世界中を旅する「ドゥーラ」から、未来のお母さんへのメッセージ

ラシク・インタビューvol.139

ノマドゥーラ ウェルネス in Paris 木村章鼓さん

みなさんは『ドゥーラ(※)』をご存知ですか?

日本でドゥーラといえば、産後ケアに特化した産後ドゥーラのイメージが強いのではないでしょうか。私も産後はドゥーラさんにお世話になった一人です。子どもをあやしてもらい休ませてもらったり、抱っこやおんぶの仕方、授乳の相談にも乗っていただいたり。私は料理が得意ではないので、ドゥーラさんに料理もお願いし、作り置きをたくさんしていただきました。このように、ドゥーラは産後のケアだけではなく、簡単な家事もやってくれます。産後は夫よりもドゥーラさんとのおしゃべりが多かったかも? 産後ドゥーラさんは、私の産後を支えてくれた一人です。

(※)ドゥーラとは
もともとはギリシャ語で「女性に使える女性」という意味ですが、現在では産前、産中・産後早期を通して継続的な身体的、心理的お産のサポートができる専門家のことをこう呼んでいます。それって、助産師じゃないの? と思い浮かべる方もいると思いますが、ドゥーラは医療行為をしません。産中であれば、陣痛が始まったらお産までずっとそばについて、お産の進行を見守ります。それぞれのお産に立ち会って、サポートできる技術を身につけており、呼吸の誘導や体の位置をかえたりして、陣痛中にリラックスするのを助けたり、パートナーやご家族がお産に参加できるようにサポートしたり、状況に合わせて産婦さんに必要なサポートを行います。ドゥーラは身近なお産のサポーターとして非医療面で妊婦さんとそのご家族に寄り添い支えます。
<ドゥーラシップジャパンより引用>

助産師学生の頃、子宮口が全開する(赤ちゃんの出口が赤ちゃんの頭が通れるようになる10センチまで開くこと)までのケアを見学したことがあります。その助産師さんの全てを捧げるような寄り添い方を見て「この人は、ドゥーラ(的存在)だ。」と思わず声が出てしまったことがあります。その感動は今でも忘れません。「寄り添う」ということを生業に持つ、ドゥーラと助産師。今回は、世界中を旅するドゥーラ、木村章鼓さんと、助産師である伊藤麻衣子が対談しました。

ドゥーラと助産師が語る『寄り添う』ということは……

伊藤麻衣子(以下、敬称略。伊藤):まずは、木村さんのドゥーラとしての寄り添い方について教えてください。

 

木村章鼓さん(以下、敬称略。木村):ドゥーラは、産みゆく女性の産前・産中・産後を支える非医療者です。ただ一緒にいるという身体的な寄り添い方だけではなく、「赤ちゃんできないな」「赤ちゃんが生まれてくる前に天国にいってしまって悲しい」「妊娠したけど誰も付き添ってくれなくて不安だな」そういった悲しみや不安にも寄り添っていきます

女性って、もろい時代がありますよね。出産後どうしようもなく自分に自信がなくなってしまったり。誰か何かにすがりつきたくなる時、そういう時の女性に自然な形で、家族のような、おせっかいおばちゃんのような、妹のような、いろんな形でたずさわれたらいいなって思って活動しています。

 

伊藤:ドゥーラは妊娠した女性に寄り添っていくイメージが強かったのですが、不妊や流産といった産前の分野にも関わっていることを初めて知りました。幅広い分野で女性に関わっているのですね。

木村さん自身はどんなお産を経験したのでしょうか。

 

木村:助産師さんが一緒に横たわってくれて、とても手厚くサポートしていただいたんです。「木村さーん。よく破水したわね。おめでとう!」って言ってくれたんですよ。最初の第一声がポジティブ!

 

伊藤:こんな声かけの仕方、初めて聞きました! お産は、陣痛→破水という流れだから、先に破水すると「破水しちゃったー」って、ネガティブに捉えがちですよね。たしかに、ポジティブ!

 

木村:でしょ! それでね、助産師さんは「これでいい刺激きたから、そろそろ陣痛くるねー陣痛くるよー」そう言って下さったの。

言葉の力、その方の在り方って、すばらしい影響力があるんです。笑顔を絶やさずに、どんな時でもゆったりとした顔でサポートしてくれました。私の腰をなでおろしながら「私のいた岩手県ではねぇ~遠野物語でねぇ~」と話してくれて。私はその声に導かれるように、まどろみの中で陣痛がどんどん高まっていった。陣痛がくるたびに、熱いお湯につけたガーゼを会陰(赤ちゃんが出てくる出口の近く)にあててくれるんですよ。「いいよーいい感じにいきんでいる。木村さん上手!」それを繰り返してくれて。

そういうケアを全身で受け止めてみて、本当にすごいって思って、技術がある、声かけができる、両方がホリスティックに備わってこそ、真の助産師さんだと思ったんです、その時に。そして結果、素晴らしい、まるで宇宙と完全に調和するような素晴らしい体験でした。それは原身体経験でしたね私にとって。

 

伊藤:まさに寄り添うお産! 私は産後のママを支援したいと思い助産師になりましたし、私以外にも多くの助産師が「こういうお産のお手伝いをしたい!」という理想を抱いて助産師になっていると思うんですよね。

でも、現実とは、かなりギャップがあって…… 病院やクリニック勤務の助産師は、一人で複数の産婦さんを担当するし、カルテを書くなどの事務作業も多い。「初産の病院でのお産が、放っておかれて心細かった」と言われる方もいました。海外では、同じようなケースで「次に産むときは放っておかれたくない」と、その後のお産ではドゥーラを雇うことが多いという文献もあります。

 

木村:いくら助産師が深い心で接したいと思っても、実際は完全に自分を捧げるようなケアがしにくい環境というケースもありますからね。助産師さんたち自身も、それはわかっているからこそモヤモヤする。その葛藤の中でドゥーラという役割が社会的に再発見され、今やドゥーラに転向する助産師も少なくないのが現状です。

 

伊藤:私は姉の出産の際、じっくり姉に寄り添いたいと思い、医療行為をしないで付き添ったことがあります。姉のお産の全てを感じ取ってやる! って。本当にもう、全身全霊で尽くしたので、お産が終わった後は死んだように眠りました(笑) あとから気づいたんですが、これってドゥーラだったんだなと。本当にエネルギーを使うので、医療業務や事務作業をしながらなんて、無理だと正直思いました。これをドゥーラがやってくれたら、医療業務や事務作業に没頭できるけど、その反面、この寄り添いがなくなったら、助産師はどう思うんだろう。寄り添えなくて、悲しいかもしれない。

 

木村:実は私、「将来的にはドゥーラなんていなくなるのが一番いい」と思っているんです。なぜなら、本来なら助産師さんは寄り添いケアをしたくてなっているという方がほとんどのはず。そこに技術もあるので、できればドゥーラは助産師であって欲しいんです。日本のクオリティーの高い助産師さんにもっと輝いて頂きたいし、私が受けたようなケアをすべての女性にも同じように味わってもらいたいから。正直、自分だけフェアじゃない、こんないい思いしてって思っているんです。

その仕組みづくりのためには、助産師一人一人が妊婦さんの継続ケアができるような医療システムが確立されるといいですね。妊婦さんの声が反映されてカスタマイズされたケアが一人一人デザインされる時代だと思ってるので、読者の皆さんにも良いケアを受けたらしっかり伝える。逆に何か引っかかることがあったならば、真剣に向き合って、きちんと声をあげていってもらえたらと思います。妊娠・出産は、それだけライフイベントとして貴重な体験。ちなみに私は日本の『My助産師制度』を応援しています。

doulas & midwaives working together 公式ポスター

伊藤:助産師とドゥーラでは、お互いが産婦さんに寄り添いたいという強い気持ちのために『ドゥーラVS助産師』論争のようなものもあるとか。私自身、少なからず、そう思い込んでいるところがありました。でも、木村さんの、ドゥーラから助産師への思いは、エールでもあり、ラブレターのように思えます!

現役ドゥーラが考えるキャリア支援とは?

伊藤:木村さんは妊娠・出産の現場以外でも、ご活躍されていらっしゃるようですが、具体的にはどんな活動をされていますか?

 

木村:たとえばメディアから「ドゥーラについて書いてください」というお声がかかることですね。そういうコンテンツをまとめて本にしたり、みなさんに分かりやすい形でセミナーなども今後できていけばいいと思っています。

 

伊藤:いいですね!

 

木村:内容はキャリア支援まで繋がるような遠くを見据えたもの。産前や妊活中、これから妊娠するかもしれない女性に、いい情報を送りたいですね。妊娠の見通し立たないなぁという方に「見通し立てていけるよ。こんなプロもいるし、産前からこんな心の準備もしていけるよ」ということを組み立てていけたらなぁって思います。

 

伊藤:素敵ですね! でもキャリア支援ですか!? 正直、現役ドゥーラから、そんな言葉が出たのが意外で。具体的にはどんなことをイメージされているのでしょうか?

 

木村:今度16歳になる私の娘がまだほんの1歳の時、津田塾大学の文化祭でキャリア支援ということでパネリストに呼ばれたんです。学生部の方たちが、誰を呼ぼうか文化祭実行委員でいろいろリサーチして見つけて下さったみたいで。15年も前ですからね。

 

伊藤:それは嬉しいですね!

 

木村: 女性の人生って、自分軸で考えられると、なにがきても、どうなっても、おおらかな気持ちで考えられる。育児でキャリアがストップすると思われがちだけど、育児をしながらの時間管理の仕方を考えたり、子どもの食事から栄養学を調べたり、1日1日が大学に通って学んでいるようでした。「いま、自分の小さな命と向き合っている間に学べるスキルあるじゃん! そのあとの自分にも活かせそう! 楽しい!!」ってすごく感じましたね。私が思う自分軸は「いま、自分は、こういう状態なんだ」と見据えることなんです。子どもを産んだら、いろんなことが起きるかもしれないけど、それも含めて、ありのままのあなたでいい。年商〇億円! という成功よりも、ありのままのあなたが輝いて、さらにステージアップするのが女性とっての子育てなんだからね。というのをお伝えしました。

1歳児の娘を抱っこ紐に入れて津田塾でその話をしたら、主催者の学生チームから何十通とメールやお手紙をくださり「自信をもてました!」って言って下さって。ロールモデルとして小さい赤ちゃんを抱っこしながらも、こんな気持ちでいられることを伝えること、これは若い方のキャリアに必ず繋がってくるとおもっています。

一時帰国時は各大学にて女子学生に向けての講演に引っ張りだこの木村さん。こちらは今年7月2日筑波大学での講演

伊藤:妊娠・出産や育児をキャリアの断絶と考える方もいますからね。大きな組織にいなかった私でさえも、少なからずその感覚はありました。母親になって、何かに埋もれていってしまうのではないかって。でも、実際はそうじゃなくて、毎日、学べることはたくさんあって、子育てはステージアップなんだと思います。このお話をきいたら、若い人たちは「お母さんになってみたい」って思うんじゃないかしら。

 

木村:キャリア支援とまでじゃなかったとしても、その話によって、どんな道を選んでも、どんな形で終止符を打たれても、たとえば、結婚や転勤なんかで航路が変わっても、自分の行きたかった方角じゃないところに流れていっても、自分の羅針盤がここ(胸を指しながら)でしっかり回っていれば、一時的に方向を見失ったけど、あっちに月がでている、こっちに星があるみたいな感じで、それを導いてくれる力がうまれてくる。15年前と同じこと喋っていても、ブレていない自分があるみたいなんです。そこだけは、ちょっとだけ自負心があります。変わらないでいられるってすごく羅針盤をもっているのだと。

 

伊藤:結婚は双方の意志によるものだけど、転勤は意志によるものではないから、受け入れ難いこともありますよね。パートナーが転勤族となれば、それは1回では済まず、何回も航路を変更してきた人生だったと思います。木村さんに自負心とも言わせるブレない羅針盤は、何が影響しているんでしょうか。

 

木村:お産する前までの自分は外に外に向いていたんだけど、お産にすごく集中したことで、自分の身体の内側に相当読まれていない秘儀の書かれた経典があった感じがして。それからどこにいても大丈夫、強くなりましたね。だから、これから産むという方にはできる限り、そういう風に思えるような本当に精神の充足感を感じられるような安心感の中で産んでほしいなって思っていて。だからこそ、産中は大事だなっておもっているんです。ドゥーラとして関わる時、彼女が周囲からおろそかにされないように、できるだけ放っておかれたと御自身も思わないように、そしてご家族にもちゃんとサポートの一助になってもらえるよう誘導することを意識しています。

 

伊藤:きっと、いろいろな自分の羅針盤の作り方があると思うのですが、木村さんはご自身のお産で精神の充足感を感じられるような安心感を得たことがきっかけだっだんですね。それには、放っておかれない、やっぱり、人の存在が大切。日本ではパートナー(夫)が、いきなりお産に立ち会うことになった人も少なくない。それって、部分的ですよね。妊娠というものを、もっと一緒にすごして、どういうものかわかった上で立ち会う、新しい家族の誕生を迎える。そうすると、家族のスタートが違ってくる。家族や子どもを身近になる気がする。やっぱり、もっと人と繋がってほしいな。

 

木村:たくさん情報があるのに、リアルな人との繋がりは本当に足りないですよね。SNSで繋がっているより会った方が何倍何千倍も数値で測れない情報がくる。今後そういうのを大事にしたいですよね。リアルな五感。助産師さん、ドゥーラ、お産の周りにあるもの。そこを別に(繋がらなくて)いいやと思うことが悲しい。助産だけじゃなくて人として人類の課題かしら。

産後は「みんなちがって、みんないい」

伊藤:最後に『産後うつ』についてもうかがわせてください。私は、自分も産後うつっぽくなって辛かった経験から、産後うつを減らすための活動をしていて、ブログやコラムを書いたり、SNSで情報をシェアしたりしています。

 

木村:それはすばらしい活動ですね!

 

伊藤:最近、ある人にこう言われました。「伊藤さん、産後うつって、なっちゃいけないことなの?」と。正直、開いた口が塞がらない程の衝撃でして。その方がこうおっしゃったんですよ。「登山もさ、いろいろなものを乗り越えるから頂上に登ったとき感動する。夫婦だってそうだよ。乗り越えて、夫婦に、家族になっていく。なんにもないようにするんじゃなくて、どうしたら乗り越えられるのか。寄り添っていくことが大切なんだよ」と。

その時、「寄り添う」という言葉を聞いて、すぐに木村さんの顔が思い浮かびました。ドゥーラの木村さんだったら、どう感じますか?

 

木村:金子みすゞさんの言葉にあるように「みんなちがって、みんないい」でいいと思うの。実をいうとね、私の産後はね、桜の木が風にゆれて花びらが落ちるだけで涙が止まらない。なんて美しいんだろう。私、桜の木(なの)? 風? タイヤの音がキキーッて聞こえて、待てよ、私、タイヤ? といった具合に、なんかね、私というケースから私が外れちゃってすべてになったの。その体験は産後うつだったと思うんだけど、アーティスティックで花開いた瞬間でもあるし、捉え方によるよね。感性豊かで、芸術的センスもあって。絵をかく、いい音楽をきく、散歩にでてみたり、産後の辛い時期だからこそ、できることをちょっとする時間にできたらいいな。

 

伊藤:できることだけする…… それでいいですよね!

 

木村:産後うつになったら薬を飲む、カウンセリングをするだけじゃなくて、ソフトなものを提供するドゥーラとしては、産後うつのお母さんの心がほっとするような活動を通して、心にも寄り添いたいと思っています。自分史を語るとかは、産前より産後の方が書けるんです。20枚とか書くお母さんもいるの。だから、これは、人それぞれ。金子みすゞさんがおっしゃるように「みんなちがって、みんないい」っていう気持ちで産後うつっていう現象を見てあげると、ちょっと取り組みも違うのかもね。産後はさ、自分の感情にセンシティブになる巣篭もりの時代。すぐに活動しないで、産後にひたるのもいいよね

 

伊藤:私自身、産後うつを良くないものと決めつけていたところがありました。でも、木村さんのように1つ1つていねいに感じていくと、いつものネガティヴなイメージの産後ではない違う世界が見えた気がしました。

マザーリング ザ マザーという言葉があります。

マザーリングとは、母親が子どもを抱っこしたり話しかけたりなど、愛情ある接触行動をすること。マザーリング ザ マザーとは、女性が母親になって妊娠・出産・育児をする際に、周囲の人がマザーリングをするようにして優しくいたわり、肉体的、精神的にサポートすることを言います。赤ちゃんを支える母親を、周囲のひとがさらに支えるという構造です。

マザーリングを受けた母親は精神が安定し、母乳の出がよくなったり、前向きに育児に取り組むことができたりと言った効果があるといわれています。
女性・妻という役割に、新たに母親が加わることに、多かれ少なかれ、誰しもが不安になると思います。だって、誰も母親になる方法なんて知らないですからね。助産師やドゥーラ以外にも、母親になる女性をマザーリングしたいと思っている人たちは、世の中にたくさんいます。そのたくさんの人たちに、マザーリングされながら、少しずつ少しずつ、お母さんになっていけるといいですね。

木村章鼓さんプロフィール
ノマドゥーラ ウェルネス in Paris 主宰
海外生活20年、フランス在住のバースドゥーラ
イタリア、オマーン、マレーシア、スコットランド、ロシア、アメリカ、イギリス、フランスと移り住み、各国でバースドゥーラとして女性支援を続けながら、妊娠・出産サポートのコミュニティを各地で立ち上げてきたバースアクティビスト

Doula UK 認定メンバーを経て、
ドゥーラシップジャパン(DSJ)理事、
しあわせバース 〜妊娠・サポートネットワーク〜 in Paris 代表、
Himemama Paris 代表、
ヨーロピアン ドゥーラ ネットワーク(EDN)会員
HP:ノマドゥーラ ウェルネス in Paris

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:伊藤麻衣子

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