日本のママはほんの少しだけ視点を変えると、もっとラクに育児が楽しめる!
小児科医・小谷信行氏による 『子どもの能力の伸ばし方』 セミナー【前編】
ラシク・インタビューvol.134
ジャパングリーンメディカル 院長 小谷信行さん
イギリスはロンドンにある日本人のための総合医療センター ジャパングリーンメディカル。 院長・小谷信行先生による特別セミナー 『人生100年時代を生きる子供のための自尊心とコミュニケーション力を育てる子育てセミナー 子どもの能力の伸ばし方講座』 が7月4日、東京で開催されました。
(主催団体:ママ支援コミュニティHimemama 世田谷支部)
愛媛県松山市で40年間、小児科医、小児の心理の専門家として医療現場のみならず教育現場などでも活動をされてきた小谷信行先生。「日本のママは育児をがんばりすぎている、もっとママはラクに楽しく子育てをしてもいい」 という考えのもと日本で活動されたのち、イギリスに移住。現在はロンドンにおいて定期的に子育てセミナーを開催している小谷先生が、年に1度の来日の機会に、評判の子育てセミナーを日本でも実施してくださいました。
LAXICでは、その様子を2回に分けてお送りします。今回お送りする前編ではセミナーの内容を臨場感たっぷりにお伝えします! これからの子育てに活かせるメソッドとは!?
子どもの能力の伸ばし方
やる気スイッチを入れる魔法の言葉とは
小谷信行先生(以下、敬称略。小谷):まず、子どもの能力の伸ばし方とは何か。それは、幸せを感じることなんです。では、そもそも幸せとはなんでしょうか?
参加者:……難しいですね。
小谷:これは、いろんな学者が研究しているのですが、英語でいうとSubjective well-being。自分が主観的に、心も身体もとっても安定している状態をいいます。自分を肯定的にとらえ、自分の人生に意味がある。一言でいうと、「生まれてきてよかった」と思える状態にすること。これが、最終的に一番大切です。
その状態にするには、子どものやる気スイッチを入れることと、やらないスイッチを入れること。このふたつのスイッチを持って、自分で入れるようにならないといけません。親が無理やりに入れさせるとどこかでひずみが出ます。私たちにできることは、やる気スイッチをポンと入れる状況を作ること。それから、やらないスイッチを入れる方法を教えてあげることです。
子どものやる気スイッチをオンにするには、実は魔法の言葉があるんです。お子さんが何かをやったその瞬間に、「Excellent!」と言ってみてください。日本語では、やったね! すばらしいね! とかですかね。言うときは、自分で本当にExcellent! と思っていないといけませんよ。ちなみに「えらいね」とか「頑張っているね」はやめてください。評価ではなく、あなたがたがfeelしたことを伝えるのが大切です。今スイッチ入っているよ、というのがポイントなんです。
そもそも子どもの能力とは何か
能力はいつまでに伸ばせばいいのか?
小谷:それでは、子どもの能力とは何でしょうか?皆さんはどんな能力を伸ばしたいですか?
参加者:感情が豊かな子になってほしいと思っています。
参加者:私は、コミュニケーション能力がある子になってほしいです。
小谷:皆さん、さまざまな考えがあると思いますが、感情表現を含め、その子のどんな能力を伸ばしたいかをまず自分で決めることです。そこの意識づけをしっかりしておかないと、人がいいといったものを子どもに押し付けることになります。最終的な目的のために、その子に合ったものを伸ばすことが大切です。基本は自ら体験することで、生きていく能力、自己実現をする能力、幸せになる能力、自分を守る能力が身についていきます。頭の中でやっていても意味はなく、自ら体験しないと駄目なんです。基本的に身をもって体験することで自分を深く観察し、幸せかを常に評価しながら、自分に合っているかどうかを見る力をつけていくんです。
まず、子どもの能力は25歳までを目指して伸ばしてください。なぜこんなことを言うかというと、子どもに何か問題が起こったり人から指摘されたときに、とんでもないことのように扱って騒ぐ人が多いんです。ダメといわれている子でもある時ポンと成長する時があります。現段階で色々な問題があるからといって、この子はこういう子だと小さいうちに決めてしまうことはなんの意味もないんです。長い目で見ていけばいいんです。では、質問しますが、25歳を過ぎている皆さんはもう能力が伸びないのでしょうか? どう思いますか?
参加者:自分では能力はまだ伸びると思っています。
小谷:別の方はどうですか?
参加者:私もまだ伸びると思っています!
小谷:今日は、まだまだ伸びると思っている方が多いですね(笑) このデータは、アメリカの研究結果のもので、2007年生まれの子どもの半数が到達する年齢を示したものですが、日本人はなんと107歳なんです! 半数が107歳まで生きるんです。こんなに長生きなのに、25歳以降はもう能力が伸びないというのはおかしいでしょ? なので、何歳でも脱皮できます。ただし、脱皮しやすい年齢というのはあります。
まず、2~3歳の反抗期。どんどん反抗することで自分を変えていっているんです。次は、11~15歳の思春期。ほっといても変わるので、この時期を大切にしてあげてください。とにかく自己主張をさせてください。自分で実験して確かめている時期なので、抑え込もうとするのは止めてください。その後にも、40歳前後と、70歳前後でも変わると言われています。皆さんもこれからまだ伸びます。
自己肯定感と自尊心の本当の意味とは?
コミュニケーションをとる上で大切な2つの言葉
小谷:お子さんの特性を踏まえ、自己肯定感を出していくことが皆さんの仕事です。「こんなところが良かったよ」と必ず良いところを褒めてみましょう。また、「ここは、こうしたほうが良かったね」とダメなところも伝えましょう。すると、子どもは自分で自分を評価できるようになるんです。自分を正しく評価できることが自尊心。勝つことだけでなく、負けた時に相手をちゃんと認めることができるのが自尊心なんです。
コミュニケーションでは、相手に自分の想いを伝えることが大切です。伝えなければいけないことはふたつ。愛している人に「愛しています」と伝えること。もう一つは「イヤです」とイヤなことを伝えること。ケンカにならないように相手を傷つけないように伝えます。これはすごく難しいけれど、皆さんが体験の中でやって見せてください。
そうすることで、3つのモノが手に入ります。1つ目は、良い仕事。自分に合った仕事で、ハッピーになれることが見つかります。2つ目は、良いパートナー。自分をさらけ出しても逃げずに見つめてくれるのがパートナーです。3つ目は、良い仲間。自分と一緒に何かをやっていく仲間。今日の講演会やHimemamaの活動がこれにあたります。基本的にはコミュニケーション力があって、自分をしっかり持っていること。自分自身のアイデンティティーがグラグラだと良い関係性は築けません。今日の講座で皆さんに気付きがあればいいと思います。
講座は以上ですが、せっかくなので何か感想でも質問でも、あればどうぞ。
参加者:私は、3歳と6歳の子の育児をしていまして、なかなかうまくいかないことがあって…… 子どものために自己肯定感を育ててあげたいと思っているのですが、日々生活をしているとネガティブなことを言ってしまうことが多くて、なんとかしたいのですが……
小谷:それでいいんですよ。わが子だからそうなるんです。ひとつ大事なことは、自分自身を褒めているか。大半の人は反省が好きなんですよ。何かイベントすると反省会をしたがるでしょ? 反省はいいんですよ、でも役には立ちません。反省ではなくて、出来たことに目を向ければいいんです。自分が得意なことをやればいいんですよ。子どもはとにかく生きていてくれればそれでいい。そういう感覚をいつもは持てなくても、ちょっとだけ持っていたらいいですよ。
(後編へ続く)
参加者の方が最後にご質問されたことは、同じ子育て中のママとしてとても共感する内容でした。編集部は、この講演後、小谷先生にインタビューの機会をいただき、セミナー中に気になった点を伺いました。次回の後編では、その内容をたっぷりとお伝えしますのでお楽しみに!
- 小谷信行さんプロフィール
- 日本アレルギー学会専門医、日本小児科学会専門医、医学博士、中国四国思春期学会理事長
専門:免疫アレルギー、育児学、小児心身症
30年にわたり、喘息、アトピー性皮膚炎、心身症、拒食症、被虐待など子どもたちの治療やサポートに取り組んでいる。
1949年鳥取県生まれ。 1975年岡山大学医学部卒業後、 1990年岡山大学小児科講師。
1991年松山赤十字病院小児科 第一部長、 2012年松山赤十字病院 副院長。
2015年倉敷成人病センター 学術顧問、 2016年よりジャパングリーンメディカルセンター(ロンドン)取締役。 - HP:ジャパングリーンメディカル
ワーママを、楽しく。LAXIC
文・インタビュー:北向由紀子