。NPO、NGOでいうと自己犠牲で社会に関わる、ボランティア的な考え方として根強いですが、それでは人は動かないし、体も持たない。結局、バーンアウトすることになる。自分自身を満たせないと、人に共感してもらったり、人の行動を変えたりすることはできないですから。自分を変えることができたら他者に伝わり、社会全体が変わっていく。それが自分たちの考える『消費社会からの変革』につながるのではないかと。

娘にも感情を自分の言葉で表現し、無駄な罪悪感は持たない人になってほしい

編集部:白木さん自身が子育てにおいて、大切にしていることはありますか?

 

白木:子どもの感情も大切にしていて「何を感じていたのか」「何が欲しかったのか」を会話で聞くようにしています。私の娘は4歳で表現する力がまだ十分に備わっていないところがあるので、「こうだったのかな?」と推測しながら。特に悲しい時に「悲しい」と言えるか、怒っている時に「何に怒っているか」を人に伝えられるか。感情に蓋をしないで、言葉にすることを意識的に促して。

 

編集部:お互いの感情を言葉にして、コミュニケーション取られているのですね。

 

白木:親が怒ると子どもは「自分のことを嫌い」「怒らせてしまった自分はダメな存在」と自動的に受け取るじゃないですか。だからこそ「お母さんは今怒っている。でも、あなたのことは大好きだよ」「いつも味方だよ。でも、こういうことをされたのが嫌だった」と言葉で伝えるようにしています。うまくできないことも多いですが。。私自身、出張で不在のことが多く、娘は「寂しい」と言います、その感情も溜め込まないで表現できるようになって欲しいのです。

 

編集部:そう言われてしまうと、罪悪感とか苛まれませんか?そこにはどうやって向き合って?

 

白木:どちらの気持ちも満たせないもどかしさはありますが、「こうあらねばならない」を手放したので罪悪感ではありません。「近くにいてほしい」その娘のニーズを満たしてあげられない申し訳なさには寄り添うけど、「近くにいてあげられない」ことへの苦しさではない。日本にいようとガーナにいようと、いつも一緒にいることはできませんから。もちろん周りの協力がないとできないですが、この状況を選択したのも自分。娘には「お仕事で一緒にいられないけど、いつも心の中にいるからね」と伝えています。

 

編集部:なるほど。白木さんは思考停止してしまうことはありませんか?

 

白木:思考停止ってワードも罪悪感と似たようなキーワードのような気がします。違和感を感じた時の「そのままでいいはずがない」その気持ちを大事にした方がいいですね。「そんなこと言ってもできないよね」と思考が進むと行動につながらないから、「この違和感がどうやったら違和感じゃなくなるのか」それを取りに行くために思考を巡らす。小さなできることが1つできると、次が見つかる可能性が出てきます。行動するまでは思考に引っ張られないことが大事ですよ。

 

編集部:コーチングみたいですね!

 

白木:なぜ素直に行動できるのか。最初に頂いた質問ですが、自分なりのやり方を探した時に機能する体験の繰り返しが、私をそうさせているのかなと思います。失敗しても、他の方法を探る。そうしてきた体験が成功に繋がっているからじゃないかと。自分の直感、感覚を大事に。あとは「どうせできない」ということは意識して持たず「できない」なら、「次にできること」を意識して探します。

 

編集部:停滞している様々な課題のヒントをいただけた気がします。ありがとうございました!

家で過ごす時間が増えた子どもたちやご家庭に向けた特別企画として、ACEが出版した本「チェンジの扉」を無料でプレゼントしています(24歳未満の子どもと若者が対象)。期間限定となりますので、ご関心のある方はお早めにお申し込みください
おとなの方にはご購入いただくこともできます。ぜひご覧ください。

世界の大きな問題に取り組んでこられた白木さん。家庭でも幼い頃から意見を尊重され、そう言う家族の土壌があったこともわかりました。そして、今はご自身の感情に向き合って、ニーズを汲み取る思考法を自分にも子育てにも取り入れています。その学びを止めない、アップデートを続ける姿勢がとても素敵でした。

何よりも子育ても教育も社会問題も、何事も大きく捉えてしまっては身動きできなくなりますが、まずは考える前に目の前にあることからやってみる。すると次に繋がる方法が見つかる…… その成功体験の積み重ねが、一人の人間を変え、周囲を変え、結果、世界を変えることに繋がるのだと。そこで私たちにできることが明らかになりました。まず違和感やこれだ! と思う感情に正直に。そして、目の前にあることから行動すること、実践してみたいと思います!

白木朋子さんプロフィール
1974年宮城県仙台市生まれ。宮城学院高等学校、明治学院大学国際学部卒業。英国ロンドン大学東洋アフリカ大学院国際教養ディプロマ課程(開発学、比較文化学専攻)、英国サセックス大学・文化環境開発研究所(CDE) 開発人類学修士課程修了。代表の岩附由香とともに大学在籍中にACEを創業。開発援助コンサルティング会社での勤務を経て2005年4月より現職。ガーナ・カカオ生産地での事業立案、企業との連携、企業向けの研修コンサルティングなどを担当。消費者教育、エシカル消費の普及にも携わる。著書「子どもたちにしあわせを運ぶチョコレート。」(2015年)、共著「わたし8歳、カカオ畑で働きつづけて。」(2007年)(いずれも合同出版)。
HP:認定NPO法人ACE

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:飯田りえ

求人情報

時短勤務可!シェアオフィスの営業管理 

株式会社アクトコールでシェアオフィスの営業管理のお仕事となります。
契約獲得の後に発生する手続きなどをご担当いただく予定です。

詳しく見る↓

勤務地
品川
勤務時間
9:00〜18:00
報酬
応相談
条件
若手社員の教育や1人称で作業も行えるくらいの能力を持たれている方を希望しております。イメージとしては大手不動産会社でバリバリ手続きや部下をもっていた方などが理想的です。

話をきいてみる

↑閉じる