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2022.02.24 2023/02/15

<転載・インタビュー>
多様性の時代だからこそ自分らしさを追求し一歩踏み出そう 〜気鋭の若手社長に学ぶ、 “はみ出す” 勇気〜

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<転載・インタビュー><br>多様性の時代だからこそ自分らしさを追求し一歩踏み出そう 〜気鋭の若手社長に学ぶ、 “はみ出す” 勇気〜

東大からマッキンゼー、レアジョブ、ライフネット生命を経て、パンツ屋の社長へ。男性用下着メーカーTOOTで社長を務める枡野 恵也さんは、異色にも思える変幻自在なキャリアを歩んできました。ですが、そこにあるのは一貫した確かな軸。お話からは、自分らしさを大切に、変化を楽しんできた様子がうかがえます。枡野さんの「“はみ出す”勇気」は、多様性の時代においてヒントになりそうです。

特に、これからのキャリアや生き方について悩んでいる30代40代のビジネスパーソン必見です!

【記事提供元】35CoCreation メディア
※この記事は、組織開発、人事コンサルティング事業などを手がける35CoCreation合同会社のオウンドメディアより転載しています
※聞き手/35CoCreation合同会社 桜庭 理奈氏

ラシク・インタビューvol.307

株式会社TOOT 代表取締役社長 
枡野 恵也さん

キャリアの軸は「Free、Fair、Fun」

枡野 恵也さん/オンラインにて取材

枡野さんの子どもの頃の夢は何でしたか?

 

枡野恵也さん(以下、敬称略。枡野):世界征服です。ちなみに高校時代の夢は国連事務総長でした。昔から「少年よ、大志を抱け」を地で行くタイプでした。

 

なにかきっかけが?

 

枡野:逆に質問してみたいのですが、桜庭さん、直感でいいので「好きな色」を思い浮かべてみてください。そしてその色を選んだ理由をパッと言えますか?

 

難しいですね…。

 

枡野:そうですよね。僕もグローバルな課題解決に興味を持つ理由は特にないんです。「なぜか惹かれる」。ただ、納得いかないことに憤るタイプだったと思います。小学校時代に「男らしさ、女らしさって?」を議論する授業では「そもそもなぜ男女を区別する必要が?」と発言したり…。アンフェアなことも嫌いだったので、世界の格差・貧困問題に一番関心を持ったように思います。

 

直感を大事にしつつ、ロジカルな面もお持ちですね。そして国連職員を目指し東大に進まれて。

 

枡野:はい。東大では国際政治、特に民族浄化を研究しました。ところが、学ぶにつれ知ったのは、「中立」の難しさでした。対立する民族はどちらも自身の「正義」を持っています。中立の第三者までが正義で介入するのですから、政治学での解決は限界があるなと。

一方で気づいたのが、マーケティングとの重なりです。群集心理は誰かが誘導していて、ファッションの流行と似ています。社会心理学的なアプローチを活かせないかと考えるようになったのです。

 

政治学ではなく、社会心理学による解決ならできるのではないか、と。民間企業が視野に入ったきっかけのようですね。

 

枡野:そうですね。「グローバル」「課題解決」の2つの志向で、マッキンゼーに入りました。僕は、自分にはFree(自由)、Fair(公正)、Fun(楽しさ)が大事だと考えています。この3つの軸の間を歩きながら、グローバルな課題解決を志向してきたキャリアです。

ローカルに入るほどに、グローバルな仕事につながった

TOOTとはどう出会ったのですか?

 

枡野:ヘッドハンティングです。お誘いの一つがTOOTで。“Fun” の直感ですよね。これは絶対に面白い!って。実際に周りの誰もが、他のお誘いよりTOOTが僕らしいと言ってました。当時はライフネット生命で働いていたのですが、社長の岩瀬さんも、「パンツならば仕方がない」と言われました(笑)。

 

仕方がない!(笑)

枡野:そうです。後に僕が出す書籍『人生をはみ出す技術』に、岩瀬さんからもらった推薦コメントが「彼にはウチを辞めて欲しくなかったが、パンツならば仕方がない」で。当時、本当に言われた言葉です。

 

そうなのですね。枡野さんは、周りによく相談するタイプですか?

 

枡野:しますね。自我はあってないようなものだと思うので。周りが言う僕らしさの最大公約数が、僕じゃないですか。

 

なるほど。TOOTに飛び込んでどうでしたか?

 

枡野:ローカルを探求することになったのは意外でした。さらに、ローカルを突き詰めるほどにグローバルとつながったのも。

僕はTOOTを穿いて感動的なまでに気に入ったので、知名度さえ上がればどんどん売れると思ったんです。でも、前職の金融ビジネスと違い、在庫ビジネスには生産の限界があります。そのうち売上は頭打ちに。そこで宮崎県日向市の工場で人材採用を試みましたが、半年以上、応募が殆どありませんでした。

 

それでどうしたのですか?

 

枡野:日向の人に「そんな面白い会社があるんですね」と言われてハッとさせられました。「そうか、町の人に知られていないのか」と。同じころ、ふるさと納税の返礼品になると、知名度が上がり、応募は急増。スタッフは1年で2倍になりました。メーカーにとって生産はもっとも大事。世界よりも日向市に知らしめるのがどれだけ大切か、痛感しました。

 

グローバルとつながった、というのは?

 

枡野:ローカルで頑張ると海外で面白がられるんですよ。海外のファッションウィークに出すときに日向で撮影をしたように、ローカルを掘るほどグローバルで取り上げてもらえるのです。

 

ローカルにはもともと興味が?

 

枡野:いえ。大きなマインドシフトでした。僕のキャリアはプランド・ハプンスタンス(計画された偶発性)だと思います。グローバルな課題解決を志す大きな方向性だけがあって、具体的な行動は出会いで変わっていく。そのほうが人生楽しいです。

TOOTの仕事と「Free、Fair、Fun」のつながり

TOOTでの仕事を「Free、Fair、Fun」で考えると、どんな意味がありますか?

 

枡野:TOOTで目指したいのは、固定観念からの解放です。今、オフィス街にカラフルな服の人はいないじゃないですか。社会からの抑圧の象徴だと思うんですよね。とはいえ、いきなりスーツの色を変えるのは難しい。でも下着くらいは自由にしていいのではないかと。それが僕のチャレンジです。

 

Freeの軸ですね。

 

枡野:あと、調査によると、日本では男性下着の約8割が代理購買、つまりパートナーである女性が買っています。僕も友人によく言われるんです、「こんなの穿いていたら奥さんに何を言われるかわからない」って。「自分を鼓舞するアイテムだから何を穿いてもいいでしょ」と言っても通じないんですよね。でも女性は、割といい下着を持っている。アンフェアじゃないですか?

 

なるほど。お話を伺って、ヒューマニティ(人間らしさ)という言葉が浮かびました。男性を抑圧から開放し、自分の肌に近いところからヒューマニティを取り戻すチャレンジではないかと。

 

枡野:そうかもしれませんね。バイアスに自覚的でありたいと思います。相手の服装に嫌悪感を感じるのも「こうあるべき」というバイアスですよ。本当は何を着ても良いはずですから。

自分の軸を持って歩むには「自分を大切に」「変化を楽しむ」

枡野さんは活躍の場を変えるなかでも、しっかりと自分の軸を持ってこられたのですね。多様性の時代では、軸を持つ方は増えるのではないでしょうか。一方、変化を恐れてなかなか踏み出せない方も。枡野さんなら何を伝えますか?

 

枡野:ひとつは自分を大切にすることです。周囲から「いろんな選択肢に振り回されている」と見える人も、「自分はトレンドが好きだ」と自覚すれば、それはその人の軸。自分を大切にするのが一番大事だと思います。

 

「自分を大切にしている人」には特徴があると思いますか?

 

枡野:休み方と遊び方を知っているところでしょうか。会社以外の拠り所もあるといいですね。そして拠り所さえも、ときにすべてオフにできる心の余裕を持つ。そういう人は増えていきますよ。自分を大切にする人への社会の目は暖かくなってきていると思います。

 

そうかもしれませんね。

 

枡野:もうひとつ言うならば「変化を楽しめ」です。安定を好む人も、VUCA時代はチャレンジせざるをえなくなります。安定を守りたいなら、なおのこと。今に固執するのではなくて、自分が好きなことを判断基準に、目の前の選択肢を選んでいく。

 

変化を楽しみ、好きなことを探求するのは、自分を大切にするのにもつながるのではないですか? 探求のあとに見えてくることもありますから。

 

枡野:そうですね。思えば僕も、悶々とするのは行動していないときです。新しいアクションを取らないと、もやもやが膨れていくばかり。今までと違う新しいものに触れたら、そこになにかがあるかもしれません。

 

枡野さんがご著書でおっしゃっている「はみ出す勇気」と重なります。

 

枡野:そうですね。今いる場所から完全に飛び出るのではなくて、少しだけ新しいことをする、つまり「はみ出す」。それだと思いますね。繰り返しているうちに、はみ出した方向に惹かれていって、気づいたら軸足が移っているかもしれません。

 

本当にそう思います。今日はありがとうございました。

枡野さんは出会った瞬間から、いつか絶対に対談したいと強く感じた方です。念願叶って今回記事化することができました。枡野さんを構築する信念や、「Free, Fair, Fun」をはじめとした価値観といった揺るぎない本質と、時と環境の移ろいと共に、多様性を温かく包み込みながら、しなやかにリーダーシップを発揮し、新たな時代を開拓していかれる柔軟性と軽やかさ、大胆さから多くの魅力を感じました。こういうVUCAな時代だからこそ、あえて頭やロジックで考える筋肉を使うのは一旦横に置いておいて、心や体が「楽しい」と感じる方へ舵を切ってみる、少し「はみ出す勇気」を持つことは私達にもできそうですね。

プロフィール

枡野 恵也さん

株式会社TOOT 代表取締役社長

文・インタビュー:35CoCreation合同会社CEO 桜庭 理奈/小山佐知子

ライター

ラシク 編集部


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