1. トップ
  2. 働き方・生き方
  3. 家族で通い、働く。シェアオフィスは新しい家族のあり方と働き方を実現する第3の場へ
2020.10.13 2023/05/31

家族で通い、働く。
シェアオフィスは新しい家族のあり方と働き方を実現する第3の場へ

FacebookTwitter
家族で通い、働く。<br>シェアオフィスは新しい家族のあり方と働き方を実現する第3の場へ

コロナ禍における企業のテレワーク導入が進み、場所に縛られない働き方が進みつつあります。さかのぼること約5年前。家と保育園、職場を隣接させた新しい働き方を提案する保育施設併設型シェアオフィス「Maffice(マフィス)」は誕生しました。

「Maffice」を運営するオクシイ株式会社 代表取締役の高田麻衣子さんは、自身の会社員ママとしての経験をもとに、「子育てを大切にしながらも自分らしく妥協しない仕事をしたい」という想いからこの事業を立ち上げました。横濱元町、北参道、名古屋に加え、2021年4月には横浜市に認可保育園「マフィス 白楽ナーサリー」と保育サービス付きシェアオフィス「マフィス 横濱白楽」を開設し、認可保育園を利用される方も子どもの近くで仕事をすることが可能となります。

開業から6年目を迎え、社会情勢も変化するいま、「シェアオフィスの役割も徐々に変わりつつある」と高田さんは話します。育児も仕事も自分らしく楽しみたい女性、家族の第3の場所として求められるシェアオフィスについてお伺いしました。

以前のインタビューはこちら

変化する育児のカタチ。主語は“ママ”から“家族”へ

高田麻衣子さん

編集部:Mafficeを開業されて5年ほど経ちますが、5年前と比べて育児を取り巻く環境の変化を感じることはありますか?

 

高田麻衣子さん(以下、敬称略。高田):そうですね。やはり以前と比べて、男性が当事者意識を持って育児に参加されている姿を多く見かけるようになりました。オープン当初の利用者はほぼ女性、ママでしたが、今ではパパがお子さんを連れてきて、そのままデスクを使われるケースも増えてきています。

 

編集部:それは大きな変化ですね!

 

高田:そうなんです。パパ利用者のなかにはMafficeで給食の介助をしながら離乳食の勉強をされる方もいらっしゃいます。ほかにも、週末はパパがMafficeを利用することで、ママがゆっくりできる自由時間を確保するというご家庭もあります。

 

編集部:これまでは母親だけが背負いがちだった育児を、家族でうまく工夫しながら回しているという印象ですね。

 

高田:そうですね。そうした家庭内の育児環境の変化を受けて、Mafficeも今年の6月からコンセプトを「ママを助けるシェアオフィス」から「ママと家族のためのシェアオフィス」に変更したんです。夫婦で育児の役割を分けるというよりも「みんなで動いていこう!」といったメッセージが込められています。

 

編集部:5年間で家庭内での育児のあり方が変わってきているということですね。ちなみにコンセプトを変更してからは、サービス内容はどのように変化したのでしょうか?

 

高田:これまでは基本的に「1アカウント1デスク」の考え方で同時に使えるのはご夫婦どちらか1名様まででした。6月からはお子様が保育施設をご利用くださっている方には、料金は変わらず夫婦お2人で同時にデスクを使っていただけるようになりました。

 

編集部:ご利用者さんの反応はいかがですか?

 

高田:ちょうど緊急事態宣言明けのタイミングで企業のリモートワークが増えたことから、「夫婦でデスクが使えるからMafficeがいい」というニーズがすごく増えてきたなという印象があります。ビジター利用の男性も増えましたね。パパの利用が増えたことにより、男性ビジネスマンも利用しやすくなったという背景があるかもしれませんね。

育休中の“学び直し”の場として。シェアオフィスのあらたな役割

Maffice北参道の保育スペース

編集部:5年間でさまざまな変化を感じてこられたようですが、Mafficeを利用者するママたちについてはいかがでしょう? 何か変化はありましたか?

 

高田:そうですね。設立当初から育休中に時間を有効活用して、資格の勉強をするなど復職に向けて積極的に準備されている方はいらっしゃいましたが、最近は数が増えている印象です。たとえば、時短勤務になってお給料が減ってしまうので資格を取っておいて資格手当をもらおうだとか、TOEICのスコアを上げてこれまでできなかった仕事を短時間でこなそうといったように、育休中に準備しておくことで復職後もパフォーマンスを落とさないようにと努力される方が多いですね。

 

編集部:なるほど! みなさん熱心ですね。ちなみに育休中の女性はどのようにMafficeを利用されているのでしょうか?

 

高田:Mafficeはフルタイム利用以外にも、たとえば「午前中のみ週3回」というようにフレキシブルな使い方ができる「セレクトプラン」というものがあります。週数回、短時間を使って、育休中を学び直しの時間にあてて、将来のために投資される方が増えています。

 

編集部:確かにここ最近は「学び直し」への関心が高くなっていますよね。

 

高田:ちなみに、昨年1年間は、育休中のママと企業とのマッチングで行うボランティアサービスのお手伝いとして、ボランティアをするママたちの作業場所としてシェアオフィスの一部を提供していました。大手企業の優秀な女性たちがベンチャー企業の提案書などの書類作成など、育休中でしかできない体験を通してご自身を高めている姿が見受けられ、素晴らしいなと思いました。

 

編集部:みなさん意識が高く主体的ですね。

 

高田:本当にそう思います。ただ、一方で、育休中は孤独になりやすい面もあるので、スキルアップだけでなく、人とつながる場に出向くことも大切なことだと思います。

脱・孤育てを支える。つながり、学びあえる親子のサードプレイス

編集部:確かに子育て中は孤独を感じるママも多いですよね。Mafficeでも利用者さん同士でコミュニケーションがとれるような場作りに取り組まれていらっしゃるのですか?

 

高田:そうですね。設立当初からイベントなどの場作りには積極的に取り組んできました。

 

編集部:具体的にどんなイベントを過去に開催されてきたのですか?

 

高田:たとえば、Mafficeの給食を監修いただいているフードアナリストとけいじ千絵さんに子どもの味覚の育て方やワーキングマザー向けの晩御飯作りをレクチャーして頂いたり、復職前の身だしなみ講座を開催したり。また、過去からのご利用者さまを集めて交流会のようなものも開催していました。

 

編集部:ママたちもイベントを通して横のつながりが生まれて、心強いですよね。

 

高田:はい。ただ、Mafficeの場合、普段から利用者さん同士自然に仲良くされている印象が強いですね。会社だと仕事の話しかできなかったり、ママ友だと子どもの話しかできなかったりというなかで、Mafficeはどちらの話もできる場所なんだと思います。

 

編集部:どちらの話もできる場所はとても貴重ですね。

 

高田:自分の子どもだけでなく、ほかのお子さんを一緒に見守りながら子育てをしているので、子も親も一緒に成長している感覚があるんですよね。

 

編集部:まさに会社でもない家庭でもない第3の場所ですよね。

 

高田:今はコロナの影響もあり、リアルに集まるイベントは開催できていないのですが、利用者同士の交流会など仕事と子育ての垣根なく色んなお話を自由にしていただけるコミュニティは、安心できたり、刺激がもらえたりする場所になっていると思います。

母として職業人として。もっとラクに生きるマインドセットとは?

編集部:LAXICの読者のなかにも子育てと仕事の両立に苦労しているという方は多いと思うのですが、心折れず仕事を長く続けていくために大切なことはどんなことだとお考えですか?

 

高田:個人的な意見ですが、女性は真面目すぎる方が多いので一人で抱え込みすぎず、もう少し自分を甘やかすことが大切かなと思います。

 

編集部:具体的には仕事の取り組み方や考え方をどのように変えたらいいのでしょうか?

 

高田:まずはルールを重んじる前に、目的を達成するためにどうしたらいいかを純粋に考えることですね。女性はどこかで「ラクをしちゃいけない」という考えにしばられがちなので、既存のルールにとらわれず、問題をラクに早く解決できる方法を見つけるという考え方に切り替えることが大切だと思います。

 

編集部:確かに「ラクしちゃいけない」と思って、大変なのに大変なやり方を変えないというのはあります。

 

高田:そうなんですよね。基本的には無理をしないことが大切なことだと思います。今後の働き方は自由度が高まる反面、「育児」と「仕事」を頭の中での棲み分けしてルールを作っていかないと、成果がグズグズになってしまうことがあるかなと思っています。

なので、はじめから育児が大変な時期は無理をしないと決めて、仕事量を調整しながらタイミングを見ながら仕事量を徐々に増やしていくというのも選択肢の一つだと思います。

 

編集部:何事にも無理は禁物ですよね。では最後に、今後働き方がどんどん自由になり、手探りで進んで行くしかない状況のなかで、世の中をどのようにサバイブしていけばよいのかママたちにアドバイスをお願いします。

 

高田:物事や課題を俯瞰して、広い視野で見ることだと思います。仕事であろうが何であろうが、自分がこうしたいということを実現するためには既存のルールや価値観にしばられる必要はないんです。物事を俯瞰で捉えて、もう少し高い位置から自分や周りの人を見ることで、視野が広がって先を見通しがつかめるようになると思います。将棋をさす棋士になるようなイメージでしょうか(笑)

 

編集部:棋士になる…… ですね。なんだか格好いい! 先行きが見えないときこそ物事を俯瞰で捉えることは確かに大切ですよね。高田さん、ありがとうございました!

笑顔が美しく、まさにキラキラ輝くようなオーラを身にまとう高田さん。働く母親たちがいかに自分らしく生きられるかを常に考え、そのために行動する高田さんの言葉ひとつひとつには自分を信じる強さと自信に満ちあふれていました。そんな高田さんが手がけるMafficeは出産後も「私らしさを諦めず、家族とともに輝ける場所」としての今後ますます求められる場になるように感じられました。

プロフィール

高田麻衣子さん

オクシイ株式会社 代表取締役

1977年富山県生まれ。大阪市立大学生活科学部を卒業後、不動産ディベロッパーであるスペースデザインへ就職。その後、不動産会社トーセイに転職し、女性初の管理職を経験。2014年8月にオクシイ株式会社を設立。同年12月に保育サービス付きシェアオフィス「マフィス馬事公苑」を開業。2017年には2施設目を神奈川県・横濱元町に開設。2018年3月にマフィス馬事公苑を移転する形で、「マフィス北参道」をオープン。2019年には「マフィス名古屋グローバルゲート」のオープンの他、エミフィス練馬の運営受託も行ない、企業のリモートワーク・フリーランス・起業・複業など、ライフスタイルの転換期に、働き方をシフトしたい人たちを支援している。

文・インタビュー:倉沢れい

ライター

倉沢れい

ライター

この記事をシェアする

FacebookTwitter