【これからの子育て特集/座談会】
海外在住ママと考える、個性を伸ばし自己肯定感を高める子育てのヒント

経済や社会の常識が簡単にひっくりかえる現代。VUCA(予測不可能)と言われる今だからこそ、子どもには主体性をもって自発的に考え、自分に自信をもって生きていく力を身につけてほしい。
 
一方、親である私たちLAXIC読者世代は、「みんな同じであること」が良しとされ、「体罰」「叱る」「厳しいしつけ」もあった時代に育ちました。近年では、「叱る」と「体罰」は子どもの発達においてマイナスなこと、と社会でも認知されてきており、2020年4月の児童虐待防止法改正では、「体罰禁止」が明記されました。
 
「しつけ」=「体罰」ではないことを頭では理解していても、LAXIC読者からは「つい大声で怒ってしまう」「褒めてばかりだと、甘やかしになるのでは?」というお悩みの声を聞きます。
 
これからの時代の育児や教育について考える全5回の特集。今回は世界の教育やしつけ事情について視野を広げるべく、海外在住ママたちに集まっていただき、座談会を開催しました。「個性を尊重し、自己肯定感を高めるしつけとは?」「育児のグローバルスタンダードとは?」海外に暮らし、子育てしたことで感じた日本との違いについてお聞きしました。
「わが子を怒鳴ったこと、叩いたことがありますか?」しつけと体罰に関する緊急読者アンケートから見えてきたママたちの本音とは?
 

左上から筒井美華子さん、御林友希さん、阿部真奈美さん、高橋啓子さん、小山佐知子

<座談メンバー>
■筒井 美華子さん
アメリカ、サンフランシスコ在住。「Himemamaサンフランシスコ」代表、モイスティーヌスキンアドバイザー、アイシングクッキークリエイター。渡米3年目にグリーンカードを取得、以降はアメリカでも仕事を始める。子どもは13歳の娘が1人。
■御林 友希さん
シンガポール駐在中。日本ではInternational Kindergarten(認可外保育園)の施設長を経験。現在日本のNPOにプロボノとして参画中。子どもは7歳の娘と、5歳の息子の2人。
■阿部 真奈美さん
メキシコ、アメリカの駐在を経て、日本在住。駐在前は公務員として働いていた。駐在中に幼児教育に興味を持ち、これから幼児教育講師として就労する予定。子どもは9歳の息子、6歳の娘、2歳の息子の3人。メキシコとアメリカでの出産経験がある。
■高橋 啓子さん
イギリス、ロンドン駐在中。日本では商社事務職を経験。駐在後少しずつ仕事を再開し、現在はリモートワークで日本企業の仕事をする。LAXIC編集部にも在籍。子どもは7歳の息子、5歳の娘の2人。
※ファシリテーターはLAXIC編集長 小山佐知子

新しい価値観を得て、「しつけや教育」を客観的に振り返ることができた

LAXIC編集長 小山 佐知子(以下、小山):日本では昨年、法改正によって「体罰禁止」が法律で決まりました。「体罰としつけ」は混同してはいけないところですが、「その境界線がわからない」「つい手がでてしまう」というLAXIC読者の悲痛な声を聞いてきました。みなさんもそうした経験はありましたか?

 

筒井 美華子さん(以下、敬称略。筒井):娘の意見を聞いてあげたい反面、自分はこうしたいという親としてのこだわりや、「彼女のため」を思って、つい一生懸命しつけをしてしまう。あるとき忙しさのあまり自分に余裕がなくなってしまい、娘の腕をグイッと引っ張ったら腕が抜けてしまったことがあって…。娘にいい学校、いい進路に進んでほしいと思うあまり、厳しく接してしまっていました。

 

高橋 啓子さん(以下、敬称略。高橋):確かに疲れていると余裕がなくなって、子どもを受け止めるのが厳しくなります。わが家は長男が、赤ちゃんのときはよく泣くし、なかなか寝ない子でした。成長しても他の子が遊んでいる輪にうちの子は入らず、どこかへ行っちゃったり。「息子は普通だけど何かが違う?」という不安がどんどん溜まっていって、そのとき下の子が生まれ、ロンドン駐在が始まったタイミングでもあり「何で他の子と同じようにできないの?」とつい声を荒げて自己嫌悪に陥ってしまいました。

 

阿部 真奈美さん(以下、敬称略。阿部):一番上の子が1歳のときにメキシコ駐在が始まり、私はほぼ海外で子育てしていたことになります。夫も駐在したばかりで余裕がなくて、私はワンオペ。治安の面で外で気晴らしをすることもできず、イライラして爆発することもたくさんありました。上の子たちにはそういう意味では可哀想なことをしてしまったという思いもあり、3番目の子は反省を生かして余裕を持って接してあげられているなと、海外駐在時と比較して振り返っています。

 

御林 友希さん(以下、敬称略。御林):私の場合は自分の母親の存在が大きかったですね。とても尊敬できる人で、専業主婦としてずっと子どもを育んでくれました。一方で、母はどこかで自分の夢を諦めてしまったのでは?という感覚が記憶の中でありました。「母のような子育て」と仕事を持つことがいつしか私の目標になっていました。
 
ですが2歳差の子どもの育児と仕事を完璧にやろうとするあまり、無意識に子どもたちに、大人の時間や都合でコントロールしようとしてしまう自分がいて、さらにイライラしたりと、負のスパイラルに陥っていました。海外に来て、自分のキャリアを手放したことで、「手放してもいいんだ」と思えるようになり、そうしたら肩の荷が降りて子育てもグッと楽になったように感じます。

 

小山:なるほど。環境が変わったことで自分の考えも変わったということなんですね。

 

筒井:私の場合もアメリカに来たことによって価値観が変わりました。たとえばお友だちが家に遊びに来て食事を出したときに、お友達ははっきり「これは嫌い、食べたくない」と言うんですね。普段娘には好き嫌いしないで食べなさい、と親が決めてしつけてきましたが、友達はOKで娘はダメは違うと思って。「アメリカの社会で生きるためには「自分の意見を言えること」「自分で決めること」ができないと生きていけない。そのためには自分のペースや考えでやらせるという形に変える必要があると感じました。試行錯誤ありましたが、娘も私に従うだけではなく、自分の意見も言えるようになりましたね。

 

高橋:私は息子が4歳になった時に、カウンセラーに会いに行きました。客観的に状況を整理してもらえたことが私の中でのターニングポイントでした。そのことを学校に話して、「私たち同じものを見ていますね」と理解してもらえたこと、そして私から見たら個性が強くて心配だった部分を認めてくれて、良いところとして「伸ばしましょう」と言ってもらったことで気持ちが楽になりました。

多様な価値観の中で「こうあるべき」から解放された

小山:日本の女性はとても頑張り屋さんで、他の国から駐在している人と比べて、日本との違いに迷ったり戸惑ったりしやすいとよく聞きます。たとえば日本では家のことも、子育ても、全て把握して自分も頑張るのがいいお母さんというイメージがありますが、海外では「家族のために尽くす=いい母親」という構図ではないとか。

 

御林:シンガポールは、共働きが普通なのでヘルパー(メイドさん)文化が根付いていて、家庭に子育てを伴走してくれる人がいる家庭が多いんです。日本は子育ては、今でこそいろんな頼る場が出てきましたが、家庭だけでなんとかする!という感覚がまだまだ強い気がしました。学校のお迎えも、周りを見るとヘルパーさんの家庭も多いことに初めはびっくりしました。私はヘルパーさんにはまだお願いをしていないですが、送り迎えやお弁当を毎日私がしていることを知った、欧米出身のママに「自分の時間がないじゃない!いいの?」と口をあんぐりされました。「そうか!しんどくなったら、誰かを頼るという選択肢があるんだ」と思えるようになって、すごく楽になりました。

 

筒井:私もアメリカに来て初めて、学校が終わった後に子どもを校庭で遊ばせたときに、周りで一緒についている人がみんなママだと思ってたら、ナニーさんだったんです。本当にびっくりしました!

小山:このあたりのエピソードは一番日本との違いが出るところかもしれませんね。

 

筒井:友だちの家へ遊びに行くと、みんなご飯を作ってないんです。だからキッチンがモデルルームみたいにピカピカ(笑)!買ってきたものを食べたり、夜にハンバーガーというのが当たり前なんですね。ランチボックスも、日本のキャラ弁みたいにきれいに飾って詰めて彩りゆたかなものは皆無です。それからは餃子とご飯、みたいにざっくりと食べればいいや、となりましたね。三角食べとか、栄養とかそういうのも前ほど気にならなくなりました。

 

小山:先日LAXICでも、食育の話が話題になりました。「子どもには栄養を」とか「三角食べは大事」と分かってはいるのですが、忙しい毎日の中でなかなかそこまで手が追いついていないというジレンマを感じました。食事の面でも日本と世界のギャップは大きそうな気がしますね。

 

高橋:まさに食事の面が私も一番助かりました。イギリスもアメリカ同様に割と食事に手を抜いている文化なのですが、焦って余裕がなく過ごしている時に、毎日完璧にする必要はなく「いいんだな」って思えるようになりましたね。
 
あとは日本だと子どもの行動は母親が気にするのが前提で、子どもの言動はは親の育て方が…と思われがちな気がしますが、ヨーロッパでは、もちろん子どもが悪いことをしたら親が謝るのですが、親と子を切り離して考えているというか、子どもと親は別個人という意識がある気がします。

自分の考えで行動するための力をつけるには、「個人として尊重する」「褒めること」


小山:育児も家事も「横並びで、こうあるべき」という考え方が強かった日本も、最近は育児や教育面で「自分で生きる力をつける」、そのために「個性を尊重する」「褒めて伸ばす」という方向にシフトしてきていますが、なかなか現実が伴っていかない場面もあります。海外ではどうでしょうか?

 

阿部:日本で幼児教育に携わっていますが、叱られて育った子は行動に出やすく、自己肯定感にも影響していると思います。とはいえ「駄目なものは駄目」と、毅然と示さなくてはならない。特にアメリカではその区別がしっかりしていたからか、父親に対してのリスペクト度合いが日本より高かったですね。甘やかすのではなく、子どものいいところを見つけて褒めるというのはとても必要だと思っています。

 

御林:シンガポールは、ローカルの学校では日本の小学6年生にあたる学年で受験をする必要があり、そこで大きく今後の道が変わってくるとも言われています。幼少期から、塾や習い事に熱心なご家庭も多いですね。今シンガポールとしても過渡期で、欧米でも注目されているSEL(感情や社会性)をもっと教育現場へ取り入れて、人間力を育もうという風潮もできています。ローカル学校以外には、インターナショナルスクールなどの選択肢は豊富にあるので、主に駐在や移住した子どもにとっては、多様性な選択肢がありますね。

 

筒井:カリフォルニアという土地柄もありますが、娘の学校ではLGBTQだとカミングアウトしている子も数人います。でも周りも「そうなんだ」って受け入れていて、成績がいい悪いや、個性で人を判断しないし、「あの子はこれがすごくできるんだ」「この子はこれができるんだね」っていうところをみんなが認め合っています。小さいころから褒める教育を通して自己肯定感を育まれているから、授業も積極的に発言し、間違ったら恥ずかしいとは思っていないですね。自分の意見や他の友達の意見もリスペクトし合うような雰囲気みたいです。

 

高橋:自己肯定感を育むためには、まずは子どもの発言や行動を一度否定しないで受け止める事かなと、笑顔で聞くことを心がけようと思っています。子どもは大人以上に感情や表情に敏感だなと思うので。自分の意見を提示することにまずは自信を持って欲しいと思います。
 
あと、こちらの方は子どものことをとても褒めるんです。「〇〇くんってこういうところいいよね」と親御さんに言えば、「そうなの、うちの子はすごく優しくてね」と言うように。イギリスに来て、そこがとてもいいところだなと感じました。隣で嬉しそうにしている子どもが印象的で!

 

小山:日本人同士だと自分の子を褒められても謙遜してしまいますよね。その点海外の方が感情をオープンにしているし、それが親子関係でも変わらないというイメージです。

 

筒井アメリカだと、大人同士でも他人を褒める機会がよくあって、そういうときに「いやいやそんなことないです」と謙遜してしまっていましたが、褒めてくれた人の思いを汲むことも大事だなと思って。子どもだけではなく、親同士でも褒められたら「ありがとう」と素直に受け取ろうと思いました。

 

小山:ここまでお話を伺って、多様性というのがひとつキーワードとして出ていますが、家庭の中で多様性を意識して子育てされている部分はありますか?

 

御林:多様性を受け入れる根幹の部分はコミュニケーションだなと思っているので、家庭では対話を心がけて、親と子で支え合える環境を作っていきたいですね。

 

小山:日本の家庭でも、ママとパパの意見が違うところを見せるのが多様性の第一歩かもしれないですね。親子、夫婦関係なく意見が違うこともあるけれど、それを尊重して支え合うということが、身近なところでの多様性を意識してもらう機会かもしれません。

 

筒井:対話はすごく大事ですよね。子どもは子ども…「個人」ということを意識しつつ、娘の話を頭からダメとは言わないように気をつけながら話を聞いています(笑)。

 

阿部:一歩引いて子どもを「個人」として見るというのはとても重要ですよね。イヤイヤ期であっても、子どもなりの理由があるというのを前提にして接するようにしています。あとはどうしたら自己肯定感を作れるかという明確な答えは出ていませんが、試行錯誤しながら子どもたちにこちらの思いが伝わるように子育てをしています。

 

小山:「違い」を区別して拒絶するのではなく、違いを個性として認め合い「その子の価値に変える」ということがこれからはとても大切ですね。本日は皆さんありがとうございました!

文 永見 薫
編集:相場 朋子/小山 佐知子

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