考えるのも後回しになりがち!な老後のお金。 どのくらい必要? お金の池上彰こと、岡村さんに聞く! 「ワーママとお金の話」Vol.3
ワーママとお金の話のシリーズ。第3回目は、教育費に比べてさらに後回しになりやすい「老後のお金」についてです。
今回も、お金の池上彰さんこと、社労士でファイナンシャル・プランナーの岡村文吾さんに、詳しくお伺いしました!
Vol.1 出産・育児に関するお金の記事 はこちら
Vol.2 教育費の記事 はこちら
定年後、夫婦2人でゆとりを持って寿命を全うするのに必要なお金は1億円!
一ヶ月で35万円
岡村さん(以下 敬称略)このシリーズの最後は老後資金の話です。教育費と同じように、まずは、ゴールを明確にするということからはじめましょう。まず、男性の平均寿命ってわかります?
編集部 宮﨑(以下 宮﨑)75才くらい?
岡村あまり早く殺さないでください(笑)。80歳です。一方で、女性の平均寿命は87才。平均寿命だけでいうと、同い年の夫婦の場合、65歳で定年を迎えてからの2人の生活は15年間あるわけですね。そして、あくまで平均寿命で考えると…旦那さんが亡くなった後の、奥様1人の生活は7年間あるということです。
では、老後夫婦は月いくら位で暮らしているのか、分かりますか?
岡村図1の図にあるのですが、総務省の家計調査年報によると、夫婦2人に必要な老後の最低生活費は月22万程です。ごくごく平均的な国民の生活だと思っていいですね。食費・光熱費など諸処の経費を最低限に抑えた金額です。
でも、旅行も行きたいですよね?
編集部 齋藤(以下 齋藤)そして、旅行に行くとしたら子供や孫もついてきて、その分も支払いたくなるかも。
岡村友人とのつきあいとかね。それが図1の「ゆとりの生活費」と分類される経費で、月で計13万程度です。図1の「最低必要な生活費」に「ゆとりの生活費」を足すと、月35万。少しゆとりの生活をしたいと考えた時に、夫婦2人に必要な金額は月35万なんですね。
岡村上の図を見てください。65歳から80歳まで、夫婦2人でゆとりを持って暮らすために必要な金額は6500万。80歳から87歳までの間、女性が1人で夫婦の時の6割くらいの金額で生活したとして、7年で3780万円となります。合計で1億80万円ですね。同い年の夫婦が定年退職してから寿命を全うするのに、おおよそ一億円くらいかかる計算になるんです。
ただし、35万円というのは、住宅費除いて持ち家がある場合です。ローンがまだ完済していなければ、その経費もかかってきますね。
齋藤そんなにかかるんですね。
岡村第二の人生にはそのくらい必要なんです。
宮﨑65歳からの金額で計算しているところは気をつけなければいけないポイントですよね。60歳でリタイヤする人もいるかもしれないですし。
岡村そうですね。その場合はもっと早く準備をしなければなりません。
宮﨑今は65歳から年金はもらえますか?
岡村今はもらえます。
宮﨑私たちが老後になっても?
岡村それはまだ決まっていません。
宮﨑そうですよね。ここは怪しいですよね。
岡村実は、まだ議論もされていないんです。昔は60才からでした。そこから、20年掛けて65歳からになったんですね。だから急に「来年から67歳から支給」というようなことにはならないと思いますが、今の30代・40代がもらう頃には67歳・68歳くらいからの支給になるかもしれません。
30年後、公的年金で生涯の平均給料の50%はもらえる!?
岡村では、老後に必要なお金をどうやって用意するかという話にうつりますね。
まずは、下記に考えられる項目をあげます
1. 公的年金
2. 退職金・企業年金・401K
3. 貯蓄
4. 働き続ける
順を追って説明しますよ。ひとつは公的年金。ここが結構大きいです。ふたつめは退職金とか企業年金と呼ばれているもの。大きい会社だと普通の公的年金だけでなく企業年金や401K(確定拠出年金)と呼ばれているものがあります。3番目は貯蓄。足りない分は貯めておくしかない。そして4番目は究極の方法で、これからの時代はこれも必要かなと思うのですが、働き続けることです。
齋藤本当にそうですよね。
岡村今の65才って割と元気ですよね。急に働かなくていいと言われても、じっとしていられないくらいに。
では公的年金がいくらもらえるかを考えてみましょう。将来もらえる年金は3分で計算できます。年金は老齢基礎年金と老齢厚生年金の2階建てコースになっていて、その他に障害基礎年金、遺族基礎年金などもあります。
岡村まず老齢基礎年金はいわゆる国民年金と呼ばれているもので、自営業者も含めてみんながもらえるもの。一方の老齢厚生年金は企業で働いている人に支給されるものですね。国民全員がもらえる基礎年金をざっと計算すると、基礎年金の加入年月(40年)×2万円で、年間80万円もらえるんですね。1ヶ月で6.6万円です。
次に厚生年金の計算をします。生涯の平均年収を600万円として計算してみます。
600万円×0.005481×38年=125万円ですね。一ヶ月でだいたい10万程度。
と考えると、老齢基礎年金と老齢厚生年金をどちらももらえる人で考えると、大体月17万程度もらえることになるんです。夫婦共働きで60才まで勤めあげた夫婦だと、2人あわせて30万程度になります。
齋藤夫婦共働きで定年まで働けば、年金だけでくらせるかもしれない…
岡村あんまり慌てることないかなと思うかもしれませんね。が、みんなが不安に思っているのはなぜだと思います?
齋藤年金額が減るからですよね。
岡村その可能性が大いにあるからですね。実はこのもらえる年金の計算式は毎年改定されるんです。ですから今のおじいちゃんおばあちゃんがもらっているのも毎年変わっているんです。
では、昔から比べてその額って上がっていると思います?下ってきていると思います?
宮﨑下がってきている?
岡村逆なんですよ。今までは上がってきています。
ワーママが働き続けることが今後の年金を支える!?
岡村今80才のおじいちゃんおばあちゃんの現役時代はもっと物価が安かったですよね。それでも、今暮らしていけるお金をもらえているのは、年金額は毎年4月に改定されているからなんです。何に基づいて改定されるかというと物価の上昇率と賃金の上昇率で決まります。だから物価が上がって賃金が上がれば年金額も上がるんですが、今年の4月からもうひとつ指標が加わりました。それが「マクロ経済スライド」という指標なんですけどね。ややこしいので私は個人的に「少子化スライド」と言い換えています。
つまり物価と賃金以外にその年金を支える担い手の人口によって、この額を改定しましょうという制度が去年から発動されました。
今後どうなるかという見通しは、先までオープンになっていて、厚生労働省は所得代替率として説明しています。所得代替率というのは現役世代の給料に対して年金の割合がどのくらいかというものです。現役世代で50万円の給料もらっていて、年金が50万だとしたら代替率は100パーセントです。厚生労働省は、30年後の代替率として、現役時代の50パーセントの額は年金として確保しますから安心してくださいと言っています。30年後、現役世代に平均40万円の月給もらっていたら、20万は年金としてもらえるということですね。
今現在の所得代替率は62パーセントです。年金制度は100年は安心です!と言っていますが、裏をかえすと給付額は減りますよということですね。
実は、この計算は30年後の一番いい予想を元に算出されているんです。アベノミクスがうまくいき、女性の社会進出が進んで、より多くの女性たちが年金を払うようになりました。出生率も今のままキープで下がりません。というバラ色の姿でこの数字を出しています。
だから、もし景気がドンと下がり、出生率は上がらず、女性活用もうまくいかず、多くの人に厚生年金を払ってもらう仕組みがなかなかできませんでしたとなると、もっと下がる可能性はありますね。だから、これから日本経済が良くなっても少なくても、今の水準よりは2割くらい減ると思うんです。
宮﨑夫婦2人で働いていたら大丈夫かと思っていたのに。
岡村35万もらえると思っていたけど、これの2割減だと思うと、対策を考えないといけませんね。これを上回るくらい物価と賃金が上がれば別ですが。
年金はもらえないんじゃないか?と言う人もいますが、今、現時点での答えは年金はもらえます。但し、今と同じ水準かどうかはわかりません。
宮﨑そして公的年金だけでは足りないと。
岡村はい。足りないです。そこをどう補っていくかを考えながら、退職金の説明に移りましょう。
退職金をあてにした老後の生活は、5〜6年しかもたない
岡村平成5年時点では、92%の企業が出していた退職金は、平成25年で75%に減少しています。つまり、退職金制度はだんだんなくなりつつあります。
ちなみに、日経連が調べたデータによると、大手企業で大卒から定年まで務めた人の退職金の平均金額は2,156万円になります。日経連のデータなので対象は大手企業の人が多いですね。
齋藤そのくらいもらえたらいろいろまかなえますよね?
岡村一方で、中小企業の平均は1,200万くらいと言われています。たとえば、日経連の平均データの2,500万と言っても、年間例えば300万〜400万を生活費として使ったら5~6年しかもたないんですよ。だから、基本的には退職金は、生活するためのあてにしないほうがいいと思います。住宅ローンを完済する必要もあるかもしれないし。
宮﨑75歳まで住宅ローンを組んでいる人も多いですもんね。
例えば、この退職金をガッっと投資するという手は?
岡村それも1つの手ですね。
退職金は、一般的に一時金でもらうか、年金でもらうか選べるのですが、年金でもらったほうが利息は付きます。これを今企業は401Kに切り替えていますね。
平均すると401Kで会社が社員のために拠出してくれているのは毎月1万5千円くらいです。言い換えるとこれは退職金の前払いなんですよ。1万5千円出すからあとは自分たちで運用してねという話です。それを3パーセントくらいで運用していくと、だいたい1千万ちょっとになるんです。
長くお金を預ける時は、手段や通貨を分散させるべし
岡村最終手段は、貯蓄です。私の感覚で言うと長くお金を貯めて増やすものというのは、生命保険の仕組みを使うのが良いかなと思うのですが、他にも色々方法があります。
まずお金を貯める先ですね。
銀行、投資信託などをすることを考えた証券会社、そして、保険会社がありますが、それぞれにメリット・デメリットがあるんです。
例えば500万円のお金があるとします。このお金を銀行に預けたとすると、戻ってくるのはいくらでしょうか?500万プラスちょっとなんですよね。1万円かもしれないし2万円かもしれない。銀行のメリットは1千万円までですが、元本が保障されることですね。あとは引き出し自由なことです。
では、証券会社に株や投資信託を購入して、500万預けました。いくらかえってくるでしょうか?
齋藤未知数ですね。
岡村そうですね、わからないんです。すごく増えるかもしれないし、すごく減るかもしれない。わからない、というのが特徴です。
では、保険会社に500万預けました。一例ですが、保険ですから亡くなった場合死亡保険として1,500万程度になって戻ってきます。生き続けて老後資金にするという時はケースバイケースですが、ものによっては700万とか800万になるものもあります。メリットは何かあった時に保障が付いている。そして長く預ければ増えるしその額が予めわかる。計画が立てやすいんですね。デメリットはもし短期で止めたり解約したりすると損します。あとは健康な人でないと入れません。
齋藤最初に入っておかないと、まずいですね。
岡村そうですね。結局、長くお金を預ける時は、分散させるのがいちばん良いですよ。
預ける場所という意味での分散もあるし、円と外貨での分散もありますよね。
一番大切なのは、どんな老後を送りたいかをイメージすること
岡村老後のために一番大切なのは、いくらお金が必要なのか自分たちで考えることです。
「老後になったら10万で暮らしていけるんじゃないか?」と言う人も多いのですが、そういう人に「今いくらで暮らしていますか?」と聞くと「30万」と言ったりするんですよね。そういう人が急に10万で暮らせないですよ。
齋藤生活レベルを急に落とせないですよね。
岡村だからケチった見積もりじゃなくて、どういう生活をしたいのかイメージとしてきちんと考えることが必要です。「田舎で農家暮らしをしたい」というイメージがあるのなら、退職金をそれに充てようとあらかじめ考えて、その後の生活資金も見込んでおく。
Vol.2 教育費の記事でも説明したのですが、老後資金をいつ貯めるか?ということを考えると、例えば今35才で子どもが産まれた人の場合、その子どもが社会人になる頃には57歳になっているんですね。そこから、65歳の定年に向けて7年間で老後資金の全てを貯められるかというと、そうではないと思います。だから、少しずつでもいいから貯めていかないといけません。
宮﨑出産が遅ければ遅いほど、教育資金と老後資金は同時に準備していかないといけないんですよね。
岡村例えばひとつの方法として、子どもが保育園・幼稚園/小学校のお金がかからないうちに、2人で頑張って働いて10年の間に保険の払い込みを終えてしまい、あとは寝かせておくというのもあります。短期にまとめて預けると、実は増えるスピードが早いんです。そして保険には、預けているお金から、非常に低い金利で貸付を受けられるという機能があります。しかもローンのように何年までに「返せ」とか一切言わないんです。亡くなった時に精算しますくらいの話で貸付を受けられるんですね。
だから、教育費がもし足りなかったら、足りない分だけ貸付を受けることができます。貸し付けを受けた分は、子どもが就職してから返してもいいし、親がもう少し充当し続けて、老後資金として使ってもいいですよね。
宮﨑例えば終身保険は、子供が小さい時に家計を支える人たちが死んでしまったら困るから入っているということを考えると、ある時点で解約して老後資金にするという考え方もあるということですね。
岡村一部解約はできます。あるいはせめてお葬式代としてかかる200万分くらい取っておいて、あとは全部解約して現金化ということもできます。私は、保険の専門家でもあるので、保険の話が多くなってしまいましたね。老後の資金の話は以上で終わりです。
まずはイメージして、計算してみてください。
宮﨑はい、後回しにせず、一度夫婦で相談してみます!
齋藤ありがとうございました!