いじめ・不登校をゼロに! 理念と哲学を胸に教育現場を変えていく公立小学校の熱血校長先生

ラシク・インタビューvol.144

越谷市立越ヶ谷小学校 校長 田畑栄一さん

「教育というのは理想、理念に向かって進まなくてはいけないと思っています。いじめ、不登校ゼロ、そして自殺がない学校、それが僕の理念です」

埼玉県越谷市立越ヶ谷小学校の田畑栄一校長先生の言葉です。いじめ、不登校ゼロ、そんな理想的な小学校があるのでしょうか。

田畑校長先生は独自のユニークな観点から「教育漫才」を生み出し、赴任した公立小学校の国語・総合的な学習の時間で実践してきた「行動する元気な校長先生」です。編集部は、株式会社マモルの代表くまゆうこさんと、田畑校長先生のpodcast収録に同席、一緒にお話をさせて頂きました。

田畑校長先生の確固たる教育信念と共に、心あたたまるエピソードや私たち親へのアドバイスもあわせてご紹介します。

いじめは許さない・不登校はゼロにできる! 信念のもと行動する

(左)田畑校長先生、(右)株式会社マモル 代表くまゆうこさん

編集部:いじめや不登校をゼロにする、と田畑校長先生は明言しています。ただ、実際には〝どこの学校でもいじめや不登校はある〟と、学校や先生方もあきらめているように感じるのですが。

 

田畑校長先生(以下、敬称略。田畑):確かにいじめは実際に起きています。しかし、教育というのは理想、理念に向かって進まなくてはいけないと僕は思っています。例えば、校長が、いじめが多少あるのはしょうがないよね、と言ってしまったら、先生方も〝うちのクラスでいじめがあってもしょうがない〟と気がゆるみ、いじめを見逃してしまいますよね。

 

編集部:確かにそうですね。

 

田畑:つまり校長や学校は〝いじめは絶対に許されないよ〟と断言しなくてはいけないのです。そして不登校の子はゼロにしようと努力しなくてはいけないのです。僕は〝学校は全員の子どもが揃ってこそ、初めて教育活動が始まる〟という理念を持っています。

 

編集部:不登校ゼロは可能ですか?

 

田畑:できる・できないではなく、それが理想であり、理想が叶うよう全力で取り組まなくてはなりません。

僕は、学校になじめない子どもに対して「学校に合わせなさい」というのではなく、「学校が合わせますよ」と言います。みんなのための教育があると同時に、教育はひとりのためにもあるべきことだからです。

だから、不登校の子がいたら、そのひとりが学校へ来られるように、僕はできることは何でもやってみます。あきらめず、学校に来られない、ひとりひとりの子どもに合わせた方法を考えるのが、学校の、個人的には僕は校長の仕事だと思っています。

公立小学校でも独自の教育を実践
「吉本興業とタッグを組んだ教育漫才」

編集部:できることは何でもやってみる、そのお考えが、教育漫才というユニークな授業を生み出したのでしょうか。そもそも漫才を授業に取り入れることが公立小学校でできるとは、ちょっと驚きました。

 

田畑:公立小学校だからできないなんてことはありません。学校で漫才をやる、もちろんできますよ。新学習指導要領では、特に総合的な学習の時間で各学校のオリジナリティ、教科横断的な学び、地元に根ざした教育が求められています。

もちろん公教育ですから、ある程度のラインは必要だと思いますが、それに縛られているわけではありません。

 

編集部:その教育漫才ですが、具体的にどのような授業なのでしょう?

 

田畑:教育漫才は、クラスごとにくじ引きをしてペアを決めて、それからネタ作りをします。くじ引きにすることによって、なるべく学級全体で、さまざまな子と交わるようにしているのです。

よく知らない子であっても、漫才のネタを作ろうとしたら、ふたりでたくさん話をしなくてはなりません。話し合うことでわかり合うことができます。それをみんなの前で発表する。コミュニケーションやディスカッション、プレゼンテーションの力すべてが育まれます。

 

編集部:なるほど。

 

田畑:さらに教育漫才で大事にしているのは、「死ね」「うざい」といった言葉を使わないこと、どついたり叩いたりしないこと、この2つのルールを守ることです。そしてこれは、いじめにつながる大きな2つの要因でもあり、これを教育漫才を通して「いけないことだ」と体感し学んでくれたらと考え、先生方も指導しています。

 

編集部:それにしても、小学生が漫才を、しかもネタから考えてできるのでしょうか?

 

田畑:そこは僕も悩みました。それで埼玉では大宮に吉本ができたのを思い出し、すぐに電話をして相談しました。吉本興業の方たちも賛同して下さり、たとえば子どもでも簡単に漫才がつくれるテンプレートの作成や、先生方の研修でも協力して頂きました。

 

編集部:吉本興業にお願いするという行動力がすごいと思います。

 

田畑:僕は教育現場にもっとプロが入るべきだと思っているんですよ。お笑いは僕たち教師の専門ではありません。芸人さんこそプロフェッショナルです。だから吉本興業が大宮にあるな、と、思い出したので、すぐに電話をしたのです。笑いの教育をしようというのであれば、笑いのプロに現場に来てもらうのが一番ですから。

トゲのある教室をあったかい学級にする!

編集部:お笑いを授業に取り入れることで、変化はありましたか?

 

田畑:教育漫才をやった後とやる前では、人間関係がまるで違ってきます。教育漫才を通して、人をバカにしたり冷笑してはいけないこと、マイナスの笑いではなく、面白くて楽しくなるプラスの笑いに導くことで、学級の雰囲気は大きく変わります。

 

編集部:学級の雰囲気が変われば、子ども達の様子も変わるということですか?

 

田畑:学級で友だちに悪い意味で「笑われる」ことがなくなれば、子ども達は積極的に手を挙げて発言するようになります。子どもは授業に集中し、結果的に学力の向上にもつながります。現に前任校では、教育漫才を続けた結果、学力は上がりました。もちろん、これは教育漫才だけでなく、先生方のさまざまな取り組みの成果でもありますが。

笑う門には福来たると言いますね。僕はそれをもじって、〝笑う学校には福来たる〟、と言っています。

 

編集部:素晴らしいですね。

 

田畑:その逆になりますが、小さないじめが日常的にあり、学級が荒廃しているクラスを、僕は〝トゲのある教室〟と呼んでいます。子どもや先生が持っている空気感、いじめに対する認識の欠如、トゲのある教室はいじめが生まれやすく、またクラスになじめない子が増え不登校につながります。

 

編集部:教育漫才をすることで、いじめや不登校は実際に減りましたか?

 

田畑:減りました。もちろん、教育漫才だけではないですよ。僕は4月当初の校長講話でハッキリといじめはいけないことだと子どもたちに話します。学校はいじめがあれば、100%被害者側に立つ、加害者側には立ちません、と明言します。いじめがあったら、まわりで見ている子ども達が止めること、止めることができなければ先生や保護者に相談するということも徹底して話します。これは保護者に向けても同様です。

理想に向かっていく姿勢と過程こそが教育

編集部:前任校で初めて教育漫才をした時の教え子たちは、もう今は中学生くらいですか?

 

田畑:ええ、そうですね。ちょっとこちらを見て頂けませんか。

 

編集部:英文スピーチですね。Warm Communication、温かいコミュニケーションというタイトルがついています。

He taught me a very important thing, warm communication. I would like to spread warm communication all over the world using the power of English. I believe I can do it
校長先生が私に「温かいコミュニケーション」という大事なことを教えてくれました。私は世界中の人に英語の力を使い、温かいコミュニケーションを広めていきたい。私はそれができると信じています。
(スピーチより抜粋)

 

田畑:今、中学生でこれを書いた子(「教育漫才で、子どもたちが変わる -笑う学校には福来る―」の田畑校長の著書に登場するⅭさん)は、実は小学校時代、なかなか学校になじめませんでした。母親に付き添われて登校するものの、激しく泣いたり、時には暴れることもあり、いわゆる不登校・登校渋りの状況にありました。

僕はこの子と校長室でたくさん話をしました。自分は変わっている、ヘンだと思われている、と、当時の彼女は思っていました。でも、僕は変わっていることは魅力的で素敵なことなんだよ、と、話しました。

 

編集部:確かに個性的な子というのは、どうしても目立ったり、いじめられたり、クラスからはじかれるようなことは多い気がします。

 

田畑:日本の教育はみんな一緒というのが多いんです。個性が抜きんでている子は変わってる、ヘンだと言われやすい、でも、そうではないと話したことがきっかけになり、彼女も心を開いてくれて、少しずつですが状況が変化しました。

そうして、中学生になったこの子が、英語のスピーチ大会で、私との体験談を発表してくれたのです。これほど嬉しいことはありません。

 

編集部:田畑校長先生に学んだ温かいコミュニケーションを世界中に広げたい、私はそれができると信じている、と書いています。先生の教えを受けて、彼女は大きく変わったのですね。

 

田畑:最初にお話しましたが、教育というのは理想、理念に向かって進まなくてはいけないと思っています。いじめ、不登校、そして自殺がない学校、それが僕の理念です。

そして、理想に向かっていく姿勢と過程こそが教育です。

校長が哲学を掲げないといけないのです。理想に向かって進む姿、できると信じて進む姿が子ども達を導くと思っています。

安心できる家庭と温かい学校が
子どもの健やかな成長を育む

編集部:最後に、親として家庭で心がけるべきことを教えてください。

 

田畑:お母さん・お父さんは、お子さんを見守って下さい。比較しないで、見守ってあげましょう。すべてにおいて、自分は世界一幸せなお母さんだと思って、子どもに言葉がけをしていくことが大事だと思います。

そして家庭が子どもたちにとって安心できる場所であって欲しいと思います。子どもは安心できる場所があれば、ゆっくり考え、思っていることを伝えられます。親は子どもの話を聞いてあげることが大事です。気持ちを受け止めることで、子どもも心の中が整理できます。

家庭に限らず、学校も含めて現在の社会では寛容さがもっと必要だと思います。多様化する社会、情報も発展し国際化する中で認め合うことは大事です。認め合いながら表現をし、伝え合う力を持つことが大切ではないでしょうか。

 

編集部:安心できる家庭、温かい学校が、子ども達の健やかな成長につながるのですね。

 

田畑:学校全体の雰囲気を笑いによって温かいものにする、いっぽうで個人に合わせた教育もする。さらにいじめは絶対にいけないことだと、そこは徹底して周知させる。僕はそうして行動を起こし、変わろうとすれば〝いじめ・不登校・自殺のない温かい学校〟という理想が必ずや実現すると信じています。

ぶれることのない理想や理念を持ち、信じて歩んでいくこと。「理念」などと言うと大げさに感じますが、私たち親もまた、試行錯誤しながらも、失敗を重ねながらも、「こうありたい」「こんな親になりたい」という理想に向かっていく姿をわが子に見せることこそが大切なのだと、田畑先生のお話を伺いながら思ったことです。

高い山へ登る背を、子どもに見せていこうではありませんか。その背中を見て、子どももまた、自分の足で自分の希望・理想に向かって果敢に立ち向かっていくことを学べるように。

田畑栄一さんプロフィール
養護学校、中学校勤務を経て、2013年4月に埼玉県越谷市立東越谷小学校校長に着任。教育漫才を試み、自殺ゼロ・不登校ゼロ・いじめ減少と学力アップの実績を残す。2018年4月、越谷市立越ヶ谷小学校校長に着任。埼玉県の「はつらつ先生」として表彰された他、第66回読売教育優秀賞を受賞。現在も「行動する校長先生」として、日々、教育現場の改善・改革に挑戦している。
HP:越谷市立越ケ谷小学校

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文・インタビュー:取材・文 大橋礼/取材協力 株式会社マモル

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