実家の荷物に運転免許返納…いつか訪れる親の老い
今から「私」は何ができる?【老いゆく親と向き合う座談会】

アドラー心理学に基づく子育てや家族の関係について、LAXICでも何度もご登場いただいている熊野英一さん。今回は親の老後・看取りをテーマにした『アドラー式 老いた親とのつき合い方』(海竜社)に関してインタビューさせていただきました。「まだまだ元気だし、親の介護や看取りなんて……」と思っていたLAXIC世代にも、親和性の高い話が続々と登場。(※前回記事参照)

いざ、自分の状況に立ち返った時、「あの実家の大量の荷物、どうしよう」「事故が怖いけど、運転いつまで?」「考え方の違う姉とやっていける?」など、脳裏をチラついていた不安が湧いてきて。問題を先延ばしにしておくより、今から何か対策しておいた方が良いのでは?でも、今はコロナ禍でなかなか直接会えないし…。

そこで、読者座談会を開催し、熊野さんを交えて公開カウンセリングとなりました。どんなお悩みが飛び出すでしょうか……?

※2020年11月熊野さん取材記事「いつかは訪れる親の介護・看取り。そんな『老いた親とのつき合い方』をアドラー心理学で解決しよう」はこちら

<座談会メンバー> *今回は匿名にてご参加いただいています
Aさん(40歳・子ども7歳・4歳) 実母も義理の両親(共に70代)も元気だが車がないと行動できない東京郊外在住なので免許返納のタイミングなどに悩んでいる。
Bさん(43歳・子ども16歳・13歳) 70代の実母の介護を実父と姉妹で担い中。姉との考え方の違いに悩みながら育児と両立中。
・Cさん(42歳・子ども10歳・7歳) 実母と義理の父(共に70代)がいる。実母の近くに姉がいるが、義理の父が一人で心配。
・熊野英一さん 「老いた親とのつきあい方」著者、アドラー心理学を通して家族のコミュニケーションを伝え、カウンセラーとしても活躍。
(ファシリテーター/LAXIC編集長 小山佐知子)

まだまだ元気な義理の親、だから話題にしにくい終活のこと…… 突破口は?

熊野さんを囲み、和気藹々とグループカウンセリングが行われました!

編集部:まず、事前にいただいたアンケートのなかで「まだまだ元気な親と、将来に向けての話をするためにはどうしたらいいですか?」という質問が多くありました。

 

Aさん:うちの実母は「子どもの世話にはなりたくない」タイプで、実際に車の買い替えのときも「運転のやめどき」を考慮して車を選んでいますし、エンディングノートも書いてあって「何かあったら、ここを見てね」と。実母はあまり心配していないのですが、義理の両親が心配。義父はすごく元気で「自分は大丈夫」と思っているタイプ。車の運転のやめどきとか、考えている様子がありません。というか、話していないのでわからない状態です。

 

熊野英一さん(以下、敬称略。熊野):実家のお母さんはアクティブに考えていていいですね! 確かに、義理の家だと話題にはしにくいよね。

 

Cさん:うちの実家の母も「娘には苦労をさせたくない」という思いがあるのか、前もって実家の荷物を整理し始めたり、車も小さくして全アシスト付きを選んだり、自ら考えて動いてくれています。でも、義理の父については、私も聞けていないだけか、何も考えていなさそうで…… 心配。長男である夫とも、そのことについて話したことがないし。

 

熊野:娘がいる、いないで準備の差はあるかもしれませんね。自分が嫁に行った先で苦労した経験があると「同じ想いはさせたくない」と思うでしょうし。Aさんのいう、義理の親に直接聞くのは確かに難しいかもしれない。でもCさんの夫と話さないのは、どうして?

 

Cさん:まだまだ元気だし、息子である夫に対してもそういう話題はタブーかな…… と。私的には、夫が主体的に動いてくれるのが理想なのですが、夫自身も、そんな発想すらなさそうで(苦笑) 男の人ってそんなものでしょうか。勝手にヤキモキしています。

 

熊野:確かに、いきなり「お義父さんの老後どうする?」と漠然とした大きな話題を出すのは勇気がいるし、話も進みにくいですよね。でも、「自分がこういう気持ちだよ」と伝えることはできますよね。Cさんだったら、夫に対して「一人でがんばっているお父さんのことを心配しているし、将来的に私はお父さんを支えるつもりだよ。だからいつでも相談してね」と。それを言われて嫌な夫はいないでしょう。直接言いにくければLINEでもいいので、その一言がきっかけになって、夫婦で良いチームワークを築けていけば、第一歩になるのでは?

 

Cさん:重い話をしようとするから動けなくなるのですね。 それならできそうです!

一緒に支えていく兄弟姉妹、ここの価値観の違いをどう埋めれば……?

3名それぞれのお悩みについて親身に答えてくださいました

熊野:先ほどの話だとAさんの実家は心配事なさそうですね!

 

Aさん:実家に関しては、姉との価値観の違いが気になっていて。父が25年前に亡くなっているのですが、私が前回、帰省した時に遺品整理をしたのです。すると、姉が処分に反対だったことが発覚して「これからは、捨てる前に私の家に荷物を送って」と(苦笑) 姉は物への執着が強く、私と正反対。実家の整理をしないのは、問題の先延ばしでしかないと思うのですが、私がどこまで踏み込むか…… 正直、悩みます。

 

Bさん:うちも姉と考え方が合わなくて。実家の母が倒れた時に、近くに住む姉が「私がやらなきゃ!」と必要以上に気負ってしまい、家族だけで完結させようとした結果、実家も姉も疲弊してしまった経験があります…… 

姉はようやく気持ちの整理がついたのか、ケアマネさんを毎日お願いして、やっと軌道に乗るようになりました。

 

Aさん:うちもそうなりそう……(苦笑) 姉は真面目で、気持ちや感覚が優先だから。

 

熊野:お二人とも妹としての悩みが共通していますね。兄弟姉妹って環境や遺伝の影響は似ているはずなのに、これだけ性格が分かれるのが不思議ですよね。アドラー心理学では性格のことを「ライフスタイル」と呼びますが、これらは兄弟間で価値観を分け合うことで生じるのです。一種のサバイバル戦略で「姉がこっちなら、私はこっち」と違う価値観を選び、親から認めてもらう道を見つけるのです。

 

一同:なるほど……! 確かにそうかも!

 

熊野:親は親で「お姉ちゃんだから」「妹はまだ小さいから」とメッセージを出してしまう。だから姉はいつも本当の自分を出せず、義務感に苛まれ、下の子はいつも守られていて穏やかで甘え上手。アドラーではこれらを「どっちが良い・悪い」ではなく、それぞれの価値観を認め合い、適度な距離感でお互いの妥協点を見つけようと考えます。論破したい、対決したい人がいればそれでも良いですが…… 協調と対決、Aさんはどちらを望みますか?

 

Aさん:もちろん協調です。今のお話を聞いて、先に「姉のやりたい様にやってもらえばいい」と思いました。サポートしやすいところに、私が入ればいいかなって。

 

熊野:「主体的に見守るスタンス」、良い解決策を自分で見出せましたね! あとは、その気持ちをお姉さんに伝えておくことをお勧めします。実際に介護が必要となったとき、事前に意思疎通をはかっておくことで、スムーズに進みますよ。LINEなどで伝えることはできますか?

 

Aさん:姉はSNSを一切やらないので、メールで伝えておきます(苦笑)

運転免許の返納について。親のプライドを傷つけず、どうやって伝える?

編集部:冒頭、Aさんのお話にもありましたが、「親のプライドを傷つけないで、免許返納のことを提案する方法はありますか?」という質問も多かったです。

 

Aさん:そうなのです。義理の両親はまだまだ運転できると思っていそう。もしかすると、考えてはいるけど、息子には話さないのか…… 私の耳に一切入ってきません。

 

熊野:前回の取材のときにも「共感ファースト」という話をしました。「まず共感する」けど「同意する・しない」は別。「そうだよね、誰でも運転はずっとしていたいよね」と、まずは共感して、「でも、他の方法があるかもよ」と提案をする。「老いていく」ということは、「喪失していく」ことを日々感じながら生きているのです。まず仕事がなくなる、子どもたちが巣立って家に一人だけ、友達やパートナーに先立たれる、段々といろんなものを喪失して、自分で生活をコントロールすることができなくなる。これはすごい喪失感だと思いませんか?

 

一同:確かに…… 

 

熊野:いま、みなさんが実感した様に、相手に乗り移って考えると「免許を返納するのは嫌だろうな」と感じましたね。それが共感の一歩になります。車の喪失は相当の危機感、だからこそ、その危機感を聞くことが大事。「どういう時に車がないと困る?」「どんな心配がある?」と、まずはたくさん不安を聞くことです。それからだと「シルバータクシーって、車を買うよりお得らしいよ」「踏み間違いを防ぐ装置があるみたい」など、別の手段を聞いてくれやすくなりますし、こちらも提案しやすくなります。

 

Aさん:「喪失していく」ことを考えたら、胸がキューっとなりました。まずは共感ですね。何か事故が起こってからでは困るし、まともに話ができるうちに話しておきたいので、早めに話したいです。

 

熊野:そう。失敗してしまってからだと、本人のプライドがより傷つき、さらに頑固おやじになっちゃうと困るので、早めがおすすめです!

コロナ禍で直接会えない今、どうやって親に伝えれば……?

熊野さんの新刊では、アドラーの考えに基づく親との適切なコミュニケーションについて、事例とともに書かれています

編集部:なかなか実家に帰れない今、どうやって伝えれば良いのでしょう?

 

Bさん:「娘として気になっているよ」ということを小まめに言っていくしかありませんよね。そもそも、運転を続けるか・続けないかは親の課題だし、その責任を子どもが背負う社会の風潮も違うと思う…… 

 

熊野:そう。Bさんが言ってくれたとおり、まずは「課題の分離」ですね。「お父さん、お母さんが運転するのは自由だけど、東京にいる娘として心配だよ」と自分の気持ちを伝えておく。どうしても心配で居ても立っても居られない状態なら、「本当に協力してほしい」とお願いする。

 

Cさん:ちなみに伝えるときは電話がいいですか? LINE?

 

熊野:自分が最も伝えやすい方法で良いですよ。LINEが言いやすい方はLINEでいいし。電話で言いにくいなら、次に実家に行った時でもいい。アジェンダ方式が慣れていてやりやすければそれでもいい(笑) よくね、「事例教えてください」って言われるのですが、自分と価値観の違う人や状況の違う人の事例を聞いても、あまり参考にならないです。人に答えを求めないで、「自分」が心地いい方法を考えましょう。結局、答えは全て自分の中にあるのです。その自己決定を後押しするために、事例は役立つので、書籍の後半も事例集にしました。

 

Bさん:自分の軸を見出すスキルが求められますね。お母さんって自分を見失いがちじゃないですか。いつも子どものため、夫のため、家族のため…… 自分が後回しだから。

 

熊野:そうなのです。だからこのコロナ禍真っ只なかに『急に「変われ」と言われても』(小学館クリエイティブ)という本を書きました。アンケートによると日本人の半分ぐらいは「正解を知ってからじゃないと動けない」そうです。まず一歩が動けない人は「まずは小さな一歩から」「仲間と一緒に動こう」この2つを実行すればいい。とにかく、自分がわくわくすることに対して、まずは小さなアクションを起こす、不安だったら仲間と一緒に動けばいい。親との関係、子育て、パートナー…… なんでも同じ。今日のこの会もそうですね。仲間と一緒に考えて、まずはスモールステップですよ!

 

一同:これならできそうな気がします。ありがとうございました!

まだまだ元気、と思っていながら年齢を考えるともう70代…… 会えるタイミングもないし、いきなり「老後」の話題は重たい。だから、まずは今できる小さなアクションを起こして、そこから繋げていけば良いのですね。座談会終了後、Aさんは「姉に気持ちを伝えてみる」、Bさんは「自分の気持ちに正直になる」、Cさんは「まずは夫に相談してみる」それぞれの小さなステップが見つかったので、ひとまず実行。そこから少しずつつないで、いつか来る親のエンディングに向けて、備えがスタートしました。
いつ来るかわからないからこそ、日ごろの準備が大切。皆さんも、自分が心地よく動けるスモールステップ、見つけてみませんか?

 

ファシリテーター:小山佐知子 インタビュー・文 飯田りえ

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