自己決定ができる子供に育つ親子の関わり方とは?
小児科医・小谷信行氏による 『子どもの能力の伸ばし方』 セミナー【後編】

ラシク・インタビューvol.134

ジャパングリーンメディカル 院長 小谷信行さん

イギリスはロンドンにある日本人のための総合医療センター ジャパングリーンメディカル。 院長・小谷信行先生による特別セミナー『人生100年時代を生きる子供のための自尊心とコミュニケーション力を育てる子育てセミナー 子どもの能力の伸ばし方講座』 が7月4日、東京で開催されました。
(主催団体:ママ支援コミュニティHimemama 世田谷支部)

今回お送りする後編ではセミナー後に実施した取材の様子をお伝えします!

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前編はコチラ
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成育医療を広めてロンドンから日本が変わるきっかけになれば


編集部:セミナーでのお話をお聞きし、子どもとのかかわり方にたくさんの気付きが得られました。ところで、そもそもの部分なのですが、先生がイギリスへ行かれた経緯が気になっているのですが、教えていただけますでしょうか?

 

小谷信行先生(以下、敬称略。小谷):私、本当はフランスに行きたかったんです。勤めていた松山赤十字病院が定年になり、パリが大好きで遊びに行きたかったんですが、仕事がないと遊びに行っても楽しくないなと思って。

 

編集部:そうなんですね(笑) イギリスではなくフランスなんですね。

 

小谷:パリは日本の医師免許が使えないんです。でもイギリスは医師免許が書き替えらえるのでイギリスへ行こうと思いました。でも、大きな目的は成育医療です。

 

編集部:成育医療とは?

 

小谷:妊娠中から家族のサポートをすることや、産婦人科と小児科を1つに統合して、子どもが胎児から大人になるまで、一人の子を総合的に継続的に見ていくという活動が成育医療です。

赤ちゃんがお腹にいるときからカルテを作って、胎児期の情報はすべて小児科に引き継がれるようなことも、愛媛にある赤十字病院でそれをやっていました。最初は専門家を対象にして、全国を回ってこういうセミナーをやっていたんだけど、日本ではなかなか定着しませんでした。なのでそれをロンドンでやりたいと思ったのがきっかけです。

 

編集部:すごいですね!

 

小谷:ロンドンでやれば逆に日本でも広がるようになるのではないかなと思ったのが始まりです。松山赤十字病院でやっていたことは、小児科医が妊娠中から育児講座をしたり、胎児の診察も小児科医がするんですよ。お母さんの精神的なサポートなどを含め行っていました。今はロンドンで、妊娠中のお母さんとお父さんを集めて成育医療をやっています。

妊娠中から携わることで父親も母親も親としての意識が芽生える

編集部:先ほどセミナーの中で、「家族のコミュニケーション能力が高い家庭は子どもも伸びる」とおっしゃっていましたが、ママ自身がコミュニケーション能力に自信がない場合はどうしたらいいでしょうか?

 

小谷:日本人のコミュニケーションは “察する” ことを重んじています。阿吽の呼吸とも言いますが、基本的に「言わなくても分かるでしょ?」と思っている。もちろん、ある程度は言わなくても分かりあえていればいいんですけど、とはいえ、伝え方も必要ですよね? 

家族のコミュニケーションにおいて、実は一番大切なのが夫婦の関係なんです。父親になりきれていない、母親になりきれていないと感じることが多いですね。特に父親についてはなりきれていない人が多いのでは、という印象があります。

 

編集部:でも、口だけは出してきたりしますが(笑)

 

小谷:口だけ出すのが父親じゃないですよね。じゃあ、父親とは何をするのかっていうところが分からず、本当の父親としての子どもの愛し方が分かっていないから、できないんですよ。そういうところを含めて、妊娠中から取り組んでいこうということです。

男性は初めから関わるとすごく熱心ですよ。ロンドンでは育児講座に参加した人は乳児検診についてきますよ。自分が聞きたいから来るんです。親の一人として行きたいと思ってね。だから意識の改革が必要なんです。

 

編集部:なるほど、妊娠中から関わることで、父親としての意識が変わってくるんですね。

子どもを分離して育てることが本当の子育て
子育てのスタイルは他人の受け売りではなく自分で決める

編集部:セミナーでもお話に出てきましたが、子どもを「個」として扱う必要性を説明していただいたのですが、個人的にすごく難しいと感じてしまったのですが……

 

小谷:今日のセミナーでお話したように、日本では初めからべったりくっついて育てるから、子どもを「分離」して、「個」として見るトレーニングが必要なんです。大人になって、大学生になっても、社会人になっても、実家から出ていかない人がいるでしょ?

 

編集部:今、多いですよね。

 

小谷:それは、初めから分離をして育てることをしていないからなんです。子を自立させないで育てていることになるんです。これをイギリスではspoilするといいます。要するにダメにしてしまう、大人にできなかったということです。

 

編集部:例えばイギリスでは、親と子の寝室は別というお話でしたが、日本では子どもと同じ布団で寝ていることも多いと思います。私も1歳8カ月の子どもがいて、まだおっぱい離れも進んでいなくて…… 悩みなんですが。

 

小谷:それはいいんですよ。別に悪いことではない。

 

編集部:そうなんですか?

 

小谷:そういうことではなく、日常的な部分で分離をしていって、子どもの自己決定をどれだけさせていくかが大切なんです。例えばレストランのメニューでもそうでしょ? お母さんが栄養のことを考えて勝手に決めてしまったりね。そうではなくて、何かを選ぶときには、子どもに自分で決めさせていかないといけない。でも日本では20歳を超えても親が口出しするケースが多いでしょ?

 

編集部:確かに、そういうご家庭が多い気がします。

 

小谷:それが、いろんな問題を引き起こしているので、意識を変える時期に来ているのではないかと思います。

 

編集部:子どもとの関わり方もそうですが、ママたちの意識改革も大切なのではと感じます。

 

小谷:イギリスのやり方を全部コピーして、分離すればいいかというと、そうではないんです。日本独自のやり方があってよくて、自立して、一人のアイデンティティをどう作っていくかなんですよ。やり方はいくらでもあるけど、現場で現実的に何を使ってどうやって行くか、それがHimemamaのこういう講座を開くことで、参加した人の意識に気づきが出て、こういう子育てしている人がいる、じゃあ、うちもやってみよう、となることが大事。私に言われたからやるではダメなんです。

 

編集部:なるほど。自分で気づいて決める。人に言われてやるのではだめなんですね。子どもはどんな時期でもアドバイスをすれば変わっていくのでしょうか?

 

小谷:年齢によってアドバイスは変えなければいけないんです。この子は、もう、こういう時期なんだって変えていかなければなりません。たとえば、子どもの呼び方。子どもが幼いときは○○ちゃんと呼ぶ人は多いですが、ずっと、“ちゃん付け” で呼んではいけないんです。

 

編集部:えっ…… そうなんですか!?

 

小谷:例えば10歳になったら○○さん。厳しいかもしれませんが呼び捨てもダメ。

 

編集部:呼び捨てもダメとは…… 自分の子どもをですか?

 

小谷:親と子供の関係をいつかはやめなければいけないんです。でないと、子どもは勝手に暴走して分離をするしかなくなるわけですよ。分離ができなかった子どもは、親に取り込まれて親にずっと気を遣いながら過ごし、結婚しても両方の親に気を遣って生きていく子も中にはいる。

 

編集部:なるほど……

 

小谷:それは勝手にやっていればいいんですが、子ども時代の呼び方を変える。子どもに決定権を与える。ある程度小遣いを渡したら、それを自由に使わせる。それはトレーニングになるんです。具体的に分離をどの段階で、どう分離していくか、そこを一切考えずに、ずっとベタベタすることが、子育てではないんです。子どもを自立させるために育てるのが育児なんですよ。ライオンだって動物はみんなそうでしょ?

 

編集部:確かに、動物はそうですね。

 

小谷:勘違いしているんですよ。生きる喜びそのもののためだけにというか、親が喜んだらいい、子どもが喜んだらいい、そういう問題じゃないでしょ? これから色んな変化が起こる時代がくるのに、この子には生きるためのさまざまな力をどうやって与えていくか。それには自分で判断できるようにしていかなければならないんです。

親子の距離間が保てることはお互いがしっかり自立している証


編集部:子どもが自己判断できるように手助けすること。これからの時代を生き抜くにはとくに大切ですよね。

 

小谷:だけど、そんな風に考えている人はいなくて、先ほどの講座でも少し話したけど、いろんな社会的な問題が起こってきたら、私のもとに相談にやって来るんです。ちょっと酷な言い方をすると、それは起こるべくして起こっているんです。親が過干渉でずっと代わりにやり続けたり、ベタベタしたり。自分の感情の処理の仕方すら教えていないんですよ。何歳になっても、自分は自分で生活していかないといけないんです。子ども達は子ども達で生活して、いい親子関係が保てるんです。

 

編集部:先生のお話を聞いていると、自分が親になってみて、自分と親との関わり方を改めて考えさせられます。

 

小谷:考え方が変わるでしょ? それを子どもにするには、まずいち早く自分が親から分離すること。

 

編集部:まず、そうかもしれませんね。

 

小谷:親との距離を取ることで、そのうえでもう一度、関係性を積み上げるんです。私はずっとカウンセリングでそれをやってきました。お母さんからのご相談で「この子が学校にいかないんです」って言っても、関係ないんです。「子どもに関わるな。この子は学校に行かなくていい」ってお伝えします。本人が行きたくないんだからそれでいい。一回切れるんです。

 

編集部:……切れる?

 

小谷:ここで一度関係を切る、という意味です。すると子どもはラクになって、自分で学校にいこうとするんです。その子は親のために行こうとしてたんでしょ?

 

編集部:子どもからしたらそうかもしれませんね。

 

小谷:親のために行くんじゃないでしょ? 自分が生きる力をつけるために学校に行くんです。そこの部分が欠落してるんで、それを含め、生きるうえで大切な能力を身につけていく必要性を伝えるために講座を開いています。

 

編集部:心配性のママは何かと気にしてしまう傾向にあると思うんですが。

 

小谷:それは、心配性ではないんです。そのママ自体が自立していないから結局そうなるんです。

 

編集部:それは、とても深いですね。

 

小谷:親の支配のもとに、こう言ったらおじいちゃん、おばあちゃんはどう言うかなとか、周りはどう思うかなとか、気にするんです。でも自分を持っていたらそんなことは関係ないでしょ? 周りのことをぐちゃぐちゃ気にせず、だからしっかりした情報を与えていかないといけないんです。

 

編集部:なるほど、心に響くお話がたくさん聞けました。働くワーママはつい一人で頑張りすぎてしまって、子育てがつらいなと感じてしまう時もあると思います。

 

小谷:そんなときはお子さんを預ければいいんですよ。1日5分一緒にいればいいんです。代わりにその子の事をすべて認めてくれる人が周りにいれば大丈夫なんですよ。

 

編集部:その言葉で、心がふっと軽くなるママも多いと思います。今日は貴重なお話をお聞かせいただいてありがとうございました。

主催団体:ママコミュニティHimememama 世田谷支部

これまで、一人で頑張ろうとするあまり、子育てが上手くできないと感じたり、何気なく他人と比べてしまって、反省ばかりしてしまうママもいらっしゃったと思います。でも、先生のお話を聞いていると、自分自身のネガティブな感情ばかりに目を向けないで、出来ることに目を向けていけばいいとことに気づきます。意識を少し変えることで、子育てに対する気持ちも軽くなるんですね。

そして、子どもが生まれてきてよかったと思えるような大人へ成長させるために、親としてどうかかわるか、そこに子育ての本質があるのだと思いました。

小谷信行さんプロフィール
日本アレルギー学会専門医、日本小児科学会専門医、医学博士、中国四国思春期学会理事長
専門:免疫アレルギー、育児学、小児心身症
30年にわたり、喘息、アトピー性皮膚炎、心身症、拒食症、被虐待など子どもたちの治療やサポートに取り組んでいる。
1949年鳥取県生まれ。 1975年岡山大学医学部卒業後、 1990年岡山大学小児科講師。
1991年松山赤十字病院小児科 第一部長、 2012年松山赤十字病院 副院長。
2015年倉敷成人病センター 学術顧問、 2016年よりジャパングリーンメディカルセンター(ロンドン)取締役。
HP:ジャパングリーンメディカル

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:北向由紀子

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