失敗しても何度でもやり直せる。
子どもの直感力を高めるデジタルアートの魅力

ラシク・インタビューvol.123

デジタルハリウッド大学 名誉教授 南雲治嘉さん

私たち子育て世代が子どもの頃とは大きく変化している現代の教育。英語、プログラミングに続いてデジタルサイエンスやデジタルアートは、ここ数年で注目を集めている分野ですが、実際どのようなことを教えるの? と疑問に感じているパパママも多いかもしれません。

デジタル色彩などを専門にデジタルハリウッド大学で名誉教授を務める南雲治嘉先生にデジタルアートとはいったい何? というお話を伺いました。

失敗しても、何度でもやり直せる。
直感的に気持ちを訴えられることがデジタルアートの魅力

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編集部:いま、デジタルアートってとても話題になっていて、見聞きする機会も増えました。南雲先生が考えるデジタルアートの魅力はどういうところでしょうか?

 

南雲治嘉先生(以下、敬称略。南雲):直感的に気持ちが訴えられる世界であることがデジタルの最大の魅力ですね。

 

幼稚園や保育園で描く絵はサイズが結構大きくて、途中で力尽きてしまう子もいます。身体差によるところも大きいので、どうしても粘り強い子が上手いとされてしまうところがあります。その点、タブレットの画面の小ささは描きやすさで優れていて、直感的に気持ちを顕すにも適しているし、途中で失敗したらすぐに戻ってやり直せるところもいいんです。

普通の絵は途中で失敗しても最後まで描かなくてはいけない、それはそれで良さではあります。一方でデジタルアートは、「失敗してもいい、人生にはやり直しがきく、もう一回やればいいんだ」というメッセージを感じられる体験だと思っていますし、クリエイティブな世界で情操的な気持ちをつぶさずにいられる、最初のテンションを維持できるのは非常にいいことです。

 

あとは、描いたらすぐメールなどで送っておじいちゃんおばあちゃんに見せられるのもいいですよね。鑑賞用ではなくて、コミュニケーションを密にする道具としての絵の楽しみをデジタルアートで伝えていきたいと思っています。

成長するにつれ感性は衰えていく。
小さなことで喜べる大人になってほしい

 

編集部:デジタルアートって子どもたちがお絵描きをして、その裏にはこんなプログラミングが…… という仕掛けに興味を持たせるものかと思っていましたが、直感を大事にするものとは意外でした。

 

南雲:プログラミングも論理的にものを考える上では大事だけど、子どもが持っている直感を大事に、ということは忘れてはいけないと思います。

子どものプログラミングというとゲームのようなものを作らせて、その出来で順位をつけるものも多いのですが、絵の上手い下手では順位をつけられないし、できれば僕はそこには優劣をつけたくはないんです。

自由に描いた絵を見て、「楽しかったんだね」とかその時感じたことが分かればいいし、子どものひらめきを作ってあげたいと思っています。

 

中学生くらいになるとどんどん理性で物事を考えるようになるから、直感力はどんどん鈍っていってしまうんですよね。だけど大人になっても「このお酒すごくおいしい!」って感じるのは直感でしょう? 美しい風景を見たときに「綺麗!」って思ったり、誰かを好きだって感じたり、小さなことで喜べなくなっていくと人生がつまらなくなってしまいます。だから子どもには感性を磨くアンテナを作ってあげるのが大切なんですよね。

 

僕は毎年夏に岩手県の幼稚園にデジタルアートを教えに行くのですが、まだ幼稚園児なのに1時間半くらいの授業を平気で受けることができて、「もっとやりたい!」と言うんです。

この子たちは美しいものに対する憧れを持っているのだということが分かりますし、人でも作品でも憧れを持つって素晴らしいことですよね。

 

僕も学校の生徒たちに教えるときは「一流になれたらいいな」じゃなくて「一流になる、と決めてください」と話しています。大人になるにつれ夢が漠然としてきてしまうものですが、夢は実現可能で、身近なものなんです。

 

子どもには“未来”という概念が理解できないから、「明日どこへ行きたい?」「これから何が食べたい?」というところから夢や未来について教えていきたいと思っています。

空想してアウトプットすることが直感力を磨く秘訣に

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編集部:直感力を鍛える、育てるためには具体的に何をしていけばいいのでしょうか?

 

南雲:僕は小学校時代に天気がいいと、先生に「今日は外に出て、雲とおしゃべりしてください、そしてしゃべったことを書きなさい」なんて言われていたんです。運動場の小さな穴の中にいる虫に「なんで土の中にいるか考よう」と空想をするという授業もありました。

 

ものすごく自由な授業でしたが、完成や頭脳が磨かれたのか、その中には何人も有名大学に進んだクラスメイトがいますし、当時から「僕はイモが好きなんだ!」と言っていた仲の良い友人は、東大からテキサスの大学に渡ってイモの研究者になりました。同級生とはあの先生の教育はすごかったね、と今も話します。空想して、その内容をアウトプットさせることで確実に直感力は育つと思いますよ

デジタルアートや色彩を教えているという経歴から、かなり難易度の高いお話になるかと思っていたら、終始「感性」や「直感」を大事にしてほしいと話していた南雲先生のお話。雲や虫とおしゃべりするという日常でもできることは、家庭内の子育てでもぜひ実践してみてください。

南雲治嘉さんプロフィール
グラフィックデザイナー、アートディレクターとして活躍。また、ベーシックデザイン、デザイン理論、表現技術、色彩などの分野で新しい理論を打ち立て、研究と実践を行う。特にデジタル色彩では日本の先端にいる。
1990年に株式会社ハルメージを設立し、グラフィックを中心としたデザイン活動を展開。著書はすでに50冊を超え、特に2004年に執筆した『常用デザイン』は新しいデザインのあり方を示すものとして業界に新風を巻き起こした。
2006年に著した『100の悩みに100のデザイン』はベストセラーとなった。NPO法人日本カラーイメー ジ協会 理事長。先端色彩研究室 室長現在、劇団デジハリ堂にて演劇活動にも力を入れている。
HP:

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:真貝 友香

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