“作れない日”だって安心!
人脈ゼロ×未経験から無添加幼児食を開発した2児ママの起業ストーリー

ラシク・インタビューvol.142

子どもの食卓株式会社 代表取締役 権寛子さん

自然栽培・オーガニックのお米や野菜にこだわり、化学調味料や保存料はもちろんのこと、表示免除の添加物を含む食品添加物を一切しない幼児食を提供する「子どもの食卓」。
砂糖・塩・油をできる限り使わずに仕上げた「幼児食弁当」は、1日数量限定で販売されるも即完売するほどの人気商品です。さらに今年の11月には保存料や添加物不使用の冷凍食品がリリース予定とさらなる躍進を遂げています。

そんな子どもの「食」を新しい形で提案する「子どもの食卓」の代表を務めるのはプライベートでは2児の母である権(ごん)寛子さん。金融業界でバリバリ働いていた彼女がなぜ未経験の食の世界で起業を決意したのか? 育児をしながら、人脈ゼロの状況からいかに起業を成し遂げたのか? 社長業とママ業の両立する彼女に起業までのストーリーをお伺いしました。

頑張るママのため! 親子で安心して食べられるお弁当を作りたい

編集部:権さんはこれまで金融業界でキャリアを積まれてきたわけですが、まったくの未経験である「食」の世界に足を踏み入れたきっかけを教えてください。

 

権寛子さん(以下、敬称略。権):そもそものきっかけとなった出来事は、1人目を出産後、会社に復帰するつもりで保育園を見学していたときのことでした。

見学をした保育園の給食メニューに目をやると「マーガリン」の表記があったんです。

当時は食へのこだわりがそこまで強かったわけではなかったのですが、マーガリンにも使用されるトランス脂肪酸は人体に害を及ぼすと NYのレストランでは禁止されたという話題をたまたま思い出しました。

そして「なぜ大人も食べないものを日本だと保育園で当たり前に使われているんだろう?」と疑問を持ち、「食」について深く学ぶようになったんです。

 

編集部:ちなみにその後、保活はどうなったのですか?

 

権:やはり子どもの食事は大切に考えていたので、食にこだわっている保育園を中心に応募したところ、結局すべて落ちてしまって…… そのため、仕事は辞め、専業主婦として子育て中心の生活にシフトしました。

 

編集部:そのような経緯があったんですね。しかし、お仕事を辞められ、育児に追われる大変な状況のなか、お子さん向けのお弁当を開発しようと思われたのはなぜですか?

 

権:育児をしていると、夕方にはもうヘトヘトになって、「ちょっと10分だけでもお休みさせて」みたいに電池切れを起こしてしまうこともしばしば。ときには、子どもと一緒に2時間眠ってしまって、起きたらすっかり夜になっていて「夕ご飯どうしよう」みたいな……

そんな時、簡単に食べられるものを外で買おうと思っても、原材料表示を確認すると、添加物などが入っていたり、味が濃かったりして、子どもに安心してあげられないものが多かったんです。

それで、親子で食べられるお弁当があったらこれは助かるママさんが多いはずと思って、料理家さんを探すところから始めました。

 

編集部:お子さんにいいということだけでなく、ママたちをサポートしたいという想いも「子どもの食卓」を始められるきっかけになったのですね?

 

権:そうなんです。子どもの食事は本来、1歳半ぐらいまで離乳食を摂り、1歳半以降から小学校低学年までは味付けが薄めで、食材本来の味を感じられる幼児食を摂るのが理想だと言われています。

ただ、共働きが圧倒的に増えている現代の家庭では、子ども向けと大人向けでわざわざ取り分けをして味付けを変える余裕がなかなか持てないという背景もあり、離乳食が終わった途端、大人と同じ食事になる子が非常に増えていると言われています。

だけどママがこれだけ大変な時代に、ママひとりでこれをやってくださいっていうのは、ちょっと違う気がしていて……

 

編集部:確かにそうですよね。では実際に、子どもの食事という点でお弁当にはどのようなこだわりを込めたのでしょうか?

 

権:そもそも「食べる」という行為は、五感を働かせる唯一の行動だと言われています。

例えば見ておいしそうって思って、触ってこんな感触なのかって。焼きたてだったら焼ける音を聞いて、香ばしいにおいを嗅いで、とか。

そこで子どもに経験してほしい五味の味、例えば「甘い」、「しょっぱい」「酸っぱい」、「苦い」、「うまみ」っていう5種類の味があります。それをお弁当に入れるようにしていて、お砂糖を使わなくても味のバリエーションで脳が満足度を感じるように設定してあるというのが「子どもの食卓」が作るお弁当の特徴なんです。

異業種からの起業は試練続き。夢の実現に不可欠だったのは「人との縁」

編集部:飲食業界はまったくの未経験で起業されていて、きっとご苦労も多かったのではと想像します。実際、どのようにしてやりたいことを形にしていったのですか?

 

権:最初は知り合いが誰もいなかったので、オーガニックと言われているレストランに行っては、シェフに積極的に話しかける超怪しい人でした(笑)

 

編集部:まさかそこからのスタートだったんですか?

 

権:そうなんです(笑) お弁当箱もどこの会社が作っているケースがいいのかがわからなくて、オーガニック系のスーパーにお弁当を見に行ったりして…… それで、気に入った箱を見つけても、箱に取引先なんて書かれていないですし、問い合わせしたところで教えてくれなくて、ひたすら足を使って探しました。ようやくマルシェに出店していたお店で探していた弁当箱が使われているのを見て、「これどこのですか?」って話しかけて、やっと教えてもらえたんです。

 

編集部:すごい行動力ですね!

 

権:本当にひとつひとつが手探りで…… 現在、冷凍食品も開発していて、今年の11月に販売を目指していますが、冷凍食品に関しては、冷凍の工場を見つけることにはすごく苦労しました。

全然ツテもないので、いろんな冷凍食品のメーカーさんに電話して、「場所どこですか? ほんとに教えてください、すいません」みたいに謝り倒しながら、聞いていました(笑)

すごく怪しい人だと思われただろうし、なかなか誰も教えくれなかったんですけど、何とか場所だけは聞き出すことができたりして……

とにかく色んなところに電話をかけて聞くっていうのを本当に根気よくやっていましたね。

 

編集部:結局、冷凍の業者さんを見つかるまでに、どれくらい時間がかかったんですか?

 

権:1年ぐらいはかかりましたね。

 

編集部:行動力もすごいですけど、権さんの諦めない気持ちの強さがすごい! だからこそ良い意味で周りの人も権さんに巻き込まれていうのかもしれないですね。

 

権:そうですね。人間って、圧倒的にできない人を前にすると、助けてあげたいって思ってくれるみたいで(笑) 人が縁を運んできてくれるみたいなことはありますね。

当時、添加物の入っていないお弁当を作りたいという飲食業界の方からしたら夢物語みたいなことばかり語っていて、でも「何もできてない……」みたいな苦しい日が続いていたんです。そんなとき、たまたま行ったエステサロンのお姉さんから、その後「子どもの食卓」にとって重要な存在になる人を紹介してもらうに至ったりして(笑)

しかも私、普段エステなんて行かないんですけど、たまたまインスタグラムで見つけて「ここに行かなきゃ!」って急に思い立って出かけたのが、そのエステサロンだったんです。

エステサロンのお姉さんによると、その時、私は仕事の話をしながら泣いていたらしくて、「この人、このままじゃダメだ」ってすごく心配になったみたいで、「この人に聞いてみたら?」みたいな感じで人を紹介してくれたのが、現在商品開発をメインで担当してくださっている方なんです。

なので、私は本当に全然何もできないんですけど、都度、人のご縁に助けられてここまできました。

 

編集部:偶然というか、必然というか、すごいご縁ですね!

 

権:そうなんです! 本当に人のご縁から機会を与えられる感じで、少しずつ亀のような歩みではあるけれど、なんとか前に進んでいて、今があるという感じですね。

 

編集部:権さんはすごく前向きで、つまずいても何度も起き上がる強さを感じますが、心が折れそうになったり、自信を失ったりすることもあるんですか?

 

権:しょっちゅうあります。ほぼ毎日です(笑)

ノウハウもなくて、何もできないし、今まで仕事を頑張ってきたつもりだったけど、「こんなに使えない人間だったんだ、私」みたいなことを何度も感じました。

世の中のためとか、これをしたらチームのみんなが喜んでくれるかもって思ってとった行動が、裏目に出ちゃったりすることも1回や2回じゃなくて「あれあれ?」みたいな事は本当にしょっちゅうでしたね。

だけど、へこんでいる時間はもったいないし、「やるしかない!」という思いに突き動かされています。

 

編集部:権さん、メンタル強い!

 

権:人生って、意外に短くて、迷っている時間ってもったいないんですよね。

それに、やりたいことが大きすぎてその中で自分がかく恥なんてとってもちっぽけなんだと思っています。

やっぱりビジネスをしていると、日常生活でしなくていい交渉とかお願い事とか嫌なことも言わなきゃいけないですしね。だから、何のためにやっているんだろうっていうくらい人に嫌われることもあります(笑)

それで、誤解を解けないまま関係が終わっちゃうことももちろんありますけど、私は「こういうことがやりたい」っていうのがはっきりあって、その部分がブレないからこそ、小さいことは気にせず、やりたいことに夢中で取り組めているんだと思います。そして、いろんなことが落ち着くと一人でくよくよしています。

ママであり社長。育児と仕事の両立を叶えるのは「人の助け」と「自己管理」

編集部:事業を始めたられたとき、一人目のお子さんは何歳だったんですか?

 

権:2歳くらいでしたね。でも会社を設立した途端二人目の妊娠がわかって、設立から1年くらいは開店休業状態でした(笑) 現在はようやく上の子が3歳で下の子が1歳半になりました。

 

編集部:すごく大変な時期ですよね! しかも、上のお子さんは幼稚園に通われていらっしゃるそうですが、幼稚園児の場合、帰宅時間がかなり早いですし、普段どのようにママ業と社長業を両立されていらっしゃるのでしょうか?

 

権:今までも上の子を保育園にも預けないでやれたのは、知り合いのママさんが預かってくれていたからなんです。仕事は手伝えないけど、子どもは一人、二人増えるのは変わらないから、「早く商品を作って!」と言ってもらえて、本当に助けられています。

ほかにも独身の友達や、既婚者で子どもがいない友だちも「応援してるから」って子どもたちを預かってくれています。

 

編集部:近所におじいちゃんやおばあちゃんが住んでいなかったりして、サポートが受けられない共働き家庭が多いなかで、そういう形のサポート方法もあるんですね。ただそうは言っても、仕事がお忙しいなかで、どのようにママ業と社長業のスイッチを切り替えているんですか?

 

権:独身の時はオンオフをつけない働き方をすごく意識してきたんですけど、今はオンオフをきっちりつけることを心がけています。

17時から20時までは絶対携帯を見ないとか、本当は明日の朝までにしないといけないことが山盛りあっても、意図的に仕事のスイッチを切っちゃうんです。

脳内ホワホワ〜みたいな(笑) 綿菓子みたいなホワホワしたものをイメージして、無の境地で子どもたちに接しています。

 

編集部:では夕方からお子さんたちと過ごす時間は、仕事のことは一切考えないってことですか?

 

権:そうです。でも子どもたちの就寝時間が20時なので、その時間を過ぎるとちょっと焦ってきて、「早く寝て〜」みたいになるんですけど(笑)

 

編集部:ママになって、あらためて仕事をするうえで大切にしていることはありますか?

 

権:やっぱり続けていく事が大事だから、寿命を削る働き方をして道半ばでは困るし、やりたいこと先行で赤字だらけでも困るし、きちんと続けてやっていくために自分の体調管理含め自分と会社のマネジメントをきちんとするようにしています。

今までは忙しくて、夜通し仕事をすることもあったんですけど、体調を崩すことが幾度かあってからは無理な働き方はもうやめようと決めました。

ママの未来を幸せに! 「子どもの食卓」が目指すものは?

編集部:権さんは今後「子どもの食卓」を通してどのようなことを発信していきたいですか?

 

権:子どもの食事に関する事業は、大切なお子様の口に入るものでありながらまだマーケットができていないので、どこの企業もあまりやりたがらないという一面があるみたいなんです。

でも、逆にうちのような小さな会社が1社でもやって、世の中にニーズがあるって思ったら大手各社も参入してくれるんじゃないかと思っています。そしたら日本でももっと気軽に子どもたちが安心して食べられるような幼児向けの食品が買えるようになりますよね。

だから、今私がやっている取り組みは、そういったきっかけになりさえすればいいなって思っています。そして「子どもの食事と大人の食事は違う」というすごく大切な考え方もこれからずっと発信しつづけていきたいですね。

 

編集部: LAXIC読者も、育児と仕事に奮闘するワーママが多いのですが、そんなママたちに向けて、最後にメッセージをお願いできますか?

 

権:完璧じゃなくていいから、まずはできることをやればいいんだと思います。ママが一生懸命やってくれているのを子どもは見ているし、それで充分なんだなって、今の私は感じられるようになりました。

子育てって成果が見えにくいのですが、その見えない根っこを真っ直ぐ伸ばして自分ができること、誰かに頼ることをもっと明確にして、まずはママが無理をしないことが一番大切なことだと思っています。

 

編集部:一人で抱え込まず、できること・できないことを棚卸しして、ときにはアウトソーシングなど第三者の力を頼ることも必要ですよね。権さん、本日はありがとうございました!

子どもを保育園にがっつり預けて仕事をするママが多いなか、幼稚園ママでありながらも自らのやりたいことを起業という形で実現している権さん。パッと花が開いたような可愛らしい笑顔に秘められた心の強さや類い稀なる行動力には、ただただ驚かされるばかりでした。自分ができることを最大限やってみて、わからないことは素直に教えを乞う。そんな彼女の真っ直ぐな行動は、仕事でも育児でも、決して一人では解決しない問題をクリアにし、前進するために必要なヒューマンスキルなのではないかと思いました。

権寛子さんプロフィール
1982年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、東京共同会計事務所、三菱UFJメリルリンチPB証券(現 三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)に勤務。2015年に第一子、2018年に第二子を出産。第一子の妊娠・出産を機に専業主婦となり、食事へこだわりを持つ。その後、自らの経験から、働くママの安心を増やしたいと、おいしくて安心・安全な幼児食・小学生食の普及に取り組む。2017年10月、子どもの食卓株式会社設立、代表取締役に就任。幼児食弁当の販売、料理教室などの啓蒙活動を通じ、現在は冷凍食品の開発に尽力。
HP:子どもの食卓

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:倉沢れい

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