こども食堂の新たな取り組み
「読み終わった絵本」で地域と人をつなぎ、交流のきっかけに

小学生の頃、学校から帰ったあとにランドセルを家に置き、急いで駄菓子屋に向かって友だちと遊んだあのときの光景は、みなさんの記憶の奥にもきっと残っているはずです。

かつては、どの地域にも子どもたちにとっての社交場があり、そこは駄菓子屋の店主や近所の大人たちからあらゆることを教えてもらう場となっていました。

時代の変化とともに子どもたちの放課後の過ごし方も変わってきた中で、地域の大人と子どもの交流の形もまた、変化しています。

 

今回は、地域コミュニティのひとつ「こども食堂」を切り口に、そこに集う人たちのコミュニケーションを促進する取り組み事例から、今の時代に求められる地域コミュニティの形について考えていきたいと思います。

こども食堂は貧しい子どもだけが行く場所?

「こども食堂」とは、子どもが一人でも行ける無料または低額の食堂です。「みんな食堂」「地域食堂」という名称のところもあり、子どもたちに食事を提供する地域コミュニティとなっています。

 

こども食堂は民間発の自主的・自発的な取組みがゆえ、運営を支援する公的な制度などは整備されていませんが、こども食堂の数は増加の一途をたどっており、この4年で15倍以上に増えました。背景には「子どもの貧困」という社会問題があり、子どもの貧困世帯の半数はひとり親であることが分かっています。子どもがひとりでご飯を食べる「孤食」という言葉をメディアを通して聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。また、SDGsも「誰ひとり取り残さない」という強いスローガンを掲げていることから、こども食堂は貧困問題のテンプレートとしてクローズアップされることも少なくありません。

 

そのような流れから、「こども食堂は貧しい子どもが行く場所」というイメージが定着しているようにも感じますが、こども食堂は、子どもの貧困対策だけでなく、地域交流の拠点という役割も持っているのです。経済状況に関わらず、あらゆる子どもを受け入れることはもちろんのこと、親世代やシニア世代も参加できる、いわば「どなたでもどうぞ」というスタンスで運営されているところがほとんどです。

こども食堂のイメージが変わる!?「Re-labelingプロジェクト」

こども食堂のようす。(「特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」提供)

「こども食堂の支援を通じて、誰もとりこぼさない社会をつくる」をビジョンに掲げ、地域ネットワーク支援事業、企業・団体との協働事業、調査・研究事業を展開する、特定非営利法人全国こども食堂支援センター・むすびえ(以下、むすびえ)。今回、編集部は、むすびえの広報・ファンドレイジング担当 江副さんに文書にてお話を伺いました。こども食堂の社会イメージについて聞いてみると、さっそく以下の回答をいただきました。

「誰でも集まれる、もう一つの家族のような場所」というのがこども食堂の本来の姿です。しかし、ネガティブなイメージも纏っていることにジレンマを抱え続けています。

先述のように、こども食堂にネガティブなイメージが根付いた背景には貧困問題などさまざまな要素がありますが、むすびえの江副さんは、「こども食堂は、子どもに対して無料または定額でご飯を提供しているところがほとんどのため、そうした取り組みが特に生活困窮世帯に向けたイメージに変わっていったのではないか」とその一因を推測します。また、そのような部分だけをドキュメンタリー番組や報道番組の特集などで敢えて切り取ることでネガティブを描くシーンとして使われている印象も強く、こども食堂へ行ったことがない方がほとんどの中で、偏見と現実のギャップに拍車をかけているのではないかとも感じます。

そんな状況を打破すべく、むすびえは、Facebook Japanと共同で『Re-labelingプロジェクト』を立ち上げました。このプロジェクトでは、「こども食堂は貧しい子どもだけが行く場所だ」といった誤ったラベル(イメージ)をはがし、こども食堂の正しいイメージを広げるきっかけを作ることを目的にしています。

こども食堂を舞台に仕掛ける「温故知新」

こども食堂にはさまざまな年代の親子が訪れています。(「特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」提供)

昨今の世の中には情報があふれていますが、言い方を変えれば、何が正しいものかを選ぶ力が試される時代ともいえます。Re-labelingプロジェクトでは、現場のことを最もよく知るむすびえと人と人をつなぐテクノロジーを提供している「Facebook Japan」がタッグを組むことで、こども食堂と地域が支え合う関係に踏み出すための第一歩である「こども食堂に足を運ぶきっかけ」をつくることが可能になりました。この取り組みを実践することによってこども食堂が抱える課題にアプローチしています。

むすびえの江副さんは文章で以下のような回答をくれました。

「多くのこども食堂は、子どもだけが通う場所に留まらず、地域にとってのみんなの居場所であるからこそ、誰でも関われる余地のある場所だと感じています」

プロジェクト名に込められた「Re-labeling」からもラベルを貼り直すという強いメッセージ性を感じますよね。私はこのプロジェクトの取り組みを初めて目にしたとき、「温故知新」という四字熟語が頭に浮かびました。身の回りのさまざまなものが日々、目まぐるしく変わっていきますが、その中にある“古きをたずねて新しきを知る”ことこそが現代では非常に大きな価値を持つのではないかと感じています。

 

今の時代、子どもの意思だけで外で自由に遊ぶことも難しくなっています。しかし、一方で、今でも駄菓子屋のある街に目を向ければ、当時の懐かしい光景が今も残されています。そんな地域のコミュニティがある街は魅力的で、今回のプロジェクトもまた、そのようにかつてはどこにでもあった人とのつながりの素晴らしさを新たな形で取り戻す挑戦にも映りました。

大きな願いを「絵本」に込めて

みんなの絵本ボックス。(「Facebook Japan」提供)

Re-labelingプロジェクトが未来の希望として託すアイテム、「絵本」。むすびえの江副さんはこう話します。

こども食堂は、子どもたちだけでなく、親御さんと一緒に小さなお子様がいらっしゃる機会も多く、絵本を集めることで地域との交流が生まれるのではないかと考えました

プロジェクトの第一弾では、NPO法人スーパーダディ協会とも連携して「デリバリー絵本展」の開催を行い、12月に発表された第二弾では、こども食堂と地域コミュニティの接点を生み、コミュニケーションの促進する仕掛けとして「みんなの絵本ボックス」の提供を実施しています。「みんなの絵本ボックス」は、こども食堂運営者のみなさんが、任意のサイズに印刷し、お手持ちの空き箱などに貼り付けるだけで、「地域住民や子どもたち向けに、地域の読み終わった絵本を集め、絵本を持って帰ることができる箱」を簡単に示すことができ、地域住民がこども食堂に関わるきっかけを提供することができます。

 

こども食堂にやってきた子どもたちは、読み終わった絵本を置いて行ったり、気になる絵本をボックスの中から持って帰ったりします。絵本自体は、決して目新しいものではないかもしれませんが、そこから紡がれる物語には、あらゆる垣根を越えて子どもと大人がつながることのできる大いなる可能性を秘めているように感じます。

上:「みんなの絵本ボックス」通常版 下:「みんなの絵本ボックス」ブランク版。(「Facebook Japan」提供)
※「みんなの絵本ボックス」のサインは、MetaのニュースルームやMeta日本公式 Facebookページからダウンロードできます。

地域コミュニティの“かすがい”に絵本を選んだ背景には、新型コロナウイルス感染症の影響も。例に違わず、こども食堂も大きな影響を受け、入場に人数制限をかけるなど、こども食堂と地域の交流の機会を作りにくい状況にある中、できるだけ接触を介さず絵本の交換を促すことで、こども食堂と地域が支え合う関係に踏み出すための第一歩でもあります。

 

現代の小学生は、家庭と学校、習い事の往復というケースも少なくありません。感性が磨かれる大事な時期に家族以外の大人を知ることは、人生の視野を広げていくために大切なことです。地域社会との関わりは、そうした意味でとても重要ではないでしょうか。みなさんも機会があればぜひ、お近くのこども食堂を訪問してみてはいかがでしょうか。

ライター 山口 忠成
小学生の長男と未就学児の長女を持つ2児のパパ。メディアの構成などに携わる職業柄、あらゆることにアンテナを張ってきた中で、子どもや家族との関わり方、日常のワンシーンでの気づきなどを父親として切り取る。家族が豊かな方向へと足並みを揃えるには「パパによる子育てへの意識」が重要だと感じます。様々な側面を通して見えてくる新たな気づきを共有できればと思っています。

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