時代に合わせたベストウェイを。150年続く子ども服の老舗ブランド『ギンザのサヱグサ』の取り組み

ラシク・インタビューvol.128

株式会社ギンザのサヱグサ 三枝 亮さん

子育ての必須品、子ども服。みなさんはどこで購入していますか?

今やファストファッションブランドでは子ども服が数百円代から購入でき、最近ではフリマアプリなどでも子ども服のラインナップが増えています。

そんな状況の中、「ギンザのサヱグサ(以下サヱグサ)」は、銀座に本店を構え、子ども服の老舗高級ブランドとして勝負しています。その歴史はなんと150年にもなり、昔から多くの母親に支持されてきました。150年も続く子ども服ブランドは、国内では類を見ません。

今回は、5代目社長である三枝亮社長に、サヱグサの歴史と、その根底にある想いについてお伺いしました。

サヱグサは老舗だがベンチャーであり続ける

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編集部:本日はよろしくお願いします。まずは、サヱグサの歴史をお教えください。

 

三枝亮社長(以下、敬省略。三枝):弊社は、1869年(明治2年)に築地の外国人居留地そばに創業しました。唐物屋(輸入雑貨商)「伊勢與」としてスタートし、主にヨーロッパから輸入されたあらゆる日用品を販売していました。日本の輸入解禁後、横浜港が貿易港として開港し、横浜港から小舟に荷物をのせて各地に運んでおり、築地川がある築地はとても便宜がよかったのです。

その後、明治政府主導で、明治5年の大火で焼け野原になった銀座が「海外にも誇れる不燃の街」として再建されました。レンガ造りの建物が立ち並ぶ街が徐々に出来上がり、伊勢與(のちのサヱグサ)は、1875年(明治8年)に銀座に進出しました。

 

編集部:横浜港開港、政府指導の再開発。感慨深い歴史ワードが登場して、150年の重みを感じます……!

 

三枝:明治政府は当時の国家予算の13分の1をかけて、「銀座の煉瓦街」を完成させたと言われています。それほどの肝いりだった銀座は日本における流行の最先端の土地でした。

弊社は当初、石鹸、香水、酒、食品などあらゆる輸入品を扱っていましたが、毛糸玉のヒットをきっかけに洋装品と服に特化していきました。同じく唐物屋からスタートされた本の丸善さんも、ほぼ同じ頃の創業なんですよ。

 

編集部:150年もの間に、時代に応じた様々な困難があったかと思います。具体的にはどんなことが?

 

三枝:150年の中で、大火や震災、戦争が原因で、銀座は3回焼け野原になっているんです。その度にリセットされ、それまで銀座にいた方の3分の1は残り、もう3分の2は新たな方々が入ってくる。その繰り返しでした。

サヱグサは、”銀座の専門店”というプライドがあり、焼け野原になるたびに歯を食いしばり、立て直しを行ってきました。

 

編集部:焼け野原ということは、事業がうまくいかないというレベルではなく、そもそも建物自体がなくなってしまう、ということですよね。それを3度も。

今私達が働いている環境では考えられないくらいの困難ですね……

 

三枝:現代でいうと、国内で進む少子化は、弊社の事業にとっては経営課題です。ある意味、焼け野原になったときのピンチと同じ状態です。

ですが、どの時代にも困難はあるし、それはこの先も同じ。今の時代にもサヱグサが存在しているのは、サヱグサの先代たちが、各時代におけるベストな道を尽くしてきたからこそなのです

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三枝:銀座は”変化の街“です。例えば京都のスタイルが「1かえて9のこす」だとすると、銀座は「9かえて1のこす」だと考えています。

サヱグサはいつの時代も、イノベーティブな取り組みを行ってきました。

例えば、大正3年には日本で初めて「バーゲン」という言葉を使い、今では当たり前ですが、シーズンのうちにサービス価格で品物を提供するという、当時まだ画期的なサイクルを取り入れました。また、サヱグサの定番商品にウール100%のジャージ生地にスモック刺繍をあしらったワンピースがあります。これは昭和7年に発売されました。ジャージ生地の動きやすさに目をつけたのですが、当時はジャージ生地というのはまだ目新しい素材で、子どものファッションとして受け入れられるか否かも未知でした。

そのイノベーション精神はもちろん続いています。現在サヱグサが抱げているのは、「老舗だがベンチャーである」ということ。150年目を新たな1年目と捉え、これからも時代を見据え変わり続けていきたいです

子どもたちに “ホンモノ“体験を。
今の時代だからこそ必要なサヱグサの取り組み

編集部:ありがとうございます。変化し続けるからこそ、サヱグサの歴史があるのですね。では、サヱグサとして現在挑戦している取り組みについて教えてください。

 

三枝:店舗でお客様が購入する姿を日々見て、モノに対する価値観が変化していることを日々感じています。例えば環境の配慮や社会の配慮、創り手の想いといった、モノの背景を大切にしているお客様が多くなりました。これからますますこの価値観は、モノを選ぶ時の当たり前の基準となっていくでしょう。

そのような背景を受け、サヱグサは2012年から、子どもたちへ豊かでサステナブルな社会を残すという目的のもと、『SAYEGUSA GREEN PROJECT』という取り組みを行っています。

子どもたちに自然体験を提供するキャンプやツアーの開催や、ワークショップなどを通して環境課題への気づきを与える活動を行うプロジェクトです。キャンプを企画する過程では長野県栄村小滝という集落とご縁をいただき、「小滝米」の再ブランディングで里山継承を目指すという新規事業にも発展しました。この小滝では、親子で田植えや稲刈り、地元の方との暖かな交流や里山の暮らしを体験してもらうツアーも毎年開催しています。

小滝米HPより

小滝米HPより

栄村小滝は、長野県最北端に位置する集落。300年前の水不足の際、当時の村人が深山から水路をつくりを再び生活を営むことができるようになり、今に引き継がれてきたという。この水路は、現在でも稲作や雪を消す生活水に使われており、途切れることの無いように維持管理されている。2011年3月12日の長野北部地震で集落が被災に見舞われた際には、ほとんどの水田が壊滅的な被害を受けたが、村人たちやボランティアの懸命な活動で水田を地盤から再建、水路も元どおりに整備され、現在では稲がたわわに実るようになった。三枝社長は、困難を乗り越え、さらに300年先にこの集落を残そうとする小滝の人々の姿に感銘を受け、小滝米の再ブランディングに取り組むようになった。

 

三枝:プロジェクトの根幹にあるのは、”ホンモノ体験”の提供です。

子どもの吸収力と感受性は計り知れません。子どものころの体験が、その後の人生の豊かさをつくるのではないかと考えています。大自然の中で遊んだり、日本の伝統的な生活や職人の技に触れたり、質の高い生の音楽を聞いたり。そのようなリアルな体験が子どもたちの軸をつくっていくと思います。

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三枝:現在は、便利な社会になった一方で、よほど意識しないと、感性を刺激されるような体験を子どもにさせてあげることは難しくなったのかも知れません。

例えば、昔は街には職人たくさんがいて、子ども達は彼らの手さばきを見てわくわくしたり憧れたりすることが出来ました。粉末だしを使うことが食卓で当たり前になり、素材からとるだしの味を知らない子どもが増えたと言いますよね。都心には、食材がどのように育つのか見たことがないだけでなく、土を触ったことさえない子どももいるんです。

忙しい現代社会の中で、全てを良質な体験にしていくのは難しいですが、一部でもいい、弊社が”ホンモノ体験“を提供させていただくことで、子どもたちの豊かな成長に繋げていきたい、という想いがあります。

 

編集部:働きながら子育てをしていると余裕がなく過ごしてしまうけれど、いろんな経験をしてほしい、と思うのがワーママの共通点です。どれもぜひ参加させたいプロジェクトです!

 

三枝:子どもたちは、さまざまな体験をすることで選択肢を増やしていきますよね。親の役目は、子どもたちに答えを用意することではなく、選択肢を増やしてあげることなのではないでしょうか?

店頭でのワークショップや、ブックディレクターの幅允孝さんが独自の視点で選りすぐった「子どもによき本」を取り扱うサヱグサ店舗内の小さな書店「grow with BOOKS」は、すぐに参加できる取り組みです。

今年のゴールデンウィークには、丸の内の東京国際フォーラムで開催される「ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019」の参加型ワークショップ「こどもたちの音楽アトリエ」で、「フォル盆キッズバンド」という楽しい企画があります。詳しくは「ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019」のオフィシャルサイトでご案内していますので、ぜひご参加くださいね!

店頭で販売されている、ブックディレクター幅允孝さんが選書した本たち

店頭で販売されている、ブックディレクター幅允孝さんが選書した本たち

150年の老舗ブランドというイメージの強いサヱグサですが、その歴史には数多くの困難と、それを乗り越えるための数々イノベーションがおきていました。

一方で、長く母親から愛されるサヱグサのファッションアイテム。実は筆者と取材を同行したママは、母親が当時購入し自分が着ていたサヱグサの服を、最近母親から譲りうけ、自分の子どもに着せているんだとか。大事に扱われ、二世代に愛用されるサヱグサの服は、やはり特別なものなのでしょう。

良質な商品展開はもちろん、「SAEGUSA GREEN PROJECT」と称して、さらに新たな取り組みを続けるサヱグサに、今後も注目です。

三枝 亮さんプロフィール
株式会社ギンザのサヱグサ 代表取締役社長。 1967年東京生まれ 。子どもたちの上質なライフスタイルを提案するスペシャリティストアをディレクションする傍ら、都会に住む子どもたちを取り巻く環境の改善に重要性を感じ、2012年「SAYEGUSA GREEN PROJECT」を立上げる。
HP:株式会社ギンザのサヱグサSAEGUSA GREEN PROJECT

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:石根友理恵

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