うちの子の夜更かしは保育園の昼寝が影響していた?
睡眠学の専門家に聞いた幼児の夜更かしを解決に導くヒント

ラシク・インタビューvol.153

睡眠研究所長、江戸川大学社会学部人間心理学科 教授、医学博士 福田一彦さん

LAXIC読者の多くは、子どもを保育園に預けて仕事と育児を頑張っているママたち。「夜は早く寝てくれたら嬉しいけど、うちの子は夜更かし気味で……」など、子どもの睡眠に悩んだ経験はありませんか?

実は、保育園の昼寝の日課が子どもの就床時間の後退につながることが証明されています。そこで、編集部では真相を探るべく、江戸川大学人間心理学科教授で同大学睡眠研究所所長の福田一彦先生にお話を聞いてきました。どうしたら就床時刻に子どもをスムーズに寝かせられるのか、この記事ではそのヒントも合わせてお伝えします!

保育園での昼寝をやめたら早寝になった! 驚愕の実験結果とは

編集部:福田先生は、保育園で行われている昼寝の日課が夜更かしの原因であり、廃止するべきだとおっしゃっていますが、実際にどのような実験結果が出ているのでしょうか?

 

福田 一彦先生(以下、敬称略。福田):まず、前提として知っていただきたいのですが、日本人の睡眠時間は他国と比べて1時間以上短い。日本人は夜更かし傾向にあり、寝不足の人が多いということを知っていただきたいです。もちろん、これは大人だけでなく、児童や学生も同じです。

 

編集部:日本人はそんなに睡眠不足なんですか!?

 

福田:これは、世界と日本の子どもの睡眠時間を比較したデータなんですが、ヨーロッパの学生と比較すると、日本の学生は1時間半程度も睡眠時間が短いのです。起床時間はほとんど変わらないため、世界と比べると短時間睡眠で夜更かしだとわかります。

 

 

編集部:確かに、どの年齢も睡眠時間が短いですね。世界と比べてこんなにも差があるなんて。

 

福田:さらに、このデータも見てください。これは大学生の睡眠時間調査のデータなんですが、日本は最下位。さらに、体調不良を訴える学生が4割もいる。睡眠不足は心身の健康や日中の活動にも悪影響を与えることが分かっています。

 

『世界の大学生の睡眠時間の長さと不健康感の訴えの割合
(引用:Steptoe et al. Sleep duration and health in young adults. Arch Intren Med, 2006, 166: 1689-1692.のデータに基づいて作図)』

 

編集部:身体と心にも影響が出るんですね。では、足りない睡眠は昼寝で補ったほうがいいのでしょうか?

 

福田:多くの人は、睡眠は「休息」と考えていますよね。睡眠の量が少ないとまずくて、多いと休息になる、と。だから、寝れないなら昼寝したほうが良いと思っている人が大半だと思います。でも、それは大間違いなんです。

 

編集部:というと?

 

福田:基本的に人間は昼行性動物で、昼活動して夜寝るようにできています。細胞の1つひとつに時計遺伝子が組み込まれていて、その細胞がバラバラに動かないように脳の中にある視交叉上核(しこうさじょうかく)というものが主時計(マスタークロック)として他の時計を統括しているんです。これが、昼間活動して夜眠らせるという制御を行っているため、いつでも寝ていいわけではないんです。

 

編集部:そうなんですね。夜間の寝不足は昼間カバーすればいいものだと思っていました。

 

福田:皆さん、量が大切だということはよく言いますが、睡眠リズムのことはあまりよく知らないと思います。特に、平日の睡眠不足を補おうと週末に朝寝坊する人も多いかと思いますが、これは身体に悪いことしかないですよ。

 

編集部:そのパターンの人、たくさんいると思います。具体的にはどんな悪影響があるんですか?

 

福田:我々の調査データによると、日中の長い昼寝は夜更かしを招くし、休日の朝寝坊は時差ボケ状態になるため体調が悪くなる。想像できると思いますが、夜更かし朝寝坊が一番症状が悪化しやすいのです。

次に悪いのはなんだと思いますか? 平日は早寝早起きするが、週末は朝寝坊する場合でした。それだけ、毎日の睡眠リズムが大切ということですね。睡眠時間の短さやリズムの乱れは、イライラ、やる気のなさなどの心身の体調面、さらに学業成績の悪化にも関係していることが分かっています。

昼寝の廃止に踏み切った保育園はある? 夜の寝付きの変化は?

編集部:幼児にフォーカスしてお聞きしますが、保育園での昼寝と夜更かしの関係性について教えてください。

 

福田:こちらは、保育園で昼寝をやめた園と昼寝を継続している園を比較したデータです。年中の4歳児で、どちらも朝起きる時間に大差はありません。しかし、夜寝る時間をみると、昼寝を取っている園児は、取っていない園児の1~2時間後に寝ていることが分かりました。

 

 

編集部:えっ! これだけ差が出るんですか。先生の研究結果を参考に、実際に昼寝を廃止された保育園はあるのでしょうか?

 

福田:ありますよ。以前いた福島大学で幼児の昼寝の調査・研究をしていたのですが、東京で研究発表をした際に、全国の保育園担当者の何人か講演を聞きに来た方がいらっしゃって。その中に足立区保育課の方もいました。そこからのお付き合いですが、足立区立の保育園では年長・年中の午睡を廃止してくれました。

 

編集部:実際に午睡を止めた現場ではどうだったんですか?

 

福田:足立区保育園の園長さん達からのアンケート結果を見せてもらったことがあるんです。4月時点では、全員ではないが文句が多かった。内容は、子どもが夜まで起きてられず夕飯が食べさせられない、どうしてくれるんだ! という母親からのクレーム。それが、5月のアンケートでは、一切ありませんでした。昼寝なしの生活に慣れ、夜の寝付きも良くなったからです。

 

編集部:そんなに早く? 1ヶ月ほどで効果があったということですね。

 

福田:いえ、実際はもっと早いと思います。本来、5歳児は昼寝しなくてもいいものだから。アメリカで行われた「昼寝をしている子の割合」という調査データがあるんですが、1歳では全体の7割以上が2回昼寝していて、2歳でも9割が1回の昼寝をしています。しかし、3歳からは昼寝の回数が徐々に減っていき、5歳では8割以上、6歳ではほとんどの子が昼寝をしていません。もちろん、個人差はありますが、4歳を過ぎると昼寝の必要性がないことが分かっています。

 

『昼寝をする子どもの割合の変化(引用:National Sleep Foundation Final report of 2004 sleep in America pollのデータを基に作図)』

 

編集部:そういえば、保育園児と幼稚園児には違いがあるんですか?

 

福田:同じ年齢でも幼稚園では昼寝を取らないのが一般的ですよね。幼稚園児と保育園児の平日の就床時刻の調査データでは、幼稚園児より保育園児のほうが30分以上も就床時間が遅いことが分かりました。これは、昼寝をすることで夜の寝つきが悪くなってしまうためだと考えられます。

 

 

編集部:幼稚園児と保育園児でこんな違いが見られるんですね。私の娘も保育園に通っているのですが、必ず昼寝があって毎日90分程度寝ています。最近、なかなか夜寝てくれなくて困っているんです……

 

福田:それは昼寝の影響でしょうね。幼児は一度眠りにつくと90分くらいは寝てしまうものです。保育園の先生から、よく「いつごろ昼寝をやめさせればいいですか?」という質問をもらうのですが、ベストなのは個人個人に合わせて対応していくやり方です。保護者に土日の昼寝の有無を聞き、取っていないと分かったら保育園での昼寝をやめるといいんです。一番ダメなのは、90分の昼寝を60分、30分と段階的に減らしていく方法と、昼寝を取る日と取らない日を作る方法。どちらもやってはダメです。

 

編集部:どちらも有効的な方法だと思っていました……

 

福田:ご存知のように、睡眠には浅いノンレム睡眠、深いノンレム睡眠、レム睡眠の順番に何回か繰り返していて、再び浅いノンレム睡眠になった時に起こせばいいですが、30分や60分程度の睡眠では最も深い眠りの時に起こすことになってしまうので、すっきり目覚められないのです。寝ぼけと同じになるのでやってはダメですよ。また、昼寝のある日とない日を交互に繰り返すのは、交代制勤務と同じことを子どもにさせているということです。こんな苦しいことはありません。

 

編集部:保育園では、なぜ古くから昼寝の習慣が続いているんでしょうか?

 

福田:昔からの保育関係者がよくいうには、お母さんが働いているから子どもが夜更かしになると。でも、小さいお子さんの場合、それは関係ないんです。あとで話しますが、研究結果で証明されていますから。

 

編集部:保育園での昼寝が夜更かしの原因になっていることが証明されているのに、保育園では、厚生労働省の保育所保育指針に準拠して保育を行っているところが多く、なかなか昼寝の習慣は変えられない、という意見が多そうですよね……

 

福田:昔の保育所保育指針には、「午睡などの適切な休息を取らせ……」と記述がありましたが、「午睡を取らせる」とは書いていないんです。勝手な解釈で昼寝が習慣化されてしまったんです。書かれているのにやめさせらないと言う人もたまに出てきますが、今は改訂され子どもの発達に合わせて取らせましょうとなっているんです。でも、みなさんその事実を知らないんです。

 

編集部:必ず取らせるようにとは書かれてないんですね。保育園に預けている親としても知らない事実でした。

保育園での昼寝をやめることが難しい場合の秘策とは?

編集部:昼寝と夜更かしの関係性がよく理解できました。でも、実際は、娘の保育園では昼寝が必須なんです。保育園に預けている以上、うちの子だけ昼寝をやめさせてください、とはどうしても言いにくいのですが、どうしたらいいでしょうか?

 

福田:保育園にその考えは古いのでやめたほうがいいですよ、と伝えたほうがいいですね。

 

編集部:おっしゃるとおりですね(笑) ただ理解はできても、保育園に働きかけてすぐに変えてもらうのはなかなか難しいと感じます。昼寝をしつつも、なるべく早く寝かしつける方法が知りたいのですが、何かいい方法はないでしょうか?

 

福田:少しだけならありますよ。子どもの寝る時刻と何が関係あるのか示したデータがあるのですが、お母さんとお父さんの寝る時刻は一切関係ありませんでした。関係があったのは、お母さんの帰宅時間だけ。これには理由があって、お母さんが帰ってこないと、子どもはご飯もお風呂も入れないためです。なので、親ができることは、夕飯と入浴の時間をどれだけ早くするかです。ただ、仕事でそれが難しい場合もあるでしょう。帰宅後はご飯が先ですか? お風呂が先ですか?

 

編集部:ご飯を食べさせてから、お風呂に入れています。

 

福田:8割の人がそのパターンです。その順番を逆にすると子どもの寝る時間は早くなりますよ。お風呂から1時間以上経つと深部体温が下がってきます。眠くなると子どもは手足があたたかくなりますよね。これは手足から熱を出して体の中の深部体温を下げていて、下がってくると眠くなるんです。風呂から上がった直後は、深部体温が上がっているためなかなか寝つけませんよ。

 

編集部:そうなんですね! ご飯とお風呂の時間を逆にすることなら、簡単に試せます。ぜひ、やってみます。

 

福田:あとは住宅照明を暗くしてください。夜でも白い照明にしていませんか?

 

編集部:帰宅してからご飯を食べるときは白い照明で、なるべく明るくしています。

 

福田:それも夜更かしに繋がる原因です。リビングの照明を、白い照明から赤い照明に変えたら早く寝るか? という実験を大人でやったことがあります。ブルーライトが入った白い照明の場合と、オレンジ色の照明で手元は50ルクス以下にした場合で、睡眠を比較しました。すると、オレンジ色の照明で過ごしてもらったほうは、1週間で1時間も早寝早起きになった。暗くてオレンジ色という、つまりブルーライトが入っていない照明が重要なんだと分かっています。これは、ブルーライトが脳内の生物時計に働きかけて夜更かしの方向にリズムをずらせているからです。

 

編集部:照明も重要なんですね。ただ照明を暗くすると、目が悪くなりませんか?

 

福田:それもよくある質問ですが、都市伝説です。例えば暗いところで本を読むと一時的に疲れ目にはなりますが、照明が暗いからといって近視にはなりません。

 

編集部:なんと、視力への影響はないんですね! ちなみに照明は徐々に暗くすべきですか?

 

福田:いえ、もうバン! と暗くしちゃって大丈夫だと思います。2018年の北海道胆振東部地震での例でお話しましょう。この日、道内全域で停電になりました。以前、講演に来てほしいというお話をいただいた霧多布中学校で「停電当時、何時に寝たか」調査させてもらったんです。すると、みなさん見事にいつもより1時間半も早く寝ていました。つまり、人は暗くすれば寝るということなんです。

 

編集部:確かに、暗い所にいると自然とだんだん眠くなってきますものね。睡眠について、初めて聞くことが多くとても勉強になりました。最後に、今回テーマで取り上げた子どもの夜更かしで悩んでいるLAXIC読者へメッセージをお願いします。

 

福田:夜間保育がある園へ夜遅くまで預けながら、残業もしてお仕事を頑張っている方も多いと思います。ただ、心苦しいんですが、お子さんが小学校に上がる前まではお子さんの生活をある程度優先させてあげてほしいなと思っています。もちろんお母さんだけでなく、お父さんに向けてもです。あと、昼寝をまだ続けている保育園について、私も協力しますので、止めさせていきましょう。

 

編集部:先生がおっしゃってくれると心強いです。

 

福田:保育園では、子どもが寝ている間にお便り書きや保育者の休憩時間に当てているため、昼寝を取らせないことでマンパワーが不足すると考える人も多いかもしれませんが、先ほどのデータでも示したように3歳くらいになるとなかなか寝ないため、寝かしつけのため余計にマンパワーを取られることにもつながります。保育園の中で、今までやってきたことを変える抵抗感や「寝る子は育つ」という睡眠に対する誤解(たくさん寝たからと言って成長ホルモンがたくさん分泌されるわけではありません)があるからだと思っています。

毎日同じ時間に寝て同じ時間に起きるという規則正しい生活習慣を、子どもに身に付けさせてあげることが、親や大人がしてあげられる大切なことではないでしょうか。

専門家ならではの話を分かりやすく解説しながらお話ししてくれて、改めて睡眠について誤解や認識違いがあったと実感しました。さらに、最後にお話ししてくれたメッセージを聞いて、「できない」を言い訳にしている自分に気付いてしまいました。午睡が日課になっている保育園の方針は変えられない、仕事を早く帰ることはできない。でも何より、子どもの心とからだが健康なことが一番大切。まずできることは、毎日規則正しい睡眠と生活習慣を送れるように、1分でも早く迎えにいくことから始めてみようと思いました。

福田一彦さんプロフィール
1958年千葉県柏市生まれ。早稲田大学第一文学部心理学専攻卒業。同大文学研究科博士課程満期退学。福島大学教育学部講師・助教授・教授などを経て、江戸川大学社会学部人間心理学科教授・学科長。江戸川大学睡眠研究所所長。精神生理学、時間生物学を専門とし、金縛り(睡眠麻痺)体験の生理心理学的研究や国際比較研究などを行う。ほかには、眠りの発達、特に乳幼児期における睡眠覚醒リズムの発達について(乳児の昼寝の消失)も研究している。著書に『「金縛り」の謎を解く』、『応用講座 睡眠改善学』(監修)などがある。(仮)
HP:福田一彦

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文・インタビュー:北向由紀子

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